★史郎と亜紀⑪
「やっぱり休日は混んでるねぇ~」
「そうだなぁ……まあこの辺りにある唯一のショッピングモールだしなぁ」
休日を迎え、約束通り良く服を買うため駅前に出来たばかりのショッピングモールへデートしに来た俺たち。
人混みの中を、逸れないためという名目で手と手を握ったまま歩き続ける。
(家族連れも多いけど恋人同士で歩いている人もちらほらと……俺たちもそう見えるのかなぁ……)
前は人が多い場所はどうにも居心地が悪かったが、今は全く何とも思わない。
むしろこんな素敵な恋人がいることを自慢したいような気分ですらあった。
尤も実際に亜紀を見た何割かの男性がこちらを二度見してきたり、さらには隣に立つ俺を見て何とも言えない表情を作っているところを見ると少しだけ複雑な心境になる。
(いやまあ……確かに外見じゃあ俺は全然釣り合わないけどさ……け、けど両思いなんだぞ俺たちはぁっ!!)
優越感と劣等感が入り混じった不思議な感情を抱きながらも、隣を歩く亜紀の笑顔を見たら全てがどうでも良くなってしまう。
ピンクのワンピース風ドレスに身を包む亜紀、恐らく小学生の頃に買ってもらった服をそのまま着ているのだろう。
どことなく子供っぽい格好で、既に可愛いから美人な見た目になってきている亜紀にはちょっとミスマッチ感があるがそれでも俺には十分すぎるほど魅力的に感じられるのだ。
「し、史郎……そんなマジマジと見ないでよぉ……」
「けど亜紀のそういう、余所行きの格好を見るのなんか本当に久しぶりだから……見惚れちゃいそうなんだよ」
こういう関係になる前の亜紀は怠け者で休日はぐーたらするために、家から一歩も出ないか俺の部屋に来て遊ぶぐらいだった。
当然見た目を気にすることもなく、寝間着のままか部屋着のジャージに着替えるぐらいだったのだ。
「うぅ……史郎の嘘つきぃ……自分でもあんまり似合ってないってわかってるんだからぁ……けど他のはもっと子供っぽいし……こんなことならもっと早くお洋服買っておけばよかったぁ……はぁ……」
「まあ確かに子供っぽいけど……それでも亜紀は俺には勿体ないぐらい素敵な女の子だよ……一緒に歩いてて鼻が高いからね」
「そ、そぉ……し、史郎も格好いいよ……一緒に歩いてて私……幸せ、だよ」
本当に嬉しそうに呟きながら、繋いでいる俺の腕に寄り添う亜紀。
「い、いや俺こそこの格好……変じゃないか?」
俺もまた自分で洋服など買ったことも無いので、親が用意した訳の分からないローマ字で描かれた上着とジーパンという格好だ。
ぶっちゃけファッションセンスはまるでないから、これが似合ってるのかダサいのかまるで分らなかった。
それでも何度も鏡を見ながら、髪型などと合わせてそれなりに違和感がない程度には外見と合わせたつもりだった。
「史郎は素で格好いいから、何を着てもすっごい素敵なの……私の自慢の幼馴染なの」
「それは亜紀の方だろ、こんなに見た身は綺麗なのに中身は可愛くて……世界一素敵な幼馴染だ」
「違うのぉ~、格好いいのも素敵なのも史郎の方なのぉ~」
「いやいや、可愛いのも魅力的なのも亜紀の方だってぇ」
お互いに相手を褒め合いながらより身体を密着させる俺たち。
もちろん歩きずらくなるからさらに速度は落ちるけど、そんなことどうでもよかった。
むしろデートの時間を少しでも長引かせたい俺たちからすれば好都合なぐらいだ。
(ああ、本当に幸せだ……)
「ふふ……」
「何笑ってるの史郎ぉ~、えへへ……」
「そう言う亜紀だって……へへ」
「ああ、また笑ったぁ……もお史郎ったらぁ……えへ……」
顔を見合わせて、視線が合うたびに自然と笑顔になってしまう。
本当に、ただ手をつないで歩いているだけなのにどうしてこんなにも幸せなのだろうか。
(本当にずっと……こうしていたいなぁ……)
「ふふ……亜紀」
「なぁに史郎ぉ~」
「なんでもない呼んだだけ……亜紀ぃ~」
「もぉ史郎ったらぁ……じゃあ私も……史郎、史郎ぉ~」
「おお、三回も呼んだなぁ~……よぉし亜紀、亜紀、亜紀ぃ~」
無駄に張り合って互いの名前を呼び合う俺たち。
こんなことが心底楽しいと思えるのは我ながら不思議なばかりだ。
「えへへ、デートってこんなに楽しいんだねぇ……私もう幸せすぎて変になっちゃいそう」
