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騎士をクビ(追放)になった俺、やることを探す  作者: ふみぃ


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第四話『早すぎる再開』

 

 騎士の見回りが最も多い時間帯である昼の街中を、ここに配属された知り合いの騎士がいないか探していたが。


「全員鎧着込んでて分かんねえ」


 騎士は身分を特定されて襲撃(しゅうげき)されないように、(ほとん)どが支給された同じ鎧を身につけるって事を失念(しつねん)していた。


 強さに自身がある奴や、家柄(いえがら)のでかい奴は特注の鎧を作ってたりはするが。


「同期で作ってた奴なんてブライトしか知らねえしなぁ」


 白を基調としてあちこちに金の装飾が施された、とにかく目立つ鎧、あそこにいる白い騎士鎧が一番近いだろうか。


「ってマジでブライトじゃねえか……!」


 声が聞こえたのか白鎧、ブライトが振り返り近づいてきた。


「リュートじゃないか、どうしてここに?」


「調べ物をな、お前こそなんでここにいるんだよ」


「僕も似たようなものだよ、それにしても、再開がこんなに早く来るとは思わなかったな」


「俺は今生の別れだと思ってたんだけどな」


「はは、冷たいなあ」


 ブライトの落ち着いた様子からして、急ぎの仕事ってわけでも無さそうだ。


「ブライト、お前これから暇か?」


「ご飯を食べるくらいの時間しか作ってないけど」


 現役騎士かつ正義感の塊の友人、非常に好都合だ。


「んじゃちょっと付き合え」


 ――


「君がこういうお洒落な店を知ってるだなんて、少し以外だな」


「前に来たとき隊長が教えてくれたんだよ」


「そうなんだ、流石はバーンズ隊長」


 ブライトを連れ、大通りから少し入った所にある店にやって来た。


 従業員に個室を案内してもらい、対面の席に座る。


「こちらお水です、こちら本日のお品書きです」


「ありがとう、じゃあこの日替わり定食ってやつを2人分貰えるか?」


「かしこまりました」


 従業員は頭を小さく下げると個室の外へ出て行った。


「……この街の騎士、お前はどう思う」


「至って真面目だと思うよ、まだ隊長格も含めて数えられる程度にしか接していないけどね」


 何の任務で来てるかは知らないが、この口振りからして(しばら)くはこの街にいるんだろう。


「ブライト、お前に調べて欲しい事がある」


「一応僕にも任務があるんだけど」


「まあ聞けよ、もしかしたらその任務にも関係があるかもしれない事だ」


 実力者のブライトが選ばれる任務だ、それなりに重要な事が任せられている(はず)


「この街の騎士が任務中に行方不明になったそうだ」


「行方不明……」


 それ自体は珍しいことでは無い、起きないことが一番だがどうしても事故は起きるし防ぎようがない。


「ここからが本題だ、なんでもその騎士の家族に、行方不明時の支援金が払われてないらしい」


「そんなことが……?」


「信じられないよな、あの金にうるさい所がんなことやるかって」


 ここの連中は知らないが、向こうの会計は経費に関して滅茶苦茶うるさかった。


「俺はこの未払いどうこうは他にも起きてると思ってる」


「……」


 ブライトは何かを考えるように目を閉じる。


「僕がここに来たのは用途不明金の調査の為なんだ」


「てことは」


「まだ確信は出来ないけど、調査すべき事は増えたかな」


 単なる横領(おうりょう)私腹(しふく)()やしたか、どこかに横流しでもしたか、なんにせよ騎士団の信用に関わることだ。


 台車を押す音が聞こえ俺とブライトが黙ると扉を三回叩かれる。


「料理をお持ちしました」


「入って来てくれ」


「失礼いたします」


 幾つかの半円の金属(ふた)を乗せた台車を押して、二人の女性従業員が部屋に入って来た。


「こちら、季節の魚定食です」


 蓋を外し目の前に並べられていく料理達からは、見事な香りが(ただよ)っている。


「おいしそうだね」


「そうだな」


「ありがとうございます、それではごゆっくりどうぞ」


 料理を並べ終えた従業員たちが笑顔で頭を下げ部屋から出て行った。


 ———


「また来てくださいね……!」


「ああ」


 店を後にし適当な椅子に座る。


「まさか君に食事を(おご)ってもらう日が来るなんてね」


「そりゃお前にそんな機会は(おとず)れないだろうよ」


 大貴族ディアトリマ家の次男だ、小遣いも山程貰ってることだろう。


「……僕の方でも色々と調べてみるよ」


「ああ、よろしくな」


 ブライトがいれば多少の事があっても力押し出来る、自分の件で頼りたく無いがそれ以外なら話は別だ。

 ——


 ブライトと別れトコヤミソウを回収するために森の中を歩いていると。

 

