史郎お兄ちゃん⑦
「史郎お兄ちゃぁん、ほらあーんしてぇ~」
「し、史郎っ!! 私が食べさせてあげるよっ!!」
「ふ、普通に食べさせてください……」
「駄目ぇ~、どっちの食べるか選ぶのぉ~っ!!」
休日のお昼、ちょうど史郎お兄ちゃんのご両親がお出かけ中だと知った私たちは自宅に招いて手料理を振る舞ってあげることにした。
料理を並べて史郎お兄ちゃんの両隣に座った私たちは、それぞれ自分で作った料理を箸でつまんで差し出していた。
(むぅ……史郎おにいちゃんたらゆーじゅぅ不断なんだからぁ……こぉなったらぁ……えいっ!!)
史郎お兄ちゃんの方を向いて身体を密着させ私の良く育ったお胸を押し当ててやる。
「そ、そんなこと言われ……っ!? な、直美ちゃんっ!? そ、そんなに引っ付いたら……あ、当たって……」
「えぇ~、何のことかなぁ~……それより隙ありだぁっ!!」
「もがぁっ!?」
途端に困ったように、だけどどこか嬉しそうに頬を染めながらも咎めようとした史郎お兄ちゃんのお口に料理を放り込む。
驚いた様子で目を白黒させながらも、史郎お兄ちゃんは必死で飲み下そうとしてくれる。
「あぁっ!? な、直美ったらずるいぃっ!!」
「ずるいも何もないもんっ!! それより直美の手料理のお味はどぉですかぁ?」
「むぐ……お、美味しいけどお願いだから普通に食べさせ……あ、亜紀ぃっ!?」
私の料理を食べた史郎お兄ちゃんは感想を言うためにこっちに振り向こうとして……目を見開いて亜紀お姉ちゃんの方を向いてしまう。
何が起きているのか確認しようと目を向けて、私もびっくりしてしまう。
何故ならあの消極的な亜紀お姉ちゃんが、顔を真っ赤に染めながら史郎お兄ちゃんの片手を取ると胸の谷間に挟むように抱きかかえていたのだ。
「にゃぁっ!? お、お姉ちゃんっ!?」
「わ、私だってぇ……そ、それなりにあるんだぞ史郎ぉ……ど、どぉ?」
「ど、どぉって言われて……むぐぉっ!?」
「え、えへへ……どぉって……味のことだよぉ? 隙ありだよ史郎……ふふ」
「むぐぅ……はぁはぁ……あ、亜紀のも美味しかったよ……だけど頼むから普通に食べさせて……」
そして亜紀お姉ちゃんは私の真似をして史郎お兄ちゃんのお口に自分の手料理を押し込むと、それを何とか咀嚼する様をみて微笑んでいた。
「むぅっ!! 史郎お兄ちゃんっ!! 直美と亜紀お姉ちゃんの……どっちが美味しかったのっ!!」
「えっ!? い、嫌どっちも美味しかったから……同じぐらい美味しかったよ……」
「もぉっ!! そーいう返事を聞きたいんじゃないのにぃっ!! じゃぁせめてどっちに食べさせてもらいたいか言ってよぉっ!!」
「ど、どっちにってっ!? いや一人で食べれるからねっ!!」
そう言って自分の手を動かそうとする史郎お兄ちゃんだが、私たちは咄嗟に片手ずつ抑え込んでしまう。
「史郎お兄ちゃぁん、意地悪言わないで直美を選んでよぉ……そぉしたらぁもっと良い事してあげちゃうんだからぁ……」
「な、直美ちゃっ!?」
私を選んでもらおうと耳元で囁きながら、軽くスカートを捲る振りをして見せる。
「な、直美ぃ……うぅ……し、史郎が私を選んでくれたらぁ……く、口移しで食べせたりとか……し、しちゃうけどなぁ……」
「あ、亜紀ぃっ!?」
それに対して亜紀お姉ちゃんも負けじと反対の耳元で囁いてくる。
(ぬぬぬぅっ!? 亜紀お姉ちゃんたらこの間まで全然動かなかったくせにぃっ!! 負けないんだからぁっ!!)
亜紀お姉ちゃんの方を軽く見つめると、向こうも少し怖気づきながらもまっすぐこちらを見返してきた。
だけどお互い睨みつけたりはしていないし、私もそして多分お姉ちゃんも憎しみとかは抱いていないと思う。
ライバル的な思いはあるし史郎お兄ちゃんを譲りたくないのも本心だけど……亜紀お姉ちゃんのことが大好きなのも事実なのだ。
だから私は思い通りにならない現状に不満を抱きながらも、どこか楽しくて……亜紀お姉ちゃんと共に微笑みながら史郎お兄ちゃんの誘惑を続けるのだった。
「た、頼むから普通に食べさせてくれぇっ!! 今日はこの後亮と遊ぶ約束があるんだぁっ!! ほら丁度携帯もなってるだろっ!!」
「そぉいって逃げるつもりでしょぉ……亜紀お姉ちゃんスピーカーモードでとってお断りの連絡しちゃおうっ!!」
「ちょぉっ!? 直美ちゃんソレは勘弁してぇ……あ、亜紀も本気にして触らな……」
『し、史郎ぉっ!! た、助けてくれっ!! お、俺このままじゃ犯罪者に……うわぁっ!!』
『とーるさぁん、にげちゃだめなのぉ……もぉこんなじゃまなものは……ブツッ』
「……直美ぃ、今の声ってあんたの後輩よねぇ? あの子何してるのぉ?」
「あ、あはは……気にしない気にしないっ!!」
「うぅ……亮よぉ……俺たちどこで選択肢を間違えちまったんだぁ……ぐすん……」
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