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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第75話:その老魔導師は追憶の空に涙する。~紅葉の森に舞う白竜の帰還~

【前回までのあらすじ】

 ガスピ湖で見事に白竜シャヴォンヌとの『真の竜契約』を果たしたロイ。


 一方、帝都の演習場では剛腕ウルスヌスと剣聖・源流による凄まじい決闘が繰り広げられ、覇王アンドレアの涙とともに、両陣営の間に奇妙な絆と信頼が芽生えつつあった。


 場面は変わり、帝都郊外の『紅葉の森』。


 シルフたちの平和な特訓の場に、連邦議長ディネルースと帝国魔法部隊総隊長ザルティムが遭遇してしまう!


 笑顔で牽制し合う二人の大魔法使いだったが、ザルティムの放った禁断の一言「婆や」が、氷の女王の逆鱗に完全に触れてしまう。休戦協定下にもかかわらず、森を吹き飛ばしかねない「魔法大戦」の火蓋が今、切って落とされた――!


挿絵(By みてみん)

 広場の中央で、氷の女王と炎の老魔導師が対峙する。


 ディネルースは、遠巻きに見ている若きエルフたちに向かって優雅に微笑んだ。

「特別に、この私が魔法の講義をしてあげるわ。よく見ておきなさい。……魔法には『詠唱』がいるわよね。高難度の魔法になればなるほど、相応の長い詠唱時間が必要になる」


 彼女はゆっくりと歩きながら続ける。

「それは、魔術師にとって大きな『隙』になるわ。だから……言葉の裏、行動の裏で、脳内で詠唱を進めておくのよ。さも何もしていないかのようにね」


 ディネルースがピタリと足を止め、ザルティムを見た。

「準備できたわよ。いつでも撃てるわ」


「流石じゃの。世間話をしているようにしか見えんかったが……。わしはいつでもよい。好きなタイミングで始めよ」

 ザルティムが杖をトンと地面に突く。


 ディネルースの美しい唇が、無慈悲な呪文を紡いだ。

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)


 それは単に「凍らせる」魔法ではない。

 対象エリアの「分子運動を完全に停止させる」という、物理法則の強制執行。熱エネルギーがゼロになるため、触れた瞬間に生体活動は静止し、痛みを感じる暇もなくガラス細工のように砕け散る、極大の死の魔法。


 彼女の両手から、視界を真っ白に染め上げるほどの凄まじい冷気が溢れ出し、瞬く間にザルティムの小さな体を包み込んだ。


「ザルティム様!」

 シルフが悲鳴を上げる。


 だが、その冷気の中心で。

 ザルティムの口が動き、何やら人語とは異なる、重低音の奇妙な言語を発した。

『――(炎よ、我が血脈の壁となれ)』


 ドォォォォンッ!!


 ザルティムの周囲に、半球状の超高温の膜――熱変動結界が出現した。

 殺人的な絶対零度の冷気が、結界に触れた瞬間に水蒸気爆発を起こし、猛烈な白煙となって四散する。


「なっ……!?」

 ディネルースが驚きに目を丸くする。


 白煙の中から、無傷のザルティムが現れた。


 スーリンディアが、呆然とするサイロスやシルフたちに解説する。

「今のが、ザルティム様の『竜語(ドラゴニック)詠唱(・チャント)』だ」

竜語(ドラゴニック)詠唱(・チャント)……?」


「人間やエルフには発音不可能な『竜の言語』で魔法を紡ぐ、失われた超高度スキルだ。通常なら数分はかかる高難度の防御魔法すらも、わずか数秒、一言で発動させることができるのだよ」


