★史郎と亜紀⑲
亜紀好感度650未満
「……亮さん、やっぱり自首しましょうよ?」
「ち、違ぇからぁっ!! まだ何もしてねぇよぉっ!!」
「何もしてなくてもお前という存在が女子小学生のそばに近づこうとしている時点で犯罪なんだ……諦めて現実を受け入れろ」
「お……俺は無実だぁっ!!」
悲鳴を上げる亮に呆れた視線を投げかける俺……尤も冗談半分のやり取りでしかないのでどちらもそこまで深刻な口調ではないのだが。
(しかし……バレンタインの時に話してた少女と友達になったと言い出した時は狂ったかと思ったがまさかマジだったとはなぁ……)
どうにもあの子は普段から通学路ですれ違っていたらしく、おまけにその際いつだかに躓いて怪我をしたとき助けてもらった恩があったらしい。
それで話しかけるタイミングを見計らっていたようで、あの日バレンタインを口実に近づいてきて友達になるようお願いしてきたようだ。
流石に相手が小学生と言うこともあって、あの日俺と相談して決めたかったようだが……結局受け入れたのだという。
「だけどなぁ……お前中学生が小学生とお友達になって放課後とか休日に付き合って遊ぶとか……やっぱり犯罪臭しかしねぇよ……」
「し、仕方ないだろぉ……遊べないって言うと涙目になるんだもんよぉ……だからお外であの子の友達も含めてみんなで健全に鬼ごっことか隠れんぼに付き合うしかないじゃないかぁ……」
「小学生の群れに混じって一緒に遊ぶ中学生かぁ……完全に学校に居場所のない奴が……」
「そ、それ以上言わないでくれぇ……うぅ……だ、だからこそこうしてお前に付き合ってもらおうとだなぁ……」
「全く……久しぶりに遊ぶから何のゲームをやるのかと思ったら……まあいいけどよぉ」
少しため息をつきながら、それでも涙目で拝むように頭を下げる亮に付き合って近所の公園に向かう俺たち。
「す、済まねぇ……けど本当に良かったのか、霧島さん放っておいて……」
「ああ、それは大丈夫……亜紀もたまには……友達と遊ぶって言ってたからさ」
言いながら……俺のところに申し訳なさそうに、それでもどこか嬉しそうに伝えに来た亜紀の姿を思い返す。
俺と付き合い始めてから、少しずつ色々な事を自力でやる様になり生活態度を改めだした亜紀は周りとの交流も徐々にし始めるようになったのだ。
その結果、最近になってようやくお友達と呼べる存在が出来てきたらしい。
(初めて放課後に俺以外の人と遊ぶってので不安そうでもあったけど……これも経験だもんなぁ……)
正直俺も付いて行って面倒を見たいという気持ちもあったが、亜紀の成長の為に堪えることにした。
俺は亜紀とは対等な恋人という関係になりたいのであって、保護者になりたいわけではないのだ。
だから本当に困ったときにだけ連絡してもらうようにした上で、快く送り出したのだった。
「そ、そうなのか……霧島さんがねぇ……けどお前らほぼ毎日一緒に居たってのに……しかもここの所特にイチャついてるのによく別行動取る気になったなぁ?」
「そりゃあ気になるし常に一緒に居たいとも思うが……俺だって友達を……お前と遊びたいって思いもあるんだよ……」
確かに恋人になってから俺は亜紀が世界で一番大切で、一緒に居ればそれだけで幸せだと思えるようになった。
だけど友達と遊ぶ楽しさを忘れたわけじゃないし、亮との友情を投げ捨ててまで亜紀と二人きりの時間だけを過ごしたいとも思わない。
亜紀に対しても同じだ、俺と一緒に居るために他の何もかもをどうでもいいと切り捨ててほしくはない。
(なぁに、もう俺たちの関係が崩れることはない……お互いにそう確信してるからな……)
身も心も結ばれたことではっきりわかった、だからこそ俺たちは安心して別行動をとれているのだ。
「そ、そうか……ありがとうな史郎」
「いやお礼を言われるようなことじゃないしなぁ……それに亜紀とは帰ってから寝るまで交流する時間はあるからなぁ、それ以上ベタベタしても仕方ないからなぁ……」
「そ、そういうもんなのか?」
「ああ、そういうもんだ……」
聞き返してきた亮の言葉に、目を逸らしつつ頷いて見せた。
実際のところ半分は本当だが、もう半分は……違う意味もあった。
