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騎士をクビになった俺、やることを探す  作者: ふみぃ


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第二話③

 

「終わったぞー」


「皆さまありがとうございました」


「まあ気にすんなって、俺達に任せな」


 二人組の冒険者達が商人と話している間に魔物から鉄杭を引き抜き、血と油を拭き取ってから腕輪の中に収納しておく。


「ふー、疲れたー」


「あの数は結構手強かったね」


 新米冒険者達は慣れない集団戦に、体力以上に精神的に疲れているようだが、これはいずれ慣れていくことだ。


「『大地よ』……」


 土属性の魔術で地面に深い穴を空け、ローンウルフの角を折ってから亡骸(なきがら)を埋めていく。


 これを行う事で亡骸のアンデッド化を防ぎ、屍肉食性(しにくしょくせい)の魔物が寄ってこないようにする。


 特に人が通るこのような道では、被害を減らす意味でも積極的に行うべきだ。


「あの……」


「どうした」


 新米冒険者の内の一人、魔術師の少女がやってきた。


 その様子はどことなくぎこちない、さっきの事を気にしているんだろう。


「さっきはありがとうございました、それとごめんなさい!」


 勢いよく頭を下げる少女の頭の二つ結びが揺れる。


「今回は被害も無く終わったんだ、あんま気にすんなよ」


「でも……」


 まあ仕方が無いか、一歩間違えれば被害が広がり彼女も命を落としていた。


「また起こさないように学んでいけばいい、次の街に着くまでは俺が援護するからな」


 旅の期間は三日と掛からないだろうが。


「騎士様……、はい、私頑張ります!」


 暗い表情だった魔術師の少女はようやく柔らかい笑顔を見せた。


「私ラムって言います」


「俺はリュート、まあ好きに呼んでくれ、よろしくなラム」


「はい!」


 冒険者達に続き馬車へ乗り込み席に着くとゆっくりと走り出した。


「見事な手際でしたね」


「そうだな、俺は何もやる事無かったが」


「ふふっ、ご冗談を」


 黒いフードの下でアヴェリアが笑う。


 その素性は未だに分からないが、意外と話せる相手なのかもしれない。


 しばらくの馬車旅の後、日が沈み始め今日の所は湖の側で一夜を明かすこととなった。


「あの、リュートさん」


「どうした?」


 焚き火で干し肉を炙りながら暖を取っていると、ラムが遠慮がちに話しかけてくる。


 いつの間にやら席も近くなっていて、残りの二人も会話をしているようでこっちを気に掛けている。


「私って何がダメなんでしょう……、故郷ではいつも先生に怒られてばっかりで」


「何がダメか……、魔術の発動速度も威力も申し分なかったし、詠唱の省略が出来るのは見事だったな」


「ほ、本当ですか?魔術に関しては村の中で一番だって自信はあるんです」


 魔術の扱いに関してはそれなりと言っていい、だがああいった場面ではそれだけではだめだ。


「あえて言うとすれば」


「は、はい!」


 嬉しそうに笑っていたラムの表情が一転して、緊張した面持ちになる。


「戦闘では常に冷静さを(たも)ち集中を切らさない事、常に周囲の状況を見極める事」


「冷静さと集中、周囲の状況判断……」


 どんな卓越(たくえつ)した技術を持った魔術師や剣の使い手であろうと、一瞬の油断で命を落とす。


 絶えず状況が変わり続け、敵が常にこちらの隙を狙っている戦場では常に気を張り巡らさなければならない。


「これはまあ長い時間訓練して(つちか)っていくもんだがな」


 長い時間を掛けた訓練と実戦、それを繰り返すことでようやく身体に染み込ませる事が出来る。


「どうすればいいんですか?旅をしてる今だとそんな事する機会も無くって……」


「そうだな、選択肢を多く持てば多少は補える」


