表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

138/319

霧島と史郎⑭

「ああんっ!! 史郎おじちゃんずるいよぉっ!!」

「ずるいってこういうゲームなんだけどなぁ……」

「もぉ、もっと直美にてかげんしてよぉっ!! おとなでしょぉっ!!」

「全く直美ちゃんは我儘だなぁ……じゃあこっちのゲームに……」

「…………はぁ」


 窓の向こうから楽しそうな直美と史郎の声が聞こえるたびに、私はため息をつきたくなってしまう。

 ここの所休日はずっとこうだ、直美は史郎の部屋に遊びに行って一緒に仲良く遊んでいる。

 それ自体は微笑ましいし直美が本当に楽しそうなのも嬉しいのだが、それでも思うところはある。


 何せ史郎は、私に対してはずっと露骨に見下すような視線しか向けてくれないのだから。


(好きな人にあんな目で見られ続けるのってこんなに苦しかったんだ……ひょっとして史郎もこんな想いを味わったのかなぁ……)


 こうして窓を開けて遊んでいるのも、かつて私がしたことの意趣返しなのではと思いたくなってしまう。

 何せ私は雨宮家に出入り禁止なのだ……どれだけ二人が楽しそうに遊んでいても昔のように参加することは許されない。


(一応話しかければ史郎も返事はしてくれるけどさぁ……ううん、相手してくれるだけマシでしょ……おじさんとおばさんみたいに無視されてもおかしくないんだから……)


 一緒に戻ってきた史郎の両親も直美には普通に接するが、私に対してだけははっきりと汚物を見るような目で睨みつけるだけで未だに一言も会話を交わしてくれない。

 あれだけ迷惑をかければ当然の話だが、それでも辛く感じてしまうのは事実だ。

 おかげでせっかく史郎が戻ってきてくれたにもかかわらず、私は心休まらない日々を送っていた。


(わかってる……全部自業自得だし、むしろ憎まれてないとおかしいぐらい迷惑もかけちゃったんだ……これぐらい我慢しないと……)


「ふっふぅんっ!! これでもくらえぇっ!!」

「うおっ!? いつの間にそれをっ!?」

「かくしもっておいたのだぁっ!! これでなおみのかちぃっ!! やったぁっ!!」


 本当に嬉しそうな直美の笑い声が聞こえてくる……それだけがいまの私の支えだった。

 史郎は本当の父親のように慕ってくる直美をとても可愛がっていて、こうして時間がある時は代わりに面倒まで見てくれている。

 おかげで私が自由に動ける時間が増えて生活は少しだけ楽になったし、貯金も地味に増えつつある。 


 だから本当は今の現状を喜ばないといけないのだろう。

 そう頭では理解しているけれど、どうしても私は心労が溜まってしまいため息が漏れるのを止められなかった。


「くぅぅっ!? な、直美ちゃんもう一戦しようっ!! なぁもう一回っ!!」

「おじちゃんくやしそぉ~っ!! また直美がかっちゃうけどそれでもよければやってあげるよぉ~」

「もう負けるもんかっ!! 本気で行くからなぁっ!! 直美ちゃんこそ負けて泣くんじゃないぞっ!!」

「直美なかないもんっ!! しょうぶしょうぶぅっ!!」


 大人げなくムキになる史郎に同じくムキになって張り合う直美。

 その姿は昔の私とは似ても似つかない。


(私みたいに嫌々付き合うんじゃなくて同じ趣味を楽しみ合って……あんな風に出来たら何か変わってたのかなぁ……はぁ……)


 こうして窓越しに史郎がゲームをしている姿を見ていると、まるで昔に戻ったように錯覚してしまう。

 だからこそなおの事、あの時のように接することができないことが一層虚しく感じてしまうのだった。

 

(あの頃みたいに混ぜてって乱入できたらなぁ……史郎の傍に行けたらいいのに……はぁ……)

 【読者の皆様にお願いがあります】


 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


 ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。


 作者は単純なのでとても喜びます。

 

 評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。


 よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あんまり追い詰めると、それこそ母の様になってしまうかもしれないから… なんとか、精神的ストレスを解消する方法がないものかねえ。
[一言] 史朗と直美ちゃんはどんどん仲良くなっていってるなぁ 娘とゲームで遊んでる声が窓から聞こえてくるのが意趣返しかぁ……、深夜に史郎のエロゲのエロシーンの音声が窓の向こうの部屋に微かに届かないか…
[気になる点] いやー、、これでくっつかれたらたまらないな、、 どうしてもifってわかってても応援できない、 史郎は本当にいいやつだな、、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