第14話 山賊壊滅へ
アークトゥルスはギルドからある依頼をうける。
山波は仕方ないと思いながらもその依頼をうける。
ギルドからの依頼に山波はどのように対応するのか。
アークトゥルスが冒険者ギルドから戻ってきて、賞金を分けた後こんなことを言ってきた。
「実は、冒険者ギルドから山賊の拠点を潰してきてほしいと頼まれていて……」
「拠点があるんですか?」
「どうやらそこにまだ3人くらい残っているようで、全員を確保したいそうなのよ」
「それを頼まれたと?」
「ええ、ジョルジュやスミレンはゴロウさんの護衛が優先されるからゴロウさんの許可を得たくて」
「3人か」
「いちおう山賊が言うには残り3人程ってことなんだけど、倍は見ておいた方がいいわね。それに攫ってきた人もいるらしいわ」
「う~ん、3人とライエを軸にしても危険ではないかな」
「ライエを貸してくれれば3人でもなんとかなる」
ジョルジュが山波とアークトゥルスに言ってきた。
「人を助けるのもしなくてはならないか」
「そこでゴロウの馬車を出してほしいのよ。場所は普通の馬車だと2~3時間かかるところで、ゴロウの馬車なら10分くらいでしょ。山賊が襲撃に成功して帰ってくるのに時間が掛かるから、私たちが先に襲撃するの。それに攫われたひとを輸送するにも便利だわ」
山波は所謂日本人である。人を殺すことには抵抗がある。しかし、人質がいるのであれば……。
「分かった。車を出すし、ライエにも力を借りよう。ジョルジュもスミレンもアークトゥルスの手助けをお願いします。もし攫われた人がいるのであればその確保が優先事項になります」
「ええ、ありがとう」
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車は村から20分程度の場所に来ている。馬車であれば2時間くらいかかる場所である。
「それじゃ、私も拠点まで行こう。どうせ人質がいるのであればその方がいいだろう」
「しかし、ゴロウさんは」
「まあ、いざとなればライエが助けてくれるさ。な?」
『がうう(任せてほしいっす)』
「と言うわけだ」
※作者注:何が「と言うわけ」なのかは雰囲気でわかる意外にない。何しろライエの言葉は山波しか分からないのだから。
「そこまで言うのであれば一緒に行きましょう。ここから歩いて数分ですから」
山波は既に防刃ベストや防刃手袋などを着ており、万全の体制である。もちろん警棒も忘れてはいない。
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「見えたわ、あれが山賊の本拠地ね。見張りは1人ね」」
「どうする、ライエから行ってみるか?」
『がうう(おとりっすね)』
「ライエが自分が囮になるっていってる」
「そうね。それじゃそれで頼むわ」
「よし、気を付けていけよ。なるべく時間を稼いでくれ」
『がうん(わかったっす)』
話はまとまり、ライエが飛び出していった。
見張りに唸り声をあげるライエ。
見張りは笛のようなものを吹いて仲間を呼ぶ、すると、丸太小屋から留守番役の山賊が5人、何事かと出てきた。
「フ、フレイムウルフ」
「フレイムウルフにこの場所を知られると次に来るときは仲間を引き連れてくるぞ。なんとしても仕留めろ!」
どうやら留守番役は5人だったらしい。
「よし、私たちも行こう。ゴロウさんはここで待っていて」
アークトゥルスがそういうと飛び出していった。山賊たちは5人全員がライエを殺そうと躍起になっている。
その隙にアークトゥルス達は本拠地に入り、人質がいないか調べていった。
山波がその様子を見ていると、アークトゥルスたちは人質を連れて戻ってきた。
「ゴロウさん人質は3人でした。後よろしく」
そう言い残してアークトゥルスとジョルジュは山賊を捕まえに戻って行った。
スミレンが残り山波とともに車に向かって歩き出す。
スミレンと山波が車までたどり着き、街道の脇で座っている。
山波がアイスレモンティーを捕まっていた人たちに渡し、スミレンがそれぞれの状況を聞いていた。
暫くすると5人の山賊を捕まえたアークトゥルスとジョルジュ、ライエが戻ってきた。
「ゴロウさん、これで山賊は壊滅です」
