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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第76話:その魔王は深淵への反攻を期す。~敗北の歴史を知る白き翼~

【前回までのあらすじ】

 帝都郊外の『紅葉の森』にて、氷の女王ディネルースと炎の大魔導師ザルティムによる規格外の魔法演習が勃発!


 ディネルースの無慈悲な極大魔法『絶対零度アブソリュート・ゼロ』に対し、ザルティムは失われた超常スキル『竜語詠唱ドラゴニック・チャント』で対抗し、間一髪でその猛威を凌ぎ切る。しかし、涼しい顔を見せた老魔導師の腕には、密かに深い凍傷が刻まれていた。


 緊迫した空気が森に漂う中、上空に現れたのは見事に『真の竜契約』を完了させたロイと白竜シャヴォンヌの姿だった。希望を告げる白き翼の帰還に、長年エレノアを想い続けてきたザルティムは静かに感動の涙を流すのだった――。

 吹きすさぶ潮風が、荒々しく波を打ち付ける海岸線。

 空を覆う鈍色の雲の下、マクマリス、ヘギル、そして帝国四天王・隻眼のガエサルが集結していた。


「ティアマト、放て!」

 ガエサルの鋭い号令が響く。

 海上に浮かぶ巨大な海竜ティアマトが、大きく顎門(あぎと)を開いた。


 バリバリバリッ!!


 空気を切り裂く轟音と共に、ティアマトの口から青白い雷のブレスが放たれ、眼前の海面へと叩き込まれた。数万ボルトの電流が海水を沸騰させ、凄まじい水柱と蒸気が巻き上がる。


「よし、計測完了! 電極面積、海水の抵抗値、バッチリとデータ取れたぞ! ガエサル、降りてきてくれ!」

 波打ち際に設置した大掛かりな魔導計器を見つめながら、ヘギルが満足げに叫んだ。


 それは、海中に潜む機械生命体を一網打尽にするための、雷属性魔法の伝導率を測る実地テストだった。


 ガエサルがティアマトと共に砂浜に舞い降りると、マクマリスが腕を組んだまま尋ねた。

「どうだ。計測結果は?」


「ああ。分かっていたことだが、やはりティアマトの威力でも、海面から直接ブレスを吐くのは意味がないな。エネルギーが海全体に分散しちまう。敵さんがどのくらいの深さにおねんねしているかは分からんが、直撃させなきゃ水晶の装甲は抜けねえ」

 ヘギルがゴーグルを額に押し上げ、残念そうに肩をすくめた。


「ブレス一つで片付いてしまっては、面白くない」

 ガエサルが隻眼を細め、武者震いするように笑みを浮かべる。


「いや、面白い、つまらないの話じゃないだろ。命懸けなんだぞ」

 ヘギルが呆れたように突っ込んだ。


「もともと分かっていたことだ」

 マクマリスは波立つ海を見つめたまま、冷静に告げた。

「これで、我々が海の底へ向かうための『潜水艇』と、『新型兵器』の必要性がはっきりした」


「おう。武器の開発は部下たちに指示出し済みよ。さっそく今日から、鉄鋼共和国の全ラインを回して生産を始めてるはずだ。……あとは、あの重たい魔導鎧(パワードスーツ)をどうやって実用化するかだな」


「ララノアは一度、ディネルースらと共に水の都に帰ると言っていた。戻り次第、二人で研究に取りかかれ。魔界からも、魔導工学に長けた者を早めに送るように手配する」


「へいへい、ドワーフ使いが荒いことで……」

 ヘギルがぼやいた、その最中だった。

 彼らの頭上に、雲を割って巨大な影が差した。


 バサァッ……!


