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第23話 アルデバラン街に現れた者

山波が石に念じたことによって現れた者とは?

それは街を恐怖に陥れた。逃げ惑う人々、対応に追われる守備隊騎士団

山波はその行為の代償に恐怖した……?。


 暫く車から降り待っていると、街がざわつき始めた。

 山波は空を見上げる。そこには青いドラゴンと赤っぽく見えるドラゴンが上空を旋回していた。

 やがて青い方のドラゴンが山波の前に降りてきた。


『おう、ゴロウ。我を呼んでくれたというのは、酒か?』

「ええ。昨日、私の世界から戻っきましたので。お酒を買ってきましたよ」

『本当か!!ちょっと待ってくれ』


 そういうとヘラトリックス氏は上空を見上げ、


『ほら、降りてこんか』


 といった。

 すると、上空を旋回していた赤っぽいドラゴンが降りてきた。

 降りてきてわかる。はっきりと。赤っぽいドラゴンではなく、赤いドラゴンであった。

 鱗は陽を反射し赤くキラキラと輝いていて、その両目も瞳が赤かった。


『ヘラトリックスよ、そいつが特Sの人間か?』

『おお、そうじゃ。わが心の友のゴロウじゃ』


 いつの間にか心の友になっていた山波はまさかドラゴンが2匹いや2人も現れるとは思わなかった。


「ヘラトリックスさん、そ、そちらの御方は?」

『おお、こいつは赤ドラゴンでなリケルつうんじゃ』

「リケルさんですか? よろしくゴロウといいます』

『お主がゴロウか、リケルじゃ。話はきいておる。特Sなんだとな。その割には強そうではないの?』

「え? 私ですか? まあ、腕に自信はこれっぽっちもないですよ。普通の人間ですから」

『なんじゃ、折角戦いに来たのだが。それではなんで特Sなんじゃ?』

「いや、私もさっぱり。旅訪者ということで特Sなんでしょうかね~」

『つまらんのう。戦えると思ってヘラトリックスの後をついてきたのじゃが』

「がっかりさせてすみません」


 山波は遠巻きに見ている野次馬が気になっていた。考えてみれは野次馬が集まるのも当然である。ドラゴンなんか生きているうちに見られるかどうかである。さらに言えば街中に現れて素直に話をしている。こんな場面に出くわすことなんてそうそうあるものではないだろう。


 車からライエ達が降りてきて呆然としている。ライエですらドラゴンに会ったことなどこれまでにない。

 他の同行者にしてみてば言わすもがなである。


 野次馬の中から、子供が「あ、噴水の犬のおっさんだ」という声まで聞こえる。


「おい、あれはフレイムウルフじゃねえのか?」

「ああ、お前は知らないのか? 2日ぐらい前、噴水広場で子供たちに1周1銅貨で乗せていたんだ」

「おいおい、大丈夫だったのかよ」

「ああ、子供たちはよろこんでいたさ」


 噴水での出来事も話題になっている。


 やがて騎士たちが現れ、野次馬を少し下がらせ始めた。

 騎士が野次馬の前に立って、成り行きをみている。


「ヘラトリックスさん、人の姿になってもらえないですか? なんだか野次馬が集まってしまって」

『おお、そうだな』


 そういうと、ヘラトリックスとリケルは人の姿になった。


『すまんのう、まさか街中で呼ばれるとは思わなかったのでな』

「それは、私の常識が無かったからだと思います。立ち話もなんですので車の中にどうぞ。リケルさんも」


 山波が車に誘い入れたことで、魔法障壁が反応することはなかった。

 2人が車の中に乗り込んで他の同行者も中に入った。


「みなさん、お騒がせしました」


 山波は何事もなかったかの様に言ったのだが、民衆の前に出て盾になっていた騎士の一人が近寄ってきて、

「申し訳ないが、後で話を聞かせてくれるか?」

「えっと」

「ああ、私はアルデバラン街の第二守備兵団のネラミルだ」

「ゴロウさん、そこには私が行くわ」


 アークトゥルスが替わりに行ってくれるらしい。


「アークトゥルス様、まさか関係者ですか?」

「ええ、そうよ」

「そうですか。女王様関係なのでしたら我々が口を出せるレベルではありません。街で暴れないのであれば騎士は下がらせます。市民に危害が及ぶことの無いようにお願いします。できれば私が話に加わりたいのですが?」

「あ、いいですよ」


 山波は気楽に言ってしまった。


「本当によろしいので?」

「ええ、別にやましいことはないですし、ただ人が多くて窮屈かな」

「それでしたら、外にテーブルといすを御用意しましょう」

「え?パルメさん?」


 パルメは車に戻ると、折り畳み式のテーブルを持ち出し、車の前に展開した。他に椅子などもてきぱきと用意する。


(だ、だからなんでパルメさんそんなこと知ってるの?)


