★史郎と亜紀のその後④
Bエンドフラグにチェック
「凄いね史郎……流石だよ……」
「ありがとう亜紀、お腹は大丈夫か?」
「流石に辛くなってきたけど……史郎の赤ちゃんだと思えば、幸せな苦しみだよ」
久しぶりに亜紀の部屋にお邪魔して、二人きりになることができた。
尤も外には両親が待機しているから大したことはできないし……このお腹の亜紀に何かをさせるつもりもない。
だからそっと大きくなってきたお腹に手を添えて、僅かに伝わる生命の脈動に神経を集中させる。
(俺と亜紀の……待っててくれよ、ちゃんとお前が辛い思いをしなくていいように頑張るからさ)
「それで史郎……どうするの進路は?」
「それなんだが、難関の国家資格も取れたし偏差値も何とか80近くをキープできるようになった……進学だろうと就職だろうとできないことはないと思うけど……」
「けど……なぁに?」
「いや、どっちのほうがいいかなぁと思ってさ」
何だかんだで結果を出したことで、俺の本気を両親も亜紀の母親も理解してくれるようになってきた。
だからこうして僅かな時間ながらも二人きりになることが許されるようになったし、進路についても俺の意志で選べるようになった。
(就職してすぐにでも独立して亜紀と同居したい思いはあるけど……きちんと進学してもっと子供や亜紀にとって誇れるような父親にもなりたい……どうしたもんかなぁ)
少し前なら亜紀と一緒に居ること以外考えられなかった。
しかしこうして手のひらから伝わってくる我が子の存在を実感すると、そんな目先のことだけで動いてこの子に迷惑をかけていいのかと思ってしまう。
「それは……もちろん進学して少しでもいい所に行ったほうがいいよ」
「けど亜紀は……俺だけ高校生活を送るなんて……」
「私はこの子の面倒見なきゃだからね……むしろ学校行かないで自分の子供と遊んでいられるんだから申し訳ないぐらいだよぉ」
そんな俺に対しては、亜紀ははっきりと先のことを考えて進学する様にと進めてくれる。
どうやらお腹に赤ちゃんを抱えている分だけ、俺よりずっと母親としての自覚が出来つつあるようだ。
(駄目だなぁ俺は……もっとしっかりしないと亜紀にも子供にも笑われちゃうぞっ!!)
「そっか……わかった、進学して亜紀と子供をしっかり養えるよう勉強するよ……もちろん放課後は一緒に育児を手伝うからな」
「えへへ、ありがとう……だけど無理だけはしないでよ?」
「無理なんかじゃないさ、俺は亜紀と一緒に居るときが一番落ち着けるんだ……ましてそこに俺たちの子供が加わるんだからこれ以上に安らげる時間はないはずだよ」
そう言って二人で手を重ね合いながらお腹を優しくさすり、中にいる赤ちゃんに話しかけるのだった。
「ちゃんとお父さんするからな、安心して出ておいでよ……おっ!?」
「ちゃんとお母さんするから、何も心配しないでね……あっ!?」
「い、今お腹蹴ったよなっ!?」
「う、うんっ!! お腹蹴ったよっ!! お、お母さぁんっ!! 今赤ちゃんがねぇ……」
*****
Cエンドフラグにチェック済
「さぁて、覚悟はい~い史郎ぉ~嵐野くぅん~?」
「ちょ、ちょっと待ってっ!? こ、これはシャレにならんだろっ!?」
「た、頼むから勘弁してくれぇっ!! 今回の文化祭にはあの子も見に来るって言ってるんだぁっ!!」
ワキワキと物凄く怪しい笑みを浮かべ、女性用の際どい露出をした衣装を持って迫りくる亜紀及びクラスメイトの女子数名。
そんな彼女らから逃げ惑う俺と亮だが、無情にも逃げ場は塞がれてしまう。
「もう決まったことなんですよ、雨宮さんも嵐野さんもいい加減に覚悟を決めてくださいよぉ」
「そ、そこの眼鏡っ子ぉっ!! むしろ君こそがこれを着るにふさわしい存在だと思うのですがぁっ!?」
「嫌ですよぉ、私みたいな貧弱な体格じゃぁ似合いませんしぃ……そもそもくじ引きで公平に決まった結果なんですからぁ
「にっひっひぃ、二人の体格をチェックしてわざわざ自作したんだからぁ……我慢して着なさぁいっ!!」
(な、何でこんなことに……そりゃあ亜紀の衣装はデザインが良いけどさぁっ!?)
