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閑話5



 僕の名前はグリル。アルデバラン街に住んでいる。

 年齢は7歳。もう少しで8歳になる。噴水広場で友達と遊ぶのが好きだ。


 あるとき噴水広場に大きな犬を連れた人がやってきた。

 その犬はとてもきれいな犬で全体は銀色だが薄赤くキラキラ輝いている毛並みを持っていた。

 その犬は屋台の肉を食べていた。あれはバンブーラビットとロックラビットの屋台だ。

 僕はバンブーラビットが好きだな。そういう話ではない。


「なあ、あの犬に触りたくないか?」

 誰が言ったのだろう友達の一人がそういった。

 その意見には賛成だ。僕も触りたい。


 だが勇気を出して声を掛ける友達は誰もいなかった。

 理由は簡単だ。そのおじさんはこの街では初めてみる人だし、犬も大きいからだ。

 しかも変わった服装をしている。青い色のズボンに薄い生地の上着だ。

 袖の部分は半分くらいしかない。しかも上着には何やら模様が書かれている。

 あんな服は見たことが無い。ほら、周りの大人たちですらチラチラ見ている。

 いったいどこから来た人なのだだろう。


 それでも触りたい。

 そこでいつものように石投げの結果で声を掛ける代表を決めることにした。

 平たい石を拾い裏と表を決める。裏と決めた面に印をつける。

 それを同時に投げる。表の人が抜けていき、残った裏の人で同じようにしていく。

 簡単だが石選びが悪かったり、運が悪いとずっと裏が続く。

 最後まで残ったのは僕だった。


 友達にせかされて噴水まで歩いていく。

 勇気を出してその人のところまで歩いていく。

 しまった。なんて声を掛ければいいのか考えていなかった。

 もじもじとしているとその人が声を掛けてきた。


「なんだい?」


 や、やばいなんて声をだそう。うまく言葉がでない。


「もしかして、この犬を触りたいとか?」

『がうう』


 犬が唸り声を上げた。

 少しびびったが勇気を振り絞り


「あっ。うん」


 とだけいった。


「優しく撫でてあげてね」


 おじさんがそういった。


「うん」


 とてもうれしかった。触ることを許されたが大きな犬だ、恐る恐る手を伸ばす。

 すると犬が手を食べた。


「!!」


 一瞬吃驚して手をひっこめいようとしたが犬が離さない。

 手を食べられてしまった。でも痛くはない。

 その時おじさんと目が合った。


「怖いかい?」

「ううん」


 と首を横に振るのが精一杯だった。


 するとその犬は手を放してくれて、顔を舐めだした。

 少しくすぐったかった。


 するとおじさんが僕の両脇に手を入れ、僕を持ち上げると犬の背中に乗せてくれた。


「よし、ライエ噴水を一周してこい」

『がうう』


 犬の名前はライエと言うらしい。


 ライエは軽快な足取りで噴水の周りを一周してくれた。

 その時、「あれは」「きれいな犬」「フレイムウルフか?」「大丈夫なのか」などという声が聞こえてきた。

 でも、僕は犬の背中に乗れてとてもうれしかった。

「ありがとう、ライエ」

 口にしたその言葉がわかるとは思えなかったが、

『がう!』

 とライエが一吠えした。


 こうして噴水を一周して戻ってくると他の子たちによって長い行列ができていた。

 ライエがちょっとつらそうな顔をしてのは、気のせいではないかもしれない。



 後から聞いた話だと、1人銅貨1枚で犬の背中に乗せてくれる商売が始まったらしい。ただ乗れるのは20人までた。

 僕は銅貨を取られなかったのでよかった。


 行列が全てなくなってからもう一度ライエのところに行き、

「今日はありがとう」

 とだけ言った。するとライエは僕の顔を一回舐めてくれた。



 それから2日が経ったときだった。

 2匹のドラゴンが街の上を旋回しているのが見えた。

 しかもそのうちの1匹はあの赤ドラゴンだった。

 強いものを見ると戦いを挑むというので有名なドラゴンだ。


 青ドラゴンが街に降りてきた。

 その目の前には噴水でみたおじさんが立っていた。

 おじさんは堂々と立っていて(子供からはそのように見えた)ドラゴンと話をしている。

 僕は街の人たちと一緒に暫く様子を見ていた。

 守備兵団が現れ、近寄らないように指示を出していたのでなおさらだ。


 ドラゴンが人の姿に変わった。話には聞いていたけど信じてはいなかったが、

「す、すごい」

 僕はワクワクが止まらなかった。


 やがて話が終わったようで、獣人の子供2人がドラゴンと遊びだした。

 僕は守備兵団の隙をみておじさんのところに近寄り、その袖を引っ張って


「おじさん、僕も遊びたい」

 と言った。

「ん? 君はもしかして噴水広場で最初にライエを触りたいと近づいてきた子か?」

「うん、グリル。グリルって言うんだ」

「そうか、グリルか。勇気があるな。ヘラトリックスさんこの子も一緒にいいだろうか?」

『ん? おお、構わんぞ』


 ドラゴンの声は迫力があった。

 やがて青ドラゴンが他の子供たちに向かって、


『ほら、お主らも一緒に遊ぶか』


 といったので、僕の友達や他の子供たちが一斉にドラゴンに近寄っていった。



 やがてドラゴンの前におじさんが子供たちを並べると何やら行っていた。

 四角いものでその前には目玉のようなものが付いていた。

 作業が終わると子供たちをドラゴンの方に向かせて


「ほらきみたちお礼を言おうな」


 という言葉で一斉に


「「「「「「「「ドラゴンさん今日はありがとう」」」」」」」」」


 とお礼を言った。



 やがてドラゴンは街から去って行った。


 その後、最初にドラゴンに挑戦しに行った僕は仲間内でヒーロー扱いされた。

 この時、僕の将来が決まった。僕は世界一の冒険者になる。


 

 数年後、グリルが赤ドラゴンに弟子入りするが、グリルが世界一の冒険者になることができたかどうかはまた別のお話。



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