亜紀も同じ気持ちのようで、いつも以上に楽しそうにしている。
「俺も楽しくて仕方ないよ、家でゲームしてた時以上だなぁ……」
「そうなんだぁ、私は家で史郎と遊んでるのも楽しいけどなぁ~」
「おお、言ったなぁ~……じゃあまたくだらないゲームに付き合わせちゃうぞぉ~」
「へへん、別にいいもんねぇ~……最近の史郎が進めるゲームは結構面白いからね」
「ちゃんと考えてるからなぁ……それに亜紀が素直につまらないものはそう言ってくれるからチョイスしやすいんだよ」
(今までが酷すぎたのもあるけどな……結局俺はどこか独りよがりだったんだろうなぁ……)
改めてお互いに腹を割って話すようになって良かったと思う。
良いことも悪いことも、正直に伝えればそれが次につながるのだから。
おかげで俺はどんどん亜紀の新しい魅力に気づいていくし、亜紀も前よりずっと笑顔でいる時間が多くなっている。
(この調子でもっともっと仲良くなっていきたいなぁ……そのためにも何かの記念日にもう一回ちゃんと告白しよう……)
お互いに両思いであることは確実だし、実際のところデートもしている以上は恋人同士と言っても問題ない関係だと思う。
だけどやはりこういうことははっきりさせておかなければ駄目なのだと今の俺は理解している。
(近いうちにちゃんと俺と恋人になってほしいって伝えて……名実ともに幼馴染という関係から恋人にならないとな……)
「そうだったんだねぇ……あ、このお店だよ史郎」
「おおう、通り過ぎるところだった……危ない危ない」
亜紀のことを考え過ぎていて、危うく通り過ぎるところだったおしゃれな洋服屋へ足を踏み入れていく。
(前の俺ならプレッシャーを感じそうな場所だなぁ……けど亜紀と一緒なら何ともないぜ)
だから堂々と胸を張りながら亜紀と二人であちこち見て回る。
「う、うーん……史郎、私に似合いそうな服ってどんなのだと思う?」
「亜紀ぃ、俺にファッションセンスがあると思うのかぁ?」
「そんなのどーでもいいの……私が着たいのは史郎の好みの洋服なんだからぁ」
「そ、そうなのか……」
「そーなのぉ、だから……史郎が私に着てほしい洋服を選んでよぉ」
はっきりと言い切った亜紀、口調こそ甘えが混じっているがその表情は結構真剣だった。
「ありがとう亜紀、その気持ちはすごく嬉しいよ……」
「じゃあ……選んでくれる?」
「わかったよ、そこまで言ってくれるんだ……俺なりに亜紀に似合いそうな洋服を選ばせてもらうよ」
「もぉ、私に着せたい服でいいのにぃ……けど、任せたよ史郎」
にっこり笑って俺を信頼するかのように身体を預ける亜紀と並んで歩きながら俺は……
→①亜紀に似合いそうな清楚な洋服を選ぶのだった。
②亜紀の美貌を生かせそうな露出度の高い格好を選んでみた。
③店の片隅にあったメイド服に目が奪われてしまった。
「これとこれ……合わせてみてくれないか」
「はぁい……じゃあ、ちょっと待っててねぇ」
俺が渡した洋服をもって試着室に入ると、少ししてから姿を現した亜紀。
「ど、どう……かなぁ……?」
「うん、凄く可愛い……似合ってるよ……」
「え、えへへ……私もこれ着やすいし……気に入っちゃったぁ……流石史郎は私の事よくわかってるねぇ」
どうやら本人も気に入ってくれたようで、着替えなおすとごきげんな様子でその洋服を抱きしめる亜紀。
そんな愛おしい恋人を、俺は飽きることなく見つめ続けるのだった。
「えへへ……よぉし、次は史郎のお洋服を選ぼっか」
「そうだなぁ……じゃあ今度は亜紀が俺に似合いそうな……着せたい洋服を選んでくれよ」
「はぁい……ふふ、何を着せちゃおうかなぁ~?」
亜紀好感度+5
*****
「わかったよ、そこまで言ってくれるんだ……俺なりに亜紀に似合いそうな洋服を選ばせてもらうよ」
「もぉ、私に着せたい服でいいのにぃ……けど、任せたよ史郎」
にっこり笑って俺を信頼するかのように身体を預ける亜紀と並んで歩きながら俺は……
①亜紀に似合いそうな清楚な洋服を選ぶのだった。
→②亜紀の美貌を生かせそうな露出度の高い格好を選んでみた。
③店の片隅にあったメイド服に目が奪われてしまった。
(普段来てる服が子供っぽいし……何より亜紀は意外とスタイルも良い……案外肌が露出する系の服が似合うんじゃないか?)
