とある幼女の恋愛話
「ふっふぅ~ん」
とってもいいてんきだったから、わたしははなうたをうたいながらげんきにがっこうにむかってはしっていた。
だからあしもとにあったこいしにきづかなくて、おもいっきりふんづけてころんじゃったんだ。
「うぅ……いたぁい……あっ!?」
とってもいたかったけど、がっこうにいかなきゃとおもってたちあがろうとした。
けどわたしのひざからはちがでちゃってて、それをみたらなんだかがまんできないぐらいいたくなってきちゃった。
「うぅ……うわぁぁんっ!!」
あんまりいたいからないちゃったけど、だれもおとなのひとはわたしをたすけようとしてくれなかった。
「き、君大丈夫かいっ!?」
「っ!?」
そんなわたしにこえをかけてきたのは、せいふくをきためがねをかけたおにいさんだった。
しらないひとにはなしかけられてうごけなくなったわたしのまえにおにいさんはしゃがみこむと、めのたかさをあわせてくれた。
「ああ、転んで擦りむいちゃったんだね……これは痛いよねぇ……よし、ちょっと待っててね」
「……っ」
おにいさんはわたしのきずをかくにんすると、いちどえがおをむけるとどこかにはしりさってしまった。
しらないひとがいなくなってちょっとだけほっとしたけど、それいじょうにおいてきぼりにされたみたいでさみしくなっちゃった。
だけどおにいさんはすぐにもどってきてくれた……そのてにかいものぶくろをさげて。
「ほら消毒液と絆創膏……ちょっとだけ染みるけど我慢してね」
「うぅ……っ!?」
「……よし、できたっ!! どう痛くなくなったでしょ?」
「あぅ……う、うん……」
ささっとおにいさんがきずぐちをてあてしてくれて、ちがみえなくなったらそれだけでいたみがへっちゃらになったきがした。
おそるおそるたちあがってみてもだいじょうぶだった。
「あ、あの……うぅ……あ、ありがとうございますぅ」
「いいのいいの、困った時はお互い様……助け合わなきゃね」
「……っ」
そういってやさしくわらうおにいさんは、なんだかとってもすてきにおもえてわたしのこころがどきんとした。
よくわからないけどむねがいたいようで、だけどさっきのけがとちがってつらいわけじゃないふしぎなかんかくだった。
だからなにもいえずに、なみだをふくこともわすれてわたしはおにいさんをみつめつづけた。
「……ええと、まだどこか痛いのかなぁ?」
「……っ」
ちがうともそうだともいえなくて、わたしはびくりとふるえながらひっしでおにいさんをみつめつづけた。
「そ、そうか……じゃあそろそろ学校に行……」
「もしもし、警察ですか……はい、ロリコンの現行犯を……」
「ちょぉっ!? し、史郎君っ!? な、なにしてんのぉっ!?」
「うるせぇこの犯罪者が……これでも俺はお前のこと三次元には手を出さない奴だと信じてたんだぞ……まさか小学生を泣かせやがるとは……」
「だ、だから誤解だからねぇっ!?」
「あ……」
それでもなにもいえないでいるうちに、おにいさんはあとからきたべつのおにいさんといっしょにあるいていっちゃった。
なんだかとってもさみしくて、だけどどうしていいかわらなかったわたしはとぼとぼとがっこうにむかうことしかできなかった。
「……じゃあねっ!! 無理しちゃだめだよっ!!」
「っ!?」
そんなわたしに、おにいさんははげますようなこえをかけてくれた。
すぐにふりかえると、おにいさんはわたしをさっきとおなじやさしいえがおでみまもっててくれた。
(……ずっとみててほしいなぁ)
そうおもってわたしは、そのあとおにいさんがみえなくなるまでなんどもふりかえりながらがっこうへむかったのでした。
女児好感度+10
*****
あれからわたしはがっこうをいききするたびに、おにいさんのすがたをさがすようになった。
するとあさはめったにあえないけど、かえるときはたまにおにいさんとすれちがえるようになった。
(おはなし……したいなぁ……)
なんどもこえをかけようとおもったけど、どうしてもそのかおをみるとむねがどきどきしてくちがうごかせなくなる。
それどころかこきゅうもくるしくなっちゃって、けっきょくはかおをそらしてはしりさることをくりかえすことしかできなかった。
それにおにいさんは、いつもべつのおにいさんといっしょにかえっていてとてもわりこみにくいのだ。
なんどかきかいをうかがっているあいだに、ふたりのかいわからとーるさんというなまえはわかったけどそれいじょうのしんてんはなにもなかった。
(なにかおはなしするきっかけがあればなぁ……できればあっちのおにいさんがいなくてひとりのときに……)
だからひっしにいのっていたら、あるときからとーるさんはひとりでかえることがふえてきた。
もうひとりのおにいさんがおんなのひととかえるようになったからのようだ。
