秘境地と二つ名
世界中の国々が探索を始めている のだから、とっくに全ての地域が 調べあげられていてもおかしくな い。
それでもなお、見つからない理由を話始めた。
「世界中に秘境地があるのはご存 知よね?」とルビアは冷静に話を 進めた。
「もちろん。知っておるわ。」と口髭と繋がっている様に 見える顎髭を右手で触りながら陛 下は答えた。
秘境地。つまり、人が入るには、困難が伴う。コンパスが狂 う、断崖絶壁、暑すぎる、寒すぎる等々、人が入るに は、相当な備えと心の準備が必要 な場所だ。その中でも、"デスアイランド"という島は、至極危険な場所とし て、最高禁止地区として島の周り を、バリケードで囲んでいる位 だ。
むしろ、その島にこそ"その物"があ るとされている位、危険な場所な のだが、誰も入らない大きな理由 が1つある。
その島には、恐竜よりも危険な猛 獣が何万と暮らしており、四六時中食物連鎖が繰り返されるほど、 生命力に溢れている島なのだ。
一番最近で5年前に、調査隊が上陸したが誰一人帰って来ることな く、沖合に彼らが残した血だらけ の資料が流れて来るだけだった。
ダインドの師団すら未だに、踏み入れていないというよりも、 師団の動きがおかしいとも思えてきた。
「ダインドの師団は、"その物"を探していないと? 」と隊長は疑問を持ちかけた。
「多分、優秀な駒を探していると俺達は考えてるんだよ。」と落ち着きを取り戻したエメラードは答えた。
「だから、俺達も同じ事を始めようかと考えてる。」とトパーズは提案を持ちかけた。
「ふむぅ。」と一息ついて「ワシの兵は優秀ではないと、そう申すのじゃな。」と核心を突く物言いをした。
「まぁ、隊長さんは優秀だとは思うよ。それなりにねぇ。」とエメラードは背もたれにもたれかけ少し椅子が傾かせながら答えた。その時天井に描かれた、美しい女性の絵と目があった気がして目を右に背けた。
「隊長さんも優秀だけど、俺達とは格の差がある。」とトパーズは恥ずかしげもなくスラスラと言い切った。その言葉に対し、隊長は眉一つ動かす事無く、認めざるを得ないと肯定を表す様に頷いた。
「では、主達はどんな人材を欲すると申すのじゃ。」と陛下が尋ねた。
「簡単な話よ。私達と同じ様に"二つ名"がある人をスカウトするのよ。」とルビアは淡々と答えた。
"二つ名"が付くような人物となると、この世界ではまず専門学校を卒業できたものには、多方付いているというより、全員についているだろう。さらには、各国の軍で優秀な戦闘をした者には自ずと付く事がある。
"二つ名"が付くと言うのは、言わば実力の誇示を表す。
つまり、"二つ名"を持つ者を兵力に加える事が出来るだけで、戦力が大幅に膨れ上がるのだ。
その作戦で事を進めて行く決断をしたのだった。
だがしかし、彼らは見落としをしている事には気づいていなかった。ルビアも簡単な事過ぎて、見落としをしているとも思っていなかった。
その事に気づくのはかなり先の話だ。
つづく