少しでも亜紀の魅力が引き出せそうな服……ついでに俺がちょっとエッチな亜紀の姿を見たいという気持ちもあった。
だからちょうど目についた、へそが見えるぐらい短い上着に太ももが大胆に見えているショートパンツを渡してみることにした。
「じゃ、じゃあ……た、試しにこれ着てみてくれない?」
「え……えぇっ!? し、史郎本気ぃっ!?」
流石に予想外だったのか驚きの声を上げる亜紀。
「い、嫌ならいいんだっ!! わ、悪いじゃあ違うの……」
「う、ううんっ!! し、史郎が選んでくれたんだから着てみる……ね」
「い、いいのかっ!?」
「う、うん……だ、だけど似合ってなくても……笑わないで……よ?」
恥ずかしそうな亜紀の言葉に何度も首を縦に振って見せると、ため息をつきながら更衣室へと入って行った。
「……う、うわぁっ!?」
「ど、どうした亜紀っ!?」
「うぅ……し、史郎これ凄い……え、エッチすぎるよぉ……」
「そ、そうなのかっ!! じゃ、じゃあぜひ……い、いや一応見せてほしいなぁ……なんて……」
「し、史郎の馬鹿ぁ!! ドスケベぇっ!! 変態っ!!」
更衣室の中から亜紀の罵声が聞こえてくる。
(うぅ……や、やっぱり見せてはくれないかぁ……)
内心諦めかけて落ち込んでいた俺だが、何故か亜紀はそれきり沈黙してしまう。
ひょっとして嫌われてしまったんじゃないかと慌てて謝罪しようとしたタイミングで、ようやく亜紀がか細い声を洩らした。
「……ち、近くに誰もいない?」
「えっ? あ、ああ……誰もいないけど……」
「うぅ……す、少しだけ……だからね……」
「っ!?」
そう言って亜紀はゆっくりと更衣室のカーテンを開いて……その姿を曝け出してくれた。
恥ずかしそうに身体を丸めて露出部分を隠そうとして、それでも目立つ肌色に俺の目は釘付けになる。
(あ、亜紀の肌……す、すごい綺麗でつやつやで……さ、触りたいっ!! あのおへそを弄りたいっ!!)
「し、史郎……め、目が怖いよぉ……それに鼻息も荒いよぉ……」
「はぁはぁ……あ、亜紀……す、すごく似合ってる……美しくて可愛くてエッチで……凄いとしか言いようが……」
「そ、それ褒めてるのぉ……も、もぉ史郎って本当にムッツリなんだからぁ……」
呆れたよう呟く亜紀はまるでタコみたいに身体中羞恥に染めながらも、その表情には僅かに得意げな様子が見えた。
俺の食いつきと、実際に自分のスタイルの良さを再認識できて内心まんざらでもないのだろう。
「で、でも似合ってるよ……ちょっとエッチだけど本当に似合ってる……すっごい魅力的だよ」
「はいはい……けどこれを普段から着ようと思ったらちょっと髪の毛とか染めないと浮いちゃうかなぁ……けどなぁ……」
亜紀の言葉に茶髪や金髪にしてこの洋服を着ている様を想像して……露骨にギャルっぽくなることに気が付いた。
「……そうだなぁ、やっぱり止めておいた方がいいよなぁ」
「うん、まだ私中学生だし……それにやっぱり恥ずかしいよこれ……史郎の前以外じゃとても着れないよぉ……」
「そうだね……俺も亜紀のこんな姿他の奴に見せたくないや……俺だけのものにしたいから……」
「も、もぉ……史郎ったらぁ……えへへ……じゃ、じゃなくてぇ……と、とにかくもうお終いっ!! 着替えるからねっ!!」
そしてさっさと元の洋服に着替えてしまった亜紀に、少しだけ残念だと思いながら俺は改めて似合いそうな清楚な洋服を渡してあげるのだった。
「よし、じゃあこっちを……な、何見てるの亜紀……び、ビキニパンツぅっ!?」
「私にあんなの着せたんだから史郎もこれ着てみようねぇ……ふふふぅ、きっとよく似合うよぉ~」
「そ、そんなぁ……か、勘弁してくださぁいっ!!」
「絶対駄目ぇ~、ほらほら早く着替えて着替えてぇ~」
