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第17話 メンカ&リナンとイリス&スイナと?

メンカとリナンの服をスミレンに任そうと考えていた山波。

乱入したイリスとスイナの助っ人とともにマーシャの服屋へむかう。

その道中さらなる乱入者が。服は無事購入できるのか?緊迫の17話



「ゴロウさ~~~~ん」


「ん?なにやら名前を呼ばれたような」


 すると前の方からこちらに向かって走ってくるアークトゥルスが見えた。


「まさか」


 正にまさかである。本当に「あっ」と言う間に山波達の前に到達していた。

 漫画ではない。しかし、漫画の文字で表すとなると、ドドドドドという文字が正鵠を射るであろう。


「アークトゥルスさんどうしたのです?今日は特に何もないので自由行動としたはずですが?」

「ゴロウさんこそ、こんなに女性をはべらして、何しているんですか?」

「ああ、メンカとリナンの服を買ってあげようと思って、サンナミさんにお願いしたんですが、サンナミさんもこの街は初めてということで……。そしたらイリスさんたちが服屋に案内してくれるということになりまして」

「なるほど、そうだったんですね。私はてっきり浮気でもしているのと」

「はい~? 私は独身ですし、この先誰かと付き合おうとも思っていませんよ?それにこの年ですしねぇ」

「あ、いや、うちのママが」

「なんですか?」

「あ、いや、なんでもないです。それなら私もいいところを知っています。マーシャの服屋なんてどうです?」



「「「「……」」」」



原文ママ

 世の中には空気を読めないという人物がいる。まさにその典型であろう。アークトゥルスは話さなければ結構美人だしモテるとは思うのだが。



「今、そこに案内しようとしているのですわ」

「えっ!えっ」


 アークトゥルスは周りにいるみんなの顔を見ると、それぞれが頷いている。


「さっ。皆さん行きますわよ」


 一行はマーシャの服屋に向け再び歩き出した


「あうう、待ってください。私も」


 アークトゥルスは立ち直ると一行の後ろからついてきた。



 山波はライエを撫でながら、つぶやいた。


「なんだろう、服を買いに行くだけなのになぜこんな大事に……」


 ライエの背中には、メンカとリナンが乗っている。ライエは重そうなそぶりも見せずに、


『がううん(これからが大変っすよ)』

「どういうことだ?」

『がうう(何でもないっす)』


 ライエの言わんとしていたことが分かったのは、マーシャの服屋に到着してからであった。




 それから程なくマーシャの服屋に到着した。

 マーシャの服屋は地球側のブティックとしてでも通用しそうな店であった。

 色々な服があるというわけではないのだが、服の展示方法がである。

 ある服は木製の全身マネキンに着せられ、またある服はハンガーに掛けられサイズや色違い--地球程カラフルではないが--が飾られ、またある服は綺麗に畳まれ展示されている。

 服の種類はそれほどないと思って見ていたが、奥には試着室もあり、旅装服やメイド服、作業服、雨用のコート、マフラーのようなものから、靴、ハンカチ、下着、エプロンのようなものまで置いてある。


 前言撤回である、この店で女性のあらゆる服は全てそろうのではないかと思うほどである。

 さらに、見ていても何のための服なのか分からないものすらある。

 それをじっと見ていると、


「それは騎士や冒険者が軽鎧の下に身に付けるものですよ。ちなみにこの店は女性専門です」

「あ!」


 スイナが山波に説明するとともに、軽く注意喚起してくれた。


「ゴロウさん、2人の服は私たちが見ますわ。外で待っていてもらえますかしら?」

「あ、はい。それじゃ寝間着を2着、普段着や下着を生活に困らない分。靴もお願いします」

「任せて私が見繕うから」


 イリスに言われ、必要なものをお願いすると、アークトゥルスが横から声を挟んできた。


「残念ですね。あなたも外で待っていていただけませんこと?」

「何言ってんの。私も見るに決まっているでしょ」

「貴方に、服の感覚がわかるとは思えませんわ」

「なら、勝負よ。あなたはメンカちゃんに、私はリナンちゃんの服を選らんでどちらが気に入られるか。どう?」

「あらあら、そんなことでよろしいのですか?後悔なさっても知りませんわよ」



「はぁ。ライエが言っていたのはこのことか?」

『がううう(ちがうっすよ)』

「えっ、まだ何かあるのか?」

『がうう(待っていればわかるっす)』


(なんで野生での魔物のライエが……。私でさえ分からないことがわかるんだ)