 騎士の一団と、手枷(てかせ)(くさり)を繋がれた三人の男の後ろ姿が見えた。


「なんだありゃ」


 あいつらが進む方向には洞窟(どうくつ)しかない(はず)だが、収監所(しゅうかんじょ)でもあるんだろうか。


(こんな森の中に作る訳ないわな)


 気づかれないように木の陰に隠れながら後を付けて行くと、騎士達は洞窟の中へと入って行ってしまった。


「騎士団の連中が何かしてるってのは間違いなさそうだな……」


 腕輪から灰銀の(よろい)を召喚し全身に(まと)い、黒の片刃剣(かたじんけん)と青の紋章盾(もんしょうたて)を装備し洞窟内に突入する。


 道を(ふさ)ぐスライムを切り裂きながら洞窟内を進み、トコヤミソウが咲く洞窟湖前で立ち止まり中を覗き込むと、手枷(てかせ)を繋がれた男達が水際(みずぎわ)に立たされ騎士に剣を突きつけられていた。


 魔術を三つ準備し、会話に耳を()ませる。


「お前らもクビ突っ込まなきゃ長生きできたのにな」


「何回も警告(けいこく)してやったんだ、後悔しても遅いぞ」


 騎士とは思えない発言に同調するように、下卑(げび)た笑いが洞窟内に響く。


「トレント隊長をどこへやった!」


「こんな事をしてただで済むと思っているのか!」


 手枷(てかせ)を付けられた方も騎士、しかもトレントの部下らしい。


「トレント?ああ、アイツならお前らの後ろだよ」


「なっ……!」


「貴様ら!」


 後ろ、つまり騎士トレントは死の水に落とされたということだ。


(そういうことか)


