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第42話 王都から

メンカとリナンとともに1年間旅を継続することを決めた山波。

旅を継続するうえで不足しているものを買うため元の世界に戻ることを女王に頼み込む。

果たして何を買うつもりなのか。再び波乱の幕開けか!!


「さてそれとは別の話になりますが、山波さん。貴方こちらに来てから魔法の使い方習いましたよね?」


「ええ、1週間の講習の時に生活魔法を。でも、生活魔法って私の世界では機器や科学で対応できるのでほとんど使わなかったなぁ」


「やっぱりそうですか。山波さんは魔法を使うための潜在能力が高いので少しずつでも使えば強力な魔法も使えるようになりますよ」


「でも、元の世界に戻ったら使えなくなるもですよね? 一度便利なもの、楽ができるものとして体が覚えてしまうとそれが使えなくなったら、苦労しそうでなかなか」


「一度体が覚えてしまったものは忘れませんよ。自転車って知ってますよね当然。体が覚えれば自転車は10年後に再び乗っても運転できるものだってタケルも言ってました」


「なるほど。でもマナというか魔素は元の世界には無いですから」


「いえいえ、普通にありますよ。ミステリースポットとか言われている場所に、私も何度か行ったときには魔法を使えましたから」


 この女王、随分とアクティブでいらっしゃる。


「そうですか。でも元の世界で魔法を使える人など見たことないですが」


「あちらの世界では超能力とか言われていますわね。あれも魔法に近い能力です。あと心霊能力者などもそうですね、他にも法力とかもその部類ですわ、タケルは忍術がその最たるものと教えてくれたわ」


「なるほど、確かに。そういわれると納得してしまいます」


 火、風、土、水、(いかずち)。そのような忍術は正に魔法と背中合わせと言われれば納得してしまうであろう。


「こちらにいるときは暇があれば使ってみてください。1年使い続ければいろいろできるようになりますから」


「そんなものですか?」


「そんなものですよ。特に山波さんは魔法を使うコツを覚えていますから、今は針の穴くらいの能力しか使えなくても、やがて土管のような穴の魔法を使うことができるようになるでしょう」


「は、はぁ」


 山波は針の穴も土管の穴も意味は分かるし想像もできる。だが、何が言いたいのかさっぱりわからなかった。

 だが、日本人の悪い癖。わかっていないのにわかったふりをしてしまったのである。

 その場で女王に聞けば詳しく教えてくれただろうに。


 結局これについてはアークトゥルスに後から聞いて山波は納得している。

 つまり最初は針で刺した穴程度の魔力制御しかできないが、少しづつ穴を広げることで土管程の魔力制御が可能になるということを教えていたのである。と。


「そうそう、これを渡しておくわ。タケルが私へ形見としてくれた物だけど、貴方に還すわ」


「還す? でもこれは?形見の指輪なのですよね?」


「ええ、でも、本来はタケルの物ですから。タケルもシュラハクという魔術師から託されたようです。どうやらこの2つの指輪はいろいろな人にめぐってやがてあるべき場所に還るのではないかと考えてます。それが貴方なのかわかりませんが。使うか使わないかは貴方にお任せします。貴方が元の世界に帰るとき、誰かに託しても構いません。そうねぇ。メンカさんやリナンさんであっても」


 山波はその言葉でその指輪の意味を理解した。この指輪は人から人に託される物であるということを。

 そして、山波が託してもよいと思う人がいるのであればその人に託しなさいということも。


 この時、山波はその指輪がとんでもなく恐ろしいものであることを知らず、普通の指輪であると思っていた。


「分かりました、お預かりしておきます」


「預かるだけではだめね。後々で構いませんから指にはめてくださいね」


 何故か指にはめることを薦める女王に、胡散臭いものを感じた山波であったが、形見を預けるということは相当の覚悟であろうと山波は考え、「はい」とだけ答えた。




「そういえば、イリスさんでしたかしら、貴方もこれからもゴロウさんと共に旅を続けるのですか?」


「は、はい、できればそのようにしたいと思っています。許可はもらっていますし、旅をして世界を見ることは領地の運営に何かしら役立つ知識を手に入れることができると考えております」


