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史郎と亮とオタク少女な直美ちゃん⑥

「うひひっ!! それロォンっ!! さぁさあっ!! 直美の前にそのほーまんなボディを曝け出すのだぁっ!!」

「……はぁ」


 窓の向こうから聞こえる声に、俺は思わずため息をついてしまう。


(休日の昼間っからPCに縋りついて脱衣麻雀してる女子高生なんて世界中探してもここにしかいないだろうなぁ……うぅ……こんな風に育ててしまって、俺はどう責任を取ればいいんだぁ……ぐすん……)


 自分の育て方が間違っていたことを思いっきり見せつけられるようで、何だか涙が出てきた。


「ふふふぅっ!! おぉ……これは塗りが中々……きれぇなピンク色しちゃってまぁ……だけど直美だってそう負けたもんじゃ……」

「直美ちゃぁん……お願いだからせめて窓を閉めてプレイしてよぉぉ……うぅ……」


 下着姿でパソコンの画面に食い入りながら自らの胸に手を伸ばす直美に、ついつい苦言を呈してしまった。


(昔はよく霧島の奴が男を連れ込んで見せつけるように行為に及んでたけど……下手したらあの頃よりずっときついかもしれない……)


 当時の霧島の行いには正直呆れながらも、内心少しだけ嫉妬と悔しさ……そして自分に対する情けなさと無力感を覚えていた。

 それでも亮が傍にいて支え続けてくれていたからそこまで苦しむことはなくて、いつしかあいつが何をしても気にならなくなっていった。

 しかし今、こうして隣で直美が定期的にエロゲーをやってる姿を物理的に配信されるところを見ているとあの頃とは違う意味だけれど、比べ物にならない虚しさと申し訳なさがわき上がってくるのだ。


「あぁ~っ!? し、史郎おじさんいつの間にぃ~、いやぁん直美のエッチなところ見られちゃったぁ~……興奮した?」

「するわけないでしょうがぁ……そう言う言葉はせめて寝癖を直して身だしなみを……いや常識を整えてから言おうね?」

「ちょ、ちょっとぉっ!? 流石にそれは言ーすぎでしょぉっ!? 直美はこれで結構真面目なゆーとーせーしてるんだからねっ!! せぇせき以外はっ!!」

「あ、あのね……はぁ……」


 むくれてこっちを睨みつける直美にもっと色々言ってやりたい気もしたが、結局は黙り込んでしまう情けない俺。


(成績悪くて学校もサボりガチなのにどこが優等生なんだか……でもどっちも直美の意志でそうしてるわけじゃないはずだからなぁ……)


 お勉強が苦手で成績が上がらないのは仕方がないと思うし、不登校気味なのも恐らくは……仕方なくなのだろう。


(ああしてゲームしたいからってごまかしてるけど……い、いや新作発売日とかは本気かもしれないけど……あの二人の友人と過ごす時間を物凄く大切に感じている直美が学校に行きたがらないわけがないもんなぁ……)


 初めてあの二人と友達になった日、俺に困った奴がいると愚痴のような形で……それでもとてもいい笑顔を浮かべて二人のことを話し続けていたのを覚えている。

 ましてそれからも彼女達と遊んだ日は大抵笑顔で何があったのかを自慢げに報告しに来るほどだ。

 そんな二人と会って共に過ごせる学校よりもゲームを優先するほど直美は愚かではないはずなのだ。


(やっぱりまだ……いやむしろ悪くなってるのかな……いい加減矯正してあげたいけど……そうだっ!!)


 ふとあることを思いついた俺は時計を見上げつつ、口を開いた。


「ふぅ……直美ちゃん、そう言えばお昼ご飯はどうするつもりなの?」

「むぅっ!! そんな露骨に話をそらしても直美は……直美はぁ……お腹ペコペコだからなんか買ってきてぇ~?」


 すぐに機嫌を治した直美は窓際に寄るとほんの僅かに顔を出して、甘えるように俺を上目遣いで見つめてきた。


「それよりさ、せっかく休みなんだから……一緒に食べにでも行かない?」

「えっ……あー、うぅん直美はその……家でゲームしてたいから却下かなぁ~……それよりテークアウトで買ってきてよぉ~……それで一緒に食べさせ合いっこしてぇ~、直美をお膝の上に座らせてナデナデしてぇ~、それでそれでぇ~……」


 俺の提案を聞いて一瞬顔をひきつらせた直美だが、すぐに取り繕うようにいつものような口調でおねだりしてくる。


「いや、たまには直美とお外で食事したいな……何なら買いたいものあったら買ってあげるからさ、少しだけ付き合ってよ?」

「えぇ……で、でもなぁ……」

「どうしても嫌? やっぱりお外に出るのは……辛いの?」

「あっ…………うん、ちょっとだけ……」


 そんな直美に改めて問いかけると、少しだけ口をつぐんだ後で小さく首を縦に振って見せるのだった。


(やっぱりまだ駄目か……あの二人の友達が出来てから少しはマシになったと思ってたんだけどなぁ……)


「そっか……まだ駄目か……」

「ご、ごめんね史郎おじさん……せ、せっかくデートに誘ってくれたのに……」

「気にしなくて……い、いやデートじゃないんだけど……」

「ふぇぇっ!? ど、どぉきいてもデートのお誘いだったよね今のっ!? エッチできる年頃の男女が出かけるって言ったらそれはもぉ公園だろうと映画館だろうと水族館だろうとおトイレだろうと、とにかくどこへ行ってもエロエロな展開が待って……」

「……エロゲーのやり過ぎです……やっぱり家に閉じこもってゲームしてないで、ちょっとでいいから外出しようね直美ちゃん?」

「ふぇぇえっ!? そ、そんなぁああっ!?」


 直美の弱々しい態度につい甘やかそうとしてしまった俺だが、やっぱりこのまま家でゲーム三昧させておくのは不味いと思う。


「ほら、今からそっち行くからね……出かける準備しておいてよ?」

「えぇっ!? ほ、本気で言ってるのぉっ!? あぅぅ……か、勘弁してよぉ……うぅ……」


 困ったように呟く直美を置いて、俺は自分の部屋を出て出かける支度を始めるのであった。


(こうでもしないと本当に直美ちゃんは引きこもり続けてそうだからなぁ……少しずつ連れ出して様子を見ながら慣れさせていこう……さしあたって今日は散歩からだな……)

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― 新着の感想 ―
[一言] 何かあって、引きこもりになっちゃったのかなあ。 昔のアーケードの脱衣麻雀、後一枚まで追い込んだら、急に「ロン、地和」って上がられて、続けて「ロン、天和」って上がってクレジット刈りに来た、と…
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