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22.急転直下

 ギルドの動きが慌ただしくなる。別の職員が外に駆け出し、ボロボロの冒険者たちに報償を支払う。戻ってきた職員が、代官がどうのと言っているから、一緒に依頼を出した領主代理の館に行っていたのだろう。


 その後バタバタして、緊急依頼が出される。依頼内容はポイズングリズリーの討伐だ。討伐ランクも大幅に上がってC級以上となり、依頼額も跳ね上がる。


「緊急依頼です。ギルドの沽券にも関わる事態が発生しました。依頼額は100000リュームです。1体とは限りません。腕に自信のある方を要望します」


 領主代理とギルド双方からの討伐依頼になったようだ。もう先程までのいざこざなんて吹き飛んでしまった。当然俺なんて置いてきぼりだ。


 よろよろとギルドの端に置いてある長椅子に座り込んだ俺は村のことが気にかかっていた。ポイズングリズリーの脅威度は分からないが、もう俺ではどうにもならないだろう。


「先程は失礼しました。同胞よ。不用意な発言でご迷惑をかけてしまいました。あなたのお陰で乱闘騒ぎはうやむやになったようです。感謝を」


 顔を上げて見れば、先ほどのエルフ達が俺に話しかけて来た。


「い、いや俺の方こそ助かったよ。味方してくれてありがとう」


 2人のエルフはにっこり笑いかけて来てそのまま俺の両隣りに腰を下ろした。


「時に同胞よ。随分若く見えるが、どうしてこんなところに? ああ、すまん。私は南方エルフのシャーラだ。そっちのは北方エルフのミーシャだ。キミも北方エルフだろう?」


 なに? 南方エルフ? 北方エルフ? 前世の記憶にもそんなものは無いぞ? ダークエルフじゃないのか? 俺の不審げな様子に気が付いたのだろう。シャーラが言ってきた。


「おや? 南方エルフを見るのは初めてかい? 赤道付近に生息しているんだぞ。太陽のせいで色素が沈着したと言われている。反面北の方に行った同胞は昔のままだったようだ」


 なるほど。人種が違うくらいの認識なのか。地球でもそんなような事を言われてたな。逆だったようにも思えるけど。


「ああ、すまない。初めて見たのでびっくりしたんだ。 俺はシンだ」


「気にするな。誰でも初めてならびっくりする。若いなら特にな。若いんだろう?」


「ああ、15だ。そろそろ16になる」


 年齢を答えた瞬間両脇をがっしり掴まれ、絶対離さないとばかりに抱え込まれる。もちろん胸部装甲に俺の腕が埋もれることなど厭わない様だ。


「――っな! なにを?」


「「確保~~~~!!」」


「15ですって!? あなた! まだ幼子じゃないの! どうしてこんなところに! 保護します。幼子を放置など出来ません」


 えぇ~~。ちょっと待って。幼子って、この世界の成人は15でしょ? 勝手に保護しないでくれ。


「ま、待ってくれ。俺は既に成人している」


「人間の場合でしょう、それは! 60分の15と300分の15が同じ訳ないでしょう!? 100歳以下など子供です」


 うっそ~。


「おいおい、それは言い過ぎだぞ。俺達だって子供になっちまうじゃねぇか」


 びっくりさせんな! 100歳まで保護されるのかと思ったじゃないか。


「ど、どちらにしても保護します。カウル、一度クランハウスに戻ります」


 先ほどから黙って様子を見ていた真っ赤な狼獣人に向かってそう宣言する。真っ赤って言うイメージは主に髪だけどな。


「うん、まあ、ミーシャがそう言うならそれでもいいけど、あれはどうする? あたしは受けてもいいと思うぞ。その子関わりあるんじゃないかい?」


 あれとは緊急依頼のことだ。周囲の冒険者も検討に値する金額の様子だ。依頼は早い者勝ちなのが一般的だ。それに緊急クエストなのでギルドも気合が入っている。


「そうね。任せるわ。受けるなら私達も参加します。その前にこんなに薄汚れてしまった幼子を放置する訳にはいきません。だいぶ苦労したのでしょう。かわいそうに」


「アンタだって薄汚れた、獣人の同胞、それも幼子が居たら直ぐに保護するだろう? あたし達は人間とは違うんだ。同胞を見捨てたりしない。そうだろう?」


「シャーラ、それはそうだけど。エルフは特にそうなんだよな~。同族意識が強過ぎるだろう。全ての同族を保護なんか出来ないんだから」


「せめて独り立ち出来るくらいの手助けは出来ます。今の私たちならです」


 え~と。俺の事はもう決定事項なのか? 俺って似非エルフなんだけど、中身は人間だよ? たぶんだけど。


 エルフ達に両脇を固められたままズルズルと引きずられて、あれよあれよと言う間にギルドを後にする。俺の両腕はまるでびくともしない。いくらなんでも女性にこうも押さえ込まれると言うのはおかしい。


「ちょ、ちょっと待って! どこに連れて行こうとしてるんだ。俺は立派な成人男性だ」


 実力で抜け出せないと踏んだ俺は口先で何とかしようと試みる。なぜこうも動かせない? 不味い事に腕を押さえ込まれているせいでその先、まあ、手の平なんだが、ちょうどイケない部分にあるんだよな。


「どこって、私達のクランハウスですよ。心配しなくても大丈夫です」


 このままだとそのクランハウスとやらに連れ込まれるのか? そこで何をされるのかが分からない以上そうそう連れ込まれる訳にはいかない。


「少し落ち着け! 俺は独立した冒険者だ。ちゃんと一人でもやっている。それに次の依頼を受けないと3日しか猶予が無いんだ」


「Fランクの規定ですね。分かっていますから大丈夫です。お腹は減っていませんか? どうして里を出てしまったのですか?」


 さて、困ったぞ。どうやら事情聴取が始まりそうだ。里なんて最初から住んだことどころか行ったことすらないよ。

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