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冒険の書が消えるまで

俺は勇者ネール、魔王軍を倒す旅に出ていた。

そして、昨日、俺は魔王を倒した。


...共に旅をした三人の仲間を犠牲にして。


四天王最後の一人を道ずれに、

魔法使いのリーサスが自爆魔法で自爆した。


魔王の究極魔法から俺を庇い、

戦士のガルドが粉々に爆ぜた。


賢者のクリストフが、俺に命懸けで力を与え、

干からびて死んだ。


そうして、仲間の犠牲を元に、

俺は魔王を倒した。


リーサスの使い魔だった竜に乗って、

俺は国へ帰った。

リーサスの竜は、さみしそうに鳴いて、

遠くの山へ飛んでいった。


夜中だったのにも関わらず、

国のみんなは祝福してくれた。

聞くところによると信託があったらしい。


...しかし俺は、

その祝福を素直に受け入れることはできなかった。


翌朝すぐ、国王と謁見した。



「魔王討伐、本当にご苦労だった」


「お褒めに預かり、光栄です」


「仲間たちのことは、本当に残念だったな」


「.....はい」


「まあ、忘れろとは言わん。

今夜は祝いの席を開こう。少しでも楽になってくれ」


「心遣い、感謝致します。では」


「うむ、それまで家で休むが良い」


俺は家に帰って半日ほど寝たあと、

城へ向かった。



そして今はその夜、

城で祝賀会が行われている時、

俺は、城を抜け出して、

ある山に来ているのだ。


結局、城に行ったが、

王と挨拶だけ済まして、

抜け出してきたのだ。

王様すみません。


この山は黒金山。

俺が修行した霊峰で、

魔王城程ではなくとも

強い魔物が沢山いる。


俺は、ここで...


むしゃくしゃした気持ちを魔物にぶつけていた!


己の無力で仲間を死なせてしまった。

その時は死に物狂いで悲しむ暇さえなかったが、

今は...


辛い、苦しい、申し訳ない。

少し考えただけで涙が出そうだった。


ただ、俺は勇者。

強くあらねばならない。

魔王が倒れても、

まだ魔物は残っている。

みんなを不安にさせるわけにはいかない。


でも、もうどうしていいのか分からない。

だから、今だけでも、

何も考えなくて済むように、

ただただ剣を振るっていた。


だが、突然その剣が...


ガッ!


「えっ?」


剣が...なんか引っかかった?

剣が何かに引っかかったように、

突然止まったのだ。


ガガガガガガガガ!!


「えっ、あっ、ちょ!」


動かそうとしても動かない。

何も無いところに引っかかってしまった剣は、

勇者の力でも動かせなかった。


視界が歪んだ。

世界の色が変わった。


プーーーーーーーーーー


目の前が真っ白になって、

変な音が聞こえた。



でろでろでろでーでろでん



なんだか凄く嫌な音がした。



──残念ですが冒険の書は消えてしまいました──



抑揚のない声が聞こえた。


冒険の書ってなんだよ...




そこで俺の意識は途切れた。



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