★亜紀と史郎のその後⑤
Bエンドフラグにチェック済
「ふふ……史郎見て……凄く可愛いよ……」
「ああ、よく頑張ったな亜紀……本当に可愛いなぁ」
亜紀の腕の中で安らかに眠る俺たちの赤ちゃん、その寝顔はまさに天使のようで時間を忘れて見惚れてしまう。
病院で無事に出産を終えて数日がたったが、術後の経過は母子ともに問題がなさそうだ。
(だけどこの歳で出産となったら周りの目が痛いかと思ったけど……意外とそんなことなかったなぁ……)
もちろん説教じみたことを言う人もいなくはなかったが、何だかんだでお互いにしっかりと覚悟を決めて向き合っているお陰でかどちらかと言えば好意的に受け入れてもらえたのだ。
というのも大抵この年頃で妊娠などとなると男のほうが怖気づいて責任から逃げることが多いようで、それがなかっただけでも十分高評価なのだという。
尤も仮に偏見の目で見られたとしても俺は毎日通うし亜紀を守るつもりでいたために、少し拍子抜けしてしまった。
「今は寝てるけど起きてミルク飲んでるときも可愛いんだよ……一生懸命コクコクしてて……見せてあげたいなぁ……」
「すまない亜紀……お前ばっかり苦労させて……」
「だからむしろ楽しくて幸せなんだってばぁ……史郎こそ高校に通いながら病院に来て……帰ったらすぐに勉強漬けだって聞いてるよ……余り無理しないでよ?」
「全然無理してないよ……俺だって亜紀やこの子の為に頑張るのは苦にならないから……少しでも早く二人を養えるようになりたいからね」
本当にここの所、まったく遊ぶ時間をとれていないが全然辛いとは感じなかった。
むしろ将来のことを思えば……亜紀やこの子の笑顔を守るためだと思えばやる気がどんどんわいてくるのだ。
(絶対に良い所に就職してやる……それで亜紀やこの子が自慢の父親だって言えるぐらい立派になってやるんだ)
はっきりと覚悟を決めながら、俺は亜紀の胸で安らかに眠る我が子をいつまでも見守り続けるのだった。
「そう言えば……この子の名前どうするか決めた? うちのお母さんは真っ直ぐ美しい心に育つようにって直美なんかが良いんじゃないって言ってるけど……?」
「そうかぁ……俺は幸せに成れるようにって意味で幸成とか考えたけど……」
「うーん、女の子にその字面はちょっと……ひらがなでゆきななら良いんだろうけど……」
「いいんじゃないかな、ゆきな……亜紀はどっちが……というか他に何か考えてるのか?」
そう言いながら俺は子供を優しく抱きかかえている亜紀に……将来の妻に寄り添いながら自然と笑顔になってしまう。
「私……私はねぇ……うーんとぉねぇ……」
「女の子だし最終的には亜紀が決めた名前でいいと思うよ……俺は亜紀の決定を全力で支えるからさ」
「ありがとう史郎……大好きだよ」
「俺も愛してるよ……亜紀」
本当に幸せそうにつぶやく亜紀を見て……一番好きな表情を見て、俺は改めて亜紀に惚れ直してしまうのだった。
「うん、決めたよ史郎……この子の名前は…………」
Bエンド
*****
Cエンドフラグにチェック済
「ご、ごめんねぇ史郎ぉ……うぅ……わ、私とんでもないミスをぉ……」
「し、仕方ないって……もう今更気にするなってば……」
「けどぉまさか史郎まで巻き込んでこんなことになるなんてぇ……あぁ、試験日前日に看守と囚人プレイなんかした私の馬鹿ぁ……」
「ま、まあノリノリで相手した俺も悪いし……それに亮だって同じ学校何だし……ほ、本当に気にしなくていいから……」
自分のベッドにうつ伏せになり、未だに高校受験を失敗したことを悔やみ続けている亜紀を慰める俺。
(流石に試験日前日に徹夜で遊んだのは失敗だったなぁ……まさか試験中に寝落ちするとは……)
おかげで亜紀は狙っていた公立高校に受かることができず、滑り止めに受けたレベルの低い私立へと行くことになってしまった。
こうなると恋人と同じ学校に通いたい一心で頑張ってきた俺もまた、必然的にそちらの学校へ通うことになったのだ。
何度も亜紀は別の学校に通っても平気だと言っていたが、それでも俺が押し切ると最後には涙目で謝りながらも嬉しそうに抱き着いてくるのだった。
だからこの選択には全く後悔はない、そもそも他に将来の進路などを考えていたわけでもないのだから。
「うぅ……ほ、本当にごめんねぇ……罰としてこれからプレイは少し控えるからぁ……」
「えっ!? い、いやそれは控えなくていいと思うよっ!!」
「けどぉ、今の私じゃ史郎を攻めたりできないよぉ……虐められるほうならいいけどぉ……」
「あぁ……うーん、まあその……は、早く立ち直ろうな?」
亜紀が早く調子を取り戻すよう、改めて励ましの言葉をかける俺。
(せ、攻めも悪くないけど最近は亜紀が巧み過ぎて弄られるほうが気持ち……じゃ、じゃなくて亜紀が元気になってくれないと張り合いがないからな、うんっ!!)
