13.晩御飯
家に着いたら、そのままテ-ブルへ。真ん中の籠に焼き立てパンを入れて行く。結構な量を作ったと思ったら今日の分だけじゃなかった。
今日、明日食べる分は柔らかくふんわり焼いてあるけど、それ以外はカチカチ堅焼き黒パンです。今日のはふんわり白パンです。材料も違えば焼き方も違うんですね。もちろん日持ちも違います。
姉さんがスープの味を調えて、トロミが付いたら完成のようだ。次にはお肉の包みをちょっとだけ開けて様子を確認。直ぐに包み直してもう少し火の傍に寄せる。
焼きがまだ足らなかったのだろうと思う。野生の猪なので中までしっかり火を通さないと寄生虫が怖いんだそうだ。内臓よりはマシらしいけどそれでも注意するに越したことはない。
焼き立てパンの香りは暴力的だ。凄く我慢するのが厳しいと思う。今日までの食事のせいもあるけど、まともな食事と呼んでいいのは初めてかもしれない。
「ああ、待ち遠しいね。なんにも付いて無いのにパンがこんなに美味しそうなのは初めてかもしれない」
「ここのところ碌な物を食べていなかったせいだろうけど、うれしいね~」
食事が待ち遠しくて我慢出来なくてこのままじゃ手を出してしまいそうだ。話題をちょっと変えてみようかな。
「姉さん、この辺には川とか泉とかないの? 俺もそろそろ匂うかなと思うんだよね。一応井戸で拭いてはいるけど、髪とかも洗って無いし」
「小さいのならあるよ。森の北の方にあるんだよ。一人じゃ危ないから一緒に行くかい?」
「うん」
自分に着く寄生虫も怖いから身綺麗にしておかないといけないんだよ。日本だって寄生虫の事を聞かなくなって100年は立って無いと思うよ。
魚とか狐なんかは良く聞いたしね。人間に寄生する奴の事。それでも海外旅行とかで人が来るようになってまた発生してるらしい。
――っお! 姉さんが立ち上がった。そろそろ焼けたのかな? くぅ~待ってましたよ。余計な話をしている間に焼けたのか?
お肉の包みを木皿に乗せて、お待ちかねのお肉の登場です。――っ良い匂いがする! これは堪らないよ。次いでスープも出て来た。お野菜ゴロゴロ、トロみの付いたピリ辛スープだね。
どうやら俺は辛党のようだ。前世と同じだから間違い様がない。生まれ変わったら甘党とか変な感じがするよね。でもよくよく考えたら甘いものなんて食って無かった。
「はい、おまたせ。どうぞ召し上がれ」
「いただきま~す」
もちろん最初にスープで口を湿らすよ。ブイヨンも出てお肉の切れ端も入ってる。どちらかと言うとシチューに近いかな。時々ピリッと来る辛みが食欲をそそる。
ではお肉のご開帳と行きますか。包みに使ったカナリの葉っぱを剥がして行く。ドンドンお肉の匂いが強くなって、出た! 周りはこんがり、焼き色はややこげ茶になる位まで焼いたお肉が顔を出す。
凄いよ姉さん。ハーブの香りも凄いけど、お肉の匂いがガツンと来た。見た目のインパクトも凄い塊り肉。塩胡椒のみのシンプルな味付けだけど、美味そうだ。
もちろんナイフで切り分けて食べるよ。ここで言うナイフは食事用じゃなくて実用の刃の付いてるナイフだよ。塊から肉を削ぎ落として、ハムっと食べる。
至福だ~。お肉ってやっぱり最高。塩胡椒だけなのにおいしいよ。姉さん料理スキル持ってるんじゃないの! って思っちゃうよ。でもそんなに簡単にスキルは取れないらしい。
当然家庭料理程度じゃスキルなんて生えないよね。そうじゃなきゃ料理人の立つ瀬が無いっしょ。お肉はかなり固いけど久々のお肉なので美味しいです。
実際には、日本の豚肉と比べたらかなり格落ちしてると思う。並み、等級外くらいじゃないかな? だって臭みもちゃんとあるんだよ。
観光地とかで牡丹肉とかあるでしょちょっと匂いがあるじゃん。あんな感じ……をもう少しきつくした感じです。野趣溢れる味です。ジビエ料理なんだからしょうがないじゃんと思う。
次はパンを一口。ちょっとパサついたパンですね。で・も、黒パンに較べれば100倍マシです。なんてったって柔らかい! ……中身がだけど。周りはちょっと固め。しょうがないでしょ!
まだ食文化が未熟なんだって。でも較べてみれば分かるよ。おいしいの。美味しいのレベルが違うだけだって。このくらいなら生きていけるよ。普段だと生きて行く自信がグラつくくらい。
でも姉さんの料理はマシな方なのよ。他の処はもっと酷いんだよ。イモに塩を振るだけとか……それは俺でした。
「姉さん、美味しいね。スープにもハーブ効かせたんだ」
「ああ、なんかあんたが物足りなそうな顔してるからね」
「あれ? 俺顔に出てました?」
「ふふふ。出てるね。今も」
ぐっは! 今もですか?! おかしいな。にっこり笑って本気で美味しいって言ったのに。どうしてかな?
「シン、あんたよっぽどいい食事してたんだろう? こんな粗末な食事で悪いね」
「いやいや、美味しいよ。美味しいですよ。確かに良い食事してたかもしれないけど、これも美味しいよ」
だって前世の話だもん。日本の食事は世界中でもかなりランク高いと思うよ。だって、旨味とかの概念自体、他の国じゃないんだから。今はあるのかもしれないけど。
「そうかい。そいつは良かった。街に行って、美味い物でも見つけたら教えておくれね」
「おう!」
あ、いっけね。返事しちゃった! 姉さんは『ふふふ』とか笑って許してくれてるけど気を付けよう。




