第18話 決着!!服選び
服のコーディネイトに決着がつき、アルデバラン街の名物を昼に食べることにした。
果たして、どちらの服が選ばれたのか?
そして、飛行機とファーストクラスの謎がついに明かされる。
2人が指を差したのは、
なんと!!
メイドのパルメであった。
馬車で今さっきエルナトの村から戻ってきたパルメ。
執事のセバンは馬車を屋敷に置きに行き、パルメのみ先に馬車から降り、さりげなく2人の好きそうなものを聞きながら選んでいったのである。
イリスもアークトゥルスも自分の好みで似あいそうな服を選んでいたが、メイドのパルメは2人の好みを聞きながら、双子なので同じもので色違いであったり、獣人なので動きやすい服を優先させていった。
これはスミレンのファインプレーもある。
2人の少女たちが困惑していたのを感じ取ったスミレンがパルメに参加を切望し、パルメがそれを快諾したのだ。
その結果、2人そっちのけの対決は勝手に進み、2人の意見を聞きながら服を選んだパルメがメイドらしい優しさで勝利をもぎ取った。いや、イリスとアークトゥルスの自爆である。
「パ、パルメいつ帰ってきたのです?」
「つい今しがたですお嬢さま。お二方の意見も好みも聞かずに服を選んでどうするのです?」
イリスはその一言で自分の失敗を悟った。
「それに、こちらには遊びで来ているのではないでしょう?」
「そ、それは」
「今日は仕方ありませんが、これが終わったら食事をしてお屋敷に戻ります。明日からはしっかりと監視しますので、外には出られませんよ」
「そんなぁ。パルメ許して。2人と遊ばせて」
「はぁ。それはさておき、服の代金はどうなさるのです?」
「あ、それは私が払います。2人に選んでもらうはずだったのですが、パルメさんのおかげで助かりました」
山波はそういうと、店に向かいパルメが選んだ服の代金を、身分証で支払った。
パルメの選んだものの代金は全部で金貨30枚であった。8枚では全く足りなかったなと思った山波はイリスとアークトゥルスが選んだ代金を聞いて驚いた。なんと、それぞれ金貨150枚と金貨120枚であったのだ。
そして子供たちに店の試着室で、こちらの世界の服に着替えてもらった。
改めて、パルメに感謝しかない山波であった。
「さて、皆さまここで立ち話もなんですのでお食事にしませんか? セバンが先に行き予約していると思います」
セバンが馬車を屋敷に置きに行くついでに、店の予約もしてくれたようだ。
できるメイドと執事は何かが違う。
「そこは、フレイムウルフが入れる店ですか?」
「ええ、もちろん。それでは向かいましょうか」
「あ、申し訳ありません、取り敢えず荷物だけ車に置いてきたいのですが?」
「ああ、それならこの袋をお使いください。魔法袋になっていますのでその量でしたら問題なく入るでしょう」
パルメが渡してくれた魔法袋というものに、買ったものを入れると全て入ってしまった。
「本当にはいった」
驚いている山波をよそに、
「それでは、参りましょう」
と涼しい顔で言う。できるメイドであった。
いいところを全てパルメに持っていかれたイリスであったがパルメは自分のところのメイドであるので、アークトゥルスに対する溜飲は下がった。一方のアークトゥルスは先ほどの店の提案といい、今回の服の選択といいいいところがなかった。
メイドのパルメを先頭に皆でぞろぞろと先ほどの中央通りを歩いている。
噴水で先ほど見た子供たちがこちらに向かって手を振っている。山波も手を振りかえす。
近づいてくる子供もいる。
「ゴロウさんは子供に好かれるのかしら?」
「いや、そんなことはないかと思うのですけど」
イリスが山波に聞いてくるが、そういうことは本人は全く気が付かないものである。
近づいてきた子供が山波に、
「おじちゃん、明日も犬に乗れる?」
「難しいかな。ごめんな」
「ん~。そっか。でもまた今度乗せて」
「おう、今度来るときは乗れるようにするよ」
そういって子供はライエを撫でて離れていった。
「どういうことですの?」
「ああ、先ほどライエの背中に乗って噴水一周を銅貨1枚で廻る商売をやったんですよ。お金取ればみんな諦めるかなって思って。子供たちって、案外お金持っているんですね。あっという間に列ができてしまって」
「銅貨1枚で?それはちょっと安すぎたかもしれませんでしたわね」
「やはりそうですか」
「銅貨1枚でねぇ」
イリスがポツリそういうと黙り込んで何か考こんでしまった。
そうこうしていると、1軒のレストランのような場所にたどり着いた。
中に入り奥の個室に案内される。そこはテーブルが2つあり1つは小さ目、もう一つは大きなテーブルがあった。
パルメに小さなテーブルのある方に案内され、各自それぞれにすわった。
イリスがメンカとリナンに服の事を謝っているようだが、2人は気にすることもなくイリスおねえちゃんと呼んでいる。ライエもイリスに近寄って近くに座っている。何となく仲が良くなったようだ。
「この街はスマイルバッファローが有名なのです。ここの牡牛の肉は特に柔らかく美味です。他にもスマイルバッファローを家畜化し、乳、チーズ、皮などを名産品としています」
パルメが説明してくれた。
「へえ、それは楽しみだ。ところで注文を取りに来ませんが?」
「はい、こちらはおまかせとしていただいていますので、暫くご歓談していただければよろしいかと」
流石できる執事そこまでしているとは。
「それじゃ、メンカとリナン。改めて、イリスさんとパルメさん、スミレンさん、アークトゥルスさんに服を選んでもらったお礼を言おうか」
「「どうもありがとう」」
