第四章
前回の続きです。
誤字脱字などありましたら、指摘してくれると嬉しいのでお願いします。
ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!
ミノルは戸を叩く音に反応し、寝床から上半身だけ起きあがる。ミノルの隣で両手で耳を塞ぎ、まだ眠ろうとしているスズランがいた。ミノルはまだ機嫌が治らないのかと嘆息。
一昨日はメンフェゴールが逃げた所為で、ミノルとスズランは逃げたメンフェゴールを捕まえる為に走り回ったり、メンフェゴールに溶かされかけたりとても大変な一日だった。最後は日が落ちてメンフェゴールの動きもさらに鈍くなったところで、ECをちらつかせて誘き寄せ、小屋に戻す事に成功したが、一晩かかった。部屋に戻る頃には日が昇り、ミノルとスズランは疲労と睡魔に襲われ、門はまだ開いてないし、例え昼まで寝ていても赤い実を取るわけではないから関係ない。入れればいい。だから寝ても良し。と甘い考えで二人は熟睡した。その後、日が暮れ、当然、門が閉まり、ソンとムーが心配になって呼びに来るまで二人は寝ていたわけで。
その時、スズランが早く帰ってきたなら起こしてよ! と、喚き散らしていたが、ソンとムーは集会所で旅行のおみやげ話で盛り上がったのと、メンフェゴール脱走の事で、すっかり忘れていたと言い、スズランの攻撃の矛先がミノルに変わってからは少し大人しくなったのだが、今日もまだ拗ねているらしい。今頃、本当は湖の周りでも散策してたのかなとミノルは未練たらしく思う。
ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!
まだ戸を叩いている。それにしても誰だろう。その時、戸を叩く子供の声が響いた。
「僕だっ! ソンだよ! だから、ミノルっ! 早く開けてくれ!」
ミノルは寝床から急いで降りて戸を開けた。そこには、珍しく息を切らして両手を膝に付いているソンがいた。
ミノルは尋常ではない事が起こっていると察し訊いた。
「何かあったの?」
「メンフェゴールの飼育小屋に沢山の子供が押し寄せてきたんだ」
「でもそれは前にもあったよね? その時もメンフェゴールがいたから何にもせずに終わったから、今回も大丈夫だと――――――」
「ごめん。説明が足りなかった。実はジョージが、なぜだか分からないけどやってきて、メンフェゴールの飼育小屋を壊したんだ。挙げ句の果てにはメンフェゴールまで全部殺したんだよ。飼育小屋には沢山のメンフェゴールの餌用のECが有ったでしょ? それを狙って、子供たちが押し寄せてきたんだ」
「……殺された? あのメンフェゴールが?」
「うん、全匹即死。首とか腕とか捥ぎ取られて絶命しているよ。あと、他の国民の子供たちには部屋から出ないように指示したから安全なはず」
ミノルは愕然とした。『ここ』で最強と謡われ、実際に殺されたところも死骸すらみたことがないメンフェゴールが殺された。しかも、一匹ならともかく、飼育小屋にいた全匹のメンフェゴール、十六匹が殺されたということが信じられなかった。
だって、それが意味することは―――
「国民のみんなは、まだ余分ECを持っているよね?」
急に会話にさっきまで寝ていたスズランが割り込んでくる。耳塞いでたくせにミノルとソンの会話を聞いていたのだろう。ソンが答えた。
「ムーが何かあった時に備えて、国民一人に百枚をECを渡しているからすぐに死ぬことはないと思うよ。ミノルは今いくら持ってる?」
「備蓄は、ざっと五百枚くらい。ムーにメンフェゴールの餌として貸してたのが何千枚とあったけど……」
「大丈夫だって。百日あればなんとかなるよ」
「確かにスズランの言う通り、確かにそうなんだけど、ジョージをどうにかしないと。ジョージは何一日でも平気で生きれるからねぇ」
「やっぱり説得するしかないのか」
「ミノル、それだけじゃない。『世界』に生まれてもらうとか、あとは考えたくもないけど、そういう可能性もでてくると思うんだ。ジョージの行動しだい、の話だけどねぇ」
ジョージに国民になる事を説得し、承諾できなければ、強制的に『世界』に生まれさせる。前にも言ったが『世界』に生まれることは、『ここ』での目的でもあり、かつ、ミノルたち、『ここ』で長く生きようとする者にとっては死と同等でもある。ジョージには今後一切、誰かを殺さずに、『ここ』で生きるか、今後一切、誰かを殺す事が不可能な『世界』で生まれるかのニ択を選ぶことになる。言い換えれば、『ここ』で快楽殺害をやめるか、死ぬかを選べと言うのだ。
選べない選択を並べ押しつけ、ジョージの心を殺し、その体まで殺そうとしている。それにミノルは耐えきれなかった。ジョージを許して、また笑い合いたい。そう願うのだ。自分たちの都合ばかり押し付け、ジョージの本当の気持ちを聞いてあげていないじゃないか。自分たちを正しいと決め、ジョージを間違っていると勝手に決めた。確かにムーが言った他人を愛することは正しいとミノルは思っている。とても素晴らしくて、温かくて、心地よくて、生まれてよかったと思える。だが、それはミノルの感性であり、ジョージも子供を殺すのにも同じ様にとても爽快で、楽しくて、強さに酔って、生まれてよかったと感じているかもしれない。それぞれ感性が違うのだ。この国民たちも愛したいという子供たちの集まりで、ただお互いにそうしたいと思っているから、手を取り合って、愛し合う。そして、『ここ』ではこれが正しいことなんだと自分のことを棚に上げて言い張る。
そう生きていた方が心地よいと。
そう生きている方が正しいと。
そう生きている方が間違わないと。
他の子供の性格やら感情など知る訳も、理由もないのに、
それが絶対的な真実だと言い張るのだ。
だからミノルは提案する。
「ソン、ムーにジョージに国民になってもらうためにさ、ジョージは一つの規則を破っても良いことにしてもらおう」
ソンは目を丸くして驚いた。
「それって……」
「うん。快楽殺害していい、ってこと」
ミノルが言った瞬間、スズランは血相を変えて口を挟む。
「そんなことしたら、国は駄目になる! それだけは絶対に――――――」
「でもさ、それ以外に誰も傷つかない方法は何かあるの? 僕は考えてもこれくらいしか思いつかないよ」
「…………」
スズランは子供を殺すのが許せないだろう。でも、僕らだって変わりないことをしている。それを追及されれば、反論だって辻褄合わせの詭弁になってしまう。
「許せないのは分かる。でも、誰かが許して受け入れてあげることが必要だと思う。だから、そうしないと、」
永遠とは言わないが、どちらかが消えるまで続き、そして、残っても傷ついて苦しくなって、間違っていると思ってしまう。
ソンとスズランは黙り込んでいた。
先に口を開いたのはソンだった。
「…………ミノルの言う通りにしよう。僕がムーに頼むよ」
「ありがとう。ソン」
ミノルは俯いているスズランに見て言う。
「スズランは…………、やっぱり許せない?」
「許せないけど、ミノルの言う通りにする」
「ありがと」
ミノルはスズランをそっと抱きしめた。スズランは複雑な表情をしながら俯いていた。
ミノルはスズランから離れ、ソンに向かって言う。
「それじゃあ、僕もムーの所に行って直接頼みに行くよ。ムーは今どこにいる?」
「僕の部屋で待っているはずだよ。偵察とかは僕が一番向いているからねぇ」
「そうか。じゃあ早く行こう。スズランはここで待ってて」
「っ!? どうしてっ!?」
スズランが待てと言われ素直に待てないらしい。それはミノルにも分かっていた。
「一緒に行く! ミノルが心配なの!」
「僕もスズランが心配なんだよ。だから今部屋で待ってて。必ず戻ってくるから」
