★史郎と亜紀⑫
「なあ、史郎……俺に何か言うことないかなぁ?」
「いや別に……あはは、亜紀ったらぁくすぐったいぞぉ~」
「えへへぇ~、だって史郎の顔に何かついてるように見えたんだもぉん」
俺の隣に並んで歩きながら、時々ほっぺたをつんつんしてくる亜紀。
その可愛い姿にデレデレしながら、帰路を歩く俺にさっきから亮はしつこく質問を投げかけてくる。
「別に妬んだりなんかほとんどしないから正直に言おうぜぇ……き、霧島さんもどうなのよこれ?」
「嵐野君に言わないといけないことぉ? 何かあったかなぁ……ああん、史郎何するのぉ?」
「ふふふ、髪の毛が風で乱れてたから直してあげようと思ってね」
そういう名目で亜紀の首筋を手の甲で擦り、たまに耳たぶを指の間に挟んだりしてその感触を堪能してみる。
するとくすぐったいのか、目を細めて身じろぎする様がまた可愛くてついつい長々と続けてしまう。
「そ、そうは思えないんだが……なあ本当の本当にこの場で居た堪れない思いをしている俺に対して言うべきことはないのですかぁ?」
「うーん、何だろうなぁ……ああ、亜紀ぃ~何するんだぁ~?」
「んふふ……こうしてほっぺたで抑え込まれたら動かせないでしょぉ~」
首をまげて俺の手を自らの肩とほっぺたで挟み込み動けなくした亜紀は、そのまま目を閉じるとゆっくりと頭を動かし頬擦りしてくる。
「史郎の手……やっぱり男の子の手なんだねぇ……」
「亜紀のほっぺたもモチモチで、肌はきめ細かいし……女の子だなぁって思うよ……触れてるだけで気持ちいいよ……」
「私も上手く言えないけど……凄く頼りがいを感じて……良いなぁって……」
「…………げほぉ」
「「っ!?」」
急に苦しそうな声が聞こえて、慌てて振り返った俺たちの目に絶望的な表情で蹲る亮の姿が飛び込んできた。
「と、亮? ど、どうしたんだ?」
「あ、嵐野君? 大丈夫? 体調悪いなら無理しないで今日はお家帰ったらぁ?」
「ぐぅぅ……へ、平気だ……平気だよ畜生っ!! この程度で負けるもんかぁああっ!!」
胸のあたりを抑えながら絶叫して起き上がる亮……恥ずかしいからやめて欲しい。
現に辺りを歩いていた人たちも亮のことを不審者を見る目で見て……いない。
「が、頑張れ嵐野……お前がやらなきゃ誰がやる」
「そ、そうだ……そのバカッ……共に思い知らせてやれ……」
「お兄ちゃん頑張ってぇ……」
(なんか亮が物凄く同情されてる……一体どうなってんだ?)