「わ、わかってるけど……あぁ、こんな理由でお母さんにまで迷惑をかけてぇ……穴があったら入れた……入りたいよぉ」
「あ、あれはもう止……それだって亜紀が稼いだお金でかなり賄ってるから問題ないんだろ?」
「まあそうだけどぉ……はぁ……情けないなぁ私……ちょっとは自立出来てきたかなぁと思ったけどまだまだお子様だぁ……」
「いやそんなことないって……亜紀は十分立派になったよ」
落ち込み続ける亜紀の隣に腰を下ろし、その頭を優しく撫でてあげる。
「足の踏み場がなかったこの部屋が今じゃこんなにも綺麗だし……家事も上手になって俺のお世話を任されるぐらいだし……センスも良くて衣装だって自作出来て、お金だって貯金してる……こんなすごい子同い年にはいないよ……俺だって真似できないぐらいだ」
今の亜紀はかつてのだらけ切っていたころからは想像もつかないほど立派になっている。
だからこそこの程度のミスで……結構大きい失態だけれども誰も責めようとは思わないのだ。
「亜紀が頑張ってるのは皆知ってるから……それに失敗したらこれから挽回すればいいんだ……亜紀なら絶対できるって」
「そ、それは……史郎が隣に居てくれるから……いつだって支えてくれてるからだよ……」
おずおずとベッドに押し付けていた顔を上げて、俺を見つめてくる亜紀。
ようやく顔を見れて安心した俺は笑顔になると、そっと身体を横たえて亜紀の隣に寝転ぶのだった。
「当たり前だろ、俺は亜紀を愛してるし……亜紀の恋人なんだからさ」
「し、史郎ぉ……うぅ……ごめんねぇ史郎ぉ……私も史郎の恋人に相応しいようにもっともぉっと頑張るからぁ……」
「もう十分頑張ってるよ……よしよし、いい子いい子……」
「ふぇぇ……史郎ぉ……もっとナデナデしてぇ……」
*****
フラグ無し
「しゃぁっ!! ハンマーゲット……あぁっ!?」
「ウッホホ~イっ!!」
「や、やめろ離せ離せぇええっ!! あぁあああああっ!?」
せっかく拾った強武器で暴れようとした隙に、亮の操るゴリラが俺のキャラを抱え込んで飛び降り自殺した。
しかしストックの残り数で負けているため、この時点で俺の敗北は確定してしまう。
「いえぇえええいっ!! 俺の勝ちぃいいっ!!」
「がぁあああっ!? てめぇずっりいぞっ!! もう一回だっ!!」
「お前らにはついてけねーよ……はぁ……」
俺と亮の盛り上がりを見て、高校で新しく友達になった奴らが呆れたように首を横に振っている。
「今度はチーム戦で行こうぜっ!! 三対一でこのゴリラを叩きのめそうぜっ!!」
「ず、ずるいうほぉおおっ!?」
「うるせえよお前ら……というかあんま騒ぎすぎると霧島さんが迷惑するんじゃねえか?」
「あーそうか、向こうも友達と遊んでるもんなぁ」
友人の指摘に窓の向こうに見える亜紀の部屋へと視線を投げかけてみる。
そこでは中学時代の友人と高校で新しくできた友達に囲まれて談笑している亜紀の姿が窓ガラス越しに見えた。
(あんなにたくさん友達が出来て、しかも中心に居て楽しそうにしてる……やっぱりこの高校を受験してよかったなぁ)
偏差値が高いからというわけでもないだろうが、俺たちに新しくできた友達は誰もかれも良い奴ばかりだ。
