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自由な時間  作者: いわまこうぞう


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自由な時間

今日は出社することにした。キーボードを叩く音だけが響いているオフィスに行くメリットはあまり感じていないが、郵便物対応というアナログ業務がある以上は出社せざるを得ない。

業務の性質上、定時に出社する必要もないため通勤ラッシュを避けて、少し遅めの電車に乗る事にした。在宅勤務でライフワークバランスのよい効率的な働き方ができているのに、前時代の遺物であるアナログ業務で非効率な働き方をせざるを得ない矛盾を感じながら最寄り駅に向かった。


遅めの時間とはいえ車内はそこそこ乗客が乗っていた。降りる人をかき分けて席を確保していた人はずっとスマホを見ている。ドアにもたれかかっている人、リュックサックを背負っている人、妊婦さんに席を譲った人、パソコンを開いている人、2人掛けシートの窓側に詰めずに座っている人とその人の人をよけながら窓側の席に座る人、つり革につかまっている人とその前の5人掛けロングシートに4人でゆったりと座っている人。

それぞれの人たちが自分のスタイルで自由に過ごしている。座りたいという欲求が満たせない方もいるだろうし、スマホに夢中で周囲が全く見えていない方もいるだろう。リュックサックが邪魔だと思っている方、席を譲ってもらって感謝している方。このすべてが自分のスタイルであり自由だと思う。

誰も強制されている訳でもなく、自由意志で迷惑をかけたり、周囲に気遣いをしたり、腹を立てたりしている。


自由って何だろう。そんなことを思いながら出社した。いつものように誰もが黙々と自分の仕事をこなしている。フリーアドレスなので誰も座っていないデスクで業務を開始することにした。定型化された郵便物処理対応がメインなので誰かと話す必要もない。

この会社ではコミュニケーションはメールとチャットが中心で会話することは多くはない。そもそもフルフレックスなので同じ時間帯に全員が働いている訳でもない。成果さえ残せるのであれば、場所も時間も自由に決めることができる。

退社する時に今日は一言も話していないことに気付いた。


出入口の近くに書類をたくさん並べて何か作業をしている方がいた。この方は確か私が出社した時にはそこに座っていた気がする。この方とはあいさつ程度の会話しかしたことはないが、確か私と似たような仕事をしていたと記憶している。業務が立て込んでるんだろうかと思いながら退社した。


駅に向かう途中で気付いた。この会社の文化は電車内の人々ととても似ている気がする。誰もが自由に自分のすべきことをしていて周りの人のことは全く気にかけない。

座りたい方がいれば座るだろうと自分が障壁になっていることに気にかけることもないし、困っている方は妊婦さんのように目立つ存在ではない。

いや、違う。会社に残っていた方は書類を並べていた。私がしない業務スタイルだというだけなのかもしれないが、目視でデータをチェックしていたのかもしれない。私が作ったチェック用ファイルを提供することで業務効率が上げられたかもしれない。私がそれに気づかなかっただけかもしれない。

私自身が電車内と同じ自由な時間を会社で過ごしていただけかもしれない。


今日は車内でスマホを見ずに考えていた。自由って何だろう。

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