★史郎と亜紀⑮
「ふぅ……ご馳走様、美味しかったよ亜紀」
「そ、そぉ……えへへ、ならよかったぁ……練習したかいがあったよぉ」
安堵したようにつぶやくと、亜紀は食べ終えた食器を俺の分も合わせて台所へと持っていき後片付けを始めてしまう。
「あ、亜紀……それぐらい俺がやるから……」
「いーの、今日はおばさんに史郎の面倒見るように頼まれてるんだから私がやるの~」
「あんなの本気にしなくていいのに……ごめんな亜紀、こんな面倒な事頼んじゃって……」
「だから気にしないでよぉ……私が好きでやってるんだから……前の史郎みたいにねぇ」
洗い物をしながら、にっこり笑ってウインクすらして見せる亜紀。
その様子からはかつて面倒だとだらけていたころの面影はまるで見いだせなかった。
(もう家事関係じゃ亜紀には敵わないなぁ……少し前まで逆の立場だったのに……やっぱり女の子なんだなぁ……)
最近の亜紀は本当に頑張っていて、うちの両親も実際に見て感心しているほどだ。
だから今日みたいに、帰りが遅くなる日は俺のお世話を頼んでいくことも多くなってきた。
(中学生の亜紀に俺の世話を任せて行くなよぉ……ま、まあ個人的には二人きりになれるから嬉しいけどさぁ……)
また亜紀の方も今までお世話してくれた俺の面倒を見れることや、何より恋人同士で二人きりになれることが嬉しいらしく嬉々として協力してくれている。
それどころかさらに精進を重ねていて、料理はおいしいし家事の手際もどんどん良くなっていく。
事実、こうして俺がボケっとエプロン姿で洗い物をしている亜紀の後ろ姿に見とれている間にお風呂が沸いた音が聞こえてくるほどだ。
「あ、亜紀……お風呂もやっててくれたのか?」
「当たり前だよ、お風呂は毎日入らないと……だよね?」
「そ、そりゃあまあ……」
そう言う意味ではなかったのだが、まさか亜紀の口からそんな言葉が出るとは思ってなかったのでどうにも返事に困ってしまう。
(昔のだらしない自分をネタに出来るほどに立派になって……いや本当に俺ももっと頑張らないと亜紀に釣り合えなくなるぞこれ?)
「ほらほら史郎、お風呂入っちゃって……私は先に洗い物とか済ませちゃうから」
「い、いや仮にもお客様より先に入るわけには……」
「お客じゃないもん……私史郎のお嫁さ……と、というかもう家族みたいなもんでしょっ!! き、気にしないでとっとと入っちゃってよぉっ!!」
「お、おう……わ、わかったっ!!」
何事かぼそっと呟いたかと思うと、一気にまくし立てられてしまいそのペースの差に気圧されてついつい頷かされてしまった。
こうなるともうどうしようもない、俺は素直にお風呂場へと向かうのだった。
*****
亜紀好感度50以上
「亜紀ぃ、お風呂良いぞぉ……ってどこだ?」
お風呂から上がり、脱衣所にあった寝間着に着替えた俺は居間を覗いたがそこに亜紀の姿はなかった。
しかし洗濯物が畳まれて残っているので、先ほどまでここに居たのは事実だろう。
(ここまでしてくれるなんてなぁ……本当に亜紀は立派過ぎる……俺も相応しい彼氏になれるよう頑張らないとなぁ……)
亜紀の隣に立てるよう、もっともっと努力することを胸に誓いながら改めてその素敵な恋人を探して家の中を歩き回る。
それでも一階には姿が見えず、もしやと思い二階の俺の部屋へと向かいそっと扉を開いた。
果たして俺のベッドの上で、うつぶせになって休んでいる亜紀の姿を見つける。
(学校から帰って夕食の支度から家事までしてくれて……少し疲れが出たのかなぁ……)
もしも寝てたら起こすのもかわいそうだと思い、物音を立てないようゆっくりと部屋の中に滑り込んだ。
「んぅ……史郎ぉ……はぁ……良い匂い……史郎の……はぅ……ぅぅ……んっ……」
「っ!?」
そこで亜紀の口から悩ましい吐息が漏れていることに気が付いて、俺は固まってしまう。
「史郎ぉ……好きぃ……大好きぃ……んぅ……はぅ……史郎……史郎ぉ……」
どうやら亜紀はベッドに付いている俺の匂いを嗅ぐことに夢中になっているようで、こちらには全く気付いた様子はなかった。
更によく見れば、亜紀は自らの手を身体の下にうずめたままもぞもぞと身体を動かし続けている。
(あ、亜紀……そ、それはちょっと……刺激が強すぎるぞっ!!)
