史郎お兄ちゃん⑭
「史郎お兄ちゃぁん……お勉強飽きたよぉ~」
「直美ちゃん……まだ始まってから三十分も経ってないよ」
「だってつまんないんだもぉん……せっかくのきゅ~じつなんだからもっと楽しいことしようよぉ~」
せっかくの日曜日だからと史郎お兄ちゃんのお部屋に遊びに来た私は、何故か後から来た亜紀お姉ちゃんに付き合う形でお勉強をさせられてしまっていた。
「直美ぃ……あんた私の苦労見てなかったの? 今から勉強しておかないと後で大変なんだからね」
「そうだよ直美ちゃん、一緒の高校に通ってくれるんでしょ? じゃあ頑張らないとね」
「むぅ……それはそうだけどぉ……亜紀お姉ちゃんと違って直美は史郎お兄ちゃんと休日の今日ぐらいしか遊べないんだからぁ……」
二人の言うことは分からなくもないのだが、つい愚痴ってしまう。
何せ平日は違う学校に通っている私は放課後ぐらいしか史郎お兄ちゃんと一緒に居られないのだ。
しかもそれだって史郎お兄ちゃんは働いているから、遊べる時間なんか殆どない。
だから私は休日ぐらいは史郎お兄ちゃんと思いっきり遊びたくてたまらないのだ。
(それに史郎お兄ちゃんだって勉強して働いてまた勉強だなんて息が詰まっちゃうよぉ……直美と遊んで息抜きしてほしいなぁ……)
そんな思いもあるがこれを直接言っても史郎お兄ちゃんは大丈夫だと笑って済ませてしまう。
(本当に無理して倒れないでよぉ……亜紀お姉ちゃんも毎日勉強してばっかりだし……まあ気持ちはわかるけどさぁ……)
「あのねぇ直美ぃ……私だって学校では勉強ばっかりなんだからね……とにかく直美も受験に失敗しない程度には頑張りなさいよ」
「はぁい……」
私の心配もつゆ知らず、こちらを軽く窘めたかと思うとすぐに顔を戻して真面目に勉強を続ける亜紀お姉ちゃん。
史郎お兄ちゃんのお陰で何とか高校に進学できた亜紀お姉ちゃんは、学校の勉強に付いて行くために毎日努力している。
あんなに勉強が苦手だったはずなのに、よほど史郎お兄ちゃんの苦労を無駄にしたくないという想いが強いのだろう。
(それとも……やっぱり史郎お兄ちゃんみたいにアルバイトもするつもりなのかなぁ……)
史郎お兄ちゃんが働いているのを見た亜紀お姉ちゃんは、自分も働こうと思っていたようだ。
けれども学生の本分は勉強と言うことから、ぎりぎりの成績で入学した亜紀お姉ちゃんは許可が下りなかったのだ。
確かにアルバイトで時間を取られて留年などしようものなら本末転倒だし、史郎お兄ちゃんもそれを気にして亜紀お姉ちゃんには勉強に集中するよう口を酸っぱくして注意していた。
だからこそ亜紀お姉ちゃんはこの一年間を勉強に全力を費やすと決めたようで、毎日こうして頑張っているのだった。
(二人とも先を見据えて努力するようになって……ちょっと大人になり過ぎだよぉ……直美も頑張らないと置いてかれちゃうかも……)
何だかんだで目先の楽しさに飛びつこうとしてしまう自分の甘さを自覚して、少し反省した私は渋々とだが勉強に再度取り掛かるのだった。
「頑張ろうね直美ちゃん……後一時間もしたらお昼だから食べ終わったら少し遊ぼうか? 亜紀も息抜きになるだろうし……」
「えっ!? い、嫌私は勉強するから……二人で遊んで……」
「わぁいっ!! じゃぁ史郎お兄ちゃぁん、直美ねぇこの前後輩の子から聞いたポッキーゲームやりたぁいっ!!」
「や、やっぱり駄目ぇっ!! それなら私も参加するんだからぁっ!!」
「い、いややらないからね……ちょ、ちょっと二人とも聞いてるっ!?」
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