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第33話 アヴィオール街

アルナイル町から何の苦労もなくたどり着くはずだったアヴィオール街

途中で目を奪われる景色に嵌ってしまった山波。

果たして山波達は無事にアヴィオール街にたどり着くことはできるのか


 昼食の休憩と通常の休憩を数回取った後、緩い上り坂を車が走る。

 坂の頂上に到達したときの目の前に広がる景色に圧倒された。

 空の青さとは違うコバルトブルーが地平線いっぱいに広がり、山波は思わず車を停車させてしまった。

 まるで車がコバルトブルーの地平線を(正確には水平線なのだろうか?)走る感覚に陥ってしまったからだ。


 車を坂の頂上にある拓けた場所に停止させる。


 車から降りた山波はその美しさに心を奪われてしまった。

 海の色はコバルトブルーとコバルトグリーンで占められているが、ところどころ白いサンゴのような場所もある。

 波は穏やかであるように見える。遠くに島影も見えない。

 山波が驚いたのはその透明感。遠くから見てもその透明度がわかるくらいだった。

 色のついた水でありながらその下が岩場なのか砂場なのかがわかる。

 鯨ではないだろう、首がやけに長く尾もある物体が泳いでいるのもわかる。相当な大きさだ。

 その上にはカモメかウミネコのような鳥が飛んでいる。

 山波のいる上を見ると猛禽類の鳥だろうか空高く舞っている。


 山波がその景色に感動していると、車から他の一行も降りてきて皆がそれぞれに感想を言っていた。

 アストルが山波の腰から這い上がってこようとするので腕でつかみ肩車をする。


 メンカとリナンはジョルジュの両肩を占領していた。

 2人に肩を占領されていてもジョルジュは微動だにしないくらいに安定している。流石冒険者である。


「よし、みんなそこに並んでくれ」


 暫くその景色を見た後、山波はカメラと三脚を取りに行き、海を背景になるなるように皆を並ばせ、数枚の写真を取った。

 アルナイル町を出たのが早かったため、まだ15時前で時間的には余裕がある。


「よし、ここで最後の休憩をしよう」


 山波がそれを言うと、パルメが動いた。

 ものの5分程度だろう、あっという間にお茶の準備が出来上がった。

 山波は自分の世界から買ってきた五家宝を取り出しテーブルの上に置いた。山波の好物の一つである。

 きな粉の色の物と、若草色のものを買ってきてあった。

 山波の好物は大豆だ。きな粉であれ。炒ったものであれ。鬼を退治するものであれ。四角く白くなったものであれ。それこそ緑色のままで茹でてあっても。


「これはなんですの?」


 早速イリスが興味を持ったが、メンカとリナンは既に頬張っていて、メンカはライエに、リナンはアストルにそれぞれ食べさせていた。


「私の世界のお菓子だよ。美味しいぞ。でもあわてて食べると、きな粉が気管に入ってむせるぞ」


「けほんけほん」


 流石、アークトゥルスである。お約束の達人と言っても過言ではない。


「美味しいですわ」


「気に入ってもらえてよかった。私の好きな名物のうちの一つだ」


「他にもこんなに美味しいものがありますの?」


「そうだなぁ。これよりも美味しいものは沢山あるぞ」


「他の物も食べてみたいですわ」


「まあ、そのうちにな」


 実は買ってきたシュークリームをまだ出してはいない。これは秘蔵っ子なのだ。

 他の名物は戻った時に買ってくればいいだろう。


 30分程休憩して、車は出発した。

 下り坂を10分程走ると平らな道になった。

 道なりに車の左側を海に見て、潮の香りを嗅ぎながら車を走らせると街の門が見えた。ただ、今までの内陸部のように厳重な門ではなく、どちらかというと開放的な感じがしていた。内陸部の村などは魔物の侵入を防ぐという意味合いがあるが、この辺は陸地に魔物は少ないのだろう。


 門の前で山波は車を停める。

 門番の確認が終わるとスムーズに街の中に入ることができた。

 そこからさらに10分程走らせると港に多くの船が係留されていた。

 夕方なので活気はさほどない。既に漁は終わっているのだろう。

 早速ギルド系列の宿の空いている部屋を確保し、メンカとリナン、ライエ、アストル連れ街をぶらぶらすることにした。他の一行は別々に宿を確保しに行った。


 街中は魚屋が多かった。ただ残念なことに既に店仕舞いが始まっていて魚を買うことは出来なかった。

 もっとも、数泊するつもりなので山波はあわてなかった。

 まだ開いていた屋台でシシャモのような魚が串に刺されて焼かれていたので皆に1本ずつ買った。

 こちらの世界に来て初めての魚料理? である。


「うまいな。まるでシシャモそのものだ。子持ちシシャモが一回り大きくなったような魚だな」


「おいしい。ゴロウこれが魚?」


「ああ、でも魚の1種類でもっと美味しい魚に出会えるぞ」


 山波がそういうとメンカとリナンの目が輝き始め早く食べたいオーラが漂ってきた。


「宿に戻って晩御飯をたべようか?」


「「わ~い」」


 陽も沈みかけてきたので沈みきらないうちに宿に戻った。

 夕日は残念ながら雲に隠れてみることは出来なかったのが残念であった。


 宿の食事は港町らしく魚料理で大きな魚が一匹丸ごと香草やカラフルな野菜で彩られていた。

 それにスープにパンなどが付いており、目もお腹も満足いくボリュームだった。

 ライエとアストルには別に魚料理を頼んだがそれぞれ満足だったようだ。


 ジョルジュとスミレンにはここで3泊することを伝えてあったためか、この日の夕食は別に一緒に取らなかった。

 イリスとアークトゥルス達は一緒に食事をし同じような魚料理を食べていた。


 山波は唐突に明日の予定をつたえた。


「明日の予定は自由時間にする予定だが、明日の午前中はユージン商会に顔をだして、午後はビーチでバーベキューをやりながらビーチバレーなどで遊ぼうと思うのだが?」


「「……」」


「あれ?」


「ゴロウさん? 午前中の行動はわかりますわ。けれど、ビーチとかバーベキューとかビーチバレーってなんですの?」


「あっ! ああ、えっと午後は海岸の砂浜で肉などを焼きながら食事をして、砂浜で玉遊びなどを……」


 最後は声が小さくなる山波であったが、それと比例してメンカとリナンの目が輝きだし、ライエとアストルがざわつき、イリスたちが期待に満ちた顔になってくる。


「つ、つまり午後は遊びの時間ですのね」


「まあ、遊びといえば遊びだが。ところで水着はみんな持っているのかな?メンカとリナンは短パンとTシャツでいいと思うが」


「それなら、午前中にみんなで買いに行くのがいいと思いますわ。もちろんメンカちゃんとリナンちゃんの分も」


「メンカとリナンもそうしてもらいな。お金は後から払いますので、パルメさんよろしくお願いしますね」


「ゴ、ゴロウさん?」


「あ、イリスさんよろしくお願いしますね」


「ま、任されましたわ」


「今度はしっかりお願いしますよ。イリスさん」


「だ、大丈夫ですわ」


「「イリスおねえちゃんよろしくお願いします」」


 こうして無事夕食も終わり、尚且つ、明日の予定も決まりそれぞれ宿に戻って行った。


 山波はいつもの薬をのみ眠りについた。



-------------------


 ???「なんてみんなで楽しそうなことを」

 ???「私だって一緒に楽しみたいのに……」

 ???「アークトゥルスも連絡よこさないし」


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申し訳ありません。いろいろ忙しくなってしまいまして。

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