★史郎と亜紀のその後③
Bエンドフラグにチェック済
「そ、そうか……ごめんな亜紀……おばさ、いやお義母さんにも謝っておいてくれ……」
「大丈夫だよ、お母さんも私も全然気にしてないし……むしろさっぱりしたよ」
窓越しに頭を下げる俺に静かに首を横に振って見せる亜紀、そのお腹はかなり目立ってきている。
だからこそ流石にそろそろ伝えておくべきだと思い帰ってこない亜紀の父親とも連絡を取ったのだが、その結果返ってきたのは離婚届だった。
どうにも中学生の娘が妊娠したことを良く思わない……というよりも程よい別れる口実を探していたようだ。
(自分が帰ってこなかったことは棚に上げて亜紀の母親ばっかり攻めやがって……)
本当に腹立たしかったが、それもこれも俺の愚かな行為のツケのようなものだ。
亜紀にも母親にも頭が上がらない。
「だけど……生活費とかは……」
「当面はお母さんが頑張るって言うし史郎のお義父さんとお義母さんも協力してくれるみたいだから平気だよ……だから史郎はあんまり無理しないでね」
亜紀の言葉に改めて自分がどれだけお子様だったか、何も考えず周りに迷惑をかけるようなことをしてしまったのか痛いほど実感してしまう。
だけどもう後悔はしない……何故なら亜紀が自分のお腹を撫でて幸せそうにしているからだ。
亜紀の幸せが俺の全てだ、周りの人には悪いがそれだけは絶対に変わらない。
「そ、そうか……けど俺だって出来るだけ早くお金を稼いで亜紀を養えるようになるからっ!! 絶対亜紀を不幸になんかしないからなっ!!」
「えへへ、ありがとう史郎……だけど本当に無理はしないでね……史郎が笑っててくれればそれだけで私も幸せだから」
「それは俺もだよ亜紀……亜紀も無理しないで……笑顔で居てくれよ」
「はぁい……ふふ、早く史郎と結婚して……またイチャつきたいなぁ」
「そうだな……そのために俺頑張って偉くなって……亜紀と結婚できるよう……自立して一緒に暮らせるように頑張るからな」
(そうさ、俺の最終的な目的は亜紀との幸せな生活……亜紀と家庭を築くことなんだ……そのためにも出来るだけ早く親の庇護から脱しないとな)
改めて将来の目的を定めると、俺は亜紀が眠るまで話し相手をした後で必死に机に齧りつくのだった。
(できれば中卒でもいいから良い所に勤めて亜紀を養えるぐらいの給料を稼いで同棲を認めさせて親子三人水入らずで……い、いやあと二人ぐらいは出来ちゃうかもなぁ……ふふ、そのためにも頑張るぞっ!!)
*****
Cエンドフラグにチェック
「お、おのれぇ……この縄を解きなさいっ!!」
「くっくっく、こうなっては魔法少女と言えども形無しだなぁ~」
今日もまた亜紀お手製のコスプレ衣装を着てノリノリでプレイに興じる俺たち。
(久しぶりに俺が攻めだ……たっぷり虐めてやるぞぉ~)
ワクワクしながら跡が付かないよう緩めに縛った縄を引いて亜紀を抱き寄せようとする。
「あぁ……そ、そこはぁ……ちょ、ちょっと待って携帯が鳴ってる」
「ま、またか……本当に盛況なんだなぁ」
「最近はコスチュームだけじゃなくて、注文を受けたオーダーメイドの洋服とかも作ってるからねぇ……けどこんなに売れるなんて私もびっくりしてるよぉ」
言いながら携帯電話を取り出し、届いた通知を確認する亜紀。
どうにも販売用のネットと連動しているらしく、こうして注文が入ると通知が届くのだ。
(何と言うか……隠された才能と言うか……亜紀ってこんなに凄かったんだなぁ……)
はっきり言ってここの所の稼ぎは異常だ、下手なバイトやパートよりずっと儲けを出している。
おまけに本人も作ることが苦にならないようで、楽しみながら毎日のように新しい衣装を制作しているのだった。
おかげで少しだけ学校の成績は落ちてしまったが、俺も亜紀の母親も指摘する気にはならなかった。
「やっぱり亜紀はこの才能を生かす進路を考えたほうが……」
「うーん、こんなの今だけだと思うし……やっぱり何度も言うけど私史郎と同じ学校に行きたいの……制服プレイしたいもん」
「そ、それは俺だって……けどなぁ……」
「史郎もお母さんも大げさだよぉ……まあでもあの人と別れるきっかけになれたのはよかったかなぁ……」
しみじみと遠い目をして、だけどどこか誇らしそうに語る亜紀。
亜紀の母親は、つい最近父親と正式に離縁したようだ。
とっくに愛想は尽きていたが生活費のためにどうしても別れ話を切り出せずにいたが、ここに至って亜紀が自力でお金を稼げることを知ってついに決意を固めたらしい。
