史郎お兄ちゃん⑲
「し、史郎お兄ちゃぁん……直美を助けてぇ……」
「もぉ、すぐ史郎に助けを求めないのっ!! ほら手を止めてないで問題集を解きなさいっ!!」
「うぅ……亜紀お姉ちゃんの鬼ぃ……」
亜紀お姉ちゃんのお部屋に監禁されながら問題集の山を解いていく私。
本当なら窓の向こうにいる史郎お兄ちゃんとイチャイチャしながらお勉強するはずだったのにどうしてこうなってしまったのだろうか。
「こうでもしないとあんたすぐ脱線するでしょう、それに史郎は甘いから甘やかしちゃうし……だからこうして私が面倒見てあげてるんだからね……感謝しなさいよ」
「あうぅ……はぁい……」
呆れたようにつぶやくお姉ちゃんだが、言っている内容自体は事実なので何も言い返せなかった。
それでも史郎お兄ちゃんへの直接接触禁止令は流石に厳しくて涙が出そうだった。
(はぁ……まさかここまで厳しくたいおーされるなんて思わなかったよぉ……亜紀お姉ちゃんだけならともかくお母さんまであんな深刻そーな顔するなんてびっくりだよ……)
「わかったらさっさと勉強を続けなさいよ全く……私だって史郎と早く遊びたいんだからねぇ」
「ぬ、抜け駆けは止めてよぉっ!! 直美が近づけないうちに史郎お兄ちゃんをとっちゃヤダからねっ!!」
「はいはい、わかったから……だからこうして一緒にお勉強してるんでしょ……早く受験終わらせて……本番はそっからなんだからね」
「う、うん……」
少しだけ真面目な顔で呟いた亜紀お姉ちゃん。
きっとここでいう本番というのは、史郎お兄ちゃんのことに関してなのだろう。
(そうだよねぇ……いずれは直美か亜紀お姉ちゃんかどっちかが……彼女になれるのは一人だけだもんね……)
正直なところ私としても今の関係は中々心地よいと思っているし、お姉ちゃんと本気で争いたくはない。
けれどやはり史郎お兄ちゃんと彼氏彼女の関係になりたいのも事実だ。
だからいずれは目を向けなければいけない問題だし、そのために史郎お兄ちゃんへのアピールはしてきている。
それでも、もしも選ばれなかったらと考えるととても不安になってしまう。
(それぐらいなら今の関係を続けたほうがって思っちゃうのは情けないなぁ……だけど多分お姉ちゃんも……だから直美が高校生になるのをきっかけにするつもりなのかなぁ……)
その日が来るのが少し怖いけれど、時間は止まることなく進んでいく。
ならばせめて後悔だけはしないよう、私はこれからも行動はしていこうと思った。
(そのためにも史郎お兄ちゃんを誘惑しに行きたいけど今は……やっぱり勉強しないとだよねぇ……同じ学校に入らないとお姉ちゃんが有利過ぎるぅ……けどぉお勉強は嫌ぁ……)
「だから直美、手が止まってるわよ……シャキシャキ勉強しなさいってのっ!!」
「はぁい……うぅ……史郎お兄ちゃぁん……」
どうしてもモチベーションが上がらなくて、私はやる気を出すために顔を上げて史郎お兄ちゃんと視線を合わせようとするのだった。
「あはは、直美ちゃん……苦労してるみたいだねぇ」
「史郎ぉ……直美ったらさっきからサボりまくりなのよぉ……」
「だってぇ、つまんないんだもぉん……だからやる気が出るようになにかごほーびくれない?」
「そうだねぇ……じゃあ直美ちゃんが無事高校受験に成功したらご褒美に好きな……」
「えぇっ!? す、好きなお願い聞いてくれるのぉっ!! な、直美頑張るぅっ!!」
「ちょぉっ!? そ、そんなのずるいよ史郎っ!!」
「そ、そんなこと言ってない……何か言ってやってくれ亮ぅっ!!」
「ダメダゾシロウ、オンナノコニハヤサシクシテアゲナイト……」
「あ、嵐野君来てたの……と、というかどうしたのそんな感情の抜け落ちたような顔して……」
「と、というより悟りでも開いているかのような顔ぉ……嵐野さん何があったのぉっ!?」
「ベツニナニモ……アトオレノミョウジハモウジキ嵐野ジャナクナルカラキヲツケテネフタリトモ……アハハ、アンナカワイイコンヤクシャガイルオレハシアワセモノダナー」
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