同級生の男子や通りがかりの社会人、果ては小学生の女の子にまで声援を送られている。
「あ、ありがとよ皆……オラもう少し頑張ってみるぞ……」
「……なあ亮よぉ、この状況どういうことだよ? お前こそ俺たちに言わなきゃいけないことがあるんじゃないか?」
「うんうん、最近の嵐野君何か変だよぉ?」
「お、お前らが言うなよぉ……うぐぐぅ……し、しかし俺が指摘しないとこいつらいつまでも公共の場で……頑張れ俺頑張るんだ……」
亮は何やらよくわからないことをぶつぶつと呟き続けている。
そんないつもと様子の違う亮を見ていると……
亜紀好感度20未満の場合
→①本当に体調不良なのではないかと不安になる。
②もう置いて帰ってさっさと亜紀とイチャつきたくなってくる。
「亮……本当に大丈夫か?」
「そうだよ、嵐野君少し変……いつも変だけど今日は特に変だよ?」
「……はぁ……大丈夫、この程度で俺はへこたれねぇよっ!!」
亮は特大の溜息を吐きながら立ち上がると、何度か頬を叩いていつもの調子を取り戻した。
「が、頑張れ嵐野……お前がナンバーワンだ……」
「負けるんじゃないぞ……はぁ……俺も若いうちに青春したかったぁ……」
「お兄ちゃんファイトぉ~」
(めちゃくちゃ応援されてる……マジで何がどうなってんだか……)
「ありがとよ皆っ!! よぉし、じゃあ今度こそお前らの関係について洗いざらい話してもらうからなっ!!」
「俺たちの関係って……幼馴染なのは良く知ってるだろ?」
「幼馴染っていうレベルじゃねぇだろお前らはぁっ!!」
「もぉ、嵐野君はまたレベルとかゲーム用語を口にしてぇ……公共の場でそーいうのあんまりよくないと思うよぉ?」
「良くねぇのはそっちだから霧島さぁんっ!!」
喚きながら俺たちの後をついてくる亮に少しだけ呆れながらも、元気になったようなので安堵する俺たち。
「わかったわかった、全く分からないけどわかったから……さっさと帰って遊ぼうぜ」
「そうだよぉ、私だって史郎に手取り足取り指導を受けて上達してるんだからぁ……今度という今度は負けないんだからねぇ」
俺も亜紀も嫌々……ではなく笑顔で答える。
亜紀も泊まりでさえなければ、眠るまでの時間俺を独占できるから亮との関係をあまり気にしなくなった。
なにより何だかんだで友達と騒がしく遊ぶのが楽しいのは事実なのだ。
(亮に彼女が出来ればダブルデートとかしても良いけど……それまではこういう付き合いを続けてもいいかなぁ……)
亜紀の方もわかってくれているようで、俺が視線を投げかけると軽く頷きかけてくれる。
だから俺は何の憂いもなく、こうして友人づき合いも続けていくことができるのだった。
「ぐ、ぐぅうう……こ、こうなったら……今日のゲームで俺が勝ったら今度こそ素直にお前らの関係を話してもらうからなぁっ!!」
「はいはい……じゃあ俺たちが勝ったらそっちにも言うこと聞いてもらうぞ、なあ亜紀?」
「そーだねぇ……私が勝ったら、彼女ができるまで史郎に接触禁止ってことにしちゃおうかなぁ」
「ちょぉおっ!? き、霧島さんそれは勘弁してぇっ!!」
(あ、亜紀さん……やっぱり亮が鬱陶しいとか思ってませんかあなた?)
亜紀好感度+5
*****
亮は何やらよくわからないことをぶつぶつと呟き続けている。
そんないつもと様子の違う亮を見ていると……
亜紀好感度20未満の場合
①本当に体調不良なのではないかと不安になる。
→②もう置いて帰ってさっさと亜紀とイチャつきたくなってくる。
(こんなことしてる暇があるなら、さっさと帰って亜紀と本格的にいちゃつきたいって思ってしまう……俺は重症だ……)
初めてできた親友で、こいつと遊んでいる時間は本当に楽しいと感じていた。
しかし今は少しでも長く亜紀と二人きりで過ごしたいと考えてしまう。
(別に亮が嫌いになったとか鬱陶しくなったとかじゃないんだ……だけどなぁ……)
ちらりと亜紀に視線を向けるとすぐに目と目が合ってしまう。
きっと亜紀がずっと俺を見つめていたからだろう、俺も同じようにずっと亜紀を見つめていたいと思ってしまう。
「……なぁ、お前ら本当に……いや何でもねぇ今日は疲れた……帰るわ俺……」