何やら衝撃が強すぎて声が出せないまま、それでも本能的に引き寄せられるように近づいて行ってしまう俺。
「んふぅ……し、史郎ぉ……しろ……ふぇっ?」
「っ!?」
そのせいでふと目を開いた亜紀に気づかれてしまう。
ばっちりと俺と視線を合わせた亜紀は、一瞬あっけにとられたかのような声を洩らした。
しかしすぐに自らの状態を思い出したようで、顔を真っ赤に染めて凄まじい勢いで布団を頭からかぶってしまった。
「し、史郎っ!? み、見てっ!? 見てたっ!? い、いつから見られたっ!? えっ!? ええぇええっ!?」
「す、すまん亜紀っ!! 風呂から上がったって言っても返事がないから様子を見に……その……すまんっ!!」
「あ、あああ……あうぅううううっ!!」
物凄く恥ずかしそうに、布団にくるまったまま俺のベッドに何度も身体を叩きつける亜紀。
「お、落ち着いて亜紀っ!! お、俺全然気にしてないからっ!! む、むしろなんかそこまで想われてるって分かって嬉しかったからっ!!」
「ち、違うのっ!! 違うんだからっ!! た、たまたまちょっと疲れたなぁって休みにきてベッドに横になったら史郎の匂いがしてそれでいつも一人でしてるみたいに……じゃ、じゃなくてっ!! と、とにかく違うのぉおっ!!」
「わ、わかったからっ!! わ、忘れるからっ!! と、とにかく落ち着いてくれ亜紀ぃっ!!」
じたばたとベッドの上で暴れまわる芋虫状の亜紀を俺は必死で宥めるのだった。
「お、落ちっ!? 落ち着けってっ!? す、好きな人にあ、あんな……お、おな……へ、変態的なところ見られて落ち着けるわけないよぉおおっ!!」
「だ、だからむしろ嬉しかったからっ!! 全然平気だからっ!!」
「へ、平気って……平気だっていうなら史郎もやって見せてよぉっ!!」
「え……えぇえええっ!?」
「や、やっぱり嘘なんだぁ……うぅ……わ、私の馬鹿馬鹿馬鹿ぁあああっ!!」
「う、うぐぐ……わ、わかった……あ、亜紀がそれで落ち着くって言うなら……その……や、やるよ……」
「ふぇぇっ!? ほ、本当にっ!? じゃ、じゃなくてっ!! や、やっぱり今の無しぃっ!! わ、私そんなの見て喜ぶ変態さんじゃないもんっ!! だ、だから脱がないでいい………………ごくっ」
亜紀好感度+10
*****
亜紀好感度100以上
「良いお湯だなぁ……」
「そ、そぉ……ならよかったぁ……」
「ああ、最高……ってあ、亜紀ぃっ!?」
「え、えへへ……き、来ちゃった……」
湯船につかって寛いでいると、そこに一糸まとわぬ姿の亜紀が入ってきた。
タオルすら持たず、文字通りの全裸を晒しながらも大事なところを隠そうともせず同じく湯船につかる亜紀。
そしてそのまま俺の身体の上に乗っかってくる。
(や、柔らけぇ……そ、そして俺の腰の上に亜紀のお尻が……こ、これは不味いってっ!?)
慌てて腰を引いて硬いものが当たらないようにする俺。
そんな俺の様子に気づいているのか、亜紀はニコリと笑うと……くるりと反転して今度は抱き着いてくる。
当然お互いの肌と肌が密着して、弾力のある胸部の感触がダイレクトに伝わってくる。
「あ、温かいねぇ史郎ぉ……気持ちいい?」
「あ、ああ……き、気持ち良すぎて……あ、頭が変になりそうだよ……」
「ふ、ふふ……よ、よかったぁ……もっともっと……気持ちよくなってねぇ」
俺の言葉に亜紀は妖艶な笑みを零すと、身体を軽く上下に動かして肌と肌を擦り合わせながら顔を寄せて唇を奪ってくるのだった。
(あ、ああ……し、舌が入って……うぅ……こ、こんなの……ヤバすぎるだろ……)
まるで逆上せてしまったかのように頭の中が蕩けていくのを感じながら、俺はこの快感に身をゆだねることにするのだった。
「んぅ……はぁ……ふふ、史郎……私の身体……洗ってくれるぅ?」
「あぁ……も、もう終わ……じゃ、じゃなくても、もちろんいいぞっ!!」
「ありがとう……だけど私今ちょっと肌弱いから……素手で洗ってね?」
「っ!?」
「もちろん隅々まで、ね……洗い残しちゃ……ヤダよ?」
「っ!?」
亜紀好感度+50
*****
亜紀好感度50未満
「史郎、替えの服ここに置いておくねぇ~」
「お、おうっ!! あ、ありがとなっ!!」
「うふふ、彼女としてこれぐらいとーぜんだよぉ……ちゃんと着てきてよぉ~」
「あ、当たり前だろっ!! いつかの亜紀じゃあるまいしっ!!」
「あれあれぇ~、なんのことぉ~?」
風呂場の扉越しにそんなやり取りをする俺たち。
少しだけ入ってくるんじゃないかと期待半分だったが、流石にそこまではしないようだ。
(ま、まあこのやり取りだけで十分幸せだが……物凄く夫婦っぽいやり取りだったなぁ……ふふ……)
亜紀の思いやりが嬉しくて、俺はすぐにでも愛おしい恋人の顔が見たくなった。
だから急いでお風呂を済ませて上がると、タオルで身体を拭きつつ亜紀が用意してくれた服に手を伸ばし……固まった。
「……あ、あ、亜紀ぃいいいいっ!! お、お前何考えてんだぁあああっ!」
「なぁにぃ? そのお洋服気にいらなかったぁ?」
「き、気に居るも何も……これお前のメイド服じゃねぇかぁあああっ!!」
いつぞや洋服屋で購入したメイド服がご丁寧に折り畳まれている。
ゴシックロリータ調でもちろん下はスカートだ……おまけに女物の下着までセットになっている。
(こ、これって前に亜紀の部屋で見た覚えが……じゃ、じゃなくて何考えてんだよ亜紀ぃいっ!?)
