★史郎と亜紀のその後⑥
Cエンドフラグにチェック
「あははっ!! 二人ともこれ面白いよぉっ!!」
「ほ、本当か亜紀っ!?」
「うんっ!! キャラは可愛いし動かしやすいのにそう快感があって……うん、凄く楽しいよっ!!」
「おお、霧島さんのお墨付きともなれば心強いっ!! 行けるぞ史郎っ!!」
笑い転げる亜紀の反応に俺と亮は思わずハイタッチしてしまう。
その間も亜紀は俺たちが作ったゲームを夢中になってプレイし続けている。
「これ本当に史郎と嵐野君の二人で作ったのっ!? 信じられないよっ!!」
「あっはっはっ!! 史郎がプログラミングを担当して俺がデザイン&シナリオを担当したんだぜっ!!」
「めちゃくちゃ指示が細かくて苦労したけどなぁ……けど操作しやすいのは何よりだ」
「うん、凄くやり易いよっ!! コントローラーじゃなくてキーボードとマウスなのに直感的に操作できちゃうもんこれっ!!」
「その辺りは確かに史郎の手柄だなぁ……カメラワークも酔わない程度にぐりぐり動くしなぁ……大したもんだよ」
(本当にここまでするのは大変だったよ……何度も投げ出そうかと思ったぐらいだ……)
何度も試行錯誤しながら、ストレス無く亮の指示通りの動きができるようプログラムを組むのは非常に時間がかかった。
それでも何とかやり切れたのは、偏に亜紀の笑顔の為だった。
高校受験に失敗した亜紀はずっと落ち込んでいて、しかも大好きなコスプレや衣装の作成に少しだけ罪悪感を感じているようだった。
そんな亜紀をを慰める意味もかねて、コスプレ好きな亜紀を某イベントへ連れて行こうと思ったのだ。
「じゃあ……約束通り亜紀は売り子さんしてくれるよな?」
「もぉしょうがないなぁ……当日は飛び切りのコスプレを用意して売るのお手伝いしちゃうんだからねぇっ!!」
満面の笑顔で答える亜紀、これが見れただけでも頑張った甲斐があったというものだ。
(コスプレする大義名分が出来たんだから嬉しいよなぁ……これでそろそろ後ろ向きな気持ちを吹っ切っていつもの亜紀に戻ってもらいたいもんだ……ああしかし、そのためとは言えマジで疲れたわぁ……)
こんなことに付き合ってくれた亮には感謝しかない。
何せ参加登録の下地の段階から付き合ってくれたのだから。
尤もここまで本格的な売れそうな物を作る羽目になったのも亮の凝り性のせいだったが、とにかくゲームオタクである俺たちにもライトゲーマーである亜紀でも楽しめる逸品が完成した。
「この出来で、しかも霧島さんがコスプレして販売してくれんだろ……こりゃあかなり売れるかもなぁ」
「まあそんな期待しないでおこうぜ」
「そんな弱気じゃダメダメぇっ!! ここは全部完売する勢いで行くんだからぁっ!! よぉし、私も負けないように今から頑張って新しい衣装作っちゃうんだからぁっ!!」
本気で売りまくるつもりのようで気合を入れている亜紀は、意気揚々とコスプレ衣装の制作に意欲を燃やし始めた。
どうやら完全に後ろめたさは吹っ切れたようだ。
(よかった、亜紀が笑っててくれて……それにせっかくの才能なんだから潰したら勿体ないしな……)
彼氏として愛しの彼女を支えられたことを誇らしく思いながら、同時に亮とともに作ったゲームの完成度に満足して俺はあふれ出る感情を堪えきれずガッツポーズを決めるのだった。
「そぉだっ!! せっかくだし嵐野君と史郎の分も一緒にコスプレして……」
「か、勘弁してくれぇっ!!」
「ぶ、文化祭の時のトラウマがぁあああっ!?」
「えぇ~、あれ大好評だったじゃんっ!! 史郎と嵐野君の疑似レズビ……」
「「や、止めてぇえええっ!!」」
*****
フラグ無し
「だぶるでーとぉ、だぶるでーとぉ……えへへ、だぶるでーとなのぉ~」
ニコニコと嬉しそうに亮の手を取ってスキップする小学生の女の子。
(下校前に毎日待ち構えられてるのは知っていたが……まさかここまでとはなぁ……)