「そ、そうか……マジで無理すんなよ」
あの亮が俺と遊ぶことを放棄して帰ろうとするのはよっぽどのことだと思う。
だから止めることなんかできなかった……むしろ好都合だとすら思ってしまった。
(俺ってマジで薄情な人間かもな……悪い亮……後で電話するから……)
ふらふらと立ち去る亮の後姿を見て、僅かに自己嫌悪が湧き上がってくる。
「嵐野君、大丈夫かなぁ?」
「ちょ、ちょっと心配だから後で電話するよ」
「そーだねぇ……けどこれで……これじゃあこの後二人っきりだね」
少しだけ申し訳なさそうにしながらも、亜紀の口調はどこか嬉しそうにすら感じられた。
どうやら俺と同じ様な思考に至っているらしい。
(マジで済まねぇ亮……だけど俺本当に亜紀が大切なんだ……今だけ許してくれ……)
再度亮に心中で頭を下げながら、俺は今度こそ亜紀の方へと視線を移した。
こちらも亮の後姿を見送っていたが、俺の視線に気づくとすぐにこっちを見て……微笑んでくれるのだった。
「じゃあ……帰ろっか?」
「ああ……早く帰って、今日は……亜紀の部屋に行こうかなぁ?」
「いいけどぉ……べ、ベッドの匂い嗅ぐのは厳禁だからねっ!!」
「ええっ!! あ、亜紀だってよく俺の部屋でベッドに潜り込んで匂いを嗅いでるじゃないかっ!! ず、ずるいぞっ!!」
「だ、だって昨日亮が夢に出たからベッドに……と、とにかく今日は嗅ぐの厳禁なんだからぁっ!!」
亜紀好感度+10
*****
亜紀好感度20以上の場合
→③亜紀が手を引っ張ってきた。
「亮、大丈……っ!?」
亮に近づこうとした俺の手を亜紀が引っ張ってくる。
そして強引に俺の耳元に口を近づけると、そっと囁いてきた。
「史郎……もぉ嵐野君なんか置いて帰ろうよ」
「あ、亜紀っ!? し、しかし……」
ここの所、亜紀と一緒に居ることを優先しすぎて亮とこうして帰ることすら久しぶりだった。
だから流石にこの状態で置いて帰ることに抵抗がある。
(た、確かに早く帰って亜紀と二人きりでいちゃつきたい……けど幾ら何でも亮を……友達をここまでないがしろにするのは……)
どうするべきかわからず、煮え切らないでいる俺を亜紀は少しだけ睨んだかと思うと……ふと何か思い浮かんだようで頬を赤くしながら言葉を続けた。
「い、今すぐ帰るなら……嵐野君より私を取ってくれたら……きょ、今日は……私のか、身体……す、好きなところ……さ、触っていいよ」
「っ!?」
驚いて亜紀を二度見すると、やはり顔中真っ赤に染めたまま……悪戯っ子のように笑って頷いてくる。
だけどその仕草は妙に妖艶で、俺の心臓は激しく跳ね上がった。
(す、好きなところってむ、胸とか……あ、あそこも……っ!?)
思わず亜紀の大事なところに目が向いてしまうが、その視線を受けても彼女は笑みを崩すどころか一層深くするのだった。
「ねぇ……わ、私が居ればいいでしょ……早く二人っきりになろうよ史郎……」
「わ、わかったよ……すまん亮、今日はもう帰るわっ!!」
もう亜紀のこと以外何も考えられず、俺は生唾を飲み込みながら頷くと亮に向かって別れを告げる。
「お、おう……そ、そうか……わかったよじゃあま……」
「そういうことだから、さようなら嵐野君っ!!」
亮の言葉を打ち切る様に亜紀も別れを告げると、そのまま俺の手をひいて帰路を走り出した。
当然俺も逆らおうなどどできず……むしろ亮のことすら忘れ去って嬉々として全速力で駆け出すのだった。
「ありがとう史郎……私を選んでくれて……」
「お、俺は亜紀が一番好きだから……亜紀が居ればそれでいいから……」
「私も史郎だけ居てくれればいいの……他は何もいらないから……だから今日はずっと一緒に居ようね……す、少しぐらいならエッチな事しても良いから……史郎なら……嫌じゃない……されたい……から……」
「あ、ああ……わかったよ亜紀……じゃ、じゃあ帰ったら遠慮なく……す、するから……」
「う、うん……だ、だけど本番はまだ駄目っ!! も、もう少しだけ時間頂戴ねっ!! そ、それ以外なら……が、頑張るから……」
亜紀好感度+50
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