だから放課後集まって遊ぶのが楽しくて、こうしてお互いに別々の友好関係を優先することも増えてきた。
(確かにうるさくして迷惑かけるのもなんだし、こっちも窓を閉めておこうっと)
窓ガラスに手を伸ばし、ゆっくりと締めようとしたところで顔を上げた亜紀と視線が合った。
同時に亜紀の友人も俺たちのほうを見つめてきて、何やら嬉しそうに微笑んできた。
「史郎、どうしたのぉ?」
「いや、ちょっとうるさくないように窓を閉めようと思って……」
「大丈夫だよ、そっちの声はいつも通り史郎と嵐野君の声以外聞こえてないし……」
「……やっぱり締めとくわ、ごめんなうるさくて」
窓を開けて話しかけてきた亜紀に謝りつつ、後ろにいる他の女性にも頭を下げる。
「ふふふ、気にしてないから大丈夫ですよ……それに雨宮さんの声が聞こえると亜紀ちゃんとっても嬉しそうに笑うから……」
「そ、そんなことないってばぁっ!! と、とにかく気にしなくていいからねっ!!」
「あ、ああ……わかったよ」
俺の返事を待たずに窓を閉めて部屋の中に戻った亜紀だが、その後も他の子たちに揶揄われているようで俺をチラチラ見ては顔を赤くして首を横に振ったり縦に振ったりしている。
「なあ雨宮……お前霧島さんと付き合ってるって本当なのか?」
「まあね、それがどうかしたのか?」
「いやその割には妙に淡泊と言うか、二人ともさっぱりしてるって言うか……ちょっと気になって」
「はぁ……お前らは中学時代のこいつらを知らないから言えるんだよ」
新しい友人二人の発言を聞いた亮が、ものすごく疲れたような溜息を吐いて見せた。
(確かにあの頃に比べて俺たちは少しだけ大人になった……人前ではだけどな……)
何だかんだで友人が帰った後はどちらかの家で一緒に食事をして、一緒のベッドで眠っている。
もちろん過激な行為にまで発展することもままあるぐらいで、愛情が覚めたわけではない。
ただ単純にお互いの考えや楽しみを尊重できるようになったというだけの話なのだ。
(お互いに愛し合ってるって実感してるからこそだけどな……まあ目の届かない所で異性と遊ぶのは厳禁だし……)
「まああの頃はお子様だったと言うことで……亮には迷惑かけたよなぁ」
「いやマジでな……毎日砂糖を吐きそうな勢いだったよ」
「全く想像できないなぁ、嵐野の方ならわかるけど……」
「そうだよお前こそあの小学生の子とどうなってんだよっ!? 犯罪だぞお前っ!?」
「そ、そんなこと言われても……し、史郎何か言ってやってくれぇっ!!」
喚く友人たちのもみ合いを目の当たりにして、これはこれで楽しみを感じながら俺はちらりと亜紀のほうへと視線を投げかけた。
すると向こうでも女子同士で何やら笑いながらやり取りをしているところで、その中で一瞬だけ亜紀がこちらへと視線を投げかけてきた。
お互いに目と目が合って、それだけで笑顔になった俺たちは改めて日々を満喫すべく友人たちのほうへと向き直るのだった。
(恋人がいて、友人が居て……毎日が最高だなぁ……こんな日々をいつまでも続けていきたい……いや、亜紀と一緒に協力して努力して続かせていくんだっ!!)
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