すべてが終わった後の。
僕には未来が見える。
高校一年生 北上政宗
この能力はある、一日の殺し合いによって手に入れたものだ。
不定期だし、いろいろと能力制御は出来ないがこの能力は生きていく上でかなり、便利だと思う。
殺し合いで僕は一人生き残った。
好きな願いを叶えてくれるらしいが僕にはもうその願い事を考えることも殺した仲間を弔うことも出来なかった。
僕は最後に親友のケンイチと生き残った。
どちらかが死ななければこのゲームは終わらない。
お互い殺すことなんて出来なかった。
僕とケンイチはお互い納得の上で一緒に爆弾で死のうとした。
結果がこれだ。
周りには肉片が散らばってる。
何故か僕は足と少し手が吹っ飛んだだけで生きているのだ。
こんな状態で何か願いを、と言われても頭の中は盲ろうとして思考が働かない。
ただその時見えた未来。
僕が『この能力が欲しい。』と言っている未来だ。
その未来に従い、僕はその言葉を口にした。
「この能力、未来をみたい、未来が見える能力を失いたくない。」
目を覚ますと僕は病院で眠っていた。
病院の前で意識を失っていたようだ。
しかし、意識を失った時どんな状態だったかくらいは覚えている。
なのに何故だ?
吹っ飛んだはずの手も、足も、何もかも元通りになっている。
家に帰り鏡を見るが、未来を見る時になっていた黄金色の瞳も日本人の黒く不健康な瞳へと戻っていた。
「…なんだ、夢か。」
そう思った矢先だ。
頭がぐらっとした。
これは、未来を見る時の感覚。
見えたのは、僕。
僕がいつも通り、学校に行く途中の道で親友のケンイチが来るのを待っている様子だ。
必死に時計を確認している。
青ざめた表情の僕は学校へ行く道を一人で走っていった。
「ケン…?」
嫌な夢を思い出した。
知らない人や知っている人を殺した夢だ。
その中にはケンイチもいて、ケンイチは死んだ。
「っ…ケンイチ!!!」
制服を急いで着て僕はケンイチの家へと走った。
家に着きインターホンを鳴らすとケンイチの母が優しい笑顔で僕を迎える。
「あらマサくん、急にどうしたの?」
「おばさん、ケンイチは…?ケンイチまだ外に行ってないよね?」
ケンイチの母は不思議そうに首を傾げた。
「ん〜っと…ケンイチって芸能人か何かかしら?」
「…え?」
何をふざけているんだ、このクソババアは。
我慢ならず家の中へと入る。
階段を上がり最近は行ってなかったケンイチの部屋へと入った。
「ケンイチ、おはよう!今日は迎えにき…」
無。
家具も、カーテンも何もない。
ケンイチの好きな柑橘系の香水の香りも、一緒にやったゲームも、何もかも。
「…嘘だろ?」
「ここね、何もないし物置にしようかと思っているのよ。マサくん、何があったのかわからないけど…大丈夫よ、ほら安心して学校に行きなさい?」
「………はい。」
…アレ?
家から出て僕は学校へ歩き始めた。
朝早く出たせいか周りは高校生など歩いていない。
人通りの少ない道だからだろうか、サラリーマンの姿も見えやしない。
僕は静かに地面へ膝を落とすと、熱くなった目頭からこぼれ落ちる涙を拭った。
拭っても、拭っても、涙がこぼれ落ちてくる。
ケンイチを覚えているのはもはや僕だけなのだ。
いやだ、いやだ。
「…嫌だよ。」
僕は路上で一人、枯れるまで涙を流していた。