 強烈な風圧と共に、真珠のように輝く鱗を持った白竜シャヴォンヌが、彼らの上空を低空飛行で駆け抜けた。

 その背では、ロイが満面の笑みで身を乗り出し、大きく手を振っている。


「やりやがったな、あいつ! ガハハ、大したもんだ!」

 ヘギルが両手を叩いて快哉(かいさい)を叫ぶ。


 マクマリスも、フッと口角を上げた。

「よし。……予定通りだ」


 白竜の軌跡を追うように、カーラの乗るワイバーンが滑空してきて、ティアマトの隣の砂浜に降り立った。


「早かったな。試練はどうだった?」

 ガエサルがワイバーンから飛び降りたカーラに尋ねる。


 カーラはやれやれといった様子で肩をすくめた。

「それが……今回はやっていないのよ。顔パス」


「顔パス? 馬鹿な。そんなことがあるわけがない」

 ガエサルが驚いて目を見開く。

「誇り高き古竜が、人間の魂の色を見ずに背中を許すなど、あり得ん」


「私もそう思ったんだけどね。……シャヴォンヌは、『あらゆる世界の自分と記憶を共有してる』んだってさ」

「記憶を共有?」

「ええ。他の世界で契約していたロイ王子と、魂の色が同じだから、二度も試練は必要ないって言ってたわ」


 その会話を小耳に挟んだマクマリスが、思わず歩み寄った。

「記憶を共有しているだと!? あの竜がか?」


「ええ。初めて会うはずのロイ王子のことを、完全に知っている風だったのよ。魔王、あんたの言う『別の世界線の未来』ってやつのこと、シャヴォンヌも知ってたわ」


(全ての世界線の記憶を有する竜……!)

 マクマリスは、青空を優雅に旋回する白竜を見上げ、内心で戦慄した。

(あの竜は、私と同じで『敗北の歴史』を知っているというのか。……いや、だからこそロイを受け入れた。あの白竜もまた、未来を変える意志を持っているのだ)


 カーラがガエサルに向き直り、声を潜めて報告を続けた。

「それにね、仮に連邦との戦争が再開したとしても、ロイ王子があっち側につくことはなさそうよ。シャヴォンヌが保証してくれた」


「そうか。なら、安心して帝国のドラゴンライダーとしてのノウハウを叩き込めるな。……ん? だが、シャヴォンヌはどうしてわざわざその話を? お前が尋ねたのか?」


「違うよ」

 カーラはさらに声をひそめ、ガエサルだけに聞こえるように言った。

「私が覇王様から受けていた『密命』……ロイが帝国に仇なすようなら斬れっていう裏の命令を、完全に把握してたの。シャヴォンヌには、何でもお見通しなのね……」


「なんと……」

 ガエサルが唸る。

「シャヴォンヌは他の竜たちとは何かが違うと思っていたが、そこまでとはな……。覇王様に報告は済んでいるのか?」


「ここにくる前に演習場で覇王様を見かけたんだけど、オウカの源流と一緒だったから、言うのはやめたわ。後で、きっちり報告するよ」

「そうか、頼むぞ」


 人類の手に「白竜」という最強のカードが戻ってきた。

 考えにふけるマクマリスの肩を、ヘギルが軽く叩いた。

「おい魔王殿。これでロイの契約も済み、最大の障害は取り除かれたな。次はどうする?」


 マクマリスはハッと我に返り、力強く頷いた。

「ああ、そうだな。……次は、ガスピ湖だ。私は潜水艇のための耐圧素材の採掘に向かう」


「ララノアが水の都から戻ってくるまで、まだ少し時間があるだろ。俺も行くぜ。素材の目利きは俺の領分だからな」

 ヘギルが頼もしく親指を立てた。


 空には白き希望の翼が舞い、地上ではかつての宿敵同士が肩を並べている。

 果てしなく暗く、冷たい深海。全ての元凶である機械生命体が眠る場所へ――。

 人類の反撃の準備が、今、静かに、そして確実に進み始めていた。

【次回の予告】

「『敗北の未来』を知る二人の対話! 白竜が語る衝撃の真実と、敵の『進化』への警鐘!」


 ガスピ湖の湖畔で潜水艇の耐圧素材の採掘が着々と進む中、マクマリスは白竜シャヴォンヌと密かな念話を交わしていた。

 

 同じく「滅びる運命」を知り、共に抗う同志――そう思っていたマクマリスに対し、シャヴォンヌが放った言葉はあまりにも冷徹なものだった。


「私に死の概念はない。世界が滅びようとも関係ない」


 ことわりの外に存在する神話の竜は、世界を救うためではなく、ただロイの魂の美しさに惹かれて契約しただけだったのだ!


 さらに白竜は、人類の反撃が機械生命体を追い詰めた時、彼らが予測不能な『進化(強制アップデート)』を起こすことを示唆する。


 着々と進む反攻準備。しかし、その先に待つ未知の脅威にマクマリスは戦慄する――!


 理外の白竜と、予見される『進化』。

 第77話は、明日の21時40分更新です!


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