「戻ってこなかったら、私、ミノルの後を追って自殺するからね! だから、だから…………必ず戻って来てね」
「うん。絶対に戻ってくるから」
そういい、ミノルは戸を閉めた。万が一、外に出れるように、少しだけ戸を開けおいてとスズランに指示した。これでミノル以外でもこの戸を開ける事ができるようになる。その代わりに誰でも入ることができるが、今の混乱の中、部屋に進入してくるのは、混乱を引きを起こした緒本人、ジョージくらしかいない。そのジョージがこちら来ることは無いと考えてもよい。なぜなら、こちらに来たとしても、お目当てのムーがいないのだから。
ミノルは部屋の中にスズランを残したまま、ソンと共に町の中心の方向に向かう。その方がミノルの部屋からソンの部屋まで最短の道となるからだ。向こうから来るジョージにばったりとはち合わせする確率も高いが、ソンは言わずもがなとして、ミノルもジョージよりは足が速いから走って逃げることが出来る。一瞬の間合いを詰めるのはジョージが一番だが、長距離になると連続して使えない為、ミノルの方が速くなるのだ。だから十分距離を置けば、走って逃げられる。そのことを見込んでこの道にしたのだ。
「ミノル、大丈夫? 着いて来れてる?」
先頭を走るソンが訊いた。後方を辛うじて着いて来れているミノルは言った。
「だ、大丈夫。そのままでお願い」
ミノルは気づいていなかった。自分がジョージという怪物を恐れていた事を最後まで気づけていなかった。ジョージを許す事を受け入れるという言葉で誤魔化し、最強のメンフェゴールをいとも簡単に倒せるということに恐れ、自分たちの管理できる用にして置くことだと気づかず、走っていた。
*
「遅い」
戸に背中を向けて座り込み、左手で少しだけ戸が閉まらないようして、誰かが入ってこないよう見張っていたスズランがぼやく。自分以外いない部屋に声が空しく響いた。
もうミノルとソンがムーの所に向かってからたどれぐらいたったのだろうか。よく分からないがムーを説得するのに時間がかかっているのだろうとスズランは勝手に思って気を紛らわす。
「遅い、よ」
再びぼやいた。
ガチャッ。
何の脈絡もなく、急に寄りかかっていた戸が開いた。
「っ!?」
スズランは飛び跳ねるくらい驚いた。背中の後ろには誰かが立っている。恐怖心が体を動き縛り固まって動けない。
制御の効かない体に命令を出し、振り返ってその子供を見た。
そして、スズランは――――――
*
「よう、ソン。ん? ミノルもいるのか」
先頭のソンが急に立ち止まったなと思ったら、正面にはジョージがいた。その周りには子供の死体、メンフェゴールに溶かされた子供の残骸。そして、子供を溶かしたメンフェゴールの死体。それらが散らかしたようにジョージの周りに落ちていた。
ソンとミノルはもうすぐ町の中心に近い所で折り返し、ムーが待つソンの部屋に向かおうところで、運悪くジョージと出会ってしまった。ムーが飼っていたメンフェゴールを殺し終えて、次の獲物の元へとやって来たのだろう。友達を奪い取ったムーの元へと。
ジョージとソンの距離は十分離れていた。ソンより後ろにいるミノルは安全な距離だ。この距離ならいくらジョージでも一瞬では詰め寄れない。
ミノルが訊く。
「ジョージは何でこんな事するの?」
「お前らが門の前でECを集めるから、俺が何度子供殺してもECが手に入らない。だから殺った」
「でも、門の前に入る子供だったら、持ってるんじゃないの?」
「昼間、彷徨いたら、お前らに殺されかねないから、夜、お前らが寝静まった後に、こそこそと追い剥ぎよろしく殺していたんだよ」
そして沈黙が訪れた。ジョージの視線は二人を殺気だけで殺そうとしているのではないかと感じる程、険しいく怒気に満ちていた。
耐えきれなくなり、ミノルはあのことを提案する。緊張で唇が震えた。
「ジョージ、国民にならないか? ジョージが国民に入りたくない理由も僕達も分かっているから、それは今からムーに頼んで特別にしてもいい事に変えてもらうから大丈夫だ。それから僕たちがジョージの事を裏切ったことも謝るから、だから――――――」
「なあ、ミノル、ソン、お前らは俺の事、俺の趣味を理解してつるんでくれたんだよな?」
ミノルとソンは黙ってしまう。理解はしていない。自分には関係ないから口出しせずに相づちを打っていた。それだけなのだ。皮肉にもそれだけでもやっていけてしまった。嘘はついてはない。それよりもひどい、無視、無関心だったのだ。
「少なくとも俺はお前らのことは理解しようと思って実行して、理解はできたが、そうは思えなかった。だがお前らは俺のこと理解してくれてなかった。お前らは俺の事よりムーの方が分かり、共感できるらしい。覚えている限り、ムーよりは長く一緒にいたはずの俺の事は理解してくれなかった。嘘だった」
ミノルは何か言おうと口をゆっくりと開けようとしたが、先にジョージが言い放つ。
「俺はムーを殺したいと思っている。思っているだけだけどな。そして、あの頃――――――四人で笑っていた頃に戻りたい。でも、お前らはそうは思っていない」
「いや、思っているよ。だから、ムーに頼んで――――――」
「俺は殺したい奴を殺すのが好きなんだ。だからムーを殺す。それから、急に入ってきて規律を守らずに特別扱いされると他の奴らが反発するに決まっているだろう? そんなことも分からないか?」
嫌な沈黙が訪れた。その沈黙を払拭させようとミノルが最後の説得をしようと口を動かそうとした時、ジョージが痺れを切らしたのか怒鳴って言った。
「ああ!! もううんざりだ! いくら国民にならない、と否定してもお前らは、俺を国民にさせたがるんだ!? 俺は今までお前らの言うことを素直に聞いてきたのは、俺の生き方を間違っていると否定しなかったからだ! 俺もお前らの生き方に口出したことはない、それはしてはいけないと思っていたんだ! なのにお前らは裏切った。友達だと思っていたから、一回なら間違いで考え直してくれると思っていた。それが無理なら、お前らがムーと一緒に国を創るのがいいと言うなら、俺は黙って、それでいいと思うことにした。でも、お前らは何で、俺まで変えようとするんだ? お前らだけで勝手にやっていればいいじゃないか? そして、俺のすることにケチつけてさあ。確かに俺はすぐに頭にきて、お前らの国の妨害をしたりもした。それは謝るよ。俺もすぐ手が出るからな。でも、でも、
誰一人、お前らが言う国民は殺さなかった。それは、絶対にしない。絶対にミノルとソンとスズランが悲しむから、しないって、思ったからなのに」
途中支離滅裂になりながジョージは言い放ち、近くに落ちていたメンフェゴールの首を掴み上げて、
「もう、いい。絶交だ。お前らはもう、赤の他人だ」
ビュンッ。
ジョージはメンフェゴールの首をソンに向かって投げつけた。
「ソン!!」
ミノルは声を上げてソンに危険を知らせる。
ソンは横に跳ね、投げられた首を避けた。
「ミノル!! こっちを見るな!!」
「えっ?」
ミノルはソンを凝視していた。そちらに注意が行き、目の前に接近する暴君に気づかなかった。ミノルは気づいた時には、すべてが遅かった。
「遅い」
ジョージの右の拳がミノルの顔、左側を目掛けて拳がふるわれようとしていた。ミノルは反射的に両腕で顔を守った。
ゴキッ。
「っ!!」
ミノルの左腕はいとも簡単に折れた。一瞬のことでミノルは体の中から直接、骨を通じて聞いたような鈍い音が脳に入り、急に感覚がなくなった左腕に驚き、恐怖を感じた。
次に来たのは激痛。
「ああああああああああああっ!!」
ミノルはその痛みに耐えきれず、その場にうずくまり左腕を押さえたが触れると激痛が走る。脂汗が体中からどっと出てくる。
