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第8話 犬に首輪

山波についてきた犬。実は狼であった。

山波は冒険者ギルドで首輪を受け取り、狼に付けることにしたのだが。

果たして狼はそれを受け入れるのだろうか。山波と狼の運命や。


 村の入り口に差し掛かって、門番に手を振ったところいきなり、


「ゴ、ゴロウさんそいつは!」


 ん? 私は門番が見ている方を振り返って見た。

 そこにいたのは先ほどの犬だった。その犬は山波の後を付いてきたのだ。


「あれまぁ、付いてきたのか。こいつは森で倒れていたので、ちょっと介抱してあげたのだけど、どうやら付いてきてしまったみたいだ」

「え、ええ、そそいつはフレイムウルフですよ。冒険者ギルドから時折討伐依頼が出る魔物ですよ」

「え?普通の犬でしょ?」

「いえいえ、薄い赤みかかった銀色の毛並。間違いなく魔物のフレイムウルフですよ!!」



(あちゃぁ。なんだろうな。また、やってしまったようだ。この世界に来てからどうも動物それも、なぜか魔物と呼ばれる物に縁があるような気がする)


「ほら、森へ帰りな」


 そっぽ向かれた。


「お前どうするんだ。私に付いてくる気なのか? 困るんだが」

『がう~』

「参ったなぁ」



「ゴロウさんどうされるんですか?冒険者呼んできましょうか?」

「ん~この犬『がるるる』を殺させたくは……」ないんだが。

「いえ、魔物なので早急に討伐するほうが」

「でも犬『がうう』でし……」


(ん? 私が犬と言った瞬間、犬が唸った。もしかして犬と言われたことを怒っているとか?)


「やあ、犬『がるるる』」


(やはりだ、犬と言われるのが気に入らないのかもしれない)


「よう、い『がるるる』ぬ」

「お前は、お犬『がるるるる』」

「い~『がる』い天気だなぁ」


 地面を前足で叩いて悔しがっている。何故か勝負に勝ったきがした。


「もしかして、犬扱いされるのが嫌なのか?」

『がうう』


 どうやらプライドだけはあるようだ。先ほどフレイムウルフ、狼としての矜持でツナ缶を食べなかったのかもしれない。魚なんか食べていられるか、というプライドであったのだろう。


「お前は賢い狼なのか?」

『がう』


 なんだかいい顔したな。

 ちょっと意地悪をしてみたくなった。


「お座り!!」


 私の掛け声で狼はお座りをした。


「狼はお座りしないと思うけどなぁ」

『がっ』


 あ、がっかりしている。


「でも言葉がわかるなんて賢い犬『がるるる』、狼だなお前は」


 なんだか、ドヤ顔しているぞ。賢い狼といわれドヤ顔しているのだろうか?


「門番さん、この狼を村の中に入れたらだめですよね?」

「そうですね。従魔の首輪をしていれば可能ですが、いくら賢くてもそのままでは無理ですね」

「従魔の首輪って?」

「冒険者ギルド買えますが、冒険者が魔物を従魔として従えるときにする首輪です。従えている主人がわかることと村の中で暴れないようにする機能が付いてる魔道具です」

「へえ、魔道具ですか。登録はどうすればいいのでしょう?」


 魔道具。こちらでは電気製品の代用品として存在している便利な道具である。魔道具はざまざまな道具が考え出され、その用途は多岐にわたる。ただし、持ち帰っても魔素のない地球では使うことはできない。