山賊の中には怪我をしているものもいたが命に別状はないようだ。
アークトゥルスは別にして、ジョルジュはCランクの冒険者の割に強い気がする。それでもCランクなのでさらに上に上がるのは大変な事なのだろう。
「お疲れ様です」
全部で8人増えた。何とか8人を車に乗せ車を発進させた。
20分くらいで村にたどり着くと、即座に全員をギルドに連れて行き、山賊は牢屋。攫われた人たちはギルドで話を聞くことになった。
冒険者ギルドに牢屋があるのは、冒険者ギルドが村の治安を守る役目もしているからだ。
この山賊たちは後に街からくる憲兵たちに連行されることになるのが普通だ。
ギルドからそれぞれが報酬を受け取り、これでようやくアルデバラン街にいける。と山波が考えていると、先ほど助けた女性の一人が山波の方に歩いてきてナイフを掲げ、その切っ先を山波の背中に振り下ろした。
ガッキ~ン
ん?と山波が首を後ろに向けると、ナイフが山波自身に張られている障壁に阻まれているところだった。
あと1cm。わずかに届いていない。だがそのわずかな瞬間、毛並みが真っ赤になったライエがナイフを持っている女性に襲い掛かっていた。
「これはいったい」
「どうやらこの女性も仲間の一人だったようだ」
ジョルジュがいつもより雄弁に?語っている。
「人質のふりをして行動して、あわよくば誰かを道連れにしようという魂胆だったのだろうな」
女性の手からナイフをもぎ取りながらジョルジュは言う。
「ゴロウさん申し訳ない。見破ることができなかった」
「いえいえ私も安心しきっていて、ライエに助けてもらった。ありがとうライエ」
『がう~~(どうって事ないっす)』
山波は肩越しに背中をみながら、本当に自分にも魔法障壁が張られているのを理解できた。
女性はキルド職員に取り押さえられ、牢屋に入れられることになった。
女性と一緒に助かったのは子供であったのだが、皆が皆、女性の子供だと思ってしまっていた。
ところが子供たちはかつら、いやウィッグのようなものでその頭にある耳を隠されていたのである。
子供たちはアルデバラン街の隣の村から攫われた双子であった。
山波は双子にプリンを与え、「家に帰れるからな」と声を掛けた。
双子は首を振って
「もう家には誰もいないの」
とだけ言った。
どういうことなのか詳しく聞くと、2人は父親が早くに亡くなり。母親と暮らしていたのだが、母親と一緒に森に薬草を取りに来た際に山賊と出会い、子供二人を庇おうとした母親が山賊に殺されたのだ。
そしてその村では親戚もおらず、帰っても生きるには孤児院での生活を余儀なくされるそうだ。
それを聞いていたライエがいつもの毛並みの色に戻り、2人に擦り寄るようにしていた。
「王都になら、このような子供たちを受け入れて、将来生活ができるよう手に職を持つことができる孤児院があるのですが」
「ああ、聞いたことがある」
「そうですね、風の便りですがそういう孤児院があると」
とアークトゥルス、ジョルジュ、そしてスミレンらが山波を見た。そして、さりげなくライエもこちらの様子をうかがっている。
「はぁ。まったく。ライエにも懐いてしまったしお二人さん王都に一緒に行くか?でもその前に2人が住んでいた村に元気であることを報告しないとな」
山波は頭を掻きながら、半分照れた様子でそういった。
「「うん!!」」
「ところで2人のなまえは?」
「私が姉のメンカ」
「私が妹のリナン」
2人とも頭の上に耳がある。身長は140cm前後だ。双子だけによく似ているのだが、耳の毛が左側が赤いのがメンカ。頭の毛は薄茶だ。同じく右側の耳が赤いのがリナン。頭の毛は同じ薄茶だ。目の色がわずかに違うのだろうか?メンカはアンバー、リナンはカッパーのように見える。光の当たり具合でそのように見えるだけかもしれない。
「二人ともよろしくね」
「「よろしくお願いします」」
『がうう(よろしくっす)』
また2人増えてしまった。
とそう思っていた矢先。
離れたテーブルでこちらの動向をみていたイリス・ローヘルスがこちらに向かってきた。
山波はまたかと身構えてしまった。
ちょっと強引すぎるかな?
名前間違えてました。申し訳ありません。
スイナ・ローヘルス=>イリス・ローヘルス