その場から逃げないと。と思った瞬間。
ミノルの体は宙に浮いた。
のではなく、ジョージの思いっきり蹴り飛ばされた。地面に落下し、受け身をとれず、ごろごろと転がりながら止まった。そのときに地面に触れた折れた左腕と蹴られた左の横腹に激痛が走り、その場で痛みに悶え苦しむ。
「大丈夫かいっ!? ミノルっ!!」
近くでソンの声が聞こえる。丁度良くソンの近くに蹴りとばされたらしい。ミノルは最後の力を振り絞って伝えた。
「ソン……、ムーに所まで、行って助けを呼んで……」
「僕がおぶった方がいいじゃないか!?」
「いくらソンでも、僕を負ぶって、ジョージから逃げられ――――――」
ゴキッ。
ジョージがミノルとソンの近く――――――ミノルの右足の上に全体重と速度つけ、一瞬でそこに着地した。ソンは後ろに飛んで避け、距離をとった。ミノルの右足はジョージの体重と力に耐えることは出来できずにまた簡単に折れた。そしてまた激痛。
「ぐぅうううぅううぅうう!!」
ミノルは歯を食いしばって耐えようとしたが耐久性を大幅に超えた痛みが体中に走しりかき毟り暴れる。
「ミノル!!」
「早く行けよっ!! 僕は押さえられているから無理だっ!! だから早くっ!!」
ジョージが右足に乗っているせいで針で止められたようにミノルは動けず這い蹲って激痛と戦っていた。
ソンは頷き、自分の部屋にいるムーの元へと走り出す。
「必ず生きていなよっ!!」
ソンは遠ざかって行く後姿を涙で濁った目から見ていた。
「ソンは足が早いから早く着いて行かないと見失うな」
そうジョージは冷酷に言い、ミノルの右足から降りた、というより歩きだす。ソンが走っていった方向へと歩きだそうとした。
「あ、そうだ」
ジョージは思い出したように、踵を返しミノルに再び近づいた。
「念のために」
ボキッ。ボキッ。
ミノルの右腕、左足、残っていた手足全部、踏みつけてへし折った。ミノルの四肢は使用不可能の状態になった。
「※◆◎×□*っ!!」
言葉にできない悲鳴を上げ、痛みに身を捩りながらさらなる激痛にもがいているミノルにジョージは離れながら言った。
「殺しはしない。だって」
ジョージが発したとは思えない、そんなとても優しい声で言った。
「友達だから」
*
「…………なんだムーか。ほんとうに驚かさないでよね」
「すいません。心配で来ちゃいました。あれ? スズランさんお一人ですか?」
「うん。ミノルとソンは――――――って、すれ違わなかったの? 二人ともムーがソンの部屋にいるから、そっちに向かったんだけど」
「たぶん、ボクは南門の方から遠回りして来たので、ミノルさんとソンさんは町の方から行ったから、すれ違わなかったんだと思いますよ」
「なんで逆方向から来たの?」
「それは安全面からです。町の方からだと、ジョージさんと出くわす可能性がありますから」
「ああ、そうか」
「まあ、結果はどちらも安全ではなかったんですけどね」
「どうして?」
「メンフェゴールが沢山、自らから門から出てきて、門付近が地獄みたいな悲惨な光景になってましたよ」
「うぇ〜」
「どうしてメンフェゴールが出てきたのか、全く分かりません。もう、こんなに大変な時なのに」
「あっ!! こうしてちゃ、駄目じゃん!! ムーが居ないのにミノルとソンは向かっているんだから、早く教えなきゃ、ムーがさらわれたって勘違いする!!」
「…………いや、それはないと思いますよ。まあ、取りあえずは行ってみましょう」
「そういえば、ムーはどうやってソンの部屋から出たの? ソンじゃないと戸が開かないじゃないの?」
「いえいえ、普通に、ガチャッと開きますよ?」
「…………普通に開くの?」
「ええ、外側からだとその部屋の持ち主じゃないと開けられませんが、中からなら誰でも開けられるようになっているみたいですよ? 試した事なかったんですか?」
「あ、本当だ。てっきり外から開けるのと同じだと思ってた。ミノルとソンもそう勘違いしているんだろうね」
「そんなことより、早く行きませんか?」
「そうだね。あっ、そうだ。忘れてた」
「何をですか?」
「ミノルがさあ、ムーに、ジョージを国民に入れて、規則を変えて、特別に快楽殺害を許していいようにしてって、頼もうとしているんだけど、いい?」
「…………考えてみます」
「やっぱり反対だよね」
「ボクもそれは嫌ですが、それでまた争うのはもっと嫌です」
「うん、私もそう思う」
「ここで考えていても埒があかないので、もう行きましょう。そのことについては、行くまでに考える事にしましょうか」
「うん」
*
「はぁ、はぁ、はぁ、うっ!! ぐうぅぅ」
ミノルは両腕の折れてない部分を使って、地面を這い蹲りながらゆっくりと前進していた。時々、腕の折れている部分が地面と触れて激痛が走る。激痛に歯を食いしばりながら前へ、前へと進んでゆく。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
遠くから子供たちの悲鳴、ミノルが聞いたことがある声で、すぐに分かった。国民になった子供のものだと。
ソンを追っかけていったジョージに運悪く出くわしてしまった国民が襲われて、殺されたのだろうか。それとも――――――
「はぁ、はぁ、はぁ」
それよりもミノルは一刻も早く逃げる事に専念した。先ほどからいた場所からずいぶん遠くまで進むことができた。徐々に折れた場所の感覚が麻痺して、あまり痛みを感じなくなったから効率良く進めたのかもしれない。
早く逃げなくては。
ミノルはあの死骸がここにあるということはあれが近くいると言うことだ。
ミノルは必死に折れている腕足を使って前へと進んでいく。
すると、急に暗くなった。大きな陰が前方から出てミノルを覆ったのだ。ミノルは硬直していた首を動かし、それを見上げた。
「あ、」
仁王立ちしているメンフェゴールがミノルの目の前に立ちはだかっていた。
ミノルが漏らした声に気づき、メンフェゴールの頭が這い蹲っているミノルを見下ろす。目と目があった。
獲物を確認。
メンフェゴールが涎、消化液を垂らしながら、口を開けた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミノルは情けない声を上げて、折れた手足を必死に動かし、その場から一刻も早く離れるためにもがいた。
「止めてくれっ、止めてくれっ、止めてくれっ、止めてくれっ、止めてくれっ!!」
泣きながら懇願する。メンフェゴールにはそんな言葉は一言も通じない。メンフェゴールのぱっかり開いた口の奥、喉からコポコポと消化液が湧き出るような音がミノルの恐怖に震え上がらせた。
そして、
もう駄目だ。
嗚呼、こんな終わり方なら、『世界』に生まれた方が良かったじゃないか。いや、ジョージと仲違いするんじゃなかったと思うべきか。
それと、最後にスズランと話したかったな。
馬鹿な惚気話でもして、笑い合ってさ。
生きたかったな。
ミノルはいとも簡単に生を諦めた。死ぬと。スズランを残して死ぬと。スズランが自分の後を追って自殺すると言っていた。そんなことはして欲しくはない。けど、この状況はどうしようもない。
はあ、と大きく溜息をついた。
「最後に、もう一回、スズランと、会いたかったな」
悔やむように言ってのけた。
そういえばキスもしてない。あんなに近くにくっ付き合っていたのに、ミノルとスズランはしたこともなかった。近くにいるだけでもう満足だったからなのか。
いつもならそんなこと考えるだけで恥ずかしいが、今は羞恥心もない。
あるのは、恐怖と後悔だけ。
ミノルは目を瞑った。そして、最後の時まで待つ事にした。
愛する人の笑顔を思い浮かべながら。
フィィィィィィィィィィィィィィッ!!