中学最後の文化祭と言うことで、どうもみんな少しでも目立つことがしたかったようだ。
だから誰かが冗談で提案した仮装喫茶が通ったのも、亜紀が持ってきた衣装が良くできていた採用されたのも理解できる。
しかし何故にどうして俺たちが女装しなければいけないのだろうか。
「ああもぉ……亮の馬鹿ぁ、どうしてこんなくじ引き作ったんだよぉっ!!」
「し、仕方ないだろっ!! 一人一個着せたい衣装を書けって言われてそれが自分に当たるとは思わなかったんだよぉっ!! それにもう一つは俺じゃねぇっ!!」
「そんなことどーでもいいのぉっ!! ほらほら、いつまでも意地張ってないのぉっ!!」
ついに部屋の隅まで追いやられて、女性用衣装を押し付けられてしまった。
「ど、どうするよ亮?」
「ぐぬぬぅ……かくなる上はリハーサルである今のうちに着て見せて、余りの醜悪さに向こうが折れることを祈ろうではないか」
「ソレしかないのか……はぁ……」
実際のところ、他の人たちが着ている以上俺たちだけ免除されるわけがない。
仕方なく男子用の更衣室に入り、涙を堪えながら漫画やアニメの世界にしかなさそうなデザインのエプロンドレスへと着替えていく。
「ど、どうだおらぁっ!!」
「み、見てみろこの惨状を……」
そして外に出てお互いに上から下まで見合わせて、余りの酷さに笑うことしかできなかった。
「はははっ!! な、なんだ史郎その肩幅はっ!?」
「ははっ!! お前こそ腰はどうにかならなかったのかぁっ!?」
「あはは、似合ってる似合ってるぅっ!! これは舞台に立って二人が本命の絡み合う劇を……」
「か、勘弁し……あ、亜紀ぃ?」
「へっへーん、どぉだ……似合ってるでしょぉ?」
そう言って亜紀は短いスカートをヒラヒラはためかせながら、両手に持ったポンポンを振りかざした。
(あ、亜紀はチアガールなのかっ!? や、やべぇ色々と元気になりそうだっ!!)
物凄く似合ってて、ついつい無言で亜紀を見つめてしまう。
「なぁに史郎ぉ、見惚れちゃったのぉ?」
「あ、ああ……凄くよく似合ってるよ」
「えへへ、ありがとう……同じのもう一着作ってあるから、帰ったら……ね?」
「っ!?」
耳元でぼそっと呟かれて、興奮気味に亜紀のほうを見ると内緒とばかりに指で口を押えながらウインクしてきた。
もちろん反射的に激しく首を縦に動かした俺を見て、亜紀は悪戯っ子のように嬉しそうに笑うのだった。
「そーいうわけでぇ、史郎は家でもこれを着るぐらい納得してくれましたぁっ!! 後は嵐野君だけだよ、覚悟してねっ!!」
「オーノォーっ!? 史郎の裏切り者ぉおおおおっ!?」
「い、いやそんな……えぇっ!?」
(も、もう一着って……こ、こっちのことなのぉおおおおっ!? さ、詐欺だぁああああっ!!)
*****
フラグ無し
「雨宮さん、ちょっといいですかっ!!」
「え、な、何かな?」
「一緒に写真お願いしますっ!!」
「あっわ、私もお願いしますっ!!」
文化祭での俺の出番も終わり、ようやく一息つけると思ったら急に女子たちが駆け寄ってきた。
恐らくは俺のしている仮装、すなわち吸血鬼の格好が珍しいのだろう。
某デパートで買った安物のコスプレ衣装だが、事前に見ていた亜紀も似合ってると言ってくれていたほどだ。
(マントや牙はともかく他はしっかりしてるもんなぁ……衣装効果ってのは恐ろしいなぁ……)
ちらりと横目で亮のほうを見てみれば、こちらもミイラ男としてとても人気があるらしく子供たちにあちこち引っ張られたりパンチされたりして玩具にされているのが分かった。
その中に混じっている最近仲良くしているらしい小学生の女の子は亮を独占できなくて不満なのか執拗に足を蹴りつけているが、とにかく概ね好評のようだ。
「ほらこっち見てくださいよ雨宮さぁん」
「雨宮先輩、ほら牙も外して普通に笑顔で……」
「そのマントで包んで下さぁい」
「え、えっと……あ、あはは困ったな……っ!?」
どうしたものかと困ってしまうが、こうも女性にモテたことがなかったので少しだけ嬉しくなってしまった……ところでふと教室の隅からじっと俺を見つめている亜紀に気が付いてしまった。
そんな亜紀だが……
好感度750未満
→①どこか自慢げな様子で、余裕のある笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
てっきり嫉妬なり何なりされるかと思ったが、亜紀はにこやかな様子で俺に頷きかけると友達と話し始めてしまう。
こうなるともう抵抗する理由もなくなり、俺は素直に女子たちと撮影会をすることになった。