「そうですか良い心がけですね」


「そちらのジョルジュさんとサンナミさんもこれからも一緒に旅を?」


「いえ、俺らいや、私たちは王都までの護衛と言うことで依頼を受けましたので、ここからは特に何も決めていません」


「そうですか、それならこれからも一緒に護衛として旅をして貰えないかしら、もちろん経費や依頼料はこちらで払います。無事に1年護衛できたら追加報酬も出します。どうかしら?」


「願ってもないことですが。ゴロウさんに変な夢をみせたり、魔物に村を襲わせたり、商人やコックをつかってちょっかいを出さないという約束が欲しいですね」


「さ、さぁ、なんのことでしょう、わ、わたしはなにもしりませんよ」


「わかりました、その依頼受けましょう。その代り報酬は上乗せしてもらいますよ」


「え、ええ。最後にパルメ、貴方も一緒に旅に同行をしてもらっていいですか?」


「はい、仰せのままに」



「女王、ちょっとお願いがあるのですが」


「なにかしら?」


「一旦、元の世界に戻れないでしょうか」


 山波はこの人数でキャンピングカーでの移動には問題ないが、寝る際に問題があるので牽引可能なトレーラーを買って取り付けようと考えていた。まだ一週間経っていなので、女王の力で何とかなるのではと考えた。

 山波のキャンピングカーは取り外し可能な牽引装置が付いており、今まで不要だと思って取り付けていなかった。



「なぜかしら?」


「これだけの人数になってしまったのであのキャンピングカーでは寝泊まりにやや不便だと思うので、後ろにトレーラーを付けようかと」


「ふ~ん。さらに快適な旅を貴方たちでするわけね」


「ほ、本来は私一人の旅だったはずなのですが、女王のいうとおり『縁』を大切にしたいなと」


「わ、わかったわ、今回は特別ですからね」


「ありがとうございます」


 女王の印象は、アークトゥルスからすれば、厳しい母親かもしれないが、山波が感じたのはまだまだ子供部分を残したかわいらしい女性と言う感じであった。


 明日の午後から予備日を入れて最大3日を目処に戻ってくるように言われた。

 さらに他の一行は7日間王城で生活できるようにしてもらった。


 これで、女王との懇談はこれで無事に終わった。


 一行は、風呂に入ってゆっくりと時間を潰し、夕餉をともにした。

 その時に、タケル・ムドウのハチャメチャな行動を懐かしく女王は語っていた。

 時には楽しく、時には寂しげに。ただその行動を語る女王はどことなく誇らしげであった。


 その食事中の話で、結局女王は同行せず、アークトゥルスがこれまで通りに同行することとなった。


 一旦戻るメンバーはメンカとリナンにパルメとなった。アークトゥルスが行きたがったが女王のハリセンによって阻止させられた。ただ、メンカとリナンに魔法だけは掛けてもらった。


 翌日の午後、山波はメンカとリナンさらにパルメを同行して元の世界に戻った。


 早速キャンピングカー専門店に行き、手ごろな牽引トレーラーを購入した。キャンピングカーよりは安いが、それでも300万程した。ただし、トレーラー自体は道路で使わないという条件のもとで、ナンバー登録しないこととした。ナンバー登録すると、特殊用途自動車で税金もかかる上、車検も必要になってしまう。トレーラーハウス的に使用する人もいるとのことで、それは特に問題にはならなかった。

 メンテナンスの方法などを聞き、どうしても修理などが必要になった場合はいつでも連絡してくださいと言われた。


 ポップアップルーフがあり、天井にはソーラーパネルは付いているがバッテリーの充電は走行中のタイヤからの充電システムももっていて、駐車中であれば屋外設置で風力発電での充電も可能だ。