「すごい……」

 シルフは言葉を失った。


「高速詠唱するなんて、なかなかやるわね、爺」

 ディネルースが悔しまぎれに口角を上げる。


「フォフォフォ。今度はこちらの番じゃ」

『――(灰燼に帰せ)』


 再びザルティムが竜の言語を一言発すると、今度はディネルースの足元から、天を焦がすような紅蓮の炎がドーム状に吹き上がり、彼女を包み込んだ。


「チッ…… 絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!」

 ディネルースは咄嗟に周囲の空気を凍結させ、一瞬で炎を鎮火させた。


 あと一秒遅れていれば、ドレスごと炭化していただろう。

 広場に、焦げた匂いと冷気が入り混じった風が吹く。


 しばしの沈黙の後、ザルティムが周囲のエルフたちに語りかけた。

「ちゃんと見たかの、若人たちよ。魔法は何も攻撃だけではない。今のように、攻撃魔法とて己の周囲に限定して発動することで、強力な盾にもなりえるのじゃ」


 ザルティムは優しく微笑む。

「専用の防御魔法を知らずとも、工夫次第で身を守ることができる。……戦場では、生き残ることが何よりの勝利じゃ。よく覚えておきなさい」


 そして、ディネルースに向き直った。

「演習はここまでじゃ。見事な講義であったぞ、議長殿」


「……フン。それなりに楽しませてもらったわ」

 ディネルースは不機嫌そうに扇子を広げると、「行くわよ、ララノア」と踵を返し、森の奥へと去っていった。


 彼女たちの気配が完全に消えた後。


 スーリンディアがザルティムに近寄り、小声で話しかけた。

「大丈夫ですか、ザルティム様」


「……うむ」

 見ると、杖を握っていたザルティムの右腕が、袖口から霜に覆われ、酷い凍傷を負っていた。


 ザルティムはディネルースが去って行った方向を見ながら、誰にも聞こえない声で呟いた。

「わしの熱変動結界を、一瞬とはいえすり抜けてきよった。……あの小娘、想像以上に相当やりよるわ。手加減がなければ、腕一本では済まなかったやもしれん」


「すぐにあちらで手当てを」

 スーリンディアが背中を支えるように促す。


「うむ。……わしも歳をとったのう」

 ザルティムは自身の震える腕を見つめ、自嘲気味に笑った。


 その時だった。


 上空の空気を震わせる、巨大な羽ばたき音が聞こえてきた。

 演習場の方角から、太陽の光を反射して真珠のように輝く巨竜が、森の上空へと姿を現したのだ。

 その背には、小さく手を振る少年の姿が見える。


「おおっ!」

「白竜様だ!」

 エルフたちから、割れんばかりの歓声が巻き起こる。


「すごい! ロイったら、本当に契約したんだ!」

 シルフが空に向かって、ちぎれんばかりに両手を振って喜ぶ。


「すごいですね! なんという神々しさだ……」

 サイロスもまた、空を仰いで感嘆の声を漏らした。


 ザルティムは、凍傷の痛みも忘れ、上空を旋回する白竜シャヴォンヌを眩しそうに見つめていた。

「フォフォフォ……。亡きエレノア様のシャヴォンヌが、再び空を飛ぶ姿を拝める日が来るとは……。長生きは、してみるもんじゃのう」


 老魔導師の皺だらけの頬を、一筋の熱い涙が伝い落ちた。


 スーリンディアが、その背中に優しく声をかける。

「まだまだ、若者たちには教わることが沢山あります。これからも長く生きて、導いていただきますよ。……さあ、あちらの天幕へ」


 紅葉の森に、希望を告げる竜の咆哮が響き渡っていた。

【次回の予告】

「海竜の雷撃テストと、白竜が抱える『時を超える』秘密!」


 機械生命体が潜む深海。 その水晶の装甲を破るべく、海竜ティアマトによる雷撃の実地テストが行われるも……結果は、海面からの攻撃では威力が分散してしまい効果が薄いことが判明!

 敵を討つには、やはり直接深海へと潜る「潜水艇」と新兵器が絶対に不可欠だった。


 一方、無事に帰還したロイたちを迎えたマクマリスは、カーラの報告に内なる戦慄を覚える。


 なんと白竜シャヴォンヌは「別の世界線の記憶」を共有しており、マクマリスと同じく『敗北の未来』を知っていたのだ!


 未来を変える意志を持つ最強の古竜を味方につけ、マクマリスとヘギルは潜水艇の耐圧素材を求めてガスピ湖へと向かう――!


 深海への布石と、記憶を継ぐ白竜。

 第76話は、明日の21時40分更新です!


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