甲高い劈く、笛の音が響き渡る。
ミノルはその音を聞いてゆっくりと瞼を開く。目の前にいたメンフェゴールがゆっくりと伏せの姿勢に移っていた。
「ミノルっ!!」
遠くからスズランと口に笛をくわえているムーがこちらに向かって走って来る。
「ミノル、大丈夫だった!?」
スズランが近くに寄って、ミノルを見る。
「…………手も足も全部、折れてる」
ミノルは請うような声で言う。スズランは目に涙を溜めながら、ゆっくりと腰を下ろし、ミノルと同じ目線の高さに合わせた。
「…………死なない、よね?」
「大丈夫、だと思う。内出血とか酷いけど」
「……どこが、痛くない?」
「……どういう意味?」
「触られても痛くない、場所」
「えっと、折れてない場所なら痛くないよ」
そう言うとスズランはミノルの頬にをそっと、折れた腕、足に触れないようにその温かい両手で優しく触れた。スズランの頬が目から流れ続ける涙で濡れていく。
「生きてる……本当に、良かった」
頬に触れている手が震えている。そんなに心配してくれたのか。ミノルは安心感に包まれた。ミノルは生きて必要されたことがとても嬉しく、それこそが生きている実感だと知った。
死ぬのが怖かった、と言っていたが、その気持ちは、死んだら何一つも無くなってしまうからだと思っていたが、本当は違う。『ここ』に生きているのが好きだからなのだ。他の場所なんて知らないし、比べることもできない。そんな出不精だから、だからこそ、『ここ』で生きていることが好きなのだ。こうやって心配や愛され、伝わってくるのが、好きだから生きようと思える。だから、死んでその想いが永遠に届かなくて、伝わらないことが嫌なんだ。
「スズラン」
「ん?」
「ありがと」
「うん」
「あのー、水を差すようで悪いんですか」
さっきから周りを見渡し、何かを探していたムーはミノルに訊いた。
「ソンさんの姿が見やたらないのですが、どこに行ったんですか?」
「ソンは僕を助ける為に、ムーを呼びに自分の部屋に戻って行ったんだけど…………、ところで、何でムーがここにいるの? ソンに呼ばれたんじゃないの?」
「えーと、ミノルさんたちが心配で、ソンさんが部屋から出ていった後に南門の方から回ってミノルさんの部屋に行ったんですよ。そうしたら、部屋にはスズランさんいて、事情を説明してもらって居ても立っていられずに来たわけです」
ムーは、説明し終えると続けて言った。
「そんなことより、ソンさんは――――――、あ、部屋で待っているボクに助けを求めて行ったんですね。運が悪いのか、良いのかよく分かりませんね。まぁ、ミノルさんが助かったんだから良いことなのですが」
「ミノル、メンフェゴールに襲われて、足とか怪我させられたの?」
「いや、ジョージに手足折られてから、メンフェゴールに」
そういった時、スズランの表情が曇った。
「…………ミノルはさ、怪我してもジョージを信じているでしょ?」
「うん」
「私はそんな事をする子供と友達になりたくないし、友達なら絶対にそんな事しないよ」
「でもさ、僕がもし、スズランにお前、嫌いだって言ったらさ、スズランは怒鳴り散らしてもそのことを否定してもらいたいって思うよね」
「…………」
「それと同じだよ。そう思えれば、これくらいどうって事もないさ」
思うようにならない。そんなことは当たり前だ。でも、信じていたものに裏切られた時、どうしてこんなにも悲しくなって、否定して、嘘だと喚いて直そうとするのか。当たり前のように思う通りにならない。そのかわり、決められたように先が見えるのだ。最悪の終わり方が。双方が傷つき、終わってしまうのだ。それを避けたくて、せめて擦り傷程度で治めて、また笑い合いたいと思い、自分を押し殺そうとする。納得しようと心に打ち付ける。それを傷と言わないで、我慢した証だと、偽るのだ。痛々しそうに。隠しているようで、流れる血に似た感情を嘘だと見破られて、そこまで分かるならなんで、最初から分かってくれないのかとまた裏切られて――――――
そうやって無限に続く、迷路。入り口はあるのに出口はない。入り口を出口を偽れるが、やっぱりここじゃないとまた入ってしまう。
ぐるぐると回るのだ。迷路の中を。迷うことなく、ぐるぐると。
「そのジョージさんに襲われて、その加害者がこの場所に居ないと言うことは、ソンさんを追っかけていったのですね?」
ムーが推理する。ほら、またぐるぐると。
「早く行かないとソンまで――――――」
スズランが言った。
「早く行きましょう!!」
フィィィィィィィィィッ!!
迷路から出る方法は幾つもある。
その一つは至って単純。用は考え方なのだ。
ムーがメンフェゴールにミノルさんを乗せてくださいとスズランに指示。二人係でやっとミノルの体はメンフェゴールの背中に乗った。体を支えるためスズランがミノルの背中に乗り、腰に手を回す。
「痛くない?」
「痛いけど文句は言えないよ」
メンフェゴールの隣いるムーは走って行くようだった。
「もう一匹くらい探したいのですが、時間がないのでもう行きます。準備はいいですか?」
ムーが出発の合図、メンフェゴールを操れる笛を力強く吹いた。
フィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!