「お母さんずっとそれで苦労してたから……これもそれも史郎が私の才能を見出してくれたからだよ、ありがとう」
「いやいや、これは純粋に亜紀の頑張りだよ……俺なんか何もしてないって」
「そんなことないってばぁ、史郎の愛があったからこそ今の私があるの……だからいっぱぁいお返ししてあげたいんだぁ」
そう言って笑顔で俺の胸に飛び込んできた愛おしい恋人を、優しく抱き留めるのだった。
「もう沢山お返しされ……っ!? あ、亜紀さんっ!? な、何で俺の両手を縛るのっ!?」
「うふふ~、隙を見せたなぁ悪党めぇ……これから邪な気持ちを抱かなくなるまでマジカルご奉仕……お仕置きしちゃうんだからぁっ!!」
「ちょ、ちょっと亜紀さんっ!? きょ、今日は俺が攻めのはずで……あうぅっ!?」
「恩返しの意味も兼ねてぇ……今日は十回はイかせちゃうんだからぁっ!!」
「そ、それはもう拷問ですぅっ!? あ、亜紀さんやめ……はぅっ!?」
*****
フラグ無し
「ありがとう史郎……本当にありがとう……」
「いや俺は何もしてないよ……うちの両親が……」
「ううん、そこまで持って行ってくれたのは史郎だよ……大好き……」
一つのベッドで横になりながら、涙を流す亜紀をそっと優しく抱きしめた。
家の両親、そして亜紀の母親に付き合っていることを伝えてからはもう毎日のようにこうして一緒に寝ているのだ。
(本当にありがとうよ親父、お袋……亜紀のお義母さんも俺たちを認めたし……信じてくれて感謝しかないよ)
年頃の娘が幼馴染とは言え男の俺の部屋に入り浸り、一緒に寝たりしているのに亜紀の母親は咎めるどころかこうして亜紀を快く送り出してくれているのだ。
本当にありがたいことだと思う。
「格好良かったよ……あんなに堂々と……私凄く幸せ者だよ……」
「当たり前だよ、俺の世界で一番愛する亜紀の為だからな……」
「けど私の……仮にも大人の男の人を相手にして一歩も引かないで……史郎はやっぱり凄いよ」
「あんな人でも一応は亜紀の生みの親だからね、最後とは言えしっかり挨拶しておきたかったんだよ」
うちの両親と亜紀の母親へ結婚を前提としたお付き合いをしていることを認めてもらった俺は、最後に亜紀の父親へも許可を取りに行ったのだ。
しかしあいつは露骨にこちらを見下してネチネチと文句をつけてきて、挙句の果てに学業に身を入れず交際なんかする娘に育てた母親にケチをつけ始めた。
そして最後には別れなければ養育費の打ち切りを言い出してきたのだった。
(要するにこっちを切り捨てるために俺たちの関係を盾にしてきたんだろうなぁ……舐めやがって……)
「本当に凄いよ史郎は……あんな奴を相手に最後まで冷静で……おまけに慰謝料まで……私のお母さんも凄く感謝してたよ」
「何度も言うけどその辺りはうちの両親のお陰だよ……俺はただ頭を下げて交渉の前面に立ってただけだよ……」
こんなくだらないことで亜紀の生活に支障が出たら……それこそ進学だのなんだのにケチをつけられたらたまらない。
だから俺は父や母に協力してもらい、相手の不貞の証拠を集めた上で亜紀の母親と話し合ったのだ。
そしてやる気になったお義母さんと共に正当な権利を主張して……この度ようやく慰謝料と養育費を約束させた上での離縁に同意させることに成功したのだった。
(本当に俺はただ交渉の場に立ってただけ……それだって俺が始めたことだから当然のことだし、興信所やその費用だって大人持ちだ……何も威張ることじゃない)
「とにかく俺は大したことはしてないよ……ただ亜紀の笑顔を見て居たかっただけだからさ……だからほら、いつも通り俺の大好きな笑顔を見せてよ」
「うん……えへへ、史郎ぉ……ありがとう……本当にありがとう……大好き」
身体を離し涙目で、だけど本当に幸せそうに微笑みながら亜紀はもう一度俺の胸の中に顔をうずめた。
そんな可愛い恋人を、俺は優しく抱きしめるのだった。
「いいんだよ、だって亜紀は俺と結婚するんだろ……自分の奥さんの平穏な生活を守るのは旦那の俺の役目だよ……だからこれからも何かあったら遠慮なく相談してくれ」
「はぁい……だけど史郎も、何かしてほしい事とか困ってることがあったら言ってよ……私だって未来の奥さんとして支えてあげたいんだから……支えられてばっかりだもん……何かしてあげたいよ……」
「もう十分してくれてるよ、亜紀の笑顔が俺の一番の幸せだから……ね」
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