史郎お兄ちゃん㉓
「直美ぃ、調子はどうなのぉ?」
「ふっふぅん……これを見るのだぁっ!!」
お部屋に入ってきた亜紀お姉ちゃんに、ちょうど今解き終えたばかりの過去問を見せてあげる。
「どれどれぇ……おお、ちゃんと合格点超えてるじゃないのっ!!」
「えっへんっ!! 直美の本気を見たかぁっ!!」
「もぉ、すぐ調子に乗るんだから……けどこの学力を維持できれば問題なさそうだね」
「でしょでしょぉ~っ!!」
亜紀お姉ちゃんに向かい、自慢げに胸を張る私。
何だかんだでこの部屋に移ってからさらに勉強が捗るようになった。
(今までは史郎お兄ちゃんがいつ帰ってくるかとか気になってたけど、この部屋だと帰ってくるとすぐ声かけてくれるもんねぇ……それに素直にお勉強してればその姿見て褒めてくれるし……良いことづくめだよっ!!)
これならば何かよほどのトラブルでも起こらない限り、公立に落ちることはないと思う。
「ふふ……だけど直美、少し成績上がったからって史郎と遊ぼうとしちゃ駄目だからねっ!! お部屋交換したのはそのためじゃないんだからっ!!」
「うぅ……ま、まだこの間のこと根に持ってるのぉ……軽い冗談じゃん……」
「冗談ですまないでしょっ!! あんな風に窓越しにやり取りしてたら周りにも聞こえちゃうじゃないっ!! それで変な噂が立ったらお母さんの気苦労が増えるでしょうがっ!! ただでさえ、あの男のことで色々言われてるみたいなのに……」
「あぅぅ……そ、それはぁ……」
お姉ちゃんの言葉に、流石の私も胸が痛み俯いてしまう。
私が小さいころから、もう十年近くあの男は家に帰ってきていないのだ。
当然そうなれば、近所づきあいする中でその話題が出ないはずがない。
(そんな素振り全く見えないけどぉ、多分私たちに余計な心配をかけないためだよね……前にあの男のこと話す時、あんな切なそうな顔してたもんね……はぅ……直美自分のことしか考えてなかったぁ……まだまだお子様だぁ……)
「お母さん、私たちの為に凄く頑張ってくれてるんだからね……史郎を誘惑したい気持ちは凄くわかるけどちゃんと公立に受かってからにしなさいよ……それまで私もちゃんと待つから」
「は、はぁい……うぅ……お、お姉ちゃんいつの間にそんな大人みたいな考えするよぉになったのぉ……」
「……ふふ、流石にお外で働くようになると色々とね……だから私は直美より一足先に大人の女性の魅力を身に付けてそれで史郎を誘……おぉっと……」
「ちょ、ちょっとぉっ!? 待っててくれるって約束ぅっ!! そ、それに大人の女性ってっ!? ゆ、誘惑って何したのぉっ!?」
「ひぃみぃつぅ~」
亜紀お姉ちゃんはまるでいつもの私みたいに、悪戯っ子のように笑うとそんな意地悪を言ってくる。
そんなお姉ちゃんを見ていると悔しいような……それでいてどこか楽しくて胸が温かくなるような気がした。
「何よそれぇっ!! 亜紀お姉ちゃんズルは駄目なんだからねぇっ!!」
「あんたが言わないのぉ~、ほらほらそろそろ勉強再開しなさいよぉ……私も傍で見ててあげるからぁ~」
「そぉ言いながら何窓を見てるのぉっ!? どぉせ史郎お兄ちゃんと顔合わせたいだけでしょぉっ!? えぇいっ!!」
「きゃっ!? ちょ、ちょっと直美ぃどこ触って……あ、あははっ!? く、くすぐったいってばぁっ!?」
「直美を揶揄った罰なのだぁ~っ!! ええい、お姉ちゃんの弱いところ見つけ出しちゃうんだからぁ~っ!!」
お姉ちゃんに飛びついて床に押し倒した私は、手を服の中に滑り込ませると脇の下やおへそ周りをくすぐってやるのだった。
「あははは……ちょ、ちょぉ……うぷぷ……な、直美ぃ……んぅっ!? そ、そこは駄目ぇ……はぅっ!?」
「うりうり~、抵抗しても無駄なのだぁ~……直美のテクの前にお姉ちゃんはなすすべもないのだぁ~」
「ちょ、ちょっと本当に止め……あぁん……も、もぉ直美ぃ……お、おかえしぃっ!!」
「にゃぁっ!? お、お姉ちゃんどこ触ってっ!? あっ!? んぅっ!?」
「ただいまぁ、今帰った……ってえぇえええっ!? ふ、二人ともなにしてるのぉっ!?」
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