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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第47話:その隻眼は翼を奪われる。~見えざる水刃と群がる悪意~

【前回までのあらすじ】

 上空では覇王と四天王、そしてロイが敵航空戦力を圧倒するも、地上では戦況が一変していた。


 何もいない空間から放たれる「見えない刃」により、スーリンディア長老が倒れ、盾となるアンデッドたちも次々と両断されていく。


 マクマリスはその正体が、敵が体内に取り込んだ海水を撃ち出す「高圧水流ウォーターカッター」であると看破。


 全滅の危機を知らせるため、彼は前線を離脱し、上空の覇王へ警告に向かうのだった。

 白亜の巨塔、北側。

 サイロス率いる魔法剣士部隊が、シルフと共に機械生命体の群れと激突していた。


「みんな、私の矢に合わせて!」

 シルフが雷を纏った矢を上空へ打ち上げる。


 拡散した矢の雨が敵陣に降り注ぐ。通常の矢では貫けない水晶の装甲も、シルフの魔力が込められた矢によって貫かれ、瞬時に何十体もの個体がショートして火花を散らす。


「今だ、畳み掛けろ!」

 サイロスが前線で剣を振るう。


 その時、彼の視界の隅で、遠方の機械生命体が奇妙な挙動を見せた。胸部を展開し、何かを構えるような姿勢をとったのだ。その銃口が、シルフに向いている。


(あれは……!)

 サイロスは反射的に地面を蹴った。


「危ない!」

 彼はシルフに飛び込み、地面に押し倒した。


 ヒュンッ!


 何かが空を切り裂く音がして、二人の頭上を通過した。

「っ!? ど、どうしたの、突然!」

 シルフが驚いてサイロスを見上げる。


 サイロスは無言で、シルフの左袖を指差した。

 そこは鋭利な刃物で切り裂かれたようにパックリと開いており、切れ端はびしょ濡れになっていた。


 サイロスに手を引かれて起き上がりながら、シルフが顔を青くする。

「ありがとう……。でも、あのブレードって飛ばせるわけ?」


「いや、ブレードじゃない」

 サイロスは油断なく周囲を警戒しながら言った。

「あっちにいた個体が、シルフに向けて水のようなものを噴射するのが見えたんだ」


「水!? 水でこんなに切れるわけ?」

「加圧して高速噴射できれば可能だよ。岩だって切れる」


 そこに、マクマリスから全部隊への緊急通信が入る。ノイズ混じりの切迫した声だ。

『覇王、聞こえるか? 全部隊に回線を開いて話している。聞ける者は全員、耳を澄ませろ!』


 上空の覇王が即座に応答する。

『ああ、聞こえる。どうした?』


『飛行型は分からないが、地上の歩行型は海水を圧縮し噴出する遠距離攻撃を使う機能を備えたようだ! 射程は目測で三百メートル以上!』


『なんだと!?』

 覇王の声に驚きが混じる。


『地上部隊は劣勢だ! 見えない刃に狩られている! このままでは全滅は時間の問題だ! 上空から援護を頼みたい!』

『……分かった。なんとかする!』


 マクマリスの声が再び響く。

『全部隊、聞いたか! 敵の遠距離攻撃は、我々の盾や鎧がチーズのように切断されるほどの威力だ! 発射前に胸部を展開する予備動作がある! 間違っても、受け止めようと思うな! 回避しろ!』


 シルフがその通信を聞いて、悲鳴のような声を上げた。

「どこから飛んでくるかも分からないのに、避けろって言うわけ!?」


 乱戦の中で、無数の敵の予備動作を見切るなど不可能に近い。

 だが、サイロスはシルフの背中に自分の背中を押し当てた。


「ああ、避けるしかないよ。……だから、二人で見るんだ」

「え?」

「背中を預け合えば、死角はなくなる。全方位カバーできる」


 シルフは背中に伝わる彼の体温を感じ、強く頷いた。

「……そうね。それしかないわね」


 サイロスは剣を構え直し、大声で魔法剣士隊に伝えた。

「聞いたな! これより対遠距離防御陣形をとる! 二人一組で背中を預け合って、敵の予備動作に注意を払うんだ! 絶対に生き残るぞ!」


「「「オウッ!!」」」

 見えない死の刃が飛び交う中、兵士たちは互いの背中を信じ、再び剣を振るい始めた。


    ◇


 マクマリスからの悲痛な報告を受け、上空で戦況を俯瞰(ふかん)していた覇王アンドレアは、歯噛みした。

 敵の進化――遠距離水流カッターと水晶化した装甲への対応に追われ、戦線は崩壊寸前だった。


(確かに……このままでは地上部隊が持たんか! もう一度、湖の敵を一掃して圧力を下げる必要がある!)


 アンドレアは通信機に叫んだ。

「ガエサル! もう一度だ! ティアマトの雷で湖の敵を焼き払え! 地上の負担を減らす!」

『御意!!』


 隻眼の将軍ガエサルは、即座に愛竜ティアマトの機首を下げ、急降下に入った。

 狙うは、白亜の巨塔の足元。水流カッターの供給源と思われる湖面。


「これで終わりだァッ!」

 ティアマトが多頭の口を大きく開き、雷ブレスの予備動作に入った。エネルギーが充填され、大気が震える。


 その時だった。

 ザザザザザッ!!


 異様な音が響いたかと思うと、白亜の巨塔の壁面を黒い染みのように覆い尽くしていた無数の機械生命体が、一斉に壁を蹴った。


「なっ!?」

 まるで巨木に群がる蟲のように、彼らは空中のティアマトに向かって飛び掛かったのだ。


 ガシャン! ガギィッ!

 一体、また一体。鋼鉄のボディが竜の巨体に張り付き、爪を食い込ませて重石となる。


「ぐおおっ!? 重い……翼が……!」

 ガエサルが槍を振るって数体を叩き落とすが、数は減るどころか増える一方だ。


「振りほどけティアマト! くそっ、貴様ら!」

 数十、数百の敵に取り付かれたティアマトは、その重量に耐えきれず揚力を失った。


 雷ブレスを吐くこともできず、悲鳴のような咆哮を上げながら、そのまま銀色の波が渦巻く湖面へと叩きつけられる。


 ドォォォン!!


 巨大な水柱が上がり、ガエサルとティアマトの姿は、瞬く間に押し寄せた数万の機械生命体の下へと消えた。

【次回の予告】

「来世があれば、私の秘書に雇ってやる。」


 絶望的な戦場で、魔王と氷の秘書官・ララノアが交わした最初で最後の「契約」。

 泥のようなコーヒーの味と、彼女が最期に見せたハイエルフらしい笑顔。


 束の間のコーヒーブレイク。

 第48話は、明日の21時40分更新です!


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