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脈を打つ温かな卵
金持ちの少年は、唇を噛みしめる。
「……覚えておけ」
低く、憎々しげな声。
そう言い残し、彼は背を向けて去っていった。
カイが、今にも追いかけそうになる。
「カイ」
レンが呼ぶ。
カイは、深く息を吐いた。
「……ちっ」
レンの手の中で、卵が、ほんのり温かい。
「これ……」
「大切にしなさい」
学園長は、優しく言った。
「それは、 君が誰かを想像しきった証だ」
そして、二人を見て微笑む。
「良いバディだね。 君たちは」
カイは照れくさそうに、頭をかいた。
「……ありがとうございます」
レンは、卵を胸に抱いた。
一つの小さな光が、これからどんな未来を連れてくるのか。
それを知る者は、まだ誰もいない。
寮に戻った頃には、空はすっかり暗くなっていた。
レンは、机の上を丁寧に片づけ、あの卵をそっと置く。
淡い光。規則正しい鼓動のような明滅。
「……割れたり、しないよな」
「大丈夫だよ」
カイはベッドに腰掛け、剣を壁に立てかけながら言う。
「てか敬語やめてもいいじゃないか?
俺たちもう親しいんだしさ」
「、、、わかった」
そして卵を見て、少しだけ声を落とす。
「なんか、 安心する光してる」
レンは、その言葉にうなずいた。
「うん…… 怖くない」
二人はしばらく、何も言わずに卵を眺めていた。