「選択肢ですか?」


「ああ、ラムは属性を何個使える?」


「ええと……、光と火と水と風の四属性です」


「そりゃ凄いな」


 一応は俺も基本の七属性を全て使えるが、実戦で信頼できるのは闇と雷と土ぐらいだ。


「ふふっ、そんなこと無いです」


 あの爆発と同じ規模の魔術を複数属性で扱えるなら、十分上澄みの部類だと言える。


「魔術ってのは要は発想と工夫なんだ」


 水属性の初級魔術を発動し、手の平の上に小さな水球を発生させる。


「発想と工夫……」


「ラム、これに触れてみな」


「これにですか?……普通の水の塊って感じです」


「そうだな、じゃあ今度はこっちだ」


 魔術を打ち消し、また新たな水球を発生させてラムの前に動かす。


「はい」


 理由が分からないといった様子ながら、ラムは恐る恐る水球に触れるとその表情が変わった。


「すごく冷たい……、それと水の中が動いてます……!」


「腕を動かしてみな」


「腕を?……あれ、手から離れない」


 水球を操作し、困惑したラムの手から離させる。


「もしこれが手じゃなくて、顔に着いたらどうなると思う?」


「……!」


 もし自分にの顔に喰らったらと、その末路を想像したのかラムの顔が青くなる。


「敵を倒すのに必ず大きな爆発が必要では無いってことだな」


 顔に付着した冷たい水球は体温を奪い、流れる水は口や鼻から侵入し空気を奪う、最後には命をも奪ってしまう。


「大して魔力を消費しないから連戦もしやすいしな」


 目標を怪我させずに捕縛(ほばく)しろ、みたいな任務の時にも大変お世話になった。


「これってどうやればいいんですか?」


「魔術を起動する際に、追加で指示を書き加えるだけで簡単に出来る」


「……やってみます」


 ラムは魔術を起動し、水球を発生させてそこに手を入れ左右に動かす。


 すると水球も同じ方向へ動き出した。


「出来ました……!でも戦闘中にこれと同じようにするのは難しいかもしれないです」


「まあそこは積み重ねだ、何時でも訓練出来る事だし気長にな」


「はい頑張ります!ありがとうございました!」


 ラムは元気のいい返事をすると、頭を下げてから仲間の元へ戻って行った。


 こうやって誰かに物を教えていると、騎士団時代の事を思い出してしまう。


 それこそ訓練生の大半は礼儀も良く、教えた事を素直に受け入れてくれるんだが。


 たまに俺が平民出身だからって、舐めて突っ掛かってくるのも居た。


 そんな時は実際に相手をして分からせてやったが、それもまたいい思い出だ。


 ――


 馬車旅二日目。


 特に魔物に遭遇する事も無く草原を抜け山への道を進んでいる道中。


「リュートさんって武器なら何でも使えるんすか?」


「特殊な物じゃなけりゃな」


「へー」


 一度同期に大鎌を借りて振るってみたことがあるが、それはまあ使い辛かった。


 長い攻撃範囲と初見相手への奇襲性(きしゅうせい)など魅力的な所は多いが、俺の型には合わないしもう持つ事は無いだろう。


「リュートさんって何もないところから物出したりしてますけど、どうやってるんすか?」


「ああ、これ使ってるんだよ」


「腕輪?」


「それって収納魔導具(ボクスマギア)ですよね、前に街で見た時凄く高かったの私覚えてますよ」


「まあ、これは貰い物だけどな」


 とまあこんな感じで新米冒険者三人組から質問攻めにあっていた。


 昨日ラムが俺と会話したことを見ていたのか、今日の馬車旅では妙に三人の距離感が近い。


 魔術少女のラム、剣士のティガ、槍士のトリィと遠距離から近距離までが揃った良い感じの編成だ。


 後は弓役が居れば言う事無しといった所か、誤射をしないような立ち回りというのは練度が低いとまだ難しいだろうが。


「空間魔術が使われているんですよね、高名な魔導士様が作り上げたって先生が言ってました」


