現実を知り、可能性を見出す
数多の世界の中、何の偶然なのか、必然なのか・・・俺はこの世界「アルテナ」に生れ落ちた。
家族は平凡を地で行く一般家庭。5人家族。まぁそれでも不自由はしなかったよ。
そんな俺の幼少時代の楽しみが、『召喚術士の冒険譚の本』を読む事だった。
本の中の主人公に思いを馳せ、時には自身を投影しながら楽しんだ。
・・・その内、俺の夢が『召喚術士になる事』になるのは必然だったのだろう。
必死に勉強もした、鍛練もした。そして10歳になり、『召喚術士』にな為の試験を王都「ニヴァール」で受け・・見事に受かった。
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それから2年、俺は現実を知る。
回りは既に『中級召喚術士』や、早い奴では『上級召喚術士』にまでなってる奴が居る。
そんな中、俺はと言うと・・・
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メイ・ヒーロウ
男 12歳
生命力 D
魔力 C
筋力 C
持久力 C
『低級召喚術士』⇒『MAX』
技能
低級召喚術 C
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『召喚術士育成所』に在る、【鑑定球】と言われる水晶に表示されている項目に目をやり、溜め息が漏れる。
普通であれば『初級召喚術士』⇒『中級召喚術士』となる項目が『MAX』。
詰まる所、俺は『初級召喚術士』以上にはなれないという事を指し示していた。
それでも1年、おれは足掻いた・・足掻いたよ。
その結果・・
「ゴメン、メイ。私・・・もっと上を目指したいの・・・」
幼馴染で騎士を目指していた「コレット」にそんな事を言われ、彼女は俺の元を去った。
「さっさと諦めて実家を継げよ!」
弟にそんな事を言われ続けた。
流石に心が折れかけたさ。そんな毎日が続き・・・
ある日、俺の中のストレスが爆発した!
「うっがぁぁぁぁ!!!」
俺は奇声を上げながら街中を疾走し、
ガゴォン!!
丁度曲がり角から出て来た木材にしこたま頭を打ち付け倒れた。
(無様だ・・・全く良い所がねぇ。昔の俺が見たら失望すんだろうな・・・)
薄れ行く意識の中そんな事を考えていると、不意に違和感を覚える。
(・・・昔の・・・俺?って何だ!?)
その瞬間、溢れてきたのは前世の、「ニホンジン」だった頃の俺の記憶だった。
(成る程ねぇ・・・こいつが【異世界転生】って奴かぁ。けど俺にゃ「ちーと」も「とくてん」もねぇよ)
全くもって理不尽・・・いや、愚痴ったて仕方が無い。俺には才能が無い・・『召喚術士』としての才能が。
(あぁ、折角別世界で記憶が戻ったのに・・・ん?『別世界』?)
その時俺の頭の中で1つの可能性が生まれた!
(そうか・・・別世界だ!パラレルワールド!並列世界!!これなら・・・行けるかも!!)
例え失敗したとしてもその時は『召喚術士』をスッパリ諦めりゃ良いだけだ。
『召喚術士育成所』卒業まで後2年、おれはその可能性に賭ける!