たまにさんにんでかえるときもあるけど、おにいさんはおねえさんととってもイチャイチャしていてとーるさんはとてもくやしそうにそれをみつめていた。
(あたりまえだよねぇ……わたしがよこからみててもはずかしいぐらいくっついてるんだもん)
そんなあるひ、とーるさんはついにがまんできなくなったのかふたりのまえでたおれちゃった。
「おにいちゃんがんばってぇ……」
それをみたらはんしゃてきにこえをだしておうえんしちゃった。
とーるさんがくるしんでるところをみたくなかったし、まえにわたしがつらいおもいをしてるときたすけてくれたんだからこんどはこっちがたすけるばんだとおもったから。
「おにいちゃんファイトぉ~」
いっしょうけんめいおうえんしてたら、とーるさんはおきあがっておうえんしたわたしたちににっこりとえがおをみせてくれた。
まえにみたのとおなじやさしいそうなすてきなえがおで、やっぱりとってもむねがいたいぐらいどきどきしてしまった。
げんきになったとーるさんは、ふたりにむかってあらためてなんどもはなしかけた……つきあっているんじゃないかって。
(あのふたりなかがいいっておもったらこいびとどうしなんだ……とーるさんじゃなくてよか……え?)
そこでなぜかわたしはほっとしているじぶんにきがついた。
いったいどうしたのかわからなかったそのばではこたえがわからなかった。
だからたくさんかんがえて、いえにかえってからもかんがえつづけた。
そのうちあたまがいたくなってきて、すこしやすもうとしょうじょまんがをひらいて……とうじょうじんぶつがかたおもいしているところをよんでようやくきがついたのだった。
(わ、わたし……とーるさんのこと……す、すきになっちゃったんだっ!? ど、どうしようっ!?)
女児好感度×10
*****
「ふぅ……はぁ……ふぅ……はぁ……」
わたしはなんどもなんどもしんこきゅうしながらとーるさんがくるのをまっていた。
なんどもみてきたからこのじかんにここのかえりみちをとおるのはわかっている。
(よ、よろこんでくれるかなぁ……い、いらないってすてられちゃったらどうしよう……うぅ……こ、こわいよぉ……)
しんぞうがこわれそうなぐらいいたくて、たっているだけでふるえちゃいそうなほどこわかった。
だけどひっしにがまんして、とーるさんがくるのをまちつづけた。
だってこんなはなしかけるきっかけほかにないとおもうから……きょうというばれんたいんでーをのがしたらもうにどとゆうきをもてないきがするから。
(うぅ……と、とーるさん……まだなのぉ……あっ!?)
なんどもまちつづけていたらとおくのほうからとーるさんがあるいてくるのをみつけた。
いつものふたりといっしょだけど、わたしのところにくるとちゅうのみちでわかれるはずだ。
だってきょうはばれんたいんでーなんだから、かっぷるのあのふたりのじゃまをするわけがないのだから。
(はやくはやく……えっ!?)
おもったとおりとーるさんはあのふたりとわかれてこっちにやってきた。
だけどそのちょくぜんに、おんなのひとからなにかをうけとっていた。
そしてとてもにやけきったかおで、すきっぷするぐらいうきうきしていた。
(う、うそだよね……だってあのふたりはつきあってて……いまだっててをつないでるし……なのにどうしてとーるさんにちょこをあげるのっ!?)
わけがわからなくてうごけなかったわたしのそばにとーるさんがちかづいてきた。
てもとにあるとてもちいさいちょこだけをみつめていて、わたしのことなんかこれっぽっちもみてなかった。
なんだかそれをみていたら、とてもなさけなくてみじめでくやしくなった。
「ふっふ~っ!! 初めて女の子からチョコ貰っちゃったぁ~っ!! 義理チョコとは言えこれは勝ち組キタコレぇ~っ!!」
うれしそうなこえでそんなことをいいながらたちさるとおるさんを、わたしはなにもいえずにみおくることしかできなかった。
(……もういいや、かえろう……ぐすん……)
なんだかとってもかなしくて、なみだめになりながらかおをおとしてとぼとぼときたくしようとした。
「どうしたの君? 大丈夫かい?」
「えっ?」
だけどそんなわたしをよびとめるこえがして、ふりかえったらそこにしんぱいそうなかおをしたとおるさんがいた。
「泣きそうだけど何か辛いことでもあったのかな?」
「あ……う、ううん……なんでもな……だいじょうぶだから……」
「そっかぁ……わかったよ、だけど無理はしないようにね」
なんとかそうくちにしたわたしに、とおるさんはいつだかとおなじようにしせんをあわせるとやさしくほほえんでくれた。
それはさっきまでのうかれていたかおとはまるでちがって、わたしはむねがたかなってしまう。
(……やっぱりわたし……とーるさんがすきだっ!!)