 ライエからメンカとリナンは既に降りている。


「それじゃ、メンカとリナンは服を見繕って貰ってな。気に入らないものはちゃんと言うんだぞ」

「「うん」」



 ライエと山波は外で待つことにした。


~~~~~~~


 それから1時間。服選びはいまだに続いている。



『がうがう(おなかすいたっす)』

「だよなぁ」


 山波はマーシャの服屋を見ながら言った。


 山波はベンチのような場所で座って待っていたものの流石に疲れてきた。

 何もしていないのに疲れてくる。意外なことであるが、服選びをしている人は疲れることはなく、待っているだけ、ベンチに座っているだけの方が疲れるのである。


 そして、スミレンがこちらに気が付いて近寄ってきた。

「まだまだかかりますよ」

「そっか。それじゃ私たちは散歩してくるよ。ライエも疲れたようだし」

『がうがう(別に疲れてないっす)』

「しー」


 ライエの言うことは山波にしか分からない。


「そうですか」

「そうだ、それなら金貨をスミレンに渡しておくから。それで支払してくれるか?金貨8枚で足りるかな」

「金貨8枚ですか。どうですかね」

「え?8枚で足りないの」

「何しろ、あの、お2人が選んでますから」

「それじゃ1時間後に戻ってくるよ。流石にそれまでには終わっているだろ?」

「そういうことでしたら2時間後にもどってこられればいいと思いますよ。丁度お昼時になりますから」


 確かにあと2時間もすると昼時だ。こちらの世界は日が昇ると街が動き出す。なのでマーシャの服屋は8時には既に店が開いていた。一行が到着したのは9時前だった。


「わかった。その頃には戻ってくるからそれまでに服を選び終わっている事に期待しよう」


 山波はスミレンにそういって街を散策することにした。

 女性が4人いて2人にあーでもない、こーでもないと服を選んでいるのだ。残り2時間で終わるだろうか?

 山波はライエを引き連れ街の中に消えていった。


 ライエの言いたいことはこのことだったのである。さらに追い打ちをかけるように、「よし本格的に選ぶわよ」という声が聞こえたが、それは山波には届かなかった。ライエは聞こえていたのだが……。



~~~~~


 山波とライエは中央通りと思しいところを歩いてきた。すると各通りがつながる広場のようなところに出てきた。

 広場の中央には噴水があり、そこは歩道のような道から一段上がった人々の憩いの場所になっている。

 その広場には屋台がいくつも出ており、それぞれ特徴のある食べ物や飲み物を売っていた。

 それ以外にも古着や薬のようなもの、アクセサリー類、怪しげな女神像など売っている店があった。

 いわゆるサテライト・ストアというものだろう。


「どうしようか、小腹がすいたから肉をちょっとだべたいところだな。喉も乾いたし」

『がうん(そうっすね)』


 目の前で焼かれている肉が何の肉なのが分からないが美味しそうな匂いを漂わせている。


「美味しそうだな」

「いらっしゃい1本どうだい?」

「これは何の肉です?」

「こっちはロックボアの肉で、こっちがバンブーラビッドの肉だよ。ロックボアはやや固めだが肉汁がたっぷりで、バンブーラビットは柔らかく竹の香りがするんだ。おすすめはバンブーラビットだな」

