史郎お兄ちゃん②
「史郎おにいちゃん、やぶれたりぃっ!!」
「うごぉっ!?」
朝一番、むぼうびに眠り惚けていた史郎お兄ちゃんに思いっきりボディプレスを喰らわせてやる。
そのまま布団の上から馬乗りになって顔同士がくっつきそうになるほど近づけて朝の挨拶をする。
「おっはよぉっ!! 史郎お兄ちゃんっ!! 朝だよぉっ!!」
「うぅ……お、おはよう直美ちゃん……お願いだからもう少し優しく起こして……」
「えぇ~っ!? こんなに優しくおこしてるのにぃ~あははっ!! えいえぇい~」
「う、上に乗ったまま揺さぶらないの……僕……俺はお馬さんじゃないんだからね……」
「あ……えへへ~」
ぶつくさ文句を言いながら、史郎お兄ちゃんは身体の上に載っている私を高い高いするみたいに軽く持ち上げてしまう。
私より二歳年上で既に中学生になっているだけあってか、急に大人っぽくなってしまったようだ。
「お兄ちゃんたくましぃ……直美簡単に持ち上げられちゃったぁ……」
「直美ちゃんはまだ小学生だし軽いからねぇ……」
「へぇ~、じゃあ亜紀姉にはむずかしいのぉ?」
「うぅ……の、ノーコメントで……」
「亜紀お姉ちゃぁんっ!? 史郎お兄ちゃんが重……むぐぅっ!?」
窓越しに亜紀お姉ちゃんへ向かって叫ぼうとした私の口を、史郎お兄ちゃんが後ろから押さえつけてきた。
「だ、駄目だってば直美ちゃんっ!? 亜……霧島さんは一度機嫌を悪くしたら大変……」
「ふぁぁ……もぉ、さっきからうるさいよぉ……まだ眠いのにぃ……」
「お、おはよう霧島さん……ご、ごめん騒がしかったかな?」
「うん、すっごく……おかげで目が覚めちゃったよぉ……直美も朝っぱらから史郎に迷惑かけないのぉ……」
「んぅ~っ!! ぷはぁっ!? 亜紀お姉ちゃんおはよーっ!! 史郎お兄ちゃんがねぇ……もがぁっ!?」
何とか史郎おにいちゃんの拘束から逃れて今度こそ亜紀お姉ちゃんに真実を告げようとしたが、今度は後ろから身体ごと口を抑え込まれてしまう。
「おはよう二人とも……そんで……何してんの史郎?」
「あ、あはは……何でもないんだよ霧島さん……き、気にしないで」
「そー言われると気になるんだけどぉ……というか史郎、流石に無許可で女の子に抱き着くのどうかと思うよ?」
「あっ!? わ、悪いっ!?」
亜紀お姉ちゃんの言葉に少しだけ顔を赤くしながらばっと私を離し距離を取った史郎お兄ちゃん。
(別に史郎おにいちゃんに抱っこされても嫌じゃないんだけどなぁ……うぅん……なぁんか二人とも、最近急に余所余所しいって言うか……どうしちゃったんだろう?)
ちょうど中学生になるかならないかぐらいの頃から、史郎お兄ちゃんは自分のことを俺と言うようになって亜紀お姉ちゃんのことを苗字で呼ぶようになった。
亜紀お姉ちゃんのほうは呼び方も変わらないけど、一緒に遊ぶ回数は減ってきている気がする。
(一緒に居ても亜紀お姉ちゃんゲームとか見てるだけだし……あれで楽しんでるのかなぁ?)
まあ私としてはその分史郎お兄ちゃんを遊び相手として独占できるからよいことだ。
だから今も離れて行った史郎おにいちゃんに向かって、逆に飛び掛かるのだった。
「じゃぁ~、直美が抱き着いちゃうんだからぁ~っ!! ええぇいっ!!」
「ちょ、ちょっと直美ちゃんっ!? あっ!? こ、腰に飛びつくのは不味いからっ!? 本当に止めてっ!?」
「えぇ~っ? 別にいいじゃ……ほえ? なぁんか硬いのが……これなぁに?」
「っ!? な、直美、史郎から離れなさいっ!! そ、それに触っちゃ駄目ぇええっ!!」
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