史郎と亮とオタク少女な直美ちゃん②
「ただい……あぁ……また来てるのか……」
家に帰るなり、玄関先に脱ぎ散らかされている靴に気付いた俺はため息交じりにそれを整えてから部屋へと向かう。
「……っとっ!! よしこれで……よぉし零針狩りぃっ!!」
「ただいま直美ちゃん……またそんな格好してぇ……」
「んにゃぁ? おおっ!! おっかえりぃ史郎おじさぁ~んっ!!」
そして俺のベッドにうつ伏せに横たわりながら携帯ゲームに興じていた直美へと声をかけると、洒落っ気のない分厚いレンズのついた黒縁眼鏡をつけた顔だけこちらに向けて満面の笑みで出迎えてくれる。
そんな直美はせっかくの綺麗な髪の毛をボサボサにしていて、ダボダボのかつて俺が着ていたジャージの上着だけしか身に着けておらず下半身はパンツ丸出しの状態だった。
年頃の女の子のはしたない姿に、しかしもう見慣れている俺は色気より虚しさを覚えてしまう。
「あのねぇ直美ちゃん……年頃の女の子がそんなだらしない格好してちゃ駄目でしょ……しかも人の部屋で……」
「今更いーじゃぁん……あぁっ、それともひょっとしてムラっと来ちゃったぁ? えへへ、仕方ないなぁ史郎おじさんはぁ……特別に直美のお尻を枕にしても……ひゃぁんっ!?」
変なことを言っている直美のお尻を叩いてやると、ぺチンといい音が響く。
(全く……あんなに痩せてたのにこんなに健康的に肉付いちゃってさぁ……しかしこんなだらけた生活してるのに意外と引き締まった身体してるんだよなぁ……張り艶も良いし……ああ、若いっていいなぁ……)
「も、もぉ史郎おじさぁ~ん……触るなら触るって言ってくれないと心の準備がぁ~……ひゃんっ!? ま、また叩いたぁっ!!?」
「ほらほら、早くズボン穿かないともっとお尻叩くよ?」
「わ、わかったから止めてってばぁ……もぉ、せっかく直美なりに史郎おじさんをゆーわくしてたのにぃ……」
「よく言うよ……いつだってそんな格好でだらけてるでしょうが……」
「だからぁ~、直美は四六時中いつでも史郎おじさんをゆーわくしてんのぉ~っ!! だって直美は史郎おじさんのハートを射止めてせんぎょー主婦になるという緻密なしょーらいプランが出来上がってるんだからねぇっ!!」
ベッドから上体を起こして無駄に大きく育った胸を張る直美……正直、ジャージ姿とは言え裾の部分から下着をチラ見せしながらそう言う態度を取られるとちょっとだけドキッとする。
(しっかりしろ俺……直美ちゃんは娘みたいなものなんだからな……そう言う目で見ちゃ駄目だぞ……)
ずっと成長を見守ってきた直美だが、だらしない格好とは裏腹に身体つきはとても豊満に育ってしまった。
出るところは出て引っ込むところは引っ込んで……おまけに見た目は変貌する前のかつての俺が愛していた幼馴染とそっくりなのだ。
だからだろうか、最近は彼女の挙動にほんの僅かにだかドキッとしてしまうことが増えてきた。
(全く……俺だからともかく、高校生で女盛りの子がこんな無防備な姿を異性にさらしてたら危険だっていい加減わかってもらわないとなぁ……まあ他所でこんな真似できるわけないから気にする必要はないのかもしれないけど……いや、やっぱり将来のことを思ったら今のうちから矯正しておかないとな……)
あくまでも慣れ親しんだ俺の前だから甘えてこういう姿をさらしているだけだとはわかっているが、それでも心配になってしまうのは親心だろうか。
「はいはい……それより早く着替えないならもう一発……」
「わ、わかったから叩くの止めてよぉ……全くもぉ、直美のお尻は太鼓じゃないのにぃ……あれ? 史郎おじさぁん、ジャージの下どこに片したのぉ?」
「いつも通りタンスかクローゼットの中……そこになかったら直美ちゃんがどこかに穿き捨てたんでしょ?」
「うぅん……どぉだったかなぁ?」
一旦ゲーム機を置いてベッドから起き上がった直美は、腰を折り曲げてクローゼットに頭を突っ込んで中を探しながら外に出ているお尻をフリフリさせている。
これがわざとなのか、それとも自分でも気づかずしているのかは分からないが目に毒だ。
だから視線を逸らして、先ほどまで直美が横たわっていたベッドに腰を掛けてスーツを緩めていく俺。
その際に直美がやっていたゲーム機へと視線を投げかけると、昨日発売したばかりのハンティングアクションゲームの画面が映っていた。
「うわ、この装備にスキル……どこまで進めたの?」
「んー……いちおーメインは全部終わらせてぇ、今はおーま装備をフルきょーかするために狩ってるとこぉ~」
「はっ!? な、何で一日でそんな……っ!?」
「ふっふぅんっ!! 直美がその気になればちょちょいのちょいなのだぁ~っ!!」
自信満々に叫ぶ直美だが、確かに彼女はこのシリーズをやり込んでおり大抵の敵ならば装備さえ整っていれば五分以内に狩れる程には廃人だ。
しかしメインミッションを終わらせるには決められた依頼を全て終わらせる必要がある……まして装備を揃えるために素材を集める必要もある以上は学校に行く時間を考えたら、流石にそこまで進めるのは徹夜でもしない限り物理的に不可能のはずだ。
(だけど徹夜は身体に悪いから、昨日はわざわざ腕枕して一緒に眠ってあげてまでして徹夜させなかったのに……もちろん改造プレイはプライドが許さないからあり得ないし……となると残る可能性は……)
「……まさか直美ちゃん……ひょっとして今日も学校サボってやり続けてたんじゃないだろうね?」
「ドキッっ!? な、な、なんのことぉ~っ!? 直美分かんなぁ~いっ!!」
「バレバレだよ……はぁ……全く仕方ないなぁもぉ……学校はちゃんと通いなさいって言ってるでしょ?」
「えへへ……ごめんね史郎おじさぁん……だけどちゃぁんとそつぎょー出来るように単位はけーさん済みだからぁ……ね?」
呆れている俺に着替え終えた直美が横から抱き着きながら、わざとらしく眼鏡を外すと裸眼で甘えるように顔を覗き込んでくる。
その視線が俺には初めて直美と出会った時に、力なく俺の服を掴んでこちらを見上げていた頃のそれと重なって見えてしまう。
(叱らなきゃ駄目なんだろうけど、そしたら絶対嘘泣きするよなぁ……何より可愛すぎて逆らえない……うぅ、駄目な大人だ俺は……)
この甘える直美が愛おしすぎて……何よりこんなにも健康的に育ってくれたことが嬉しくて、俺はどうしても強く当たることができないのだった。
「もぉ……またお友達に怒られても知らないからね?」
「あうっ!? そ、そこはほら、また史郎おじさんに間に入ってもらって……ね?」
「勘弁してよ直美ちゃん……あの二人、年下なのに妙に迫力あって怖いんだから……直美を甘やかすなって何度も説教されてるんだからね俺……」
「あはは……全く大人にせっきょーするなんて陽花も美瑠も困ったもんだなぁ~」
「一番困った子は直美ちゃんでしょうが……全く……」
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