(実のところ……放課後の親が返ってこない時間にイチャつくと、俺たちどっちも止まらなくなるんだよなぁ……少し控えないとシャレにならん……)
そう言う意味も会って、また余りお互いに依存しすぎないためにプライベートの時間も大切にするようにしたのだ。
「ふーん、よくわからんが……俺も恋人が出来た時にでも参考にさせてもらうかねぇ……」
「その時は教えろよ、相手次第で応援することを考えないでもないからな」
「素直に祝福してくれよぉっ!!」
「いや、女子小学生を恋人だって言い出したら迷わず警察に突き出すぞ俺は……」
「し、史郎ぉっ!! ちょ、ちょっとは信じてくれよぉっ!!」
俺に涙目で縋りつく亮を、俺は今度は冷めた目で見つめてやるのだった。
「うーん、お前を信じろって言われてもなぁ…………やっぱり自首しようか?」
「だ、だから違ぇってぇっ!! 俺は無実ぅううう……おい、携帯鳴ってるぞ?」
「いや、これは着信じゃなくてメール……亜紀からだ」
携帯を取り出してみると、友達とというタイトルで添付された写メがあった。
少しだけドキドキしながら開いてみると、大人しそうな女友達の子たちと並んでいる亜紀の少し照れた様子の笑顔が写っていた。
(よかったな亜紀……皆良い子そうだし、男も混じってないし……俺も安心したよ……)
亜紀好感度+3
*****
亜紀好感度650以上
「それで話って何なんだ?」
「そ、それなんだけどその…………ほ、本当にいいのか?」
亮が話があると言うので、わざわざ放課後の使っていない教室に移動した俺たち。
しかし亮は肝心な話をするどころか、どこかそわそわしながら俺の携帯電話へと視線を投げかけてくる。
尤も無理のない話だ……数秒に一度ぐらいのペースでメールの着信音が鳴り響いているのだから。
『まだ?』『まだなの?』『史郎まだ?』『会いたいよ史郎』『早く』『史郎どうしたの?』『何かあった?』『史郎?』『返事できない?』『史郎大丈夫?』『そっち行く?』『史郎?』『まだ?』『嵐野君そんなに急用なの?』『私も一緒じゃ駄目なの?』『会いたいよぉ』『史郎ぉ』
軽く目を通すが、全てが亜紀からのメールだった。
(うーん……俺愛されてるなぁ、幸せぇ)
いますぐ電話して愛しの亜紀の声を聞きたい衝動に駆られるが、流石にここの所ずっと亮を無視し過ぎてしまっている。
何より前に困っている様子の亮の相談を放置してしまった負い目もある。
だから今回ばかりは亮と話し合おうと思い、断腸の思いで亜紀のメールを放置して向き直る。
「後でお詫びしておくよ……けど亜紀抜きで話がしたいってどんな内容なんだ?」
「い、いや霧島さんが居るとお前俺の話上の空になりそうだったから……な、何なら呼んでも……」
「了解、じゃあ今すぐ呼ぶわっ!!」
「早ぁっ!?」
亮の許可が出たので、即座に亜紀に電話してこの場に呼び出すことにした。
『も、もしもしっ!! し、史郎ぉっ!?』
「ふふ、そう俺だよ亜紀……」
『あぁ~史郎の声だぁ……ふふ、どうしたのぉ? 用事は終わったのぉ?』
「いやまだなんだけど、亜紀もこっちこないか? 一緒に話を聞きたいんだ」
『えぇ~、私と一緒が良いのぉ~? もぉしょうがないなぁ史郎はぁ……今すぐ行くよぉ~』
とても嬉しそうな声で返事をして、すぐに駆け出す足音が聞こえてきた。
果たして時間を置かずに俺たちのいる部屋に入ってきた亜紀は、迷わず俺に抱き着きそのまま太ももの上に腰を下ろした。
「えへへ、史郎ぉ~……お待たせ」
「ふふ、久しぶりだなぁ亜紀……会いたかったよ」
「私も会いたかったぁ……こんなに離れて寂しかったよぉ……」
「ごめんごめん、じゃあお詫びに何でも好きなことしてあげるよ」
「な、何でもって言ったよね今っ!? ふふ、何してもらおうかなぁ~……キスかなぁ、それともくすぐりっこ……」
何やら怪しい笑みを零しながら考え込む亜紀、しかしその姿もまた可愛くて俺は自然と頭を撫でていた。
「んぅ……史郎ぉ……」
「どうした亜紀……それでしてほしいことは決まったのか?」
「えへへ……それでいいや……そのまま頭をなでなでしててほしいなぁ……」
「お安い御用だ……ふふ、いい子いい子……」
「もぉ子ども扱いしてぇ……ふふ、でも幸せぇ……」
