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給料日

 俺は慎重に家の前の曲がり角から自宅の付近を観察した。


(直美ちゃんは見当たらないな……よし、今のうちに……)


 素早くドアまでたどり着くと、音を立てずに中へと入り込んだ。

 どうやら見つからずに済んだようだ。

 鍵を閉めてほっと肩の力を抜いた……ら、家の奥から直美が顔を覗かせた。

 

「おっかえりーっ!! ごはんにするぅ、それともおふろぉ……それともわ・た・し」

「な、直美ちゃんっ!? ど、どうしてここにいるのっ!?」

「もぉ、わかってるくせにぃ~……直美のき・も・ち」


 媚びを売る様にこちらに近づいてくるへそ出しショートパンツ姿の直美。

 嬉しそうに笑い……舌なめずりすらしながら俺に迫ってくる。

 慌ててドアから逃げ出そうとしたが間に合わず、直美は身体を使って俺を壁に押し付けた。


「お~じさんっ!! ほらほらぁ、直美のピチピチで新鮮な身体だよ~……一時間触り放題で五千円だよ~」

「い、いやねぇ……ほ、ほらおじさん貧乏だから……」

「またまたぁ~知ってるんだからねぇ……今日は、給、料、日、だよねぇ~」


 服の上から胸を押し付けつつ、両手がズボンのポケットへと忍び込んでくる。

 だけど今日はそこに財布を入れておかなかったからセーフだ。

 

「あららぁ~おじさんったらぁ~どこに隠したのぉ~」

「さ、さあ何のことかなぁ~……そ、それより俺ご飯を食べたいんだけどぉ~」

「いいよぉ~私が食べさせてあ・げ・る」

「い、いや一人で食べれるからっ!!」


 直美が俺の耳元に唇を近づけてそっと囁く。


「もぉ~遠慮しないでいいんだよぉ……いっつも頑張ってるんだからぁ……」

「そ、そんなことないよ……それよりご飯を……」

「ううん……おじさんは頑張ってる……頑張り過ぎだよ……」

「直美ちゃん……」


 直美の声が少し震えているように聞こえた。

 そっと肩に手をかけて身体を離して顔を見つめる。

 何やら物憂げな表情に、ドキッとする。


「だから直美はねぇ……おじさんを労わってあげるのだぁっ!!」

「う、うわぁっ!?」


 油断した俺の顔を自らの胸元に思いっきり抱きかかえる直美。

 当然柔らかくも弾力のある直美の胸が顔に当たってしまう。

 その感触と、女性特有の匂いに目の前がクラクラしてくる。


「な、直美ちゃ……」

「よしよし……いい子いい子……」


 固まる俺の頭を直美が優しく撫でる。

 その穏やかな口調と手つきが本当に心地よかった。

 身体から力が抜けて、床にしゃがみ込んだ俺は直美に膝枕されていた。


「直美……直美ちゃん……」

「はいはい、直美はここにいるからねぇ……よしよし、明日からも無理しない程度に頑張ろうねぇ……」


 直美に甘えるようにくっついたまま、俺はそっと目を閉じるのだった。


「……少し寝ちゃった、ごめんね直美ちゃん」

「別にいいよぉ……じゃぁ二時間で一万円になりまぁ~すぅ」

「はっ!? そ、それが目的かぁっ!?」

「まいどありがとございまぁ~す……えんちょぉーするぅ?」

「うぅ……もうお財布空っぽだよぉ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] コメにコメで申し訳ないのですが。 その節にはどこかに告知いただけると嬉しいです。 もういい加減主人公もあきらめて受け入れてしまえば… まあ、最新よみますと削除回でもそこまで進まなかったので…
[一言] おおっと残念。読みそびれ/w
[一言] 流石に警告くると思います
2020/10/30 23:39 ジョッキー
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