極東と時間
極東旅団という名前自体には、聞き覚えが無かったが、"極東"と言う二文字に驚いた。
「"極東"っていったら」
「えぇその"極東"にございます。」
「まさか、七人ともかよ。」
「もちろん、七人ともでございますよ。」
「そんなの・・・格の差がありすぎるわ。」
と会話が続いた。三人共驚きを隠せなかった。なぜなら、
「"極東"出身となったら私達なんかただの雑兵みたいなものじゃない!」とルビアは震えながら言った。顔に恐怖心が露骨に表れている。
「フフフ・・・。ですから我々の仲間になれば、あなた方の命は助かりますよ。」と不気味な笑を浮かべながらオニキスは勧誘を続けた。
「けどよ。"極東"出身が七人もいたら、俺たちなんて、足手まといだろ?」とエメラードは恥をしのんで、尋ねた。正直なところ悔しさが溢れそうになっていた。
「足手まといだなんて、あなた方にはしっかりとした、役割を与える所存でございますよ。」オニキスはあくまでも勧誘するつもりだった。
「あんたらの役には立てる気がしないが?」とトパーズはダメ押しをしてみた。
「それが役に立つのです。"盾"として」とニヤっと笑った。
「おい!どういう意味だよ!」とエメラードは分かりきっていることを聞いた。
「"デスアイランド"へ行く際に、一秒でも長く護れる"盾"が必要なのですよ。」包み隠さずおにきすは満面の笑みで話しを進めた。
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」と、二丁の拳銃を構えた瞬間、
「やはり、交渉決裂ですか・・・。」といって煙幕弾を叩きつけた。 あたりは、灰色の煙で覆われ始めた。
「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」といって、「バン!バン!バン!バン!」と四発うった。
だがしかし、手応えはないし、殺れた様子もない。
「クソがっ!!」とエメラードは大剣を振り回した。
ブゥンブゥンっ風きり音が馬鹿デカイ。
ファルコンウィングと二つ名が付くだけはある。風が巻き起こり、煙はあっという間に吹き飛んだ。
トパーズは、エメラードが煙を吹き飛ばすのを分かっていたので、ライフルを既に構えていた。
ホークアイと二つ名が付くように、右眼が鋭く、真っ赤に染まっていた。見事なまでのオッドアイ。
しかし、オニキスが見当たらなかった。遠くから、馬の足音が聴こえた。
「後ろよ!」とルビアが慌てて言った。専門学校に通っていた頃のルビアなら直ぐに気づいたはずの事を、遅れながら気づいた。
「だめだ、届かねぇ。」とトパーズは、ライフルの構えを解いた。
ライフルの射程範囲を既に抜けていた。馬の足とはいえ早すぎるとは思ったが、本人達が思うほど、短い時間ではなかったのかもしれない。
「ルビア、お前らしくねぇじゃん。」ってエメラードは、直球をぶつけた。
「ごめんなさい、私本番に弱いのかも。」と顔を両手で隠しながら、膝をついた。
トパーズは何も言わなかった。
確かに、専門学校に通っていた頃の、実践型演習では、完璧に作戦を実行していたし、今みたいな初歩的なミスを犯したりしない。初歩的なミスをしていたら、とっくに専門学校で命を落としていただろう。トパーズとエメラードが生きて専門学校を卒業出来たのも、ルビアのおかげと言っても過言では無い。
そんな事を思っていると、後ろからの熱気に気付いた。それに振り返ると、帝国が燃え盛っていた。
「しまった!」とトパーズ。
完全に、時間稼ぎにされた。
つづく