「ありがとうございます雨宮さんっ!!」
「雨宮先輩、ありがとうでしたっ!!」
「ど、どうも……ふぅ……」
「お疲れ様ぁ、史郎大人気だったねぇ」
一通り終わって女子たちが去っていくと、入れ違いになる様に亜紀が近づいてきた。
「あ、ああ……悪い亜紀あんなところ見せて……」
「まあ史郎だって付き合いがあるしねぇ、気にしてないよ私」
言葉通り亜紀は、本当に気にした様子もなく俺にいつも通りの笑顔を見せてくれる。
「そ、そうなのか?」
「当たり前だよ、だって史郎が浮気するわけないし……私にだけ見せてくれる笑顔だったわけでもないし嫉妬する気にもならないよ」
「……亜紀は凄いなぁ、俺は逆の立場だったら気になっちゃいそうだよ」
「へぇ~、史郎嫉妬しちゃうんだぁ?」
「ああ……ごめんな、俺はまだ全然ダメダメな彼氏みたいだなぁ……」
亜紀がこれほど俺を信用してくれているというのに、己の器の小ささを実感させられたようで情けなくなる。
「ううん、むしろ嬉しいよ……それだけ思っててくれるってことだもんね」
「けど亜紀みたいに俺も……」
「史郎は十分素敵な彼氏だよ……それに本当のこと言うとね、内心私こう思って自分を納得させてたんだぁ……」
「えっ?」
そう言って亜紀は皆に見えるように俺の腕をとると自らの腕に絡めてきた。
「あの子たちがくっついていた以上にイチャイチャして格の違いを見せつけてやろうってね……だから史郎、この後はずっとこうしてくっ付いていようね……何なら先生が居ない所でキスぐらいしちゃってさ、他の奴らが手を出そうとも思わなくなるぐらい惚気ちゃおう」
本当に嬉しそうに笑う亜紀に俺もまた笑顔を返しながら、その愛おしい身体を早速皆に見せつけるように抱きしめてやるのだった。
「ああ、そうだな……どうせならいっその事どこかで盛大に告白でもしてやろうか? 亜紀愛してるぅって学校中に響くぐらい大声でさ」
「史郎ったらぁ……その時は私も言い返しちゃうからねぇ……えへ……史郎だぁいすきっ!!」
「俺も大好きだ……愛してるぞ亜紀っ!!」
「……リア充爆発し……うおっ!?」
「わたしもとーるさんだいすきぃっ!! ちゅーするぅっ!!」
「あ、あははありがとう嬉し……ちょ、ちょっと皆さま方その犯罪者を見るような目は何ですかぁっ!?」
*****
「そのマントで包んで下さぁい」
「え、えっと……あ、あはは困ったな……っ!?」
どうしたものかと困ってしまうが、こうも女性にモテたことがなかったので少しだけ嬉しくなってしまった……ところでふと教室の隅からじっと俺を見つめている亜紀に気が付いてしまった。
そんな亜紀だが……
好感度750以上
→②とてもにこやかに微笑みながら意味深に何度も頷きかけてきた……がその目は全く笑っていない。
物凄い迫力を感じて、固まる俺の前で亜紀は表情を変えないままそっとポケットに手を伸ばした。
「雨宮さん? ど、どうしたんですかぁ?」
「い、いやあの……あ、ご、ごめんメールが……っ!?」
マナーモードにしていた携帯が震えて、校則に引っかからないよう隠れながらそっと内容を確認した。
『何してるの史郎』『そんな奴ら追い払って』『早く二人きりになろう?』『史郎私とそいつらどっちが大事?』『史郎が愛してるのは……』
どんどんと送られてくる亜紀からのメール、そこから思いっきり嫉妬されていることが伝わってきた。
その余りの勢いに俺は……喜びを感じてしまう。
(俺めちゃくちゃ愛されてるぅっ!! 待ってて亜紀今すぐ行くからっ!!)
「あ、あの雨宮先輩?」
「ごめん、俺用事あるから」
「え、あ、あのちょっとだけで……」
「悪いね……こっちのほうが大事だからさ」
はっきりと言い切って女子たちを振り切ると、俺は亜紀のほうへと駆け寄った。
「もぉ遅いよ史郎……ほら、早く手を繋いでどっか見に行こう」
「わかってるよ亜紀、お待たせ……行こうか」
「うん……えへへ……」
さっきまでの迫力はどこへやら、手を取った途端に満面の笑顔になり俺に寄りかかってくる可愛い恋人の姿に俺もまた笑顔を隠し切れなくなるのだった。
(やっぱりたくさんの女子に囲まれるより……亜紀とこうして一緒に居るのが一番いいよ)
「亜紀、この後はどこか二人きりになれる場所でずっとこうして居ような」
「ほ、本当っ!? も、もちろんだよっ!! えへへ、史郎と二人きり……幸せぇ」
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