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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

普通の転生者事情。神様、もう少しだけ時間を下さい。

作者: さうざんと

 ぼくは、見た。暴走車が五歳位の子に迫るのを。


 咄嗟に、その子を突き飛ばす。しかし、ぼくは車に跳ねられ、痛みを感じ、意識を喪った。


 「わぁ」


 ぼくは、目を覚ました。そして、いま、ダンジョンの真上にある城塞都市にいるのを思い出した。


 そう、ぼくは、この世界に、転生したのだ。剣と魔法の世界。貴族の子供として、生を受け、勉強も、武術も魔法も十分に、学ばせてもらった。しかし、ぼくは、長男ではないので貴族にはなれない。だから、ぼくは、冒険者になることにした。と、言うよりそれしか生きて行く道がなかったのだが。


 そして、モンスターを生み出し続けるダンジョンの攻略に向かった。まだ小さいが、大きくなると、周辺の町は、モンスターに襲われてしまう。下手をしたら、国が滅ぶのだ。ぼくは、パーティーをくみ、順調にレベルもあげ、ついに、ダンジョンボスのところまで行けるようになった。とは、いえ、パーティーの何人かは、犠牲の上に成り立っている。だから、今日、ダンジョンボスを倒さなければならない。


 ぼくは、、食事して、装備を整えた。そして、宿を出る。


 その時、天井が一瞬みえた。身体中に痛みが走る。が、すぐに正気に戻る。このあいだから、たまにある症状だ。と、いっても、ここの医者に看てもらっても何もわからないだろう。


「……もしかしたら、長くないのかな」


 そう思いながらも集合場所へ、急ぐ。


 すでに、パーティーの皆がきていた。戦士、魔法使い、僧侶。


「遅いぞ」


「ああ、悪い。じゃあ、行こう」


 そして、僕らはダンジョンに入って行った。


 ダンジョンに入ってからは、順調に戦いを進めていった。ぼくともう一人の戦士が先制攻撃。魔法使いが、魔法で残りを攻撃。さらに戦士グループと、僧侶が攻撃することにより、大概のモンスターは倒せる。やがて、僕らはダンジョンボスのいるホールの前まで来た。


「じゃあ、行くよ」


「リーダーの戦士が、言い、皆が頷く。そして、僕らはホールに突入した。中にいるのはスケルトンロード。二対の腕と四振りの剣を持つ戦士だ。僕と戦士は盾を構えて突入する。スケルトンロードは、右側の剣を二振り同時に振り下ろした。僕らは盾で受け流す。さらに反対の剣を振り下ろす。こちらも盾で受け流す。こちらが攻撃する余裕はない。しかし、  


「よし、ファイヤーボール」


魔法使いが、杖にルーン文字を書いて発動させたファイヤーボール、ぼくと戦士は、その発射タイミングを読んで左右に別れた。ファイヤーボールは、スケルトンロードの胴体にあたり、胸を砕く。更にぼくと戦士は、剣をきりあげで、スケルトンロードの左右の腕を砕いた。


「よし、あとは一気に行くぞ!」


 そして、次の攻撃を加えようとしたとき、ぼくの視界が、ぶれ、天井がみえた。痛みも感じる。ぼくは、スケルトンロードの攻撃をもろに食らった。


「ぐっ、ここで、負ける訳にはいかない!」


 痛みに耐え、ぼくは、剣をスケルトンロードに振り下ろした。頭骨を砕き、スケルトンロードを倒す。と、同時にぼくも倒れた。パーティーメンバーが、ぼくの周りに集まる。


「しっかりしろ、傷は浅いぞ」


 戦士ははげますが、僧侶は青い顔で叫ぶ。


「いけない、早く処置しないと。転送します!」


 僧侶は、ぼくをダンジョン外に転送するらしい。まあ、いい。ダンジョンボスは倒したし、少なくともこの国を救ったんだ。


 やがて、鈍い痛みとともに、ぼくは、気を失った。


「……ここは、どこだ」


 知らない天井。いや、発作の時にいつも見ている天井だ。


「どうだい、気分は」


「……身体中痛いです。ここは、どこですか」


「国立VR医療臨床試験センターだよ。いや、治療がうまくいってよかった」


 この人は、新型脳神経治療の主治医で、このセンターの主任教授だそうだ。要するに、ぼくは、脳死状態だったらしい。しかし、IPS 細胞を脳に注入、脳神経ネットワークの再構築を、VR システムでサポートすることにより行う治療をしていたそうだ。


「で、とりあえず人格の再構築も、終わったようなので、外部端子の除去を行ったわけだよ。あと、人口呼吸器とか、いろんなカテーテルとかね。痛いのは、そのせいさ。あと、身体的なリハビリは続くけど、ほぼ治ったといっていいね」


「じ、じゃあ、何で剣と魔法の世界だったんですか?」

「ああ、ゲーム的にすると、再構築や、リハビリが早く進むからだよ。色んな事情もあるけどね」


 そんなことを、話していると、病室のドアが開き、女の子とその母親が入ってきた。母親は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます。この子を助けてくださいまして。本当に感謝しています」


 8歳位の女の子も母親と一緒に頭を下げた。そして、笑う。


「お兄ちゃん、ありがとうございます」


「あ、いえ、まあ、」


 ……面白い世界だったけど、まあ生きてたし、いいか。そう思い、ぼくは、天井を見上げた。少し、ため息が出た。



 



 


 

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