「会いたいなら合わせてやるよ」


「や、やめろ!」


 準備していた三つの魔術を起動し走り出す。


 闇の魔力が全身を包み気配と音を消し、地面から岩の塊が千切れるように浮かびあがり、大きな手の形となり騎士達の方へ飛んでいく。


「餌の時間だ!」


 騎士が動けない男達を湖へ蹴り飛ばすが、高速で飛んで行った岩の手が水面に着く前に身体を掴み運んでくる。


「た、助かったのか……?」


「闇の塊が突っ込んで来るぞ!迎え撃て」


 闇の中に隠していた雷の槍を射出し、飛んできた魔術を打ち消し騎士達を貫かせる。


「ぐあっ!」


「がっ!」


 身に纏った闇の魔力を(ほど)き、岩の手を引き寄せ着地させる。


「すまない、助かった」


「ああ、アンタらも騎士で良いんだよな?」


「そうだ、私達はある調査をしていたんだが……」


「おい!」


 別の男が状況の説明を止める、当然の反応だが今はそんなことを気にしてる場合じゃない。


「さっきトレントの話をしてたよな?」


 気絶し倒れた騎士達に魔術の電気を流し、強制的に目覚めさせる。


「どうしてそれを……」


「聞こえたからな、それにトレントの調査は俺もしてるんだよ」


「どういうことだ……?」


 男達の目が懐疑的(かいぎてき)な物に変わる。


「家族と知り合ってな、まあ勝手に世話焼いてるだけさ」


「……」


 動き出した騎士の胴を()みつけ行動を(ふう)じる。


「ぐっ……、お前灰銀か……!」


 どうやら俺を知っているらしい、だが今はそんなのどうでもいい事だ。


「知ってること洗いざらい吐いてもらうぞ、その為に致命傷(ちめいしょう)外してんだ」


 腰に付けた鍵束(かぎたば)(うば)い取り、一人の手枷を外し持たせておく。


「一個づつ聞いていこうか、トレントを殺した理由はなんだ」


 剣を(さや)から引き抜き、切っ先を兜の視界確保用に開けられた目の部分に引っ掛け外させる。


「……っ!」


 騎士は歯を食いしばったまま、答えを返さない。


「まだ状況が分かってないらしいな」


 切っ先を鎧の隙間(すきま)に突き刺す。


「ぐあああっ!わかっ、分かった!」


 剣を引き抜き治癒術(ちゆじゅつ)(ほどこ)し、今出来た傷だけを(ふさ)ぐ。


「奴に秘密を知られたんだ……」


 知られてはならない秘密、少なくとも横領(おうりょう)がバレたってだけじゃ殺そうとはしない(はず)だ。


「その秘密ってのはなんだ」


「言えない!言ったら殺される!」


 騎士の(ひたい)に切っ先を当て出血させる。


「お前らを(まと)めてる奴は誰だ」


駄目(だめ)だ!言えない!」


 騎士は目を閉じて口を(かた)(むす)ぶ。


「……ちっ、場所を変えるか、外した手枷(てかせ)をこいつらにつけてくれ」


「わ、わかった」


 剣を(さや)に納めてから腕輪からポーションを幾つか取り出し、倒れてる騎士達に()け目を()まさせる。


「信頼出来る騎士はいるか?なるべく立場が上の(やつ)で」


「それならラルバ隊長がいる、最近配属されたがあの方にまで手は(およ)んでいないだろう」


「そりゃ上々、戻り次第呼び出してくれ」


 そいつがこっち側である事を願いながら、ついで依頼用のトコヤミソウを回収しておく。


 不意に湖を見ると、どこか違和感がある事に気づいた。


「こんな水面高かったっけな……」


「水面?」


「いや、なんか(みょう)な感じがすんなって」


 よく見れば水面が動いているように見える、川は流れてきてるがここはその位置から離れた場所にあり、そもそも満ち引きがない洞窟湖だ。


『ライト・ボール』


 光属性の魔術を起動し小さな光球を発生させ水面の近くへ移動させると、独特(どくとく)光沢(こうたく)が発生した。


「そういや餌の時間だって言ってたよな……、まさか」


「一体どうしたんだ」


「馬鹿!近づきすぎんな!」


「うわっ!」


 男の肩を(つか)んで引き寄せた瞬間(しゅんかん)(のぞ)き込んでいた頭の位置に青い水柱(みずばしら)が飛び出した。


「な、なんだ!」


(みずうみ)じゃなくてスライムじゃねえか!走れ!」


 足元の覚束(おぼつか)ない騎士を引っ張り出口を目指して走りながら、腕輪から剣を五本召喚する。


「お前らこれ使え!」


「た、助かる!」


 剣を五人それぞれに投げ渡す。


道理(どうり)でスライムしか出てこない訳だ!」


 例えばここにある水源(すいげん)が死の水だけだったなら、草食や弱い魔物が身を守る為や、逆に捕食者が狩りに活用していただろう。


 ただあの死の湖全体がスライムだったら話は別だ、休む為に寝ようもんなら青い毛布に包まれて二度と目覚める事は無いだろう。


「たかがスライムから逃げるなど!それでも騎士か!」


 隣を走る騎士がため息が出そうなほどの戯言(たわごと)(しゃべ)り始めた。


「死の水と同等の強酸スライムはたかがじゃないんだよ!」


 スライムは基本的に触れた者を溶かす性質を持っているが、それがどれだけ強くても数秒で骨付き肉が溶けきる事は無い。


「でっか……」


 ふと振り返ると、小山程はありそうな巨大スライムが岸に身を乗り出していた。


 その中では巨大な魔結石が一緒に引き上げられている。


「あのバカでかいの核かよ……!」


「なんなんだアレは!」