「とりあえず、冒険者ギルドまで連れて行って登録することになりますが、首輪が無いと村へは入れられないので、まあ、登録そのものが無理ですね」


 な、なんという。卵が先か、鶏が先か理論か。


「たとえば、首輪を受け取って来て、この犬『がるるる』、あ、狼に首輪をしたら入れますか?」

「ええ、それなら問題ありません」


 それなら、


「賢い狼よ、私が戻ってくるまでここでじっとしていられるか?」

『がう~~ん』


「門番さん、それじゃ少し待っていてください、首輪をもらってきます」

「あっ、ゴロウさん。フレイムウルフをここではなくもう少し……。あ、あの横の方に移動させてもらえますか? そこなら待っていても問題ないので」

「おい、賢い狼。あそこで待っていてくれるか?」

『がうう』


 私が狼にそういうと狼はそこまで移動して、伏せる体制になった。


「それでは、門番さん今から冒険者ギルドに行ってきますので」

「あ、な、なるべく早く戻ってきてくださいね」

「ええ」



 門番と別れた山波は冒険者ギルドにやや速足で向かった。


 裏門を後にし、冒険者ギルドに入って受付にいる人に声を掛けた。アークトゥルスではない。


「すいませんが、えっと、従魔の首輪? ってありますか?」

「あ、はい、有りますが」

「それって売ってもらうことできますか」

「え、ええ」


 受付の人が受付の後ろのドアの向こうに入って行ったと同時にアークトゥルスが現れた。


「あっ、ゴロウさん!!」

「ども」

「もう採取終わりました?」

「あ、ええ、それは終わりましたよ。いまはさっきいた受付の人に従魔の首輪を売ってくれるように頼んでいたのですが」

「従魔の首輪を? でも使い方わかりますか?」

「いえ、でも教えてもらえれば問題ないです」


「持ってきました、これが従魔の首輪になります」


 先ほどの受付の人が戻ってきて受付のテーブルに首輪を置いた。

 首輪は見た目は何の変哲もない茶色の首輪だった。ただ、真ん中に透明な宝石のようなものが嵌っている。


「アダーラ、後は私がゴロウさんに説明するわ」

「そう? それじゃお願い」


「ゴロウさんお待たせしました。え~従魔の首輪は使う前に主人と魔物の血をこの宝石に垂らします。そして首輪を従魔の首につけ、従魔の名前を決めます。それで契約が完了します。契約を解除するときは首輪をはずし、燃やすことで契約は解除になります」

「はぁ。なるほどわかりました。それで値段はいくらでしょうか?」

「ゴロウさんの場合は金貨2枚になります」

「結構な値段しますね」

「ええ、これは特殊な魔道具ですので。もちろんゴロウさんは優待販売ですので通常の半額です」

「え、普通は金貨4枚ですか。それはそれで……」


 金貨2枚を払ったゴロウは従魔の首輪を受け取った。


「アークトゥルスさんありがとうございます。薬草の清算は後で」


 挨拶も早々にギルドから出て、「あっゴロウさ~~ん」裏門に向かう。

 やがて裏門に到着し、門番に挨拶した。


「さっきはどうも、フレイムウルフ? はおとなしくしていました?」

「ええ、ずっと伏せの状態で目を閉じて耳だけ動かしていましたよ」

「そうですか、おとなしくしていてよかった」


 山波は走ったため息が上がりながら話していた。

 門番と話したあと裏門を出て狼のいるところに向かった。と同時に山波が門を出た瞬間、狼は立ち上がりこちらに向かって歩いてきた。


「よう、おとなしくしていたみたいだな」

『がう』


「それでだ、従魔の首輪を持ってきたのだが本当に首に付けていいのか? 私は1年間だけここで旅をするのだが、1年後はいなくなるかもしれないぞ。それと食事はどうすればいいのか分からないのだが、それでもいいのか?」

『がう~~』


「わかった、そのためにはお前の血が少必要なんだが、構わないか?」

『がうん』


 狼は首を縦に振った。


「よし、わかった。その覚悟やよし!」


 どこかの将軍が言いそうなセリフで話す。


「でも私の血も必要なんだよな、傷つけるの嫌だな」


 じー。狼が此方をみている。

 十徳ナイフを取り出し、左の親指にナイフを当てる。あてる。アテル。


「ふぅ~~~」


 いったん休憩。いや、私自身の指を切るの無理っぽいのだけれど。

 じー。狼が此方をみている。


「わかったよ、やりますよ、そんな目で見ないでくれ」


 山波は元々注射とか痛いのは嫌いだった。痛いのに年齢は関係がない。


 ナイフを指に当てて。あてて。アテ、サクッ。


「ンーー。お、お、お、あえな。あにをするんだ。血が出たじゃないか!!」


 狼が前足で私の右手の甲を押したのだ。


『がううん』


 涙目になりそうな目で狼を見つめるのだが、素知らぬ顔だ。


(仕方がない。狼に怒りをぶつける前に、私自身の情けなさを嘆こう。決して狼が怖いわけじゃないぞ)