「ヘラトリックス様とリケル様。どうぞこちらに。お席を外に用意しました」

『おお、悪いな。車の中はちょっと人が多くて息苦しかったわ』



 さらにパルメは冷蔵庫からレモンディーと氷をガラスコップに入れ2匹いや2人の前に用意する。

 ショルジュとスミレンは車の中に待機し、ライエは足元、メンカとリナンは興味深そうに2ドラゴンの人間の姿を見ている。

 イリスは正面右側に座りその後ろにスイナが立っている。

 山波は正面の席に座り、ネラミルとアークトゥルスは長椅子に座っている。


「すいません。お待たせしてしまって」

『気にすることはない』

「さっそく、お酒を持ってきますね」


 山波は車から日本酒を5本、洋酒を2本を持ってくる。


「こんなところですがいかがでしょう?」

『おお、助かる。女王からの指示で、その部下達は我に酒を持ってきてくれぬ。吉田といい女王の言いなりじゃ』


 山波はその話は聞いているが、女王にドラゴンが一方的に差しでやられたことまでは知らない。


「大変ですねぇ」


――


「なんだ、ドラゴンは酒を受け取りに来ただけか?」

 ネラミルがアークトゥルスに話しかけていた。


――


『のう、ワシにもなにか。できれば葡萄酒がいいのじゃが』

「リケルさんはワインですか。ちょっと待ってください」


 山波はボックスワインを買っていたのでそれを持ってきた。


「これでいかがですか?」

『これはなんじゃ?』

「これは葡萄酒というかワインです」

『これがか? 変わった入れ物じゃの』

「これをここに挿すと注ぎ口になります」

『なるほど便利なものじゃ』


『済まぬなゴロウ。で今回の代金なのだが』

「いえ、お金は結構です。前回いただいた鱗がいい値段しましたので」

『そうか、それならいいのだが。困ったことがあればその石に念じればよい。いつでも我が飛んでくるぞ』

『なんだ、ヘラトリックス、お主、鱗をやったのか?』

『ああ、いいものをもらったからな』

『ふむ、それならワシも鱗をやるわい』


 そういったリケルの手から鱗をもらう。


「ありがとうございます。折角ですし、もう一度写真を撮っていいですか?」

『おう、あれか? 構わんぞ』


 山波はここにいる全員に並ぶように言い、写真を撮影した。もちろんドラゴンに戻った姿でも撮影した。

 さらにメンカとリオンがドラゴン姿の手に乗らせてもらって撮影もした。

 メンカとリナンの行動を見ていた街の子供のうち、一人が少しずつ近づいてきて、山波のそでを引っ張り、


「おじさん、ボクも遊びたい」

「ん? 君はもしかして噴水広場で最初にライエを触りたいと近づいてきた子か?」

「うん、グリル。グリルって言うんだ」

「そうか、グリルか。勇気があるな。ヘラトリックスさんこの子も一緒にいいだろうか?」

『ん? おお、構わんぞ』

『おいおい、ヘラトリックスよ。ドラゴンの威厳が』

『まあ、良いではないか。威厳よりも。ほら見てみろ子供たちの笑顔を』

『お主がそれでいいのなら構わぬが』

『それにの、全てはもう100年前に終わっているんじゃ』

『そうか、そうだな』

『ほら、お主らも一緒に遊ぶか』


 ドラゴンの近くに行った子供を遠巻きにみていた子供たちもその一言で一斉にドラゴンに近寄ってきた。

 それから暫くは、フレンドリーパーク的な様相になっていった。


 噴水広場でライエに乗った子供たちは我先にとドラゴンにまとわりつき遊び始めた。

 街の大人たちはその様子を遠まわしに見ながらも、ドラゴンの逆鱗に触れないかとヒヤヒヤしていた。

 だが、そんな子供達にもドラゴンは友好的であった。山波はそんな子供たちを集めてドラゴンの前に立たせて、記念撮影を行った。



「ヘラトリックスさん、リケルさん。子供たちの相手もさせてしまって申し訳ありませんでした」

『なんの、気にするなゴロウ。心の友の頼みじゃ。また酒を期待しておる』

『おうよ、今度は白と緑も呼んでくるかのう』

「そ、それは、気を使っていただいて」


 ドラゴンってほかにもいるの?と混乱した山波である。


『そこな騎士よ。我々ドラゴンは人間を攻撃はせぬ。しかし身を守るためであればやむを得まい。だから街に来ても人間から攻撃をしない事じゃ。住処で我々を攻撃するのもやめておけ』

『だな、何しろあの女王じゃ。何されるかわからん』

「わかりました、心にとどめておきます」


 最後に、そういって2体のドラゴンはそれぞれの住処に戻って行った。

 ネラミルはドラゴンの言った言葉を心に留め、騎士団の規則に書き加えた。


 いつの間にかメイドのパルメは片付けを済ませ、まるで何事もなかったかのように行動していた。

 山波は街への迷惑料として、ボックスワインをネラミルに渡した。

 メンカとリオンはドラゴンに乗れたと大はしゃぎであった。

 山波とライエは街の子供たちと挨拶を済ませてから車に乗り込んだ。

 山波は同行者が車の中で、各々の席に着いたことを確認すると車を発進させた。もちろん目指すは王都である。


~~~~


 この1件があってから、赤ドラゴンと特に青ドラゴンがアルデバラン街に度々飛来するようになった。だがそれはまた別の話である。

 この件はしばらくの間アルデバラン街の話題を独占した。もちろん最初に声を掛けたグリルは子供たちの中でヒーローとなっていた。


 しかし、どこからか聞こえる怨嗟の声をライエは聞き逃さなかった。

 その声は王都のある方角から聞こえてきたようだった……。


街は平和でした。


校正 2018/09/10

ちょっと待ってくれ」->ちょっと待ってくれ』

基本的に姿かたちが人間に近いものは「」

元の姿かたちが人間ではないもの『』 で分けています。

細かいので修正ミスや気が付いていていない部分があるかもです。


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