★史郎と亜紀⑩
「そうだ史郎っ!! 実は俺この間外国製のゲームで複数人協力プレイができるゲーム見つけたんだぜっ!! この後で俺の家かお前の家でやろうぜっ!!」
「……声が大きいぜ亮よぉ」
「わ、悪い……けど絶対一緒にやったら楽しいやつだからっ!! しかも四人まで同時にプレイ出来るんだぜっ!!」
帰りの支度をしていた俺の元へやってきて嬉しそうに叫ぶ亮。
当然近くに居たクラスメイトの耳に届いて、特に女性陣からは露骨に呆れたような視線が向けられてしまう。
前はこんなもの全く気にならなかったから亮と一緒に騒いでいたが、今となってはそうはいかない。
(俺の評判が下がれば、そんな奴と付き合っている亜紀にも変な目が向きかねない……それだけは嫌だ)
俺が見下される分には何とも思わないが、亜紀にまで迷惑をかけるわけにはいかない。
尤もまだ亮にすら付き合い始めたことは伝えていないから、亜紀さえおしゃべりしていなければ俺たちの関係が変化したことは誰もしらないはずだ。
それでも毎日手を繋いだ上で寄り添って登校しているのだから、そのうち自然と噂になって広がりそうなものだ。
(正確にはまだ両思いだと確信しただけではっきりと恋人同士になったわけじゃないけど、亜紀のほうがどう捉えてるかわからないし友達にそう伝えてるかも……そう言えば亜紀の友達って俺知らないなぁ?)
どうやらまだまだ俺たちの間には話し合わなければいけないことが多いようだ。
しかし今はまず目の前の亮に対処しないといけない。
「わかったから、とにかく帰りながら話そうな……ちょっと亜紀に声をかけてくる」
「おうよっ!! 何なら霧島さんも一緒に出来……今お前霧島さんのこと名前で……?」
何やら首をかしげている亮を置いて、俺は一度教室を出ると亜紀のいるクラスへと向かった。
(はぁ……どうしてクラスが違うんだろう……前は教科書とか貸したりできたからこれで良いって思ってたけど……今は授業中顔見れないのが辛い……まあそしたら成績下がるから不味いんだけどさぁ……)
「あぁっ!! 史郎っ!!」
考え込んでいると不意に愛しい人の声が聞こえて、笑顔で顔を上げると笑いながらこちらへ駆け寄ってくる亜紀の姿が見えた。
同時に周りの何人かの男子がちらほらと亜紀へ視線を投げかけているのもだ。
亜紀が普通に身支度を整えるようになってからこの調子だ……実は美少女だったという事実に皆が気づき始めているのだ。
「亜紀……そっちも終わったのか?」
「うんっ!! 史郎も終わったんでしょっ!? 今日も一緒に帰ろうねっ!!」
亮と同じ様にとても嬉しそうな声ではしゃぐ亜紀、それを聞いた男子たちが露骨に顔を背けて早足で立ち去っていく。
これではすぐにでも俺たちの仲が噂になってしまいそうだ……だけどちょっと気持ち良いし何より亜紀が嬉しそうなのに文句をつける気には全くなれない。
「ああ……けど今日は亮も一緒なんだが、構わないか?」
「うぅ……べ、別に……いいけどさぁ……」
口ではそう言いながらも、どこか不満げな亜紀。
今までも何度か三人で帰ったことはあったが、こんな様子を見せるのは初めてだった。
「……ひょっとして亜紀って、亮のことにがてだったりするのか?」
「い、いやそーいうわけじゃないんだけど……う、うーん……」
「正直に答えてほしい、俺は亜紀の嫌がることを強要したくないから嫌なことは知っておきたいんだ……仮にそうでも俺は亜紀のことも亮のことも嫌いになったりしないから」
「うぅ……はぁ……そ、そうだね史郎は本音で話してくれてるんだから私もそうしたほうがいいよねぇ……」
ため息をつきながら亜紀は申し訳なさそうに言葉をつづけた。
「苦手なのはその通りだけど……別に嵐野君のことが嫌いってわけじゃないの」
「それは、どういうこと?」
「ほら、嵐野君て騒がしいし私の興味ないゲームのことばっかり話すからどう応対していいかよく分かんないのと……趣味が合うからって史郎を独占しちゃってずるいなぁって思っちゃって……だから苦手なの……」