 ある魔導士、いや賢者が開発した世界に干渉する程の魔術、その名も『空間魔術』。


 文字通り空間を開いたり繋げたりすることができ、使い手によっては世界すら作ることが出来ると言われるとんでも魔術だ。


 俺が付けている腕輪にはその空間魔術が使われていて、起動することで時間の止まった空間に物をしまったり取り出したりすることが出来る優れものだ。


 例えるなら持ち運べて邪魔にならない倉庫って感じだ、まあこれの限界容量はそれどころじゃないが。


 しかもその腕輪で繋がった先というのが時間の止まった空間で、生ものを入れても腐らず、何を入れても決して劣化しないというおまけ付きだ。


 旅人には欠かせない必需品とも言える物だが、ただその性能だけあって値段もとんでもなく高い。


「そうだな、死ぬほど金が溜まったら家を買うよりまずこっちを買う方がお勧めだ」


「ち、ちなみに、その腕輪の値段って幾らぐらいするんすか……?」


「それはな……」


 あまり大きな声では言い辛いんだが、知りたいお年頃の新米には一度現実を知って貰うとしよう。


 剣士の少年ティガの耳に口を寄せて聞いた腕輪の値段を告げる。


「…………へ?」


 値段を耳にした瞬間、ティガの元気そのものといった感じの顔色が真っ青に変わってしまった。


「……その腕輪にはどれだけの物が入るのですか?」


 槍士の青年トリィが無表情でそんな事を聞いてくる。


 まあボクスマギアに関しては、これさえ分かれば大体の値段は予想できるからな。


「んー、小さな街一つ分って言ってたな」


「街…一つ……!」


 冷静な男が目を見開いて驚く様子は予想以上に面白いな。


「まあこんくらいの物とは言わないが、倉庫くらいのを一個買っておけばかなり便利だぞ」


「成程……」


 単純に持ち運べる量が増えるというのもあるし、手に持つ荷物も減って動きが制限される事もなくなる。


 武器や盾や防具などの予備など、馬車無しでは到底運べない程の量を携帯する事が出来る。


「俺も今じゃあこれが無かった時には戻れないくらい依存してる」


「確かに便利ですもんね」


「一番安いのでどれくらいなんだろ……」


「俺が前見たやつだと、五十万ガリアで小さい倉庫ぐらい入る物だったな」


 上はどれだけ見てもきりが無いが、容量によっては比較的お手軽価格の物もある。


「うーん五十万か、俺の貯金より多いぞ……」


「依頼をどれだけこなせば良いんだろうね、新人に任される程度の依頼料はしれてるし」


「ある程度落ち着いてからでもいいと思うわよ?私は先に装備を新調したいわ」


 新米冒険者三人は自身達のこれからについて会議を始めた。


「そのような物を渡されるなんて、随分(ずいぶん)と愛されているのですね」


 ずっと黙っていたアヴェリアが、唐突に気味の悪い事を言い出した。


「あら、複雑そうな顔ですね」


 この腕輪をくれたのはアルバーン隊長であり、そのことについても大変感謝しているんだが。


 随分と世話にもなったが、愛されてると言葉にされてしまうと複雑な心境になってしまう。


「貰ったのは男からだし、愛されてるってのはなあ」


「素敵じゃないですか、殿方(とのがた)同士の信頼関係を感じますよ」


 まあ間違ってはいないんだが、まあいいか……。


「もうじき山道へ入ります、揺れに注意してください」


 商人が車内へ振り返り忠告をする。


 今までは馬車の性能もあってか揺れを殆ど感じなかったが、山道になると流石にある程度は揺れるか。


 まあその程度で愚痴(ぐち)(こぼ)したりはしない。


 外を覗けば看板がいくつか立ち、外側には落下防止の柵が設けられているのが見える。


 俺達が盗賊を捕まえた後に、どっかの誰かが整備したんだろう。


「ここにいた盗賊達との戦闘ってリュートさんも参加してたんすか?」


 ティガが窓の外を眺めながらそんな事を聞いてきた。


「してたな」


「まじすか!どんな感じだったんすか!」


