21.エルフ?
祝令和! 音実2回目投稿です。
俺がギルドに移動して掲示板を確認していると、慌ただしくギルドの扉が開く。昨日俺が持ち込んだ依頼を受けた冒険者たちがボロボロになって駆け込んできたところだ。
あれ? 確か行く時は6人だったと思うが帰って来たのは3人だな。まさかやられたのか!? 俺がギルドの入り口付近にある掲示板辺りから見ていると先頭に居た冒険者が俺に気付いたようだ。
そのままカツカツと近付いてきたと思ったら、いきなり殴り飛ばされた。バキッと音がしたかと思うと俺はそのまま後ろに向かって倒れる。
「お前のせいで3人死んだぞ! どうしてくれるんだ? 偽情報なんか流しやがって。ふざけんじゃねぇぞ」
何が何やら分からんが、どうやら俺に対して言っているようだ。俺が偽情報を流した!? どう言うことだろうか? 何が間違っていた? 俺のせいで3人死んだ?
「よせ! そいつのせいじゃないのは分かってるだろう! そいつはただ依頼を受けて依頼を出しただけだ。情報の裏取りに失敗したのは俺達だ」
他の仲間が忌々しそうにしながらも仲間を止める。一番激高していた仲間を羽交い絞めにして俺から距離を取らせる。
「だがな、お前がブラウンベアなんて言わなければ、もう少しマシだったかもしれんのに……」
仲間を止めた冒険者もどうやら俺に思うところがあるようだ。ブラウンベアと言ったか? ブラウンベアじゃないってことか? あの辺りで最強の獣だぞ! その警告でもダメだったのか。
「ちょっと待って貰おうかお前達。話を聞いていれば、言われの無い理由で同胞を殴り、あまつさえ自分達の失敗まで着せようとしている様に聞こえるな。黙って見過ごす事は出来んぞ」
俺と冒険者たちのいざこざに介入してくる声が割って入って来た。同胞? 振り返ってみるとそこには二人の人物が胸の前で腕を組んで立っていた。
「まずは謝罪を要求します。我らの同胞に対しての蛮行見過ごせませんよ。謝罪が無い場合はそれなりの報いを受けて頂きます。どうしますか?」
その場の空気が凍りついたかと思った途端、逆に沸騰した。
ボロボロになって帰り着いた人間の冒険者側に同情したのか、追い打ちをかけるような言動をしている2人に嫌悪感を持ったのか分からないが、その場が緊張状態になった事だけは誰が見ても分かると言うものだ。
「おっと、お前達は部外者だ。手を出すなら俺達も黙って見ている訳にはいかねえぞ」
やはり他の冒険者グループから横槍が入る。
「へぇ~。ケビン。なら、あたしも黙っちゃいないけど、やるのかい?」
さらにもう1人。カウンターから戻って来た人物が介入してくる。
ここで今どういった構図なのか説明しておこうと思う。最初に介入してきたのは銀髪のダークエルフだ。さらに謝罪を要求したのが、金髪のエルフだ。
この2人が俺の事を同胞と呼び介入したのがきっかけだ。そこでさらに介入してきたのが周りに居た人間の禿頭の冒険者だ。
そしてこいつをケビンと呼び、最も好戦的でカウンターから戻って来た人物は真っ赤な髪をした獣人だ。
つまり今、ギルド内での揉め事は俺の手を離れ、人間対亜人の様相を呈してきてしまっているのだ。それも一触即発状態にまで一気に沸騰してしまっている。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。部外者で揉めるのは後にしてくれ。俺はまだ事情が呑み込めてない」
この不味い状況を何とか自分の手の内に戻そうと俺は立ち上がって言い放つ。そのまま先ほどの冒険者たちに近づき、どうなったのかを聞くことで時間をおき、冷静になるように促したい。
「その様子だと依頼は失敗したのか? どう言う事だ? あの辺りで最強の獣だぞブラウンベアは」
「チッ。付いてこい。ギルドに説明する。お前も事の真相を知りたいだろう?」
3人の冒険者がカウンターに行き、依頼の失敗を告げる。通常、依頼の失敗には違約金が発生してしまうが、ここで冒険者たちは逆にギルド側の確認不足を追及して不相応の依頼内容であったことを指摘しだした。
「当ギルドでは依頼内容がブラウンベアであると断定している訳ではありません。また依頼主もブラウンベアの討伐を依頼している訳ではなく、ブラウンベアと思われる敵性体の討伐依頼を出しているのです。その後、敵性体をどのような物か判断し依頼を受けるか否かはあなた達の自己判断です。また依頼受注にに対して当ギルドでは危険を通告しています」
「しかし敵性体のランクが桁外れ過ぎる! ポイズングリズリーだぞ。獣じゃない。魔獣だぞ。いくらなんでも依頼が不当過ぎる! ドラゴンをトカゲと偽って、下級冒険者を当たらせるようなものだぞ」
ポイズングリズリーってなんだ? 魔獣? まだ会った事の無い魔物の一種か?
「ポイズングリズリー? 近接遭遇はしたが、その姿を確認することはできなかった。あのプレッシャーならこの地域最強の存在だと思ったのだが……」
「ああ、冒険者になりたてのお前じゃ、ブラウンベアとポイズングリズリーのプレッシャーの違いなんか分からんだろううよ。どっちも脅威なことには違いないんだからな!」
吐き捨てるように言い、その侮蔑が癪に障るが、今は飲み込もう。それより村の方が大事だ。受付嬢が確認を取るように聞いて来る。
「ポイズングリズリーである事は確定ですか?」
「ああ、2人は毒を食らって死んだ。毒対策なんかしてない俺たちじゃどうにもならなかったんだよ。俺達だってそのまま戦った訳じゃない。退却戦で3人やられたんだ」
ちょっと待て。じゃあ、そのまま村は放置してきたのか? 思わず怒りがこみ上げてくるが、それも呑込む。
「仲間が喰われている間に次の対策をとった方がいい。だから俺達は急いで戻って来たんだ。ギルドには賠償を要求する」
「……内容を確認しました。あなた達の要求を正当な物として受理します。違約金の要求を取り下げ、敵性体の確認に対する功績を認めます。ポイズングリズリーの確認に対しギルドは50000リュームを支払います。よろしいですか?」
「ああ」