押しに弱い亮は、どんどん強気で押してくる彼女の猛攻に耐えられずこうしてほぼ言いなりになっている。
しかし流石に高校生にもなって小学女児と一緒に歩くのはヤバいとも思っているようで、今日は僅かな抵抗とばかりに俺たちと一緒に帰るからと断ろうとした。
ところが彼女は、俺と亜紀が手を繋いでいるところを見るなりこれはダブルデートなのだと思い込んでむしろウキウキしてはしゃぎ始めてしまったのだ。
「とーるさぁん、はやくはやくぅ~」
「あ、あはは……待て待てぇ~」
小学女児に手をひかれるまま、引きつりながらも笑顔で付いて行く亮。
その後ろを歩いているが、やはり傍から見るとヤバい光景にしか見えなかった。
「……どう思う亜紀?」
「うーん、やっぱり警察に……いやお友達だもんね、その前に自首するように交渉を……」
「し、史郎ぉっ!! き、霧島さんっ!! ど、どうしてそんな距離取ってんのぉっ!? ほらこっち来てぇっ!!」
何やら叫んでいる犯罪者……モドキにため息をつきながら近づいていく俺たち。
そして女の子に聞こえないよう、そっと耳元で囁いた。
「あのなぁ亮よぉ……これはお前がはっきり言わなきゃどうにもならんだろ?」
「そ、そんなこと言ってもあんまり強いこと言うと泣いちゃうし……ど、どうにか傷つけないようにだなぁ……」
「そんなの無理だと思うよぉ……まだ幼いとはいえ同じ女の私の目からしても完全にこの子嵐野君に惚れてるもん……どういう形で別れ話に持って行っても間違いなく傷つくよ」
「そ、そんな……というかそもそも俺はまだ付き合ってないのだけれどもぉ……」
「もぉ、とーるさんをとっちゃだめぇっ!! とーるさんはわたしのかれしなのぉっ!!」
ほっぺたを膨らませながら亮の手を引っ張り自分のほうへ寄せる小学女児、どうやら彼女の中では既に彼氏彼女の関係らしい。
「亮よ……お前じゃもうどうしようもない、諦めて受け入れろよ」
「い、いやそんな……」
「大体ねぇ、まだ子供とは言え嵐野君に惚れる女の子なんかこの子を逃したら他に現れるかわからないよ?」
「ひ、酷くない霧島さんっ!?」
事実を指摘されただけなのに大げさに嘆く亮。
「ふたりともぉっ!! わたしのとーるさんをいじめないでぇっ!! ほらいいこいいこしてあげるからあたまこっちにさげてぇ」
「うぅ……君は本当に良い子だなぁ……これで年齢さえ近ければぁ……」
(恋愛に年齢は関係ない……とも言い切れないしなぁ……)
尤も大人になればこの二人ぐらいの年齢差は問題にはならないだろう……今は大問題だが。
「全く小学生に慰められるなんて嵐野君はだらしな……っ!?」
「亮よぉ、お前それで本当に良いと思って……っ!?」
「いいこいいこぉ~ちゅっ」
「っ!?」
小学女児に頭を撫でられて癒されていた亮は余りにも隙だらけで、自然な動作で唇を奪われてしまった。
「えへへぇ~、とーるさんとふぁーすときすしちゃったぁ……きゃぁはずかしーっ!!」
完全にフリーズする亮の前で、女の子は顔を真っ赤にして首を左右にフリフリして恥ずかしさに身もだえし続けるのだった。
「……110っと……もしもし警察ですか、事案です」
「……ええとぉ、最寄りの児童相談所はぁ……」
「ちょ、ちょっと止めぇっ!! お、俺は無実だぁああああっ!!」
【読者の皆様にお願いがあります】
この作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。
ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。
作者は単純なのでとても喜びます。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。
よろしくお願いいたします。