「ほお。それじゃロックボア1本。バンブーラビット2本おくれ」

「あいよ」


 両方とも銅貨20枚であった。


「あとは飲物だな」

「飲物ならお勧めは、ペアーウォーターだな。あっちの店で売ってるぞ」

「そう、ありがとう」


 ペアーウォーターを買って噴水の近くまで行き縁に座って鞄からペーパーボウルと紙皿を取り出す。

 そこにペアーウォーターをボウルに注ぎ、紙皿にバンブーラビットの肉を串を取り除いて入れ、足もとに置く。


「ほら、ライエの分だぞ」

『がうう(ありがたいっす)』


 バンブーラビットの肉は仄かに竹の香りがする美味しい肉だった。ペアーウォーターはそのまま梨水であった。

 日本の梨ではなく、どちらかと言うと西洋梨のようである。


 ロックボアは肉が固いが噛めば噛むほどに味が出る肉であった。一口食べた後、残りはライエに食べさせてあげた。

 元々、山波はバンブーラビットの肉だけで十分であったが、ライエのためにロックボアの串も買ったのだった。しかし、一口だけどんなものか味わいたかった。


「私はバンブーラビットの方が好みだな。ライエは噛みごたえがあるロックラビットが好きそうだが?」

『がううがう(どちらも好きっす。でも白い塊はもっと好きっす)』

「そうかそうか、おにぎりに嵌ったか」


 ライエと話をしていると、目の前に子供が立っていた。


「なんだい?」


 子供はもじもじしながら何かを訴えているが、うまく言葉にできないようだ。


「もしかして、この犬を触りたいとか?」

『がうう(勘弁してくださいっす)』


「あっ。うん」


子供はライエが唸ったことでビックっとしたようだが、触りたいらしい。


「優しく撫でてあげてね」

「うん」


 輝くような笑顔をライエに向けた子供は恐々と手をライエに出す。

 ライエはその手をカプリと甘噛みする。子供は吃驚して手を引っ込めようとするがライエが離さない。

 山波は子供が泣きだすかなと思ってみていたら、子供と目があった。


「怖いかい?」

「ううん」くびを横に振る子供。


 ライエは手を放して、その顔を舐めていた。

 山波は子供を抱え上げるとライエの背中に乗せてあげた。


「よし、ライエ噴水を一周してこい」

『がうう(わかったっす)』


 これが後々大変なことになる。

 フレイムウルフの背中に子供が乗っかり、笑いながら噴水を一周して戻ってくると、そこには子供たちの列ができていた。

『がうう~(これは!っす)』


-----


 そう、ライエが噴水1周して戻ってくる間に子供が山波に、


「おじちゃん、あの犬の背中に乗りたい!!」


 と言ってきたのだ。

 しかし、山波はライエがかわいそうになったので、つい、


「ん~1人1周、銅貨1枚かな」と言ってしまった。


 それを聞いた子供が銅貨1枚を持ってきて、「私も」「僕も」「ミーも」「だっぴゃ」「にゃ」と言ってきたのである。

 失敗に気が付いた山波であったが既に手遅れである。


「それじゃ20人まで、銅貨1枚。はい並んで」


 あっという間に列ができてしまった。


「ごめんな、20人より多いと、ライエが疲れてしまうから許してくれ」


 乗れない子供たちに謝る山波。しかし、酷いのは山波である。日本でやったら動物愛護法違反になるのは目に見えている。



 ライエがそれから完全に解放されたのは30分後である。

 何しろ、乗れなかった子供がライエを撫でていったのだ。その中には「これフレイムウルフですよね?」と尋ねてくる冒険者風の人もいた。




「ほらライエ肉を買ってきてやったぞ」

『がうう(ひどいっすぅ)』

「ライエは人気者だな。羨ましい」

『がう(はあっす)』


 ライエ自身勘弁してほしいというところであった。

 それから暫くして噴水広場からマーシャの服屋に戻ってきた山波は、今、まさに、コーディネーションの決着がつきそうなところであった。



「それでは決定します。今回の服で好きな方はどちらですか、メンカさんとリナンさん指を差してください」


 ダララララララララララ~~~~~ダン。

 スミレン、ノリノリである。


「「こっち」」



 果たして2人が指さしたのは……。



台風お気を付けください。

さて指さしたのはどちらか?


校正

おうすめはバンブーラビット->おすすめはバンブーラビット

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