わたしはようやくはっきりととーるさんにこいをしていることをじかくした。
「じゃあ俺はこれで行っちゃうけど何かあったら……」
「あ、あのっ!! と、とーるさんっ!!」
「えっ!? ど、どうして俺の名前を……じゃ、じゃなくてなんだい?」
だからゆうきをもってたちさろうとしたとおるさんをよびとめて、ひっしでおもいをつたえようとちょこをとりだしてさしだした。
「す、すきですっ!! けっこんしてくださいっ!!」
「え?」
そうしてわたしがこくはくしてさしだしたちょこをとーるさんはほんとうにふしぎなものをみるようなめでみつめつづけるのだった。
「え……あ、お、俺?」
「はいっ!! わたしとーるさんがだいすきですっ!!」
「え……えぇえええええええっ!?」
「ほんめいちょこですっ!! いやじゃなければうけとってくださいっ!!」
「えぇえええええええええっ!?」
女児好感度×10
*****
(おかしいおかしいぜったいおかしいとーるさんのいじわるいじわるいじわるぅううううっ!!)
わたしはむすっとしながら、とーるさんのあしをけりつづけた。
あのひわたしからちょこをうけとったいじょうは、こいびとどうし……いやふうふといってもまちがいじゃないはずなのだ。
なのにとーるさんはいちどだってふたりきりであそんでくれたことがない。
きょうだってめずらしいくとーるさんのほうからぶんかさいとかいうおまつりにさそってくれたから、てっきりでーとだとおもってわくわくしてたのにほかのこどものあいてをしてばかりだ。
「い、痛い……痛いってぇ……ど、どうしたのかなぁ今日は特に乱暴だねぇ……」
「ふん、だ……いじわるなのはとーるさんのほうでしょっ!! えいっ!! えいっ!!」
「あうっ!? ちょぉっ!?」
ほうたいをいっぱいまいててうまくみうごきがとれないみたいだから、けりほうだいだ。
わたしはいままでのふまんもこめて、たくさんけりまくってやる。
「どーしてこいびとのわたしをぉっ!! ほうっておいてぇっ!! ほかのことぉっ!! あそぶのぉっ!! えいえいっ!!」
「だ、だからもう少し……い、痛いってばぁ……待ってくれたら自由時間だから……あうぅ……そ、そしたら相手してあげるから……」
「……ほんとーなの?」
「う、うん……そうしたら君と一緒に来たお友達と共にあちこち巡ろう……おおぅっ!?」
「とーるさんのばかばかばかぁっ!!」
やっぱりふたりきりになるつもりのなさそうなだめなかれしに、わたしはわからせてやろうとさらにけりつけてやる。
「うぅ……ど、どうして俺がこんな目にぃ……」
「まだわからないのっ!! とーるさんのどんかんっ!! もうこうなったらからだにおしえこんじゃうんだからぁっ!!」
「嵐野さぁん……小学生の女の子になんてこと言わせてるのぉ?」
「ち、違うからねっ!! 俺が言わせてるんじゃなくて勝手に……あうぅっ!?」
「わたしがいるのにほかのおんなのことはなさないでよぉっ!! わたしがこいびとなのぉっ!! わたしのこくはくをうけいれてだいじなものまでもらっておいてずるいよぉっ!!」
(わたしのてづくりしただいじなちょこをたべておいて……ひどいんだからぁっ!!)
ほんめいちょこをたべておいてこのたいどはひどいとおもう。
だからわたしは、さらにあしにちからをいれてけりつづけるのだった。
「あ、嵐野君……う、嘘だよねぇ……流石にドン引きだよぉ?」
「ち、違うからっ!! ご、誤解なんだよぉっ!!」
「誰かぁ雨宮さん……ううん、もう警察呼んじゃおうよ」
「ご、誤解ですっ!! 誤解なんですみなさぁああんぅっ!!」
女児好感度+????