 シャワー一体のトイレ、シンク、収納も豊富で後部は2段ベッドが常設されている。対面式のソファーは折りたたむことで大人三人は余裕で寝られるベッドへと早変わりする。動力が無いだけでキャンピングカーと見劣りはしない。このタイプのトレーラーを置いてキャンプ場としているところもあるくらいである。


 在庫としてあったのはプロパンガス設置場所にバッテリーを増設したタイプだった。プロパンガスの交換は向こうの世界ではできないので丁度よかった。それを家の庭先まで運んでもらうこととした。配達は翌日の午後の予定。配達は別途それなりの金額がかかった。


 その後、ファミリー向けの焼き肉店で食事をして家に戻った。


 翌日の午前に様々な買い物をすませ、午後に予定通りトレーラーが届いた。牽引免許が不要ではあるものの現物5.4mほどある欧州製でそれなりの大きさである。


 新たに毛布や掛け布団なども積み込み、寝泊まりに不自由しないようにした。


 さらに翌日に、トレーラーを取り付けてからガクルックスに戻って行った。

 あちらの世界で使う分には免許も、ナンバーも悪く言えば方向指示器ですら不要である。

 元の世界に戻るときは置いてくれば問題はないだろう。


 女王にいいなぁ、羨ましいなぁ、私も行きたいなぁ、やっぱりアーク代わってと多少揉めたが、お土産という日本独自の文化で女王をもてなしたことで女王の小言もなくなった。

 さらに、旅が終わって必要がなくなればトレーラーは置いていくと伝えた。但し、それは元の世界に戻る場合の条件である。


 皆に使い方を教えてトレーラーでの寝泊まりはイリス、スイナ、パルメ、アークトゥルス、スミレンが使用することとなった。ようは、女性陣と言うことになる。寝る場所はそれぞれで内輪で決めてもらうことにした。

 このトレーラにもついているポップアップルーフを上げれば上にも寝られるのでそれで問題はないであろう。


 山波、メンカとリナン、そしてジョルジュがキャンピングカーで寝ることになった。

ただし、野宿の時はスミレンとジョルジュは交代で見張りをするので、キャンピングカーで寝ることになる。

 もちろんライエとアストルもである。最初はメンカとリナンもトレーラーで寝るように提案したのだが、メンカとリナンが透き通るようなソプラノで「「ヤー」」とハモって、山波と別々に寝るのを拒否したためこのようになった。もっとも、そうなっていると7人の女性陣がトレーラーで寝るの事になり、流石に息苦しかったであろう。イリスは残念がっていたようである。だが、アストルを熊質としてイリスに渡すことで満足したようだ。これによって山波はバンクベッドではなくソファーベッドでようやく寝ることができるようになる。はずであったが、大抵夜は村で停車するので、殆どトレーラーの出番はなかった、が、山波がそれに気が付くのは、もっと後になってからである。


 ジョルジュとスミレンのここまでの護衛の費用は女王が出してくれたことで、山波が小さくガッツポーズをしたとかしないとか。

 ジョルジュとスミレンも予定より多くの収入に喜んでいた。


 そして7日の滞在期間が過ぎ去った。

 こうして王都での滞在も終わり再び旅が始まることとなった。

 7日間王城にいたからといっても元の世界に戻る日数の開始は王都を出てから開始されると女王に告げられていた。


 山波は指輪をまだ指にはめていない。それについて女王は何も言わなかった。


 王城に滞在していた間、お土産を渡したことで仲良くなったメイドたちに見送られながら、山波一行は王城を後にし、門を抜け王都を後にした。



これで第一部が完となります。

永い間お待たせしまして申し訳ありません、そしておつきあいしていただきありがとうございました。

第一部最終話(2話)を何度も書き直しました。王都に寄らずになんていうシナリオ、女王と敵対してドラゴンと一緒に戦ってコテンパンにやられるシナリオも。そして頭の中がパニックに。

しかし、私なりの無難なシナリオに落ち着きました。

キャンピングカーのつぶやきも上げてあります。楽しんでいただければと思います。

ここまで読んでいただいきまして本当にありがとうございます。

第二部開始は未定となっています。

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