「ちょっとティガ声が大きいわよ、それに失礼でしょ」


 級にテンションの上がったティガをラムが(しか)る。


「そんくらい構わないぞ」


「いいんですか?」


「詳細とかは言えないけどな」


 騎士をクビになったとはいえ、奴等を捕まえてどこにやったとか、どういう陣形や戦法を取ったとかは流石に教えられないが。


 まあ俺が戦った相手とか位は教えてやっても良いだろう。


「んで、何が聞きたい」


「んーじゃあ、どんな奴と戦ったんすか?」


「俺がやったのは首領と幹部二人、後は下っ端を何人かだな」


 盗賊団ってのは大抵、(カシラ)を潰せばただの雑兵の塊になる。


 あいつらは訓練(くんれん)なんかしないし、群れの魔物を相手してた方が厄介(やっかい)だ。


「首領と幹部!すごいっすね……!」


「大したことねえさ、今回はほとんど魔術も(ろく)に使えない奴等ばっかだったしな」


 山を抑えてるだけあって人数はそれなりに居たが、戦闘で魔術を使ってたのも首領と幹部数人ぐらいだったし。


 そもそも魔術をちゃんと扱えるような奴は盗賊にならないしな。


「つまりは魔術を駆使してくる盗賊達もいるんですか?」


「なんでかそっちの道に外れちゃう奴らが居るみたいでな」


 たまに没落(ぼつらく)したか首になった騎士崩れが盗賊を(ひき)いてたりするが、そいつらは魔術の戦闘訓練を積んでるから厄介さは純粋な盗賊団より上だ。


「魔術が使えるなら食いっぱぐれるなんてそうそう無いんだがな」


 火が起こせるなら大小関わらず重宝されるし、水が出せるならそこら中から引く手数多だろう。


 その選択肢が選べないのは元が貴族で、そして騎士である故か。


 ギルドに入るのが嫌な俺の言えたことでは無いが、(ほこ)りってのは全く厄介なもんだ。


「魔術を使ってくる相手とはどうやって戦うんですか?やっぱり魔封器(シグナマギア)とかでしょうか」


 ラムも魔術を主に使うものとして気になるか。


「んな高価なもん盗賊退治程度じゃ上は降ろしちゃくれないさ、それに味方側も被害がないわけじゃないしな」


「そ、そうなんですか……?」


 一応命懸けの任務だってのに、お上は壊れるんじゃないかって使うのを渋りやがるし。


「シグナマギアってなんだ……?」


「ティガあんた知らないの?」


「知らん」


 魔術を行使するものが一番気を付けるべきものだって、割と有名なはずなんだがな。


 よっぽど田舎の出か、勉強もしない不真面目な奴だと知らない事もあるか。


「その名の通り魔術を封じる魔導器だよ、こいつがあるとその魔術が使えなくなるし武器も防具も魔導具もただの置物になっちまう」


 これがあると大型の魔物にはまず勝てなくなるし、中型でも追い詰められる可能性が跳ね上がる。


 だから使われる場面は対人間ぐらいしか無いんだが、どうしてかあまり使いたがらない。


 知り合いの話だとかなり精密に作られた物であり、材料費が高い上に壊れやすいらしいが。


「世の中にはそんな物が……、俺初めて聞きましたよ」


「先生が言ってたでしょ、まったく……」


 ラムは自身の額を手で覆うと深い溜息を吐く。


「君のことだから寝てて聞いてなかったんだろう」


「だって座学(ざがく)ってつまんねえもん……」


 槍士のトリィが指摘すると、ティガは()ねたような表情をする。


「俺も実戦の方が好きだから分かるけどな、敵は手の内を丁寧に教えちゃくんないぞ」


「村の外にまで来て説教は勘弁してほしいっすよ」


「アンタねぇ……」


 単なる勉強嫌いだったらしい。


「それで魔術師との戦闘についてだが」


「は、はいっ」


 ラムは姿勢を正すと、呆れた表情を真面目な物に切り替える。


 そんな大真面目に聞かれる話でも無いんだが、まあいいか。


「魔術を発動させる前に倒す、これだけだ」


 単純かつ明快、対魔術師においてはこれ以上無い手段だ。


「……え?あの」