入り口は出口じゃない。それが分かっているなら、
ミノルとスズランを乗せていたメンフェゴールがゆっくりと伏せから四足歩行の体型になり、ゆっくりと歩き出きだした。速度を徐々に上げて行く。
分かり合って、認め合った、そこが出口。
メンフェゴールは普通の子供が走る速さと同じ位の速度が出ていた。その隣を必死に小柄なムーが着いていく。
認めないなら、永遠に出口を求めて歩くのみ。絶対に見つからない出口を求めて彷徨うのだ。
「待っててください。ソンさん!!」
ムーが気合いを入れるように言った。
それと、そこで立ち止まって、ずっと待っててもいい。
どちらかが時間切れで終わるのだから。
*
「…………ジョージ、逃がしてはくれないよねぇ?」
「当たり前だ。ん? もう来るのか」
「何が?」
「笛の音が聞こえた。もうそろそろムーが来る。だから」
ジョージの一撃により、ソンの体が遠くへと飛ばされた。
*
フィィィィィィィィィィィィィッ!!
ムーは走りながら、引っ切り無しに笛を吹いている。
「何でそんなに吹くの?」
「近くにいるメンフェゴールを操って、味方にするためです」
すぐに近くにいたメンフェゴールがぞろぞろと群をなしてムーとミノルたちが乗っているメンフェゴールの後ろ着いてくる。
見た限りでは十匹は着いてきているだろう。ミノルが訝しげに呟いた。
「門の外にいるメンフェゴールが多い……、どうして何だろう。森で何かあったのか……」
「よく分かりませんがボクが南門付近でぞろぞろと門から出てくるメンフェゴールを見かけました。たぶん、そのメンフェゴールでしょう。何で門から理由は分かりませんが」
ムーがもう一度、メンフェゴールに指示を出そうと口に笛をくわえて吹いた。
フィィィィ、フィッ!!
笛を吹いていたのだが、何か驚くもの見つけたのだろうか、途中で音が途切れておかしくなってしまった。指示がうまく伝わらないためメンフェゴールが混乱し、急停止した。ムーはそれより前に止まって、立ち尽くす。
そこには、体中痣、内出血だらけで、二人抱き合いながら死んでいるY型とX型の子供――――――国民の一組の夫婦が死体だった。
その二人は不謹慎だが幸せそうに眠っている、『ここ』で生きて満足した。そう物語っている表情だった。
この二人の子供はジョージに襲われて殺されたのだろう。メンフェゴールが沢山、長屋の周りまで徘徊しているとはいえ、溶けないで死体が残っているのだから、ジョージがやったに違いない。
「トオさん、イチカさん……」
ムーが自分の服を握り閉めながら悔しそうに言う。
これではムーがジョージを国民になることを反対するのではないか。ムーは国民になってもジョージが改心せずに国民まで殺めてしまうかもしれない、それどころか、ジョージはそれも許せと言ってくるだろう。それでは、ムーが掲げた、規則が根本から崩れてしまう。そして今、ムーは国民か、ミノルたちか、どちらの意見を取るかで揺らいでいる。ジョージは『世界』に産み落とされるのか。ジョージは改心して国民になってくれるのか。
どちらがなるのかは一目瞭然。
「ミノルさん」
ムーが怒りに震えた声で言う。
「どうして、ジョージさんを許さなきゃいけないんですか?」
「…………」
「友達だからって事は分かります。でも、ボクだって友達を誰かに殺されたら同じように恨みますよ。憎しみますよ。怒りますよ。ボクが、ジョージさんを気に入らない理由はそれです」
ムーがミノルの目を凝視してその小さな口から放った。
「もう一度、言います。何で許さないといけないのですか?」
そこまでする価値があのY型にあるのか、そう訊かれたのだ。
最後の忠告なのだろう。ミノルはそう思った。
ムー、申し訳なさそうに俯きながら言った。
「すいません。強く言い過ぎました…………」
「ムー。分かったよ。一回だけ、あと一回だけ国民になるようにジョージを説得する。それができなかったら…………」
「分かりました。そのあとはボクがやります」
笛が鳴り響く。
もうすぐ終わるとは誰も気づかずに。
*
「ソンさんっ!!」
ソンの部屋の戸の前、ジョージの拳の一撃に体に受け、遠くに飛ばされ、地べたに寝そべっているソンを見つけた。近くにはジョージもいた。
ムーはすぐにソンに駆け寄ろうとしたが、ジョージが近くいるためか近づかけずに大声で意識はあるか確認する。
「大丈夫ですかっ!?」
「………………、ダメだけど、死ぬことはないと思うよ」
生きていることに安心したムーは、ソンを攻撃した相手を睨んだ。
睨まれた張本人は、ムーを無視してメンフェゴールに跨ってきた二人をずっと見ている。
「お前らも来たのか」
ジョージは悲しそうに言う。ミノルは最後の説得をするのはこの瞬間しかないと思い、言った。
「ジョージ、お願いだから、国民になってくれよ…………君と戦いたくないんだ。友達だから」
ジョージは笑った。腹の底から可笑しそうに大笑いした。睨んでいたムーが恐怖を感じたのか顔が引きつっている。一頻り笑い終えたジョージは言った。
「友達だから、か。じゃあ、ミノル、ソン、スズラン、友達だから、ムーを殺してくれよ」
そういい放った瞬間、沈黙が生まれた。その沈黙に耐え切れずにジョージがまた笑った。
「はは、出来ないよな? つまり、俺も、そういうことだ」
ジョージは、ミノルにそう言って優しそうに微笑んだ。ミノルはジョージは全てを諦めたように見えた。ゆっくりと哀愁漂う雰囲気がジョージを包み込み、その空気に色がついて真っ黒な霧に周りに立ちこめるような、怒りに満ちた感情があることを感じていた。
一発触発。そう表現できる非常に危ない状況になってしまった。
フィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!
