最終話
あの後、詳しく話を聞いたのですが
山の頭脳、じじ様が今回の襲撃を受けて
【あいつらは何度追い払ってもオーガ達とロイズを狙いに来るじゃろうな。人間を森に棄てていく馬鹿共じゃし、ワシらの山の仲間に手を出そうとするし、いい加減うざいじゃろ?
だったら、国を落とせばよかろう。魔物も増えて山も狭くなってきたしのう。ちょうど良いじゃろ。
人間達には国を出ていかせるか、奴属の首輪を付けるかしてな。魔物の国にすればよい。
ロイズを守れて住む場所も広がってウハウハじゃ!はっはっは!】
という提案をなさったとかで。
皆、ノリノリ。
引き上げて行った王子様達御一行、及び、国の精鋭軍の皆様の後を
少しの時間を開けてついていく山の魔物達。
【ちょっと近くのコンビニに行こうぜ!】
【いいね!行く行く!】
【私も~!新作あるかな?】
【いつものにしよーかな~。】
【皆で行こうぜ!】
みたいなスッゴク軽いノリですけど。
必死に逃げる人間を、スッゴク軽いノリで追っていく大量の魔物達。
今回は山の守りにオークの一族とワームや芋虫系の足の遅い魔物さん達が残る。
そして、そのまま落としちゃいました。
国。
思ってたのと全然違う。
もっとこう、血みどろな感じのを想像してたのに、
ゴブリンさん達が特攻を仕掛け
コボルトさん達がかかってくる奴らにカウンターをくらわせ
グールさん達があぶれた奴らを叩きのめし
ワイバーンさん達が上から奇襲をかけ
オーガさん達が威圧して歩き
飛んでくる魔法を
人型になったじじ様とウーリーが2倍返しで弾いてる。
そして、その後ろをリューイに抱えられて行く私。
ねぇ、これ、戦いとか国落としじゃなくて
一方的な蹂躙だよね?
皆、ほぼ素手だよね?
武器使ってないよね?
何でこんなに強いのさ。
ゴブリンがこんなに強いなんて、どうなってるの?
不思議に思っていたのが顔に出ていたのか、リューイが教えてくれた
「安心して良いぞ。皆、生まれてからずっとじじ様に鍛えられてるからな。強い。それに、じじ様が昔から色んな魔法をかけててな、全員魔法が効きにくい体になってる。」
そっかー。
ドラゴンのじじ様がこんなチートみたいな魔物の軍団を育て上げたのね。
もう、納得するしかない。
そして、遂に城に着きました。
城の中はオーガさん達が大活躍で、王様や重要人物達、王子様達御一行と、あのクソビッチを捕まえて謁見の間に集めていた。
そいつらに対峙する
リューイ、じじ様、ウーリー、サバリお母さん。
そしてサバリお母さんの後ろにいるのが私。
喚いている王子様達御一行に向かってリューイが口を開いた
「この国は今後、魔物の国とする。そして、俺が新しい国王だ。
お前らがロイズにした事は許せる事じゃない。お前らには奴属の首輪を付け、今後の俺達の国のために働いてもらう。国を落とされたお前らに拒否権はない。」
それを聞いて更に怒鳴り、喚く王子達。
【そいつが元凶だ!】
【人間とも呼べない、最低なクズが!】
【醜い心を持った腐った女め!】
【森で死ねば良かったのに!】
そんな罵倒が飛んでくる中、
クソビッチが動いた。
「オーガさぁん!いえ、新国王様ぁ!違うんです!ロイズから何を聞いたのかは分かりませんけどぉ、あなたが聞いたのはロイズが作った嘘です!私の話を聞いてくださぁい!(あの女のせいでストーリーは変わっちゃったけど、このイケメンオーガが国王で旦那になるなら、それもいっか♪皆を奴隷として侍らせて、他国の王子も狙えるし♪)」
なんて言いながら、リューイにすり寄りやがった!
あのクソビッチ!!
私のリューイに触るなんて!
そう考えると同時に、リューイはクソビッチの手を振り払った。
「触るな。クズが。気持ち悪い。」
そう言って私の元へと来たリューイは
「なんなんだ?あの女。気持ちが悪い。腐りきった根性が顔面に出てるじゃないか。
それに比べてロイズ、お前は本当に可愛いな。お前は本当に可憐で美しい。
なぜあの女に言い寄るのか、人間の男は見る目がない。理解出来ん。」
と私を抱き締めて頬擦りをする。
クソビッチは顔を真っ赤にして、怒り狂った醜い顔をして、私に近づいてきた
「ふざけんじゃないわよ!何で私がこんな目にあわなきゃいけないのよ!あんたがストーリー通りに動かないせいよ!あんたが悪いのよ!何なのよ!何なのよあんたは!ふざけんな!死ね!死ねぇぇ!」
彼女の手には短剣が握られていた。
刺される!
そう思った瞬間、
「貴様!俺の可愛いロイズに何しやがる!!」
リューイの言葉と共に、クソビッチの顔面にリューイの裏拳が炸裂した。
その場に崩れ落ち泣きじゃくるクソビッチ。
転がる短剣。
鬼の形相で短剣を拾ったサバリお母さん。
あら?
クソビッチさん、よく見てみたら
前歯が上下4本抜けてるよ?
ふ、ふふ
すきっ歯!