「成る程!やられる前にやれって事っすね!」


「そういう事だな」


「……ええ?」


 全く理解出来ないが、否定する事も出来ない。


 そんな感じの表情をしているラム。


「……他には無いんですか?」


「相手より強力な魔術を撃って丸ごと吹き飛ばすってのもあるぞ、もっともこれは魔術師限定だけどな」


 ブライトも対人間相手には、この戦法をよく使ってた。


 まああの化物人間魔力庫は大抵の相手に対してそういった結果になってしまうんだが、奴を相手にする時は雨のように降ってくる魔術が本当に厄介だった。


「…………」


「…………」


「つまりは素早く近づいて思いっきりぶっ放すって事っすね!」


「そういう事だな」


 素直というか単純というか、こういった手合いは素直に言う事を聞いてくれるし教えるのが楽だ。


 ただ疑う事を知らない性格は罠にも引っ掛かり易くなるが、制御役が二人居るならまあ心配は要らないだろう。


「そんな簡単に言われても……」


「簡単に出来るようにするんだよ」


 出来ないなら出来るまでやる、それでも駄目ならそれを埋める何かを探す。


 手札の数が多ければ多い程、戦いは有利になり対応できる事が増える。


「ラム、最も早く最も消費が少ない魔術群はなんだ?」


 せっかく出会った新米冒険者三人組の為だ。


 ここは騎士団時代にも訓練生へ教えてた、よく分かる魔術講座をというのをしてやるとしよう。


「えっと……、初級魔術です」


「そうだな、じゃあ中級や上級とは何が違うか分かるか?」


 ラムは真剣な顔付きになり、考えるように口元に手を当てる。


「威力や消費される魔力量、魔術陣の構成、詠唱の長さです」


「正解だ、よく勉強してるな」


「ありがとうございます」


 (よど)み無く答えられるのは、日頃の予習や復習を欠かしていないからなんだろう。


 こういう真面目な人材はどこの現場でも役に立つし、何より信用できる。


「その中でも特に違うのは消費と構成だな」


 威力に関しては魔術によって様々あるし、詠唱なんて破棄してしまえば素早く撃てる。


「魔術は初級中級上級最上級と分けられてるが、トリィなんでか知ってるか?」


「術者の安全の為に七賢者が制定したと学びました、自身の魔力量を超える魔術を発動すれば、命を落とす危険性があるからだと」


「そうだな、もし魔力を使い切って生命力まで(けず)れたらその場から動けなくなっちまう」


 魔力を使い切ったからってすぐに死ぬことは無い、たが戦場でそんな事が起こればどうなるかという想像は難しくないだろう。


 特に経験が浅いと自分の魔力量を把握(はあく)してない場合も多く、騎士団時代にも新人が戦場で動けなくなるという事態がよくあった。


「だから七賢者達は魔術の階級を消費量で分けて、管理がしやすくなるようにしたってわけだ」


「それは村の先生に教えてもらいましたので分かります、ですがそれとさっきの話になんの関係が?」


 トリィは一見冷静なようで意外と事を急ぐ性格らしい。


「まあ聞け、こっから対魔術師戦に関する話に繋がるから」


「分かりました……」


 会ったばかりってのもあるがどうにも信用されてないらしい、ここは一つ例を見せてやるのが一番早いか。


 黄色く輝く魔術陣を一つ空中に描き、起動をせずにそのまま三人組の目の前に移動させる。


「ティガ、これがなんの魔術か分かるか?」


「へ?俺!?」


 まさか話題を振られると思っていなかったのか、大きく驚くティガ。


「えーっと……、あっ、黄色だから雷属性の魔術だ!」


「まあ、正解だな」


 うん、俺の問題の出し方が悪かったなこれは。


「よーし!流石にこれは俺でも分かりますよ」


 さっきまで自身無さそうな顔してたのが、正解して急に調子に乗り出した。


「ラム、魔術の名称は分かるか?」


 呆れ顔のラムに質問を少し変えて投げてみる。


「雷属性の初級魔術、『サンダーボール』ですよね」