「さっきからスライムだって言ってんだろ!」


「違う!何故スライムがああなっているのか聞いているんだ!」


「俺が知るか!とにかく出口目指して走れ!」


 何故生まれたとかどうしてでかいのかなんてこっちが知りたいくらいだ。


「出口が(ふさ)がれるぞ!」


 スライムの身体が入り口を塞ごうと幾つも伸びていく。


「『ダーク・ソード』!」


 魔術を起動し闇の魔力剣を五本展開させる。


「『断ち切れ』!」


 指示を飛ばすと闇の剣がスライムへと飛翔し、道を塞ごうと伸びるスライムに突き刺さり切り裂いていく。


「戻らない内に行くぞ!」


 細かく飛び散ったスライムの残骸(ざんがい)を飛び越え細い道を走る。


「お前ら水以外の属性使えるか!」


「ああ!だが魔力が(ほとん)ど残ってない!」


「それが聞ければ十分だ!」


 立ち塞がる小型のスライムを剣で切り裂き、魔力回復用の薬を腕輪から召喚し投げ渡す。


「これ飲んだら魔術の準備しといてくれ、中級以上な!」


「分かった!」


 軽く振り返ればスライムの身体が洞窟を埋め尽くしているのが見える、幸い速度はそれほどでもなく魔術を展開する余裕は十分にありそうだ。


「でかくなっても生態(せいたい)は変わらないか……」


 スライムが移動する際、その方向に中の核がまず動く。


 つまりその方向に居れば弱点が近づき攻撃がしやすくなる、あの巨大スライムも例に()れずそこは同じなようだ。


 とはいえ生半可な魔術ではあの巨体を止める事は出来ても、打ち倒すには(いた)らないだろう。


「出口が見えたぞ!」


「洞窟から出たらすぐに魔術の発射準備!スライムが顔出した瞬間にぶち込んでくれ!」


「分かった!」


「了解!」


 片刃剣(かたじんけん)を腕輪にしまい、新たに突き刺すことに特化した槍を召喚し闇の属性付与(ふよ)をする。


 洞窟を飛び出した所で騎士を脇に放り、(くら)い闇を(まと)った槍を投げる。


「『スピア・フォース』」


 放られた槍は穂先(ほさき)が洞窟の方へ向くと空中で制止し、黒く巨大な三角槍へと姿が変わる。


 その瞬間、スライムの塊が洞窟から溢れ出した。


「来たぞ!『スパーク・スフィア』!」


「『フレア・バーナー』!」


 巨大な雷球が衝突しスライムの身体を分解し、白色の熱線(ねっせん)が触れたそばから蒸発(じょうはつ)させていくが、やはり倒すまでには(いた)らない。


「こいつ消えでもすぐに再生していくぞ!」


 恐らくスライムの身体は洞窟内の水分全てといっていいだろう、つまりいくら消滅させようとも無限に再生する。


「動き止めてくれりゃ十分だ」


 このスライムの分厚い身体を突破するには膨大(ぼうだい)な魔力か、圧倒的な貫通力がいる。


「『スピア・ストライク』」


 穂先(ほさき)石突(いしづき)を挟むようにして複数の魔法陣が現れ、右拳の前に小型の魔法陣を作り出す。


「ぶち抜け!」


 石突前の魔法陣に右拳を叩きつける。


 魔法陣が輝きが放つと闇の大槍が高速で射出され、魔法陣を突き破り吸収しながらさらに加速していく。


 (またた)く間にスライムへと到達した大槍は、その身体を食い破りながら速度を落とす事なく貫き進み続ける。


 核に突き刺さった大槍から闇が(あふ)れ出し、巨大な核を呑み込む。


 絶え間なく溢れ出す闇の奔流(ほんりゅう)がスライムの魔力を(うば)い、喰らいながらさらに増大していく。


「お前ら高い所に登れ!」


 脇に捨てていた騎士を拾い木の上に飛び乗ると、他の騎士達も後に続き高い所に登る。 


 そして、スライムを全て飲み込んだ闇から大量の水が溢れ出し、洪水のように大地を呑み込んだ。


「あ、危なかった……」


 遠くの方で魔物が流されているのが見えるが、予想していた通り身体を溶かされてはいないようだ。


 水嵩(みずかさ)の減った大地に飛び降りるが、やはり物を溶かすような性質は消えている。


「おい何してるんだ!」


「死ぬ気か!」


 心配はありがたいがすぐに治せるように保険は掛けてある、そんなことよりもだ。


「洞窟に死の水があるって言われるようになったのはいつからだ?」


 完全に水が流れなくなった事を確認し、肥大化(ひだいか)した闇を消し去ると、穂先(ほさき)だけとなった槍が突き刺さった巨大な魔石が地面に落下した。


「これはもう駄目だな」


 穂先に()れると粉々に(くず)れてしまった。


「すごいな、これほどの魔石は見たことが無いぞ」


 魔石の表面に手の平を当てると、様々な魔力の波動(はどう)を感じ取れる。


「天然のを見るのはそう無いだろうな、これ違うが」


「どういう意味だ……?」


 騎士は要領を得ないといった表情をしている。


「そのまんまの意味だよ、これは人の手で作り出されたもんだ」


「一体どうやって」


「複数の魔石を無理やり(つな)ぎ合わせるんだ」


 知り合いによればこれは悪質な魔道具屋が良くやる手法であり、誤ってそれを購入し突然した結果、故障するなどの被害を受けたという通報もあった。


「問題は何が目的でこれを作ったかだが、それは帰ってから聞かせて貰うか」


 地面に転がった騎士達に目を向けると、顔を逸らし舌打(したう)ちをされた。


「余裕なもんだな」

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