史郎お兄ちゃん⑥
「じゃじゃぁんっ!! 直美ちゃん制服バージョォンっ!! どうだ史郎お兄ちゃん可愛いって言うのだぁっ!!」
「うん、とっても可愛いよ……凄くよく似合ってるねぇ」
「えへへ、そうでしょそうでしょぉ~……これで直美も大人の仲間入りなのだぁっ!!」
「そ、それはちょっと早いんじゃないかなぁ……」
お母さんが買ってくれた中学校の制服に着替えた私は、真っ先に史郎お兄ちゃんの部屋に向かいその姿を見せていた。
これからは私も史郎お兄ちゃんと同じ中学生、一年間は同じ学校に通えるようになる。
この機会に是非とも史郎お兄ちゃんに異性として意識してもらって、恋仲にまで発展したい。
(うふふ、これでもう子ども扱いなんかさせないんだからぁ~……亜紀お姉ちゃんには悪いけど史郎お兄ちゃんのハートは直美が射貫いちゃうのだぁっ!!)
亜紀お姉ちゃんの気持ちを知っても、私はやっぱり史郎お兄ちゃんを諦めることはできなかった。
それは亜紀お姉ちゃんの方も同じなようで、私たち姉妹の関係はしばらくの間ギクシャクしていた。
しかし私たちが幾ら悩んだところで、最終的に誰が史郎お兄ちゃんの恋人になるかは史郎おにいちゃん本人が決めることだ。
だからこそ亜紀お姉ちゃんとあることを約束した私は、史郎お兄ちゃんに選んでもらうべく猛アピールしていくつもりだった。
(どっちが選ばれても恨みっこ無しだもんね……亜紀お姉ちゃんがモタモタしてる間に直美の魅力でメロメロにしちゃうんだからぁっ!!)
改めて決意を固めると、私はわざとらしくその場で大げさに一回転してスカートを靡かせて見せた。
「早くないよぉ~、だって史郎お兄ちゃんや亜紀お姉ちゃんと同じ中学校に通うんだもんっ!! ほら大人な直美にもっと見惚れるのだぁ~っ!!」
「あのねぇ直美ちゃ……っ!?」
少しだけ恥ずかしかったが、ギリギリでパンツが見えるかもしれないぐらい揺らめくスカートに史郎お兄ちゃんの目が一瞬釘付けになったのを私は見逃さなかった。
「あぁ~、史郎お兄ちゃんったらどこ見てるのぉ~?」
「えっ!? い、嫌なんでもないよっ!!」
「えぇ~、そんな露骨に目をそらしてぇ~……しょぉじきに言ったら見せてあげるのにぃ……史郎お兄ちゃんになら……直美、どこだって見せてあげちゃうのになぁ~」
「な、直美ちゃんっ!? な、何を言ってるのっ!?」
驚く史郎お兄ちゃんだが、その頬が少し火照ってきているのは見間違いではないだろう。
(よぉし、ゆーわく作戦大成功ぉっ!! 後輩ちゃんが嵐野さんの連絡先と交換してくれた少女漫画どぉりのてんかぁいっ!! 後は何とかベッドまでゆーどぉしてぇ……ど、ドキドキしちゃうよぉっ!!)
流石に中学校に入るぐらい成長したことと、後輩の女の子が持ってきてくれた少女漫画のお陰で私は多少男女の恋愛についての知識が身についてきた。
同時に何故史郎お兄ちゃんと亜紀お姉ちゃんが余所余所しかったのも理解できてしまった。
要するに性的な知識が身についた二人は、それをお互いに悟らせないために距離を置き始めていたのだろう。
(なら逆に直美はぁ……そこを攻めちゃうんだからっ!!)
何だかんだで史郎おにいちゃんと亜紀お姉ちゃんが同年代なのはかなりのアドバンテージだ。
それこそ私は一年しか同じ学校に通えないのに、亜紀お姉ちゃんは三年間も……しかも時には同じ教室で一緒になるのだ。
この差を覆すためには、多少なりとも過激に行くしかないのだ。
私は幼いけれど史郎お兄ちゃんのことは真剣に想っている……それこそ結婚まで考えている。
だからこそ遠慮なく、史郎お兄ちゃんの誘惑にかかれるのだ。
「直美は本気だよ……だから史郎お兄ちゃ……」
「な、直美ぃっ!! お母さんが探してるよぉっ!! いますぐ戻っておいでぇっ!!」
「うぉっ!? あ、亜紀っ!?」
史郎お兄ちゃんの耳元に顔を寄せてそっと囁こうとしたところで、亜紀お姉ちゃんがやってきてしまった。
(ちぃ……今良い所だったのにぃ……というかなんで窓越しじゃなくて直接こっちに来るのぉっ!?)
私を呼び戻すだけならそれこそ窓越しに話したほうが早い。
少なくとも今までの面倒くさがりの亜紀お姉ちゃんなら間違いなくそうしたことだろう。
「えぇ~、それって今じゃなきゃ駄目なのぉ?」
「それは……その……た、多分中学校の入学に関するお話みたいだし行って来なさいっ!!」
「ぶぅ……はぁい……ごめんね史郎お兄ちゃん……続きはまた今度ねぇ……」
「えっ!? い、いや続きって言われても……ま、まあいいやとにかく頑張ってね」
「そうそう、素直に行って来なさい……最近お母さん疲れてるみたいだから迷惑かけないように……」
小さく呟いた亜紀お姉ちゃんの言葉に、私は無言で頷いて見せる。
(確かに最近お母さん大変そう……馬鹿親父ぃ、さっさと帰ってきてあげなよぉ……)
私の父はここの所全く家に帰ってこなくなった、恐らくその関連で母はストレスを溜めているのだろう。
それでも私や……史郎お兄ちゃんへの恋心を自覚してから怠け癖が減ってきたお姉ちゃんを見ては笑顔を浮かべてくれている。
だからこそそんな母の負担にならないよう、私たちは日ごろから家事等を手伝って協力するようにしていた。
(まあ史郎お兄ちゃんの為に手料理覚えたいって気持ちも強いんだけどねぇ……いずれ手作りお弁当攻撃しちゃうんだからぁっ!!)
そんなことを考えながら、私はお母さんの下へと急ぐのだった。
(……ふぅ、これで終わりぃ……よぉし史郎お兄ちゃんの所に戻って……あれ? 亜紀お姉ちゃんまだ史郎お兄ちゃんの部屋に……っ!?)
「あ、亜紀……じゃなくて霧島さん……こ、これでいいの?」
「う、うん……えへへ、史郎の膝枕久しぶりぃ……あ、後私の事は昔みたいに亜紀って呼んでいいから……ううん、呼んでほしいなぁ……」
「あ、そ、そうか……じゃあ……亜……」
「とぉっ!! 史郎お兄ちゃぁんっ!! お待たせぇっ!! 直美が戻ったよぉっ!!」
「あうっ!? だ、だからボディプレスは止めてぇっ!!」
「うぅ……良い所だったのにぃ……ちぇ……」
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