*****
「だぶるでーとぉ、だぶるでーとぉ……えへへ、だぶるでーとなのぉ~」
こうこうせいになって、いちだんとかっこうよくなったとーるさんのてをひいてあるくわたし。
うしろからはとーるさんのおともだちかっぷるがついてきている。
(えへへ、わたしもうおとなさんだぁ……だぶるでーとまでしちゃったぁっ!!)
ここまでくるのはほんとうにたいへんだった。
やさしいけどにぶくておくてなとーるさんをごういんにでーとにさそうため、なんどもかえりみちをまちかまえてなきおとした。
そうしてようやくまいにちのようにかえりみちでーとできるようになったのはついさいきんのことだ。
がんばったかいがあって、こうしててをつないでいてもとーるさんはもうていこうをしなくなっている。
ついてきたかっぷるとしてゆうめいなふたりも、わたしたちとおなじようにてをにぎりあっているからこれはもうどこからどうみてもだぶるでーとにしかみえないはずだ。
(あんまりほかのひとにいちゃついてるところをみせるのははずかしいけど、おなじかっぷるどうしならいくらみせつけてもへいきだよね?)
だからこのきかいに、きょうはもっとさきにすすんでしまおうとおもう。
そうおもってとーるさんにはなしかけようとしたけど、なぜかついてきたふたりとはなしこんでいてわたしからしせんをはなしてしまっていた。
「もぉ、とーるさんをとっちゃだめぇっ!! とーるさんはわたしのかれしなのぉっ!!」
いかくするようにほっぺたをふくらませながらとーるさんをひっぱりよせる。
(もぉっ!! どーしてとーるさんはこうおしがよわいのっ!! わたしのかれしなんだからもっとわたしをゆうせんしてよぉっ!!)
ひょっとしたらわたしのかれしだというじかくがまだたりないのかもしれない。
「亮よ……お前じゃもうどうしようもない、諦めて受け入れろよ」
「い、いやそんな……」
「大体ねぇ、まだ子供とは言え嵐野君に惚れる女の子なんかこの子を逃したら他に現れるかわからないよ?」
「ひ、酷くない霧島さんっ!?」
(もっといってあげてっ!! とーるさんはほんとうににぶいんだからぁっ!!)
むしろついてきてくれたふたりのほうがわたしたちのかんけいをみとめてくれているみたいでうれしくなる。
だけどそんなふたりにせめられてかなしいめをしているとーるさんをみていたら、そんなきもちはふきとんでしまう。
なんだかんだいってもわたしのかれしはとーるさんだから、やっぱりとーるさんがしあわせそうにしているのがいちばんいいのだ。
「ふたりともぉっ!! わたしのとーるさんをいじめないでぇっ!! ほらいいこいいこしてあげるからあたまこっちにさげてぇ」
だからまもってあげようとおもって、わたしはとーるさんをひきよせてそのあたまをなでてあげた。
「うぅ……君は本当に良い子だなぁ……これで年齢さえ近ければぁ……」
すこしだけちょうしをとりもどしたとーるさんだけど、まだどこかつかれたようすがのこっていた。
(こまったなぁこういうときかのじょはどうすればいいんだっけ?)
よくわからなくてわたしはまえによんだしょうじょまんがをおもいだしながら、ちかづいてくるふたりをみて……おもいついた。
(そうだっ!! ちゅ、ちゅうしたらおとこのひとはよろこぶんだっ!!)
まんがでもそうだったし、まえにいちどがっこうにいくとちゅうでこのふたりがきすをして……すごくしあわせそうにしていたのをぐうぜんみたことをおもいだしたのだ。
もちろんわたしはふぁーすときすだからほんとうはとーるさんからしてほしいし、はずかしいおもいもある。
だけどだいすきなとーるさんがそれでよろこんでくれるなら、やってあげたいとおもえるのだった。
「いいこいいこぉ~ちゅっ」
「っ!?」
そしてわたしはとーるさんと……あいするしょうらいのおっととふぁーすときすをしたのだった。
「えへへぇ~、とーるさんとふぁーすときすしちゃったぁ……きゃぁはずかしーっ!!」
(わたしのはじめてささげちゃったぁっ!! もうけっこんするしかないよぉっ!! ぱぱとままにもおしえないとっ!! たしかこーいうのをきずものになったっていうんだよねっ!! えへへ、とーるさんだいすきぃっ!!)
女児エンド
次話【檻の中の亮①】へ(嘘です)
【読者の皆様にお願いがあります】
この作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。
ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。
作者は単純なのでとても喜びます。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。
よろしくお願いいたします。




