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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第79話:その魔王は絶対の暴力を鎖に繋ぐ。~先代魔王の傀儡化という抑止力~

【前回までのあらすじ】

 ガスピ湖畔での採掘作業の裏で、マクマリスは白竜シャヴォンヌから衝撃の事実を告げられる。なんと、彼が経験した「敗北の歴史」のさらに前――彼自身も記憶を失っている『0周目』の世界が存在し、今回が「三回目のループ」だというのだ!


 過去の記憶が欠落しているにもかかわらず、四天王の特性やオウカの姫・暁月への不自然な執着を抱いていた理由が『魂の記憶』だと悟ったマクマリス。


 彼はシャヴォンヌが語る「未来を分ける最大の不確定要素」、すなわちロイの成長にすべてを懸けるべく、「四頭のドラゴンをすべて使いこなせ」という前代未聞の無茶振りと共に、彼を剣聖・源流の待つオウカへと修行に向かわせるのだった――。

 アンドレア帝国の広大な船着場には、ガスピ湖底から採掘された青白く光る特殊鉱石を大量に積み込んだ魔導飛行艇『アルゴス』が停泊していた。

 エスペル島への帰還に向けた準備が慌ただしく進められている。


 タラップの近くでアルフィリオンの到着を待っていたマクマリスのもとに、ドワーフのボス・ヘギルが、連邦の秘書官ララノアを伴ってやってきた。


 マクマリスは腕を組んだまま、二人を一瞥する。

「二人して、どうした? さっそく魔導鎧(パワードスーツ)の吉報でも持ってきたか?」


「そんなことあるわけないだろ」

 ヘギルが呆れたように葉巻を噛む。

「こっちはついさっき、ララノアと合流したばかりだぞ。設計図引くのだって時間がかかるんだ」


「なら、何しに来た? 見送る暇があったら、さっさと研究を進めろ」

「それなんだけどよ、俺たちもエスペル島に行ってもいいか?」


 マクマリスが怪訝そうに眉をひそめた。

「なぜだ?」


「ガイアス王国は、このアルゴスを作ったエスペル島屈指の先進国よ」

 ララノアが眼鏡の位置を直し、理知的な瞳で答えた。

「彼らの魔導工学の知識は連邦にもないものがあるわ。魔導鎧(パワードスーツ)の出力制御について、何か有益な助言をもらえたらと考えたの」


「……よかろう。ただし、船の中でも手を休めず研究を進めろ」


「へいへい、仰せのままに、だ」

 ヘギルが軽く手を挙げて応じる。

「で、魔王殿はここで誰を待ってたんだ?」


「アルフィリオンだ。奴が来れば、すぐに出発できる」


「ララノア、お前、アルフィリオンとは何で一緒に来なかったんだ?」

 ヘギルの問いに、ララノアは肩をすくめた。

「一緒に水の都には帰ったけど、アルフィリオンは『準備がある』と一度ネクロゴンドに戻ったから、その後のことは知らないわ」


「そうか……」

 マクマリスが小さく頷くと、ヘギルが胡散臭そうな顔をした。

「なんで、あの陰気な死霊術師をエスペル島に連れていくんだ?」


「魔界にある私の研究所で、アビス・ゴーレムに使われている『コアの理論』を教えてもらうことになっている」


「アビス・ゴーレムって、死体をつぎはぎした気持ち悪いやつか。あんなのの、どこがいいんだ? 俺の作ったカラクリ兵の方がよっぽど綺麗に動くぞ」


「あんな醜悪なものに使うつもりはない。だが、あのコアの技術は、アンデッド以上に『生前の力』を完全に引き出せる。……大きな戦力になる」


「一体何を起動させるつもり?」

 ララノアが鋭く問い詰めた。


 マクマリスは、周囲に人がいないことを確認し、声を潜めて告げた。

「先代魔王、ガングダードだ」


「っ!?」

 ヘギルが葉巻を落としそうになり、ララノアも息を呑んだ。

 彼らも知っている。三百年前、エスペル島を恐怖に陥れた最強の破壊者の名を。


 マクマリスの口角が、妖しく吊り上がる。

「どうだ、大きな戦力だろう?」


「魔王が、先代の魔王を使役するのか……」

 ララノアが戦慄し、ヘギルも顔を引き攣らせた。

「末恐ろしいな、あんたって奴は……」


「情けない話だが、現在の私の魔界での立場は微妙でな」

 マクマリスは自嘲気味に息を吐いた。

「前の世界では、機械生命体が来る直前に、反乱分子どもにクーデターを起こされたのだ」


「魔界も権力争いがご盛んなのかよ」

「力無き者には従わないのが、魔族の流儀でな」


「なるほど……圧倒的な『暴力の象徴』があれば、反乱を起こす気もなくなる。抑止力としてのガングダードね」

 ララノアがすぐにその意図を理解した。


「そうだ。大一番が迫っている中、身内の争いで無駄に戦力を減らすのは避けたいからな」

 マクマリスは表情を引き締め、ヘギルに向き直った。

「そういえば、ヘギル。……悪い知らせがある」


「今度はなんだよ……」

 ヘギルの顔がさらに引き攣る。


「貴様の読みが当たった。機械生命体は、追い詰められると『強制的に進化』することが分かった」


「……やっぱりか」

 ヘギルが重々しく頷く。


「今の話、どういうこと?」

 話が見えないララノアが尋ねると、ヘギルが忌々(いまいま)しげに説明した。


「どうやっているのかは分からんが、あいつらはこっちの攻撃パターンに応じてプログラムをアップデートし、それぞれの個体に無線のようなもので瞬時に送信している可能性があってな……」


「我々はそれを『進化』と呼んでいる」

 マクマリスが補足する。


「会議で話していた機能よね。システムだけならまだしも、外見の装甲まで変化させるなんて、とんでもない科学力よ」


「ああ。魔王殿が未来から持ってきてくれた個体を解体してみたが、奴らの技術は俺らの何十年、いや何百年も先を行ってやがる」

 ドワーフの天才職人をして、そこまで言わしめるほどの技術格差。

【次回の予告】

「敵の『強制進化』を止める方法とは!?」


 天才ドワーフ・ヘギルと連邦の秘書官ララノア、そしてマクマリスの頭脳が結集し、機械生命体の恐るべき「強制進化」への対抗策が導き出された!


 敵が情報を共有する「中央集権型のネットワーク」であるならば、深海にある母船の『頭脳マザーコンピューター』を破壊すれば進化は止まる!


 希望の光が見え始めた矢先、エスペル島へ向かう飛行艇『アルゴス』に、相変わらず空気を読まない死霊術師アルフィリオンが合流する。


 人類の希望と、各陣営の腹の探り合いを乗せ、鋼の船がいよいよ空へ飛び立つ!


 進化の弱点と、空をゆくアルゴス。

 第80話は、明日の21時40分更新です!


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