まさかこんなもんを男の俺が着て出ていくわけにはいかない。
だから違う服を取ろうと、脱衣所の扉を開けようとして……外で悪戯っ子のように微笑みながらこちらを見つめている亜紀を見つけてすぐに閉じた。
「あれあれぇ~、どうしたの史郎ぉ~? 早く出てきてよぉ~?」
「い、いや亜紀……そ、そこどいて……」
「えぇ~? 私もすぐお風呂入るからここで史郎が出てくるの待ってるよぉ~?」
「そ、そんな……っ」
とても嬉しそうな声で語る亜紀をしり目に、慌てて脱衣所内を探すが何故か他に着替えらしい着替えは全くなかった。
こうなると取れる手は二つ、大事なところだけタオルで隠して出るか……諦めて男らしく着替えるか。
(いやむしろ男らしくないんだけど……くぅううっ!! メイド服を買わせた過去の俺の馬鹿ぁあああっ!!)
「史郎ぉ~、早く出てよぉ~」
「ま、待ってくれ……お、俺が悪かったから着替えを……」
「聞こえなぁ~いっ!! 早く出ないとドア開けちゃうよぉ~?」
「っ!?」
亜紀の言葉に弾かれたように股間を抑えつつ、俺はちらりとメイド服とタオルと交互に眺めると……
→①ヤケクソ気味にタオル一枚巻いた状態で飛び出した。
②男らしく堂々と、メイド服を着こんでいった。
「どうしたの史郎ぉ? 早くしないとぉ……」
「わ、わかったよっ!! い、今上がるよっ!!」
「えぇ……あっ!? き、きゃぁ~……し、史郎のエッチぃ~」
タオル一枚巻いて飛び出した俺を見ると、亜紀はどこか余裕のある声で悲鳴をあげて顔を赤く染めながら……唇を緩ませて俺の身体を舐めるように見回してくるのだった。
「も、もぉ……し、史郎ったらは、恥ずかしい……あぁ……幼稚園の頃とはまるで……」
「あ、亜紀っ!? い、いいからお風呂入ってくれぇっ!!」
「は、はぁい………………えいっ!!」
「ちょっ!? た、タオルを捲ろうとしないのぉっ!?」
亜紀好感度+5
*****
「聞こえなぁ~いっ!! 早く出ないとドア開けちゃうよぉ~?」
「っ!?」
亜紀の言葉に弾かれたように股間を抑えつつ、俺はちらりとメイド服とタオルと交互に眺めると……
①ヤケクソ気味にタオル一枚巻いた状態で飛び出した。
→②男らしく堂々と、メイド服を着こんでいった。
「う、うぐぐ……わ、わかったよ……ちょっと待って……」
俺は色々と諦めると亜紀が用意したメイド服に袖を通していった。
亜紀が穿いていたであろう下着を身に着けたことで興奮がやばいし、何より全体的にきつかったが何とか着ることに成功した。
「ま、待たせたな……こ、これでいいのか?」
「あ、あはははっ!! し、史郎凄く似合ってるぅうっ!!」
おずおずと顔を出した俺を見るなり、手を叩いて笑い転げる亜紀。
もうこうなったらせっかくなのでスカートの端を両手でつまみつつ頭を下げてやることにした。
「初めましてご主人様ぁ、新人メイドの史郎でぇす」
「はははっ!! あはははっ!! し、史郎可愛いよぉっ!!」
「そ、そうでございますかぁ……あ、ああっ!! す、スカートめくっちゃ駄目ですぅっ!!」
「だ、だって可愛いんだもぉんっ!! ああもう、ストッキングも用意すればよかったぁ~っ!!」
そう言って楽しそうにしている亜紀は、年齢相応の幼さと可愛らしさが見えて……そんな恋人の姿を見ていると何故か怒りが込み上げるどころか俺まで楽しくなってきてしまうのだった。
「はぁ……史郎最高だよぉ……」
「それは良かったなぁ……それよりそろそろ風呂に入っちゃえよ」
「はぁい……ありがとう史郎、こんなバカなこと付き合ってくれて……代わりに私も同じことしてあげるからねぇ」
「えっ……そ、それってっ!?」
「私に着てほしいお洋服……用意しておいてね?」
ウインクして脱衣所のドアを閉めた亜紀の言葉にしばらく固まった俺だが、すぐに部屋に向かって全速力でダッシュするのだった。
「あれでもないっ!! これでもないっ!! くそぉ、亮えもぉんっ!! あの衣装五分以内に持ってきてぇええええっ!!」
亜紀好感度+2
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