平日の夜⑦
「くそ……畜生……何だよあいつ……」
同僚が発送し損ねた荷物をどうして俺が代わりに運ばなければいけないのか。
おかげでまたしても仕事が遅れてサービス残業になってしまった。
(もう仕事辞めてしまいたい……だけどお金がないとなぁ……)
帰り道でチラリと横を見れば宝くじ売り場が閉まっている。
俺が帰る時間が遅すぎるためだ。
どうやら俺にはもしも宝くじが当たれば、なんて夢すら見ることが許されないようだ。
(はぁ……夢も希望もない人生……辞めてしまおうか……)
首吊り用の縄はいくらするのか、衝動的に携帯電話で調べそうになる。
(でもそんなことしたら確実に直美ちゃんが見つけるだろうし……迷惑かけるしなぁ)
そう思えば自殺など軽々には選べそうもない。
俺はため息をつきながら帰路を歩いた。
「……あれ、直美ちゃん?」
家に着く途中で、直美らしき後姿を見かけた。
どうやら向こうも帰宅中らしい。
いつも通りのへそ出しショートパンツと露出が激しい格好をしている。
(こんな時間まであんな格好で……しかも一人で歩いて……危ないなぁ)
時刻を確認するともうすぐ十時になる。
流石に心配だ。
俺は声をかけようと近づいて行った。
「直美ちゃ……っ!?」
「おらぁっ!! あれぇ……おじさんじゃんっ!?」
口を開くのと同時に直美の見事な金的が突き刺さり、俺は悶絶することになった。
「うっわぁ……ごめーん、てっきり変質者かと思っちゃったぁっ!!」
「っっっ!?」
「あはは……す、すっごい痛そー……いや本当にごめんってばぁっ!!」
謝罪されるがそれどころではない。
目の前に星が散っている。
死にたくなるぐらい痛い。
「ほ、ほらぁ、肩貸してあげるから立って立ってぇ……」
「うぐぐぅ……た、立つのもキツイから……うぅ……」
「が、我慢我慢、男の子でしょ?」
「男の子だから痛いのぉ……くぅぅ……うぅ……」
涙すら滲んできた。
「もぉ……今度ただでサービスしてあげるからぁ……ほら、帰ろうよぉ~」
「はぁ……はぁ……ふぅ……や、やっと落ち着いてきた……」
「よぉし立って立って……腕組んであげるからぁ……おっぱいの感触でごまかしてかえろぉ?」
わざと腕を正面に抱きかかえ、谷間の間に挟もうとする直美。
確かに心地いいと言えなくもないが……やっぱりそれどころじゃない。
むしろ下手に興奮すると、ちょっと余韻でビクビクしてしまう。
「お、お願いだから普通に帰ろう……おじさん限界……」
「やれやれ……でもよかったぁ、おじさんの大事なもの潰しちゃったかとおもった~……潰れてないよね?」
「……多分」
「後で触って確認してあげようか? もちろんタダでいいよ?」
ニコリと笑いながら短いけれど色々デコレートされている爪先を見せびらかしてくる。
下手に触らせたら色々と傷だらけにされそうだ。
「……お断りしますぅ」
「おじさんさぁ、そんなんだから独り身なんだよ?」
「うぅ……ほっといてよぉ」
「……ほっとけるわけないじゃん……」
唐突にぽつりとつぶやいた直美の言葉はどこか寂し気で、俺は何も言うことができなかった。
「私が一緒に居てあげないと大変なことになりかねないしー……嫌だよーマイク持った人にコメント求められるのー」
「ああ……そうですか……」
「だからその気になったら言ってね、幾らでも相手してあげるからねぇ」
「……考えておくよぉ」




