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休日⑥

「おーじさん、これって何なのぉ?」

「今度は何……うわぁ懐かしいなぁ」


 俺の部屋掃除という名目の探索に凝っているらしい直美が埃を被った箱を引っ張り出してきた。

 開けてみると中から学生時代に熱中していたカードゲームが出てきた。 


「昔流行ってたカードゲームだよ……おお、デッキも揃ってるなぁ」

「へぇ~、おじさんってほんとーにゲーム好きだよねぇ……だけどこれって一人でできるゲームなのぉ?」

「うぐぐ……で、できなくはないよぉ……一人二役すればいいから……虚しいだけだけどぉ……」


 複数のデッキが出てきて、すこし触るだけでコンボが思い出されてくる。

 当時はまだ疎遠になっていなかった友達とよく勝負をしたものだ。

 

「こんなにたくさん溜めちゃってぇ……良く止めれたねぇ」

「友達と一緒にやってたんだけど……そいつが引退したらなんか一人でやるのも馬鹿らしくなってね……」

「おじさん、友達いたの?」

「……そんな綺麗な目で聞かないでよ、居たんだよぉ……当時は」


 仕事が忙しいことと元々連絡をまめに取るタイプで無かったためにあっさりと皆、縁が切れてしまった。


「へぇ~、まあ今は直美が居るから寂しくないもんねぇ~」

「……うん、本当に助かってるよ」

「ちょ……そ、そんな素直に認められると恥ずいってばぁ……」


 照れ隠しのように直美が俺のデッキに手を伸ばし、軽く眺め始めた。

 

「うーん……これどうやって遊ぶのぉ?」

「えっと……これがルールブックだけど、簡単に言えば攻撃力と守備力を見比べて戦わせるだけだよ」

「ふぅん……せっかく見つけたんだから少しやってみるぅ?」

「……止めとこう、これ絶対初心者は勝てない奴だから」

「わっかんないよぉ、おじさんぐらい簡単に倒しちゃうんだからぁ~……どの束が強いのぉ?」


 直美が複数ある俺のデッキに手を伸ばし始めた。

 こうなるともう止めても聞かないだろう。


「一応このデッキが当時の大会優勝者と殆ど同じ構成をしてたはずだけど……」

「パクリじゃんっ!? それっていいのぉっ!?」

「まあどういう構成が強いのかとか実際に使ってみて確認するのも大事だったからねぇ」

「へぇ~、じゃあ直美これ使う~……おじさんは一番弱い奴ね~」

「一番弱いの……ファンデッキでも使うか」

 

 当時やっていたアニメキャラが使っていたカードカテゴリーで構成されたデッキを手に取る。

 

(結構独特な動かし方だったよなぁ……俺出来るかなぁ……)


 軽くデッキを混ぜながら戦い方を思い出す。

 直美もまたトランプをシャッフルするように、デッキを床に広げて混ぜ始めた。


「……ショットガンシャッフルはカードを傷めるぜ」

「なぁにそれ?」

「何でもない、言ってみただけ……じゃあ始めようか」


 やり方をレクチャーするために俺が先行で始める。


(確か先手はカード引けないんだよなぁ……)


 初期手札にあるカードの効果を一通り確認した。

 そして俺は早速覚えている範囲でカードを動かし始めた。


「えっとまずバニシングからトリビュートでミミクリー墓地除外からネスト発動でファジーを……」

「お、おじさん何してるの?」

「何って、カードに書かれてる通りの効果を処理してるだけだよ?」

「え……だって、ええっ!?」


 直美がルールブックとカードを見比べて睨めっこしている。

 一通り読み終えて、ようやく理解したようだが納得はしていないようだ。


「やっぱり止めとこうか?」

「い、いやまだ私の番にもなってないしぃ~ほら早く終わらせてよぉ」

「分かったよ、じゃあ続きでファジーからフォースで、ファジーとシンギング持ってきてシンギング出してまたフォース……」

 

 意外に覚えているものでスラスラと手が動いた。

 場にカードが並んで、よほど上手く回されない限りこのターン中に負けることはなさそうだ。


「これで終わり、直美ちゃんいいよ」

「えっとカードを引いて、この緑のカードは使えるんだよね……」

「うん、無効にするけど……」

「はぁっ!?」


 引きが良かったので一回は無効にできた。


「ええと……じゃあ、この紫の伏せて……このカードで守らせて終わりかなぁ」

「じゃあ、俺のターン……の前にゴッドバードで俺のカードと一緒にその二枚を破壊して……」

「えっ!? ちょ、そ、それならちょっと待ってこっちも伏せるからっ!?」

「ルール上駄目なんだけどなぁ……まあいいや、じゃあ今度こそ俺のターンでカードを引いて……」


 昔の感覚が蘇ってくる。

 

(懐かしいなぁ……たくさんやったなぁ……)


 気が付いたら場にカードが並んでいた。

 手札はまるで減らない。


「もぉやってらんなーいっ!!」

「……だよねぇ」


 直美がカードをぶん投げた。

 俺はそれを片付けながらも、懐かしいカードの感触に少しだけ童心を取り戻すのだった。


「これ本当にさいきょーのデッキってやつなのぉ?」

「じゃあ使ってみようか……モンキーP、ドクロ手札、ラスターP、モンキー破壊モンキー手札、ドクロP、モンキー×2PS、ベアSS、ゼピュ墓地、ラスター戻しゼピュSS……」

「はいはいわかりましたぁ、私の負けですぅ~」

「ドクロNS、ペンマジ手札、キングレSS、ドロリザ手札……うん、クソゲーだこれ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初期のエキスパートルール出回り始めたころに、最古ルール仕様のデッキ組んでる奴とエキスパートルールでプレイして、何もできないって泣かれた。
[気になる点] モンキー◯ード…、ヒグルミ…うっ、頭が⁉︎ [一言] お楽しみはこれからだ!
[一言] パルスのファルシのルシがパージでコクーン? 言ってる意味が全く分かりませんw
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