うっとりと目を閉じる亜紀、やはりとても魅力的で俺はついつい見とれてしまう。
いつまでもこうして居たいと心から思えた。
だから時間を忘れて亜紀のとろんとした顔を見つめながら、ずっと頭を撫で続けるのだった。
「……ねぇ、史郎ぉ……私、キスしたくなっちゃったぁ」
「俺もしたいなぁ……けど流石に亮の前じゃ……あ、あれあいつどこ行った?」
「本当だ……あ、置手紙があるよ……『馬に蹴られる前に退散いたします、お邪魔して申し訳ございませんでした……自力で何とか致します』だってぇ……」
「水臭い奴だなぁ……しかたない明日こそ相談に乗ってやるとして今は……亜紀……愛してる……んっ」
「んっ……はぁ、史郎好きぃ……もっとぉ……んちゅ……」
亜紀好感度+50
*****
亜紀好感度800以上
「んんっ……ぁ……はぁ……し、史郎ぉ……」
「あ、亜紀……愛してる亜紀っ!! うぅっ!?」
「あぁん……はぁ……し、史郎……そろそろ帰ろっかぁ……?」
「はぁ……ふぅ……そ、そうだな……そうするか……はぁぁ……」
深呼吸を繰り返し疲労を堪えながら、服装を正して帰る支度を始める俺たち。
ついでに色々と後始末をして、周りに人気がないことを確認してそそくさとその場を後にする。
「ふふ、やっぱり学校だと……ドキドキしちゃうねぇ……」
「ああ……しかも制服を着た亜紀と学校でってのは……凄い興奮するよ」
「本当に史郎ったら元気だもんねぇ……けどぉ、まだ出来るよね?」
妖艶に笑いながらちろりと舌を動かして見せる亜紀。
それだけで俺は腰が引けてしまうほどだ。
(が、我慢だ……家に帰るまでの我慢……そしたらまた亜紀と……)
無言で亜紀の手をひいて、帰路を早足で進み始める。
「ふふ……あっ……」
「ど、どうした亜紀っ!?」
「な、何でもない……ちょっと……その……た、垂れてきちゃっただけ……」
「す、すまん……や、やっぱりちゃんとゴムを……」
「ううん、いーのぉ……そんなのいらない……史郎との……なら……私嫌じゃないから……」
そう言って嬉しそうにお臍のあたりをさする亜紀。
その姿を見たら俺はもう何も言えなくなってしまう。
「そ、そうか……わ、わかったもしもの時は俺が絶対に責任を取るから……だ、だから早く帰って……続きしような?」
「うん……えへへ、史郎大好き……私凄く幸せ……幸せすぎて頭変になっちゃいそう……」
「お、俺も頭が変になりそうなぐらい亜紀が好きだ……本当に大好きなんだ、愛してる」
まっすぐ亜紀を見つめて心の底からの想いを口にする。
「ありがとう史郎……私もう史郎が居れば何もいらない……だから史郎、ずっと私のそばに居てね……」
「ああ、絶対に離れないよ……俺も亜紀が居れば他に何もいらないから……」
実際にもう最近は亮はおろか、家族とすらろくに話していない気がする。
少しでも時間があれば、無理やりにでも亜紀と一緒に居るようにしているからだ。
だから色々と訝しがられているかもしれないが……それでも僅かでも離れているのが我慢できないのだ。
「嬉しいよ史郎……あーあ、早く大人になって二人で暮らしたいなぁ……そうして何にも邪魔されず朝から晩まで史郎と……」
「生活があるから色々考えなきゃだけど……本当にそうなれたら最高だなぁ……」
「うん……だからこそ、春休みは……ね?」
「ああ……ずっと、愛し合おう……」
亜紀と見つめ合い、共に笑顔になる。
正直頭の冷静な部分が、このままでは不味いと伝えているがそれ以上に亜紀への愛おしさが込み上げてどうしようもない。
恐らくは亜紀も同じ状態なのだろう、だから俺たちはどこまでも愛欲に溺れて行ってしまう。
(真面目にこの調子だと中学校を卒業する前に亜紀が……だけどそうなっても俺は全力で亜紀を支えて見せるぞっ!!)
自らに言い聞かせるように決意を固めつつ、俺は亜紀をいつも通り自宅へと連れ込むのだった。
「ただいまぁ……えへへ、それで史郎……んぅっ!?」
「……ふぅ……亜紀……愛してるぞ亜紀」
「もぉいきなりなんだからぁ……うん、私も史郎が大好きだから……いいよ、ここでしちゃ……んぅ……っ」
亜紀好感度+150
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