「ああ……そうだったのか……」
可愛らしい亜紀の告白に、俺は納得しながらも少しだけ喜びを感じてしまう。
素直に思っていたことを話してくれたのもそうだが、それ以上に俺を取られたと思って軽く嫉妬してくれたという事実が嬉しかったのだ。
だから俺は……
→①亜紀に感謝を告げながら、改めて意思を確認することにした。
②亜紀の望むとおりに、二人きりで帰ることにした。
「ごめんな亜紀、後ありがとう……それなのに俺の友好関係に無理して付き合ってくれて……」
「だ、だから別に無理してたわけじゃないよ……前にも言ったけど史郎が楽しそうにしてるのを見るのは好きだから……ただ、その笑顔を嵐野君にだけじゃなくて私に向けてほしいなぁってだけだから……」
「わかったよ、これからはあいつと居るときも亜紀のことをないがしろにしたりしない……しっかり意識するよ」
「も、もぉ……別にいいのにぃ……えへへ……けど嬉しいなぁ……」
そう言って亜紀は俺に寄り添おうとしてきた。
学校の廊下と言うこともあって、人の視線は絶えないが……俺もまた抵抗することなく亜紀を受け入れて腕を絡ませ手をつなぐのだった。
「ふふ……それで亮はどうするかなぁ? 一緒に帰って遊びたいって言ってたけど……」
「そーしても良いよぉ……ただし、このままの状態で行くことぉ」
「あいつ驚きそうだなぁ……だけど受け入れてくれるだろ……よし、行こう亜紀」
「はぁい……もちろん帰ってゲームしてるときもずっとこうだからねぇ~」
「そ、それじゃあコントローラー握れねぇ……か、勝てないじゃないかぁ~」
「そこは愛のパワーで頑張るのぉ~、大丈夫きっと史郎なら片手でも勝てるよっ!!」
亜紀好感度+1
*****
「ほら、嵐野君て騒がしいし私の興味ないゲームのことばっかり話すからどう応対していいかよく分かんないのと……趣味が合うからって史郎を独占しちゃってずるいなぁって思っちゃって……だから苦手なの……」
「ああ……そうだったのか……」
可愛らしい亜紀の告白に、俺は納得しながらも少しだけ喜びを感じてしまう。
素直に思っていたことを話してくれたのもそうだが、それ以上に俺を取られたと思って軽く嫉妬してくれたという事実が嬉しかったのだ。
だから俺は……
①亜紀に感謝を告げながら、改めて意思を確認することにした。
→②亜紀の望むとおりに、二人きりで帰ることにした。
「……じゃあ、やっぱり二人で帰ろう」
「だ、だからそんな気にしなくていいってばぁ……史郎だってお友達と遊ぶ時間ほしいでしょ?」
「それはそうだけど……それ以上に亜紀とイチャイチャしたいんだ、だから亮には悪いけど断るよ」
「そ、そうなんだぁ……えへへ、史郎はそんなに私とイチャイチャしたんだぁ」
そう言って亜紀は、とても緩み切った表情で俺の胸の中に飛び込んできた。
学校の廊下と言うこともあって、人の視線は絶えないが……俺もまた抵抗することなく亜紀を受け入れてその肩に腕を回して抱きかかえるのだった。
「亜紀……大好きだ、ずっとこうしてくっ付いていたいよ」
「私も……史郎とずっとこうしてたいなぁ……ううん、もっともぉっとくっつきたい……」
「じゃあそのためにも、さっさと家に帰ろうか?」
「はぁい……そうしたら私のベッドか史郎のベッドで一緒に横になろうねぇ」
「そ、それってひょっとして……き、期待しても良いんですかっ!?」
「も、もぉ史郎はすぐそればっかりっ!! まだ駄ぁ目ぇ!!」
亜紀好感度+10
【読者の皆様にお願いがあります】
この作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。
ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。
作者は単純なのでとても喜びます。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。
よろしくお願いいたします。




