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 この物語は、この世界に生を受けるほんの少し前の物語。


 必死に生を受けようともがいた物語。


 そして、


 誰もが忘れてしまった物語。





 ミノルは落ちた。

 踏み出した右足が地面を蹴ろうと力を入れた瞬間、その足から地面に沈み、ズブッと右足からその下にあると思われる空間に向けて落ちていった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ミノルは絶叫しながら空中に放り出され無重力を体感、一瞬、気を失ったが、すぐに意識を取り戻した。

 ドサッ。

 地面に激突。ぐぁっ、と呻き声を上げる。体中に走る打撲の痛み顔引きつらせながら、何がどうなっているのか、四つん這いになり周りを見渡す。

 頭上からは一本の光が降り注ぎミノルを照らしている。あそこから落ちたのかと思うゾッとした。立ち上がり、体に異常は無いか確認する。痛みはあるものの骨折や捻挫などの怪我は無いようだ。

 ミノルは再び周りを見回した。先ほど述べた光以外は暗くて何も見えず、漆黒の闇がミノルを包み込む。

「……どうしよう」

 ミノルがはぁ、と溜息がでた。闇雲に歩くしかないのかと思い、踏み出そうとしたが、とある違和感を覚えた。

 なんで、こんな広い空間が出来ているんだ?

 ミノルの記憶が正しければ、途轍もない、想像もできない現状が起こって、どこか違う場所に飛ばされた場合でなければ、ここは地面の下。つまり地下のはずだ。しかし、この広い空間はどこかがおかしい。鍾乳洞等の洞窟をミノルは見たことも聞いたこと無いのだが、憶えている、というのか、記憶されているものは、こんな広い空間ではなかったはず。

 ミノルは悟った。柱が無い、と。天井を支える柱が無い。違和感の正体はそれだった。こんな徒広い空間に柱が無いなんて、おかし過ぎる。じゃあ、どうしてこの空間は成りたっているのか。落ちる前にミノルは子供六人分の背丈がある木々の森の中を歩いていた。その木々の重みに耐えられる程の地面の硬さだからならミノルはこんな所に落ちやしないのに。

 でもこうは考えられないだろうか。

 たまたま何らかの原因で出来た地面の下の空間、その上に長い年月をかけて育った樹木、この二つが偶然に噛み合い、奇跡的につり合い、今まで崩れずに均衡を保っていたのだとしたら。

 たまたま誰も近寄らない、近づくことのない場所に来て、こうやって地面を崩落させたとしたら。

 つまり、現状はそう、最悪。

 ぱらぱらと上から砂や小石が落ちてミノルの上にかかった。ミノルは一瞬で理解した。

 ミシミシと音を立て始め、ついに、

 落ちる、

 土で出来た空が、

 土で出来た天井が、

 土と、木々の根で出来た、


 土砂が落ちてきた。


 ミノルは両腕で顔を覆い隠し、無意味な防御動作をした。恐怖に声すら出なかった。

 ドサッと、土砂が落ちる音がした。

「…………何も落ちてこない」

 ミノルは顔を守る防御を解き、訝しげにあたりを見渡す。

 全部の天井が落ちた訳ではなく、もう一カ所、ミノルが落ちた穴のように、遠くの方にも一本に光の線が見えた。

 ミノルは今さっき落ちたのはそこかと安堵し、早くここから出なければと思ったが、その光に照らされていた物を見たとき、時間が止まったかと思うほどの衝撃を受けた。

 それは、真っ赤な実をつけた一本の小さな木だった。

 木としてはミノルがこの空間に落ちるまで歩っていた際にみていた木々とは比べ物にならないくらい低く、ミノルの背と同じくらいの大きさだろう。ミノルはそんな小さい木が物珍しくて驚いたのではない。その木に誇らしげに実っている、真っ赤な実にだ。

 ミノルはそれを見るやいないや、今、自分がどんな状況に置かれているのかすら忘れ、あ、あ、と声を出そう必死に口を動かすが空気しか漏れない。

 それくらい、待ち焦がれていたのだ。

 ミノルは徐々に赤い実に近づいて行く。

 そして、ミノルはその赤い実を手に掴み、もぎ取った。


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