 左手の親指から出ている血を首輪の宝石に垂らす。


「次はおまえな」

『がうう』


 狼が前足を出してきた。でも、切るの嫌だな。と思った瞬間。狼が自らの足をナイフにかざして傷をつけた。そこから血が垂れてくる。


「度胸あるなお前は」

『がうううい』

「わかった、わかった」


 狼の足から垂れる血を、首輪の宝石に垂らす。

 宝石が一瞬光り、透明な宝石?ガラス?が、濃い赤色に変化した。

 首輪をつける前に鞄から絆創膏を取り出し、親指に巻いた。狼の足を見て血は止まっているようだが、一応絆創膏を貼っておいたが、毛が邪魔で直ぐにも取れそうなので、紙粘着テープで上から巻いておいた。


「さて、首輪をつけるけど、噛むなよ、絶対に噛むなよ。フリじゃないからな」

『がう?』


 従魔の首輪をフレイムウルフの首に巻き付けた。


(さて、次は名前だけれど。賢い狼なので賢狼? 偉すぎるな。ん~狼、狼座、ウォルフ-ライエ? ウォルフはまんまなので、ライエでどうだろうか。いいとおもう。よし。)


「それじゃ、お前の名前はライエでどうだ。偉い学者の名前だぞ」


 私が言ったとたん狼が一瞬薄く光った。


『がう~~~(ありがとうございまっす)』

「ん? なんか声が聞こえたのだが? これで契約終了かな」

「声が聞こえたのは気のせいじゃありませんよ」


「うわっ!!!! なんだ」


 後ろを振り返ると、アークトゥルスが声を掛けてきた。


(この世界はあれか? 人間も牛も狼もいきなり後ろに現れるのが当たり前なのか?)


「な、な、なんでアークトゥルスさんがここに?」

「はい、従魔契約はギルド職員が見守るのが規則になっています」

「えっ? それじゃ最初からここに?」

「ええ、もちろんです」

「それならそうと言ってくれればいいのに……」

「話の続きをしようとしたら、あっという間にギルドから飛び出て行かれたので」

「ん?ほんと?」

「ええ」

「それは、申し訳ない。この犬『がるう(犬じゃないっす)』、あっ、狼が心配で……。やっぱり声が聞こえるのだけれど」

「ええ、その説明も含めまして。まずは、従魔契約おめでとうございます」

「あ、ありがとう」

「ギルド職員のわたくしも契約を確認しましたので契約に問題はありません。また、従魔契約をすると従魔の首輪の能力によって従魔の声の内容が分かるようになります。つまり従魔と会話できるようになるのです」

「へえ、そんなすごい首輪なんですか」


 似たような物が日本であった。ワウリンガルとかいって一世を風靡した記憶がある。某芸人のわおリンガルだったかな?


「ええ、ですから金貨4枚するのです。従魔契約は両者の血が必要ですから魔物の意思が優先されます。そして従魔の首輪を魔物に取り付けることができるかも確認が必要になります。弱った魔物を無理やり契約する輩もおりますので、契約時ギルド職員立ち合いが必要なのです」

「なるほど、瀕死の魔物を無理やり従魔にしようとしてもギルドが許さないのか」

「ええ、そうしませんと無理やり契約する人が出ます」

「なるほどね」

「そんなわけですが、ゴロウさんあなたはいったい何者なのですか!」

「え、ええっ。そ、それよりも、これでライエを村に入れられるのですよね? 門番さん」

「はい、問題ありません」

「ちょ、ちょっとゴロウさん?」

「アークトゥルスさん、薬草の清算もしたいので、冒険者ギルドに向かいませんか?」


「ライエも付いておいで。村で暴れちゃだめだぞ」

『がうう(わかったっす)』

「ち、ちょっと? ゴロウさん?」


 こうして、何者かの問いを誤魔化したつもりの山波は門番に挨拶し再度冒険者ギルドに向かった。


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