ムーが笛を吹いた。ここに来るまでに操ったメンフェゴールたちが一斉にジョージに向かっていく。ミノルとスズランが乗っていたメンフェゴールも動き始めたので、先にスズランが降りて、ミノルをゆっくりと降ろした。
ぞろぞろとメンフェゴールたちはジョージに囲もうとする。ジョージは近くに倒れているソンを軽々と掴み上げて、前に付きだし、盾にした。
「っつ!!」
ムーはすぐにメンフェゴールの攻撃態勢の指示を変更するために笛を吹いた。メンフェゴールたちはその場で止まる。口から笛を離したムーはジョージを罵倒する。
「卑怯者。ミノルさんの善意を踏みにじってまで、やりたいことは子供殺しですか? 本当に、どうしようもない屑ですね」
「お前の方が卑怯者だ。俺の友達を奪っただろ? どうせ、俺を勧誘したときと同じように脅して無理矢理国民にさせたんだろ? それを卑怯と言わずに何を卑怯というんだ?」
ジョージが呆れ顔で言った。ムーはそんな罵倒も気にせずに相手を睨んでいた。
「…………ジョージ、やめてくれ、ないか?」
盾にされているソンが懇願する。それにジョージは定型文のように返した。
「ソン、お前は殺さないから安心しろ。ミノルも殺さない。スズランも殺さない。俺が殺すのはムーだけだ」
ジョージは再び回りを見渡している。どこから行けば最短距離でムーにたどりつく通路を模索しているのだろう。
ついに耐えきれずにミノルは叫んだ。
「なんで、分かってくれないんだよっ!!」
急にミノルに言われ、ジョージ少し悩み、視線をムーの方に向けて訊いた。
「…………、おい、俺が国民になっても、殺しは許してくれるといったな? じゃあ、国民も殺しても良いって事にしたら国民になってやる」
「ふん、国民であるボクを殺す宣言をしている子供を国民にすると思いますか?」
「なんだ。すぐに分かったか」
つまらなそうにジョージは言う。ムーが続ける。
「あなたをボクは許しません。子供殺しも許しません。国民には未来があるからとかではなく、『ここ』に生まれてきた子供にも、必ず未来がある。それをあなたみたいな快楽殺害、無駄な事をするなんて、絶対にやってはいけない。奪ってはいけないのです」
「お前が言っていることは善意でじゃない。ただお前が『ここ』に生き残るための言い訳、あからさまな偽善だ」
お互いに一歩も譲らずに、睨み合ったまま、時が過ぎていく。
「あなたには何言っても通じないようですね。可哀想な子供」
「ごめんな。俺みたいな頭が悪い奴はお前みたいな気取った奴の言葉を理解できないんだ」
その言葉で頭に血が上ったのか、ムーは笛を思いっきり吹いた。
フィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!
メンフェゴールたちが一斉に口を大きく開いた。ムーはソンもろとも溶かすつもりなのか分からない。これにはミノルを支えていたスズランも声を上げた。
「何しているのっ!? ソンまで溶けちゃうよっ!!」
「黙っててくださいっ!! こんな奴、これくらいしないと通じない馬鹿なんですから!!」
ムーがスズランに一喝した。ムーは自棄になっている。
「俺より馬鹿がいたか。傑作だ」
ジョージは冷静にソンを盾にしたが、ジョージはソンを殺してまで、身を守るとはミノルは思えない。だから、ソンごと後ろに飛んで、すぐに逃げるだろう。そうしやすように、後ろに飛んでも何もない、安全に逃げられる場所へとじりじりと動く。
「死んでください」
そう言ってムー笛を吹いた。甲高い音が鳴り響く。
メンフェゴールたちは体の中から、消化液を吐き出す、
素振りをした。
「っ!?」
そう、ムーはメンフェゴールたちに消化液を吐く指示ではなく、消化液を吐く振りを指示を送ったのだ。笛の音だけでは何を指示したのか分からない。その事を利用してあたかも自分は自棄になって、ソンも溶かしてしまえ、と錯覚させたのだ。
それに見事に引っかかったジョージは反射的にソンを持ちながら後ろに飛んでしまった。
「ごめん」
ソンは、まだ着地していない空中に浮かんでいる一瞬。ジョージを下腹に向けて蹴った。蹴られたジョージは苦痛を顔に浮かべる。そして体が不安定になり、後ろに転んだ。その瞬間にソンは逃げだし、ムーの元へ走った。ムーが嫌みたらしく言う。
「こんな事にも引っかかるなんて、あなた本当に頭、大丈夫ですか?」
そうせせら笑い、ムーは笛を口にくわえて吹いた。
メンフェゴールたちが一斉にジョージに向かって突進し始める。ソンは訊いた。
「なんで、溶かさないの?」
「殺しはしません。でも、そのかわりに『世界』に生まれて貰います」
ムーがジョージが気絶したの確認するため近づいて行く。メンフェゴールたちがジョージに群がって、死なない程度に潰そうとしていた。
が、
「―――――――――穏便に済ませてやろうと思ったが」
メンフェゴールたちが、急に後ずさりし始めた。そして空いた場所、ジョージが転んでいた場所には、一匹のメンフェゴールが首を絞められて、呼吸が出来ずに空気を吸おうと必死にもがいている姿があった。首を絞められているメンフェゴールはどんどん弱り、もがく力も無くなりかけていた。
「やめだ。全員殺す」
グチャッ。
メンフェゴールの首が簡単に捻り切られた。首があった場所から大量の血液と消化液が混じった混合液が濁流のように垂れ流しながら、地面に落ちた。
ドチャッ。
「………………メンフェゴールが殺さ、れ、た?」
ムーが目の前で訳が分からないことが起こっているの信じたくないように片言で呟く。
周りにいたメンフェゴールは仲間が殺され、怯えて指示も忘れ逃げて行く。
「簡単な話だ。メンフェゴールは硬い皮膚で覆われているが、関節には無い。曲げるのに邪魔になるからな。だから硬い皮膚へ打撃の攻撃は効果はないが、引っ張られたり、捻ったりすれば千切れるし、関節にそって刃物を入れても切れる」
説明し終えたジョージはムーに向かってメンフェゴールの首を投げつけた。避けることも出来ずに首はムーの上半身に当たる。ムーはそのまま後ろに倒れることはなく持ちこたえたが。
「逃げろっ!!」
ソンがムーに向かって走り出し、スズランまでもがミノルを置いて走ってムーを助けようとしたが遅く、ムーの目の前にジョージがいた。
「ひっ、」
ムーが悲鳴を漏らす。ジョージはメディスンを操ることが出来る笛を持っていた細い右腕を掴み、握力だけでへし折った。
「ああああ、ああああああああああああああああっ!!」
手からこぼれた笛が地面に落ちた。一瞬にして激痛に苦しむ表情へ変わる。右腕をへし折られたムーはその場に座り込み、痛みに耐えながら右腕のことよりも、笛を左手で地面に落ちた笛を掴んだ。ムーは少し安堵したようだった。
グヂャッ。
ジョージがムーが掴んだ笛ごと、左手を足で踏みつぶした。
ムーは表情が虚ろになり、踏まれた左手を見ていた。この世の終わりのように。絶望に打ちひしがれているように。悲鳴も上げずにただ見ていた。
その時、ジョージの後ろから音も立てずに近づいたスズランが背中を金属片で切った。
「痛っ」
ジョージが切り裂かれた痛みに振り返った。踏んでいた右足が離れ、ムーの左手は解放される。その隙を見計らってソンはムーを急いで抱きかかえながらジョージと距離を取る。スズランもゆっくりと距離を置いて、ジョージから離れた。
「大丈夫かっ!?」
ソンがムーに訊いたが、ムーは青ざめた表情で逃げなきゃと呟いている。
「何してくれるんだ?」
ジョージはスズランを睨む。スズランはその目の凄み圧倒され、足が震え、動かないのか逃げられないでいた。そして、徐々に距離を詰め寄られる。
「こんなの、間違ってるよ。絶対に。友達を傷つけてまで、友達って言ってる方が間違ってるよ」
泣きながら言う。ジョージはどこか遠くを見るような素振りをしながら宣言した。
「…………それは正しいな。でも、もういいんだ。新しい友達を作ってやり直せば」
丁度、スズランの前に立ったジョージはスズランの顔面に向けて殴ろうとした。ミノルは叫ぶ。
「やめろっっっっっっ!!」
ビチャッ。
急に脈絡のない音が鳴った。ジョージが後ろを振り返った。
一匹のメンフェゴールが消化液を吐き終えていた。
「何故、笛を吹いて、いない、のに、あ、や、つ、れ……る……?」
消化液を体全体に浴びたジョージは疑問を口にしながら、消化液がかかった背中から呆気なく溶けていった。
スズランに危険が去ったのだが、ジョージだったものを悲しそうに見つめて立ち尽くしていた。
「ねえ、笛がないのに、どうやってメンフェゴールを動かしたの? また予測して――――――」
ソンが抱き抱えているムーに向かってメンフェゴールをどうやって操ったのか訊いている。
ミノルも友人の死よりも別な事を考えていた。何で笛がないのにメンフェゴールを操ることが出来たのか。笛が壊れたといっても、壊れる前に指示していたことは継続される。笛で操っている訳ではなく、その笛の音で指示を出している。だから、壊されてもメンフェゴールをすぐに止めることは不可能。指示が実行される、もしくは、忘れるまで続くはずだ。
ムーがこのように自らを犠牲にしてまで、さらには、ムーの強さのすべてを担っていた笛を壊されてまでやるのだろうか。後者は予期せぬことだったとしても、相手がジョージだと、一発で殺される可能性があり、これに賭けるのは危険すぎる。それにムーはジョージを殺さない、と国の規則で、罪を犯した子供は『世界』に生まれることを自分で決めていたはずだ。それを自ら破るとも思えない。それから、メンフェゴールも指示を忘れて、同族を簡単に殺したジョージから逃げていたじゃないか。つまり、あの時点でメンフェゴールに指示したことは無効になってしまったはずだ。
じゃあ、何でメンフェゴールは、ジョージを溶かした?