「正解だ、じゃあこれは何か分かるかトリィ」


 もう一つ魔術陣を描き、同じように三人の前へ移動させる。


「……!分かりません、このような魔術学んだことが無い」


「私も始めてみました……」


「おいおい優等生お二人さん、これは雷属性の魔術だろ」


 どうしてかティガが二人の事を(あお)りだした。


「そんな事分かってんのよバカ」


「……」


 ラムは一応の返事をするが、視線は魔術陣の方を向いたままだ。


 トリィに関しては思考の海の中にいるのか反応すらしない。


「分かりました」


「はい、トリィくん」


「正解はこの魔術は存在しないです、初級魔術に関しての書は異国の物も含めて(そろ)えていますがこれは見たことがありません」


「半分正解ってとこだな」


 真面目だとは思ってたが、各地の魔術書を揃えるなんて随分と勉強熱心らしい。


「それは一体どういう……」


 それを教えるために二つの魔術陣を同時に起動させる。


「どちらも『サンダーボール』、でも魔術陣は……!」


 魔術陣から発生したのはどちらも雷の球、色や形も全く同じ物だ。


「存在しなかった魔術って定義なら大正解、だがこれはコイツと同じ『サンダーボール』だ、威力や速度はちょいと上だけどな」


「……!魔術を作ったって事ですか……!?」


「これはそんな大層なもんじゃないさ、俺が使いやすいように魔術陣を組み直しただけだよ」


「……」


 トリィくんが目を見開いたまま言葉を無くしてしまった。


「でも、先生は魔術陣に手を加えちゃ駄目だって言ってましたよ……?」


 習いたての頃によく言われるやつだ、やっぱり何処も一緒なんだな。


「まあな、調整に失敗すると消費がバカでかくなったりするし、自分に被害が及ぶ可能性もある」


 俺も魔術を改造して試した時に、たまに滅茶苦茶持ってかれることもある。


「やっぱり危険なんですよね」


「他にもやるなって言われてる理由はあるけどな、俺達にはあんま関係無い話だが」


「ふーん、でもリュートさんは無事なんだしやっても良さそうだけどなー」


「それはリュートさんが凄腕の魔術師だからよ、私達が下手にやったらそのまま倒れちゃうかも」


「俺も流石に安全な所を確保してからしゃないとやらないけどな」


 基本的に被害が広がらない空間でやるし、応急魔力補給薬を大量に準備してもしもに備えてる。


「それで対魔術師戦の対策だが、つまりはそれ用に魔術を使いやすく改造しちまえば良い」


 より速く、より強く、より正確に。


 それを目指して改良を続けるのは割と楽しい。


 もし俺の趣味はなんだと聞かれたら、これがそうだと言えるぐらいには高頻度(こうひんど)で遊んでいる。


「まあ色々と試してみな、詰まったら仲間に相談すりゃいいし、暇な時だったら俺も教えてやるよ」


「ありがとうございます!」


「ありがとうございます、……良ければさっそく今日の夜から実戦を交えて教えてくれませんか?」


「意外と貪欲(どんよく)なんだな、良いぞ」


 トリィと話してるとブライトを思い出すな、冷静に見えて向上心の塊って所がそっくりだ。


「あっトリィせこいぞ自分だけ!俺は剣を教えて欲しいっす!」


「折角の機会だ、三人纏めて教えてやるよ」


「本当ですか!ありがとうございます!」


「よっしゃあー!」


 

『空間魔術』

とある魔導士が発明した究極の魔術

極め物が扱えば一つの世界を作り出せるほどの魔術であり、一部の人間以外には術を明かされていない。


収納魔導具(ボクスマギア)

空間魔術を用いて作られた人類の叡智(えいち)と呼べるほどの代物。

小さな異世界を作り出し、そこに道具を収納することが出来る。

これが発明されたことにより、世界の利便性が3段階ほど上昇したと言われている。

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