この人、前歯が無くて、すきっ歯になってる!
ちょ、ヤバイ!
シリアスな展開なのに!
笑いそう!
「ブフッ」
笑うな!ウーリー!
やめろ!
耐えろ!
私も耐えてるんだから!
やめて!
今ならリューイは全員殺しちゃいそうだから、その前に声をかけないと。
さて、深呼吸をして。
「フフッ、すきっ歯だなんて、面白い顔!
私を守ってくれて、その上で怯えている私を笑わせてくれるなんて、本当に素敵な旦那様♪」
と、リューイの腕にしがみつく。
『なに言ってんだ、あの女』
なんて言葉は聞こえてない。
聞こえてないよ。
実際、凄く嬉しい。
私を守ってくれて。
女には手をあげなそうなリューイが、思わず殴っちゃう位、私の事を大切に思ってくれてるって事だから。
顔を見合わせて微笑む私とリューイ。
「そうか?お前が無事で、笑ってくれて良かった。」
なんて微笑むリューイもカッコイイ!!
あ、そういえば。
面白い顔になったついでに、もう一つやっておかないと。
「そういえば、貴女のせいで髪を切られたのよね。お返しさせてもらうわ。」
割りと得意な風魔法を使う。
フフッ
「あら!ごめんなさい!久しぶりの魔法で手元が狂ったみたい!角刈りで、所々、禿げちゃったわね!ごめんなさいね?でも、そんなに面白い顔をしてるからよ?手元が狂ったの。」
フフッやってやったわ!
クソビッチがずっと大切にしてた髪を切ってやった!
私の髪を羨んでたのも知ってたけど、まさか切られるなんて思ってなかった。
あの時は本当に悲しかったんだから!
今のヒロインは、角刈り禿げ付き、すきっ歯ヒロインだ。
オーガさん達を含め、じじ様もリューイもサバリお母さんも肩を震わせて笑ってる。
ウーリーは声も出ないくらい爆笑して腹を抱えてる。
角刈り禿げ付き、すきっ歯ヒロインが号泣して泣き叫んでるけど、誰も助けないし、近寄れない。
周りでオーガさん達が抑えてるから。
それを知らずに
「助けてよ!なんで皆助けてくれないの!?なんで見てるだけなのよ!この役立たず!私が苦しんでるんだから助けなさいよ!役立たず!」
なんて叫んでる。
そんなヒロインちゃんの姿を見て、絶望していく王子様達。
更にキャンキャンと煩くなっていく、クソビッチのすきっ歯ヒロイン。
「ロイズさえいなければ!ロイズをさっさと殺していれば!こんな事にはならなかったのに!このクソ女!クズ!役立たず!お前は私のために死ねば良かったのに!」
あのさ、何を叫んでも、顔面が面白すぎて、笑いしかおきないんですが。
怒る気にもなれないよ。
むしろ、哀れだわ。
そう思ってたら
「ざっけんなよ!このバカ女!お前みたいな煩い女は口が聞けなくなる魔法をかけてやる!」
そう言ってクソビッチに魔法をかけたウーリー。
次の瞬間、
『おま!それ、違うやつ!』
魔法を知ってる人間の声が揃った。
「え?違う?」
当のウーリーは頭上にハテナークを飛ばしながら、慌てている。
クソビッチを見てみると
号泣している醜い姿で石になっていた。
驚く私
驚くリューイ
驚くサバリお母さん
驚くその他大勢。
そして、ただ一人、じじ様が溜め息をついた。
「何度も言っておるだろう?お前は攻撃以外の魔法はまだまだ未熟じゃと。
どーするんじゃ?これ。1000年は解けん魔法になっとるぞ?どうやってかけたんだか。まったく。お前というやつは。まぁ、かかったもんは仕方なかろう。
リューイ!これはワシにも解けん。この石像はこのまま広場にでも飾っとけ。1000年もすれば、ウーリーが解けるじゃろ。その時にはウーリーに大陸のはてにでも棄ててこさせればよかろう。」
え?
クソビッチ、いや、ヒロインはこの姿のまま広場に飾られるの?
将来語り継がれるよね?
それ。
じじ様、結構鬼畜さん?
「よし!そうしよう!ロイズを殺そうとしたし。解けないなら仕方ないだろう。山にも置けない、城にも置けない。なら広場に飾るのが一番かもな。」
なんてリューイを始め、オーガさん達、魔物さん達全員が納得しちゃった。
王子様達が喚いたけど、
サバリお母さんが
「んじゃ、あんたらも、あの女と一緒に1000年石像になって広場で笑い者になるかい?」
と言ったら黙った。
リューイ、
【俺はロイズと一緒なら大歓迎だがな】
なんて言わないで。
ウーリー、やりそうだから。
ウーリー、ちょっとアホの子だって分かったから。
そんなこんなで、
この世界でのヒロインちゃんは
【角刈り禿げ付き、すきっ歯ヒロイン】
で石像となり、広場に飾られました。
悪役令嬢だったはずの私は、
かっこ良くて、優しいオーガの旦那様と生涯ラブラブ夫婦であり続け、
沢山の魔物さん達に囲まれながら、国王夫妻として国を発展させ、子宝にも恵まれながら、幸せな人生を送りました。
隣国の王子様ではなかったけれど、
私を助けて幸せにしてくれたのは
私だけのオーガ様でした。