「うん、いい子だ。私からも本当にありがとう」
「いえ、これくらいどうということはないですわ」
「私は何もしませんでした」
「私も、結局選んでもらえなかったし」
「それでも、お2人が子供のために一生懸命選んでもらったことは感謝してます」
「結局はパルメの一人勝ちですわ」
確かにそうではある。これ以上この話をすると2人の傷口が深くなりそうだ。
「まあ、それはさておき。イリスさん? 飛行機とかファーストクラスがどうのこうの言ってましたよね?」
「あ、あれは、そ、そうお父様から話を聞いたのですわ。えっと、王都で女王様から話を伺ったとかで、ね?スイナ」
「……」
スイナは何も言わないが、何やらパルメがイリスに冷たい視線を投げかけている。パルメってメイドだよな。
「え、そ、そういうことですから御気になさらないでください」
「ママったら」
「ということは、その女王様は飛行機を知っていると?」
「一緒に冒険をしていた方から話を聞いた事があるとおっしゃってましたが……」
「ほお」
山波は何かを考えて、
「もしかすると、その人がタケル・ムドウさんですか?」
「さ、さあ。どうでしょう」
スミレンは何も知らないようだ、イリスとアークトゥルスの目が泳いでいる。
(この話も深く探らないほうがよさそうだな)
丁度その時、扉がノックされた。そちらを振り向くとパルメが扉を開け、その瞬間いい匂いが漂ってきた。
カートを持ってきた給仕やパルメがてきぱきと食事をテーブルにセットしていった。
私たちが座っているテーブルに置かれるのかと思っていたが、隣の一回り広いテーブルにセットされていった。
(なるほど、こちらは歓談用なのか。道理でテーブルが狭いと思った)
「それでは皆様、こちらのテーブルに移っていただけますでしょうか」
パルメができるメイドらしく皆に声を掛けた。
皆が座ると、
「それでは、どうぞお召し上がりください」
「いただきます」「「いただきます」」
山波がいうと、2人の子供も真似をした。
食事はステーキに、パン3種類、スープ、チーズ2種類、牛乳。燻製の肉、サラダなど多様であった。
ライエ用の食事もあり。皆はそれぞれ満足して食べていった。
そしてデザートに紅茶と果物、クッキーのようなものを食べながら、
「ゴロウさんはこの後どうなさるのですか?」
「そうですね、この街を見たいので荷物を車に置いてから散策しようかと思ってます」
「なら、私たちがご案内いたしますわ」
「いえいえ、服を選んでいただいただけで。これ以上イリスさんにご迷惑をおかけするわけにはいかないので」
「そんな、迷惑ではありませんわ(こちらもたすかりますし)」
「え?なにか?」
「いえいえ、なんでも。でも……」
「お嬢様?」
「ひっ、パ、パルメなんです?」
「いえ、なんでもございません」
「後のことはこのアークトゥルスに任せて。御屋敷に戻られて結構ですよ」
「ま、お嬢様も本日はこの街にきて初日ですし、明日からお役目をしっかりなさっていただければ、本日は自由でいいでしょう」
「パ、パルメ~~」
パルメがイリスに助け船を出した。
「というわけで、ゴロウ様、いかがでしょう? イリス様と御一緒に散策していただけないでしょうか?」
「う~裏切者」 というアークトゥルスの声が聞こえるが、
「そうですね。わかりました。それならよろしくお願いします。ところでこちらの代金は?」
「それは問題ありません」
「そうですか」
きっとイリスの家の支払いなのだろう、であれば
「ほら、メンカ、リナン、ライエも立って、イリスさんにお食事のお礼を」
「「ありがとうございました。」」
『がうう(ありがとうっす)』
「イリスさんごちそうさまでした。とてもおいしかったです」
「そ、そんなたいそうな事してませんわ」
真っ赤になって照れているイリスであった。
店を出て車に向かい、荷物を魔法袋から出してから魔法袋をパルメに返却してから、アルデバランの街を散策した。
ぞろぞろと皆で買い食いをしたり、店を冷やかしたり、アクセサリーの店でイリス、スイナ、アークトゥルス、スミレン、パルメに服選びのお礼として小さな髪飾りを買ったりした。
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「この森の先が、邪神の支配下か」
「○△※◆様、この森は迷いの森になります」
「名前からしていかにも人を迷わせます。って感じだな」
「ええ」
「とりあえず行くしかない。互いに迷わないようにしよう」
何度か歩いているが一向に出口が見えない。
「ここは? 先ほど通った道か?」
「そのようです、このままでは先に行けませんね」
「そうだな……」
○△※◆が当たりを見回す。ふと、光るものが目に入った。
○△※◆が刀を抜く。そして光のあった場所に刀をふりおろす。
空間に一筋の切れ目が入ったかと思うと、「ぐわっ」という声がした。
「よ、よくも。だがお前たちはこの先の……」
○△※◆が何かを言いかけた魔族に再び刀を振り下ろした。
「○△※◆様そんないきなり」
「最後までしゃべらせる必要もないだろ?どうせここから先はお前らじゃ倒せない強敵とかいうのだから。聞くだけ無駄だよ。それよりも迷った分ストレスが溜まったしな」
「ソ、ソウデスネ」
「さて道も見つかったし、先に進むか」
「はい」
理不尽な○△※◆の言葉を聞きながら、*+@%は名前すら聞かないで死んだ魔族を哀れに思った。
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そろそろ夢の秘密が読者にばれそうです。
校正
セバス->セバン