「ひぃいいっ!!」
亜紀好感度+10
*****
「わかったよ、そこまで言ってくれるんだ……俺なりに亜紀に似合いそうな洋服を選ばせてもらうよ」
「もぉ、私に着せたい服でいいのにぃ……けど、任せたよ史郎」
にっこり笑って俺を信頼するかのように身体を預ける亜紀と並んで歩きながら俺は……
①亜紀に似合いそうな清楚な洋服を選ぶのだった。
②亜紀の美貌を生かせそうな露出度の高い格好を選んでみた。
→③店の片隅にあったメイド服に目が奪われてしまった。
(亜紀に似合いそうな……こ、これはぁああっ!?)
ふと視界の隅に、ゴシックロリータ調のメイド服を見つけてしまう。
反射的に手に取ると、そのまま亜紀に向かって献上する俺。
「し、史郎……こ、これ着てほしいの?」
「……い、一度だけで良いので……お、お願いいたします」
「い、いや別にいいけどさぁ……うーん、これってただのコスプレ衣装じゃ……」
ぶつくさ文句を言いながらも素直にメイド服をもって更衣室に入っていく亜紀。
ドキドキワクワクしながら待機すること数分、カーテンが開きメイド服姿の亜紀が姿を現した。
(お……おぉおおおおっ!!)
黒が主体のドレス風衣装その上に白いエプロンが付いているメイド服。
それを着ている亜紀は、まるでゲームのキャラクターのような幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「意外と可愛いかもねこれ……どう、史郎似合ってる?」
案外まんざらでもないようで、ノリノリでその場で回転して見せてくれる亜紀。
ヒラヒラな部分がふわりと軽く宙に舞うその姿に、俺は目がくぎ付けとなった。
(と、亮見ているかっ!? 楽園は本当にあったんだっ!! ここにあったんだっ!!)
訳の分からないテンションで脳内が盛り上がっていく。
「史郎ぉ~? 何とか言ってよぉ~」
「い、いやとっっっっても似合ってるっ!! 最高だっ!! 亜紀にこんな姿でご奉仕されたら俺はもう……っ!!」
「ご、ご奉仕って何よぉ……大丈夫史郎?」
「だ、大丈夫だから……と、とりあえず俺のことはご主人様と呼んでみてくれっ!!」
せっかくの機会なので欲望を全開にしてお願いしてみた。
「うーん、全然大丈夫じゃない……えっとぉ……ご主人様ぁ?」
「はぅうっ!?」
呆れながらも上目遣いで、少し間延びした呼び方をする亜紀……可愛すぎて理性が吹き飛びそうになる。
「うわぁ……史郎ってこんなにコスプレ好きだったんだぁ……へぇ~、意外というか想像通りと言うか……」
「し、史郎じゃなくてご主人様だろぉっ!! ほらもう一回っ!!」
「はいはい……しっかりしてくださいませご主人様ぁ~」
「はうぅっ!?」
「あははっ!! 史郎ったら面白ぉい~」
こんな間抜けな様を晒している俺を見て、それでも亜紀は嬉しそうに笑ってくれるのだった。
「仕方ないなぁ、これはこれで買っておくとしてぇ……普段着もちゃんと選んでね……」
「はぁい……だ、だけどもう少しだけ鑑賞させて……」
「もぉ、駄目ですよぉご主人様ぁ~……はいはい、終了終了……着替えるから下がってねぇ~」
「あぁ……も、もう少しだけぇ~」
亜紀好感度+1
フラグ:コスプレ衣装にチェック
【読者の皆様にお願いがあります】
この作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。
ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。
作者は単純なのでとても喜びます。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。
よろしくお願いいたします。