まて、そもそもメンフェゴールが消化液を子供に吐く理由は何だ?
それは、子供が持っているEC――――――餌を得るため。
ジャリッ。
ミノルの背後から、何かが近づいている音が聞こえた。
ミノルはゆっくりと後ろを振り返って、音の主を見た。
ジョージの後ろにいたメンフェゴールは、ジョージが持っているECを取るために消化液を吐いたんじゃないか?
体を捻って振り返ったミノルの目の前にいたのは、国で飼育していたメンフェゴールよりもやせ細ったメンフェゴールが仁王立ちでミノルを見下ろしていた。
「え?」
メンフェゴールはパカッと口を開く。喉を奥まで見えるくらい大きく開いた口から、コポッと吐き出す準備の気持ちが悪い音が耳に入る。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ミノルは折れて内出血で紫色に腫れる腕をためらう事なく使い、その場から転がって逃げた。
ビチャッと、ミノルがいた場所に吐き出された。消化液の量は少なく、それもあってか、少しの距離しか動いて逃げれなかったミノルに飛び跳ねてかかることもなかった。
ミノルの叫び声に気づいたスズランとソンは、ミノルがいる方に顔を向けた。
状況をいち早く理解したスズランはミノルに走って近づいた。
「ミノルっ!! 大丈夫っ!?」
転がっているミノルは、スズランに起こされながら言う。
「このメンフェゴールはムーの笛によって動いているんじゃない!! 本能通りに餌のECを取るために子供を溶かしているだけだなんだ!!」
ミノルは辺りを見渡す。次々とやせ細ったメンフェゴールが次々と集まってきた。
「こんなに…………、何で門から出てくるのよ…………」
スズランはその光景に絶句していた。
それだけで収まることなく次々とメンフェゴールたちが集まってくる。中には体を引きずりながらも、寄ってきたメンフェゴールまでいった。
「ミノルっ! スズランっ! こっちだっ!!」
ソンは自分の自分の部屋の戸を開けながら叫んだ。
「引きずってもいい!?」
「いいけど、僕のここの袋に入っているECを十枚くらい残して、それ以外をメンフェゴールの方に向けて投げて!! 出来るだけ遠くにっ!!」
「わかった!!」
スズランはミノルに言われたとおり、ミノルの服についている袋からECを掴み、十枚くらい自分の袋にいれ、残ったECをメンフェゴールたちの方へと投げた。メンフェゴールたちは一斉に投げられたECに我先に群がって取り合い始めた。
「今だ! 早くっ!!」
スズランに引きずられながら、ミノルはソンの部屋へと避難した。
ソンの部屋の戸を閉めるきるまで、ミノルはメンフェゴールの消化液によって液体に近い物体になってしまったジョージを見つめていた。
「閉めるよ」
ギィィィィと戸が閉まっていく。メンフェゴールたちは投げられたECを取り合って、消化液を吐いたり、腕を振り回したりして、ECを取ろうとしている。
ミノルは小さな声で言った。
「ごめん」
バタンッ。
メンフェゴールたちは戸が閉められたことに気づくことなくECを奪い合っている。
まるでその光景は、どこかの子供たちが赤い実を取り合う姿を彷彿とさせた。
*
「メンフェゴールたちは門の中から出てきたのかな?」
スズランは首を傾げながら不思議そうにいった。
大量に集まったメンフェゴールから、ソンの部屋へと逃げた。ややあって、ミノルは折れた箇所が痛みだしたので、スズランに手当てをしてもらい、ある程度は楽になった。明日になればこのくらいの怪我は治っているはずだ。
「多分、メンフェゴールたちはECを餌としているから、門の中に入ってくる子供たちがECを持っていなかったから、餓死寸前になってECを求めて町の方に降りてきた。その理由は――――――」
ミノルが続けようとしたがジョージに握りつぶされた右腕、踏みつぶされた左手の痛みに堪えながら、ムーが代わりに言った。
「それは、ボク達が門の前で通行料と称してECを集めていたからです。入ってくる子供はいくら溶かしてもECを持っていないのでメンフェゴール達は門の近くまでECを求めてやってきたのでしょう。そして空腹の限界に達して門から出てきた」
「じゃあ、何日かすると満腹になったメンフェゴールたちが門の中に戻っていくのね」
スズランがそういうとミノルは複雑な表情で言う。
「いや、門の中よりも確実にECが確保できるこの場所、町に居座るかもしれない。そうなると僕らはECを増やすことが出来ないし、しかも手持ちのECも少ないから…………長くは持たない」
ミノルが言った後、四人は黙り、皆、口を閉じてしまった。外で蠢くメンフェゴールの足音が聞こえる。まだ戸の前に沢山群がっているようだ。時々、子供の悲鳴も響く。腹を空かせているメンフェゴールに襲われているのだろう。
「これで、終わりなのかな……」
スズランの弱音が沈黙を破った。
「…………ごめんなさい」
ムーが謝り始める。
「こんな事になるくらいだったら、国なんて、創らない方が良かった」
途中、涙でつっかえながらも弱音を吐露する。ミノルはムーを少しでも励まそうとする。
「そんなことはないよ。ムーのおかげで気づいた事も沢山あったし、ジョージだって分かってくれればあんな事にならずに済んだはずだよ」
「ジョージさんの事は本当に残念です。でも、例えジョージさんに納得してもらっても、メンフェゴールを門の中から出してしまったのは、ボクの所為、責任です。だからジョージさんが言う通りにした方が良かったと思うんです」
ソンは言った。
「ムー、それは間違っていると思う。子供を殺すのは」
「間違ってなどいません。確かに子供を殺すのは間違っていると思います。でも、ボクはそれ以上の子供を殺してしまうのですよ? ボクの所為で、生まれた瞬間にメンフェゴールに殺されてしまう状態にしたんですよ? きっとボクの都合を押しつけて生きていこうとした罰なのですよ…………」
「それでも、ムーはちゃんと生まれてくる子供たちの為に考えて行動したんだから、それは仕方ないよ。僕は自分たちが生きるために生まれて一回も木まで行ったことのない子供を殺してEC奪うよりは、一回だけだけど、赤い実を採りにいく機会を与えてあげるっていうのは最善策だった」
ソンは、ムーの頭を撫でながら言った。ムーは泣いていた。
「兎に角、これからどうしよう? 取りあえず、僕とスズランは、日が落ちて怪我が治るまで待ってから、部屋に戻るけど」
ミノルは明日からどうやって生きるのか話し合いは国民全員でやろうと言おうとした瞬間。
ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!
「ムーさん!! いますか!? 早く開けてください!!」
「国民の皆で集まって、ソンさんの部屋に来たんです!!」
「早くしないとメンフェが!! ああっ!!」
戸の向こう側から、国民と思われる声が響いた。何かあった時はソンの部屋に集まるとムーが指示していたのでメンフェゴールに追われた国民が逃げてここまで来たのだろう。でも、ソンは部屋から出ないように国民に言ったはずだ。でも、国民たちはソンの部屋に集まっている。それは――――――
「国民として、国民じゃない子供でも守ってあげようって皆で話し合って、メンフェを操れるのだから、ムーさんなら、その規則を決めたムーさんなら、助けられると思って危険を承知で来たんです!!」
ムーのメンフェゴールを操れる笛で襲ってくるメンフェゴールを操って、まだ赤い実すら採りにいけない生後一日目の子供助けてもらうために。
そうムーが規則として決めたのだ。
だが、もうメンフェゴールを操れる笛は無い。
ドンッ!! ドンッ!!
「ムーさんっ!! 早く、笛をっ!! ああああああああ!!」
ムーが反応し、寝床から起きあがって声を出そうとしたが、
「ソン、ムーを押さえるんだ!!」
ミノルが小声で強く言った。ソンは寝床にいるムーの口と体を押さえた。ムーは何をしているんですか! 早く戸を開けないと! 言わんばかりにもがいて振り払おうとしてた。ミノルは、あとはスズランを押さえなければとスズランの方を向いたが、隣で泣いてじっと大人しくしていた。
「…………スズラン、君も、助けようとするんだと…………」
「私、ミノルが考えていること、分かったよ。もし、ここの戸を開けて助けようとしても、メンフェゴールが一匹でも入ってきたら、それで終わりだし、入ってくる国民の数だって分からないから、国民が沢山入ってこられても駄目。下手すれば全員殺される。つまり――――――
見捨てる、のが、一番良くて、確実に私たちが助かって、襲われている方も一番多く助かる方法だってこと」
スズランが泣きながら言い、ミノルの服をぎゅっと握る。ミノルは動かない腕で抱きしめようとしたが、ミノルの胸に顔を埋め、ごめんなさいと謝っていた。戸の前で悲鳴が上がる。
ドンッ!! ドンッ!!
「ムーさん!! 見捨てないで!!」「痛いっ! 体がっ、溶けている!!」「死にたくない!! 死にたくないよ!!」「腕が、溶けるっ!!」「止めてっ!! お願いだから!!」「早く開けてよっ!! 死んじゃうって!!」「溶けちゃうっ!!、お願いしますからっ!!」
悲痛な助けを請う必死な声が聞こえる。
「お願いですからっ!! ソンさん!! 放してください!!」
ムーが暴れながら言った。必死に暴れるムーを押さえつけるソンが急にムーの左頬を叩いた。ムーが一瞬呆ける。
「お願いだっ!! ここは見捨てるんだ!! ムー、もう君にはあの笛はもうないんだ!! あれがあったなら助けることはできたかもしれない。けど、もうないんだ。僕はそんな怪我しているムーをこの部屋からだしたくない…………」
「それでも、助けないと!!」
「ミノルとスズランもいるんだよ? さっき説明した通り、下手したら全員死ぬ。いや、絶対に全員死ぬ。見たでしょ? あの集まったメンフェゴールの数。しかも、国民たちが連れてきた数も含めるとかなりの数になっている。戸を開いたら、一気に消化液をかけられる可能性だってある…………」
「でも、それでも!!」
「僕はムーが死ぬのがいやだ…………軽蔑されてもいい。だから、僕は止める」
ソンはムーを寝床の上に押し倒して、羽交い締めにして押さえ込んだ。ムーはまだ騒いでソンから逃げてその戸を開けようとしてようとしていた。
戸の外ではまだ、国民たちの悲鳴が聞こえる。
「ミノル、私、最低の屑だと思う」
「スズランだけじゃない。僕もそうだよ」
戸の外から土砂降りの雨のような、大量の液体が戸にかかる音がした。
その瞬間だけ、大音量の悲鳴が上がったが、それ以降、戸の外からメンフェゴールたちが蠢く音以外しなくなり、戸を叩いて助けを呼ぶ声は響くことはなかった。
そして、部屋の中から、泣き叫ぶ声が虚しく響くいて、日が落ちて逝った。
*
ここは、どこだ?
俺は死んだんじゃないか?
嗚呼、そうか、そういう原理か。
あいつら、殺す、殺さないで争っていたが、
よくよく考えてみれば簡単な話じゃないか。
あいつらが生きている、あの場所に生まれても、『世界』に生まれても、あの場所でも死んでも、『世界』で死んでも、
記憶は全て無くなるんだ。結局、同じ事の繰り返しじゃないか。
また記憶を無くして、また生まれて、初めて生まれたように思うんだろうな。
俺は何回目なんだろうか? 忘れているから分からないが、初めてではないと思うが。
だから、『世界』に生まれても意味がないんじゃないか?
長生きすればとかの問題じゃなくて、記憶を無くして、生まれるんだから、死と同じじゃないか?
それとも、『世界』で死ぬと何かあるのか?
ん?
なんだこれ?
『もう一度がんばりましょう』…………。
……、はあ。
もう一回、子供として生まれろってことか。実際、飽きてくるな。
そうか、だから、
一回くらい『世界』に生まれてみたいと思うのか。
どれ、次が、いっちょ頑張って『世界』に生まれてみますか。
じゃあな、俺の親友、…………、誰だっけ?
そもそも俺って誰?
そもそも僕なのか?
そもそも私なの?
そもそも何?
そ、も、
?
ソウシテ、トケタイノチノモトハ、マタ、イノチノモトトナッタ。
毎回長文で本当にごめんなさい。
次回で最終章ということになるんですが、一週間後に投稿できるかどうか分かりません…………。だって忙しいんだもん。
二週間以内には絶対投稿するように頑張ろうと思っています。
では次回、最終章をお楽しみに。
P.S.
次回作の案を考え付いて、プロットも書き終えたんですが、さっき読み終わったラノベの内容の大部分とかぶりました。
